腎機能が低下して、本来の働きができなくなると「末期腎不全」となります。
このステージとなると、食事療法や薬物療法では対応できなくなるので、腎代替療法として「透析療法」または「腎移植」のいずれかを選択することになります。
後者の腎移植を希望する人は多いものの、費用がかかる、ドナーが少ない、透析者の間でも順番待ち(登録制)であるなど諸問題が多く、日本では普及が進んでいないのが現状です。
「人工透析」という言葉は聞いたことはあるかもしれません。 文字通り、人工というのは生身の腎臓ではなく「器械」のことです。
透析療法の選択肢として、大きく分けて「血液透析(HD)」「「腹膜透析(PD)」がありますが、本来腎臓が持っていた機能が不全に陥ったために、どちらも「器械」を通じて血液の中に含まれる老廃物を濾過したり、水分を除去したりする治療であることには変わりはありません。
「血液透析」か「腹膜透析」と言えば、日本における透析事情は、圧倒的に血液透析を選ぶ透析者が多いです。
歴史的にみて血液透析が普及してきた(=血液透析の医療機関が多い)、医師や看護師など相談できたり管理してもらえることの安心感がある(腹膜透析では自分で器械を扱ったり、衛生管理するなどの煩わしさ)などがあります。 血液透析がオンリーということではなく、もちろん腹膜透析を選択する透析者もいます。
なお、透析について「そろそろ考えて欲しい」と医師に言われたときの直近の方向性は、7、8年は「腹膜透析(PD)」→その後「血液透析(HD)」へ移行という、腹膜透析(PD)ファーストが多いようです。
「血液透析」か「腹膜透析」にするのかについては、自分の置かれている状況(仕事、家庭、家族の理解)や環境(自宅・賃貸住まい、近くに医療機関あるか否か、車で通える・・・)などをできる限り深堀りしておき、疑義・問題点の洗い出しをしておくことが大事になってきます。
そして、医師の診断や治療方針について説明、意見なども求めることにはなりますが、(ほかの持病などもあったりするでしょうから)主治医以外のほかの病院の医師の意見を参考にすることも必要でしょう(セカンドオピニオン=第二の意見)。
先にも述べた通り、透析できる病院が会社や自宅近くにあれば越したことは無いのですが、そうそう条件が良いのは稀で、自分なりの条件設定は行いつつも、妥協・我慢をしなければならないことが出てくるのも多々として出てきます。
地方在住の透析者であれば、自宅や会社から病院まで車移動するのに1時間はかかるといったことはザラにあります。
治療のために長距離であれば移動だけでも時間をとられるわけで、仕事では早めに早退せざる負えません。
その結果、大幅に給料が減ったり、自己負担増から転居を考えたり、会社との就業条件に折り合いがつかなくなれば転職といったことが出てきます。
特に血液透析にあっては、特に「時間的制限」が強いので、ソーシャルワーカーによる病院照会はもちろんのこと、洗い出しをした疑義・問題点についても相談し、何らかの解決の糸口をつかんで欲しいものです。
病院照会。透析導入前の早めの段階で、透析できる病院などへ見学されることをおすすめします。 ここからは、血液透析の治療そのものについてみていきます。
血液透析の特徴に、バスキュラーアクセス(=血液の出入り口であるシャント)」というものを作ることです(「シャント」とも呼ばれますが、今でも通じます)。
一般的には利き腕ではない腕に、バスキュラーアクセス(=血液の出入り口であるシャント)を作る手術が必要なわけです。 術前の血管で透析できるように思えますが、実は効率よく透析することはできません。
シャント作る理由には、「看護師等の医療従事者が穿刺する(=針を刺す)のが楽になる」、血液透析ではたくさんの血液を必要とするため「たくさんの血液が流れるようにする」といったことがあります。
そうすることで、効率よく腕の血管から血液を取り出してダイアライザー(人工腎臓)に流し、血液中にある老廃物の濾過や水分除去を行っているわけです。
シャント手術のタイミングは、透析導入を考えなければならない時期(腎臓病の5ステージ※)ですが、医師の判断に委ねられます。
※腎不全末期は重い尿毒症にかかるので、Cr(クレアチン)値などで判断します。
「人工透析導入基準」というのがあり、Cr:8、BUN(尿素窒素):80~100超がその目安になっています。
透析導入者の体調やデータからの見越し、手術のスケジュールの調整など総合的に見て決めることになります。 さあ、シャントを作ったからといってすぐに透析導入!ということにはなりません。手術後の痛みは響き、透析に耐えられるだけの血管には育っていません。
そのため、透析ができるようになるまでに血管の成長をさせるための運動や訓練をすることになります(血管を「広く」「太く」するために「シャント運動」があります)。 血液透析は一度始めると止めることができません。
ダイアライザー(人工腎臓)を通して老廃物の濾過や水分除去していく結果、「まだ尿は出ているけども・・・」と言っているうちに極端に尿量低下を感じやすくなる時期が来ます。残腎機能の低下というものです。その際は利尿剤を使って行うことになりますが、いずれは尿量が無くなってしまいます(無尿)。これはどうしようもないないことです。
透析は長時間のかかる治療です。
考えてみれば、血液透析は通院(移動)や着替え、穿刺・抜針のための待ち時間ほかに、通常は4時間以上かけて透析とそれらを合算してみれば、相当な時間を使っていることが分かります。
透析をしなければ尿毒症の症状が、透析導入の時期は「不均衡症候群」の症状も出てきてしまいます。そのため何かと心身・精神的ともにバランスが崩れています。
「透析治療は時間の無駄だ」「透析が辛い」と考え、透析ストレスを抱える人が割合多いものです。 「透析中は何をしているのか(何をしたら良いのか)?」という壁にもぶつかります。 透析導入した時期(年齢)や立場によっても、どう過ごすのか!?は皆違ってきます。
短絡的に言えば、「透析者の思うように過ごすのがベスト」であって、答えは透析者にあると言って良いと思います。
集団治療なので、治療が個室でもない限りプライバシーは無いに等しく、通常4時間はベットの上で過ごすというスタイルは今も昔も変わっていません。
変わってきたのは、透析者の過ごす時間アイテムの幅が少しずつ拡がってきている、ということです。
昔は読書や新聞、有料TVや携帯ラジオを見たり聞いたり、もしくは寝ているしかありませんでした。 しかし今やPCを持ち込んで仕事もできます。
スマートフォンやタブレットを使って映画や音楽、デジタル雑誌、携帯ゲーム等を楽しむことができます。
病院・クリニックスタッフさんの仕事に、他透析者に迷惑をかけないことはもとより、 どれを持ちこんで良いか否かについては、病院の治療方針なり治療にあたっての規約に書かれているため、すべてが持ち込みOKとは言えません。
次いでに言うと、集団治療であること、透析器械への電子的な影響もあることから「治療中の電話はできない」と心得ておきましょう。 透析中は医師や看護師等スタッフによる巡回・観察はあります。
家や仕事上での血圧測定の結果、薬の追加・変更、副作用の有無、ドライウエイト(基礎体重)など、質問や疑問があるところは聞いていきましょう。
治療の途中で血圧の低下や具合が悪くなったり、体調が急変することは当然として起こり得ます。我慢するなど遠慮は要りません!速やかに医師や看護師の指示を受けるようにしましょう。
血液透析で大事な食事療法やシャントの保護、ドライウエイト(基礎体重)の決め方、 慢性合併症などは別途設けるものとします。