透析療法を種類・費用・余命で比較!メリットとデメリット解説

2018年4月2日

透析療法を種類・費用・余命で比較!メリットとデメリット解説
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更新日: 2026年9月27日

透析療法を種類・費用・余命で比較

腎機能が低下して末期腎不全まで進行すると、食事療法や薬物療法だけでは対応できなくなります。そのため「透析療法」または「腎移植」のいずれかを選択することになります。

私は透析療法を選択しました。20年超透析を行っている現役の透析患者として、今回は透析療法のなかでも一般的な血液透析(HD)と腹膜透析(PD)を比較していきます。種類の違いはもちろん、費用や余命(生存率)についてもお伝えします。

 

・透析療法のなかでも一般的なのは、血液透析(HD)と腹膜透析(PD)
・日本では血液透析(HD)+血液透析濾過(HDF)が患者の約96%を占め、腹膜透析は約3%(2024年末・日本透析医学会)
・QOL(生活・人生の質)の観点から「腹膜透析⇒血液透析」という導入の流れを勧める医師もいる
・血液透析と腹膜透析を選ぶには、共通点・メリット・デメリットを知ることが重要
・透析の医療費は保険制度で賄われるが、2026年8月から高額療養費の自己負担上限額は段階的に引き上げられるが据え置かれた。今後の動向に要注意

 

透析療法を比較することの意義

血液透析と腹膜透析の両者を比較することは、それぞれの共通点やメリット・デメリットを理解することにつながります。どちらを選ぶかは、透析導入後の仕事・家庭・プライベートなどQOL(生活・人生の質)に大きく影響します。

最近はかつてのように血液透析から導入するのではなく、QOL向上の観点から「腹膜透析⇒(約7〜8年後に)⇒血液透析」というように、導入時は残腎機能を活かしながら仕事も継続できるよう勧める医師もいます。一方、最初から血液透析を選択する方も多く、どちらが正解というわけではありません。

いずれにしても、血液透析か腹膜透析のどちらを選ぶにせよ「透析をする」という点では、機械で腎臓の働きの一部を代替していることに変わりはありません。現時点の医学では、腎臓はあまりにも構造が複雑すぎて再生できない臓器なのです。透析は腎臓自体を治療しているのではなく、機能の一部を補うものです。この前提を理解したうえで、仕事や家庭環境・プライベートを総合的・全体的に考えながら読み進めてください。
なお、ここでは腎移植については触れません。

参照:「【透析の選び方】自分に1番マッチした治療方法を選ぶべき!」

 

透析療法には主に2つある

透析療法には主に2つある

透析療法には、血液透析と腹膜透析の2種類があります。日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」によると、血液透析(HD)約33%・血液透析濾過(HDF)約63%・腹膜透析(PD)約3%(HD併用含む)です。血液透析(HD)・血液透析濾過(HDF)はいずれも施設通院型の治療で、合わせて約96%を占めています。

血液透析(HD)は、腕の血管から血液を取り出してダイアライザー(人工腎臓)に流し、血液中の老廃物や余分な水分を除去する方法です。日中に仕事をしているなら夜間透析が多くなります。「早退を避けたい」「一定の収入を確保したい」という方は、条件が許す場合はオーバーナイト透析や在宅血液透析の検討も選択肢になります。

腹膜透析(PD)は、自分の腹膜を腎臓代わりに使って老廃物や余分な水分を除去する方法です。自宅でも会社でも行うことができます。昼間に透析液を1日3〜5回交換する持続携帯式腹膜透析(CAPD)と、就寝中に機械が自動で行う自動腹膜透析(APD)の2通りがあります。

【図表1】血液透析(HD)と腹膜透析(PD)の基本比較
項目血液透析(HD/HDF)腹膜透析(PD)
治療場所透析施設(病院・クリニック)自宅・職場・外出先
治療頻度・時間週3回、1回4〜5時間毎日(CAPD:1日3〜5回×30分、またはAPD:夜間就寝中)
通院回数月12回以上(必須)月1〜2回程度
必要な手術シャント造設術(バスキュラーアクセス)腹腔内カテーテル挿入術
食事・水分制限厳しい(塩分・カリウム・リン・たんぱく質・水分)比較的緩やか(ただし腹膜機能低下後は制限が増える)
日本での患者数割合(2024年)約96%(HD+HDF)約3%

出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」

 

比較!血液透析と腹膜透析のメリット・デメリット

以下、◎・○はメリット、×はデメリット、△は条件付きで可能なものです。各項目を順番に見ていきましょう。

1. 透析治療に必要な手術

 血液透析(HD)腹膜透析(PD)
手術×バスキュラーアクセス(シャント造設術)が必要。シャント閉塞が起きた場合は再手術が必要×腹腔内カテーテル挿入術が必要。ただし、過去に大きな腹部手術を受けた方は腹膜透析ができない場合がある

 

2. 透析の生命予後(余命)について

「透析を始めたら余命はどのくらいか」。これは多くの透析患者・ご家族が気になるところだと思います。

透析の生存率は、原因疾患・年齢・透析導入時の状態・合併症の有無などによって大きく異なります。一概に「何年」とは言えません。ただし、日本透析医学会の統計から言えることは、日本の透析医療の水準は世界的にも高く、長期生存者は珍しくありません。20年超透析を行っている私自身もその一例に入っているのかもしれません。

 血液透析(HD)腹膜透析(PD)
長期予後○ 透析開始から10年以降は腹膜透析に比べてリスクが低い傾向。長期継続が可能△ 透析開始から8〜10年程度までは血液透析と同等かリスクが低いとされる。ただし腹膜機能の限界から、おおむね8年程度で血液透析への移行が必要になる

大切なのは、「余命がどれくらいか」よりも「どうすれば今の生活の質を高く保てるか」という視点です。食事管理・体重管理・運動習慣・定期検査など。これらの自己管理の積み重ねが、長期予後にも大きく影響します。

 

3. 透析治療の時間・場所・通院回数

 血液透析(HD)腹膜透析(PD)
通院・時間× 通院時間+待ち時間+治療時間(4〜5時間×週3回)の時間拘束が大きい。職場や自宅付近に透析施設がない場合は通院のための時間、精神的な負担も増す。最低でも月12回以上の通院が必要○ CAPD(持続携帯式腹膜透析):1回30分×1日3〜5回。在宅・職場での治療が基本で時間的拘束が少ない。APD(自動腹膜透析)の選択も可。通院は月1〜2回程度。交通費・時間の負担が少ない

 

4. 日常生活への影響(拘束時間・旅行・運動)

項目血液透析(HD)腹膜透析(PD)
拘束時間× 通院+治療の時間的拘束が大きい○ CAPD・APDともに生活スタイルに合わせた治療が可能
旅行・出張△ 可能だが、旅行先での透析施設(旅行透析)を事前予約が必須。温泉などでのシャントへの感染に注意△ 可能。ただし透析液・器材の携行や配送手配が必要。カテーテル出口部の保護が必須。温泉入浴が難しい場面も
運動△ 有酸素運動など、適度な運動は可能。バレーボールやバスケットボール、長距離マラソン等の過度な運動は避ける。シャントの保護が必須△ 適度な運動は可能。ただし水泳・腹圧のかかる激しい運動は避ける

 

5. 仕事・社会復帰率

仕事・社会復帰率

 血液透析(HD)腹膜透析(PD)
仕事・社会復帰△〜× 仕事・社会復帰は可能だが時間的制約が大きい。日中勤務の場合は夜間透析が中心。就職・転職は正直なところ厳しい場面も多い。通院・透析施設・職場・自宅の距離や会社の理解が必要。オーバーナイト透析・在宅血液透析の検討も余地あり○〜△ 血液透析より社会復帰が容易とは言える。CAPD(持続携帯式腹膜透析)をする時間と場所の確保、周囲の理解があれば、という条件付きはある

 

6. 食事・水分制限

 血液透析(HD)腹膜透析(PD)
制限の程度× 食事・水分制限が厳しい。たんぱく質・水分・塩分・カリウム・リンなど厳密な管理が必要。食事メニューを工夫するのが大変○ 食事・水分制限は比較的緩やか。毎日透析を行うため制限が少なめ。ただし腹膜機能が低下するにつれてカリウム・水分制限が必要になる

 

7. 精神的・心身的な負担

精神的・心身的な負担

 血液透析(HD)腹膜透析(PD)
残腎機能△ 残存腎機能の低下が早い傾向○ 残存腎機能が保たれやすい。残腎機能があるうちに腹膜透析を開始した場合、より長く残腎機能を維持できる(個人差あり)
精神的・経済的負担× 精神的・経済的負担が大きい。通院+待ち時間+治療時間が週3回・一生続く。仕事の早退や残業できないことで収入が減る場合がある○ 体液・血圧の変動が少なく心臓への負担も緩やか。24時間365日、毎日透析を行うため体内環境の変化が少ない
体内環境の変化× 透析日⇒非透析日を繰り返し、体内の老廃物・水分の変動が大きい。透析前後での体調差も出やすい。導入時には血圧低下・頭痛・吐き気が起きることもある○ 毎日透析するため体内環境の変動が少なく安定しやすい

 

8. 医療面の全般比較

医療面の全般比較

項目血液透析(HD)腹膜透析(PD)
安心・安全◎ 専門の医療スタッフが治療してくれるため安心・安全。医師・看護師・臨床工学技士が常駐する施設で治療を受ける。その分「シャントや食事などの自己管理」を忘れずに△〜○ 自宅・職場・外出先での治療が可能。生活リズムに合わせて透析液交換が可能(CAPD)。APD(自動腹膜透析)の選択も可能
医療スタッフとの連携○ 週3回の通院でスタッフと密なコミュニケーションが取れる○ 通院は月1〜2回程度(医師による確認)
透析効率○ 1回あたりの老廃物除去率が高い△ 血液透析に比べると透析効率は低め
長期継続○ 半永久的に継続可能(ただし定期通院が必須)。在宅透析なら生活リズムに合わせた透析が可能。ただし水道・電気工事が必須で機材を置くスペースも必要× 腹膜機能は徐々に低下する。5年程度から機能が低下し始め、おおむね8年程度で血液透析への移行が必要になる場合が多い。移行時にシャント手術が必要

 

9. 合併症について

 血液透析(HD)特有の合併症腹膜透析(PD)特有の合併症
主な合併症× 透析アミロイド症・骨代謝異常・心不全・貧血・高血圧・低血圧・皮膚のかゆみ。シャントに関連した合併症も生じる× 腹膜炎・被嚢性腹膜硬化症(EPS)・カテーテル感染。バッグ交換時の不衛生な操作やカテーテル出口部の手入れ不足が感染リスクになる。腹腔内への透析液貯留による影響(腹部膨満感・腰痛・食欲低下)、ブドウ糖による栄養代謝への影響もある。衛生管理と自己管理ができる人でなければならない

 

透析にかかる費用 意外と知られていない実態

「透析の費用ってどれくらいかかるの?」という疑問は、透析導入前の方にとって特に気になるところだと思います。透析の医療費は決して安くはありませんが、日本には手厚い公的支援制度があります。

透析の医療費と保険制度

血液透析(週3回・月12〜13回)の医療費は、1か月あたり40〜50万円程度と言われています。ただし、これはあくまでも医療費の総額であり、患者本人が実際に支払う金額とは大きく異なります。

制度・区分内容・ポイント
健康保険(医療保険)医療費の7〜9割を保険者(健康保険組合・国民健康保険等)が負担。患者の自己負担は1〜3割
高額療養費制度ひと月の医療費が一定額を超えた場合に超過分が払い戻される。透析患者は毎月上限に達することが多いため、実質的な自己負担が抑えられる。※2026年8月から段階的に自己負担上限額が引き上げ(最大約38%増)がはじまっているが、透析は据え置きに。今後の動向に注意が必要
自立支援医療(更生医療)身体障害者手帳を取得した透析患者が申請できる制度。医療費の自己負担が原則1割に軽減される。所得に応じた月額上限あり
障害者医療費助成制度各都道府県・市区町村が独自に設けている制度。自立支援医療と組み合わせることで、実質的な自己負担がほぼゼロになるケースもある(地域差あり)
特定疾病療養受療証人工透析を必要とする慢性腎不全患者が取得できる。医療費の自己負担が月1万円(一定所得以上は2万円)を上限に抑えられる

これらの制度を組み合わせることで、多くの透析患者は月の医療費の実質自己負担を大幅に軽減できます。ただし申請が必要なものが多く、黙って待っていても適用されません。透析を導入する際は、担当医・ソーシャルワーカー・市区町村の窓口に相談しながら早めに手続きを進めることをおすすめします。

血液透析と腹膜透析の共通点

比較した後で、透析療法(血液透析と腹膜透析)の共通点を整理しておきましょう。

血液透析・腹膜透析 共通のポイント
#共通点補足
1治療開始の制限が少ない血液透析はシャント造設術、腹膜透析はカテーテル挿入術を行えば治療を開始できる
2ほぼ日本中どこでも受けられる血液透析は透析施設(在宅含む)、腹膜透析は自宅・会社・外出先で可能
3透析特有の合併症が存在する貧血・骨代謝異常・アミロイド沈着・動脈硬化など慢性的な問題が伴う。腹膜炎・被嚢性腹膜硬化症のリスクも
4薬剤治療は必要不可欠貧血・骨代謝異常・高血圧などへの薬が必要。透析では造血ホルモンの分泌やビタミンDの活性化を代行できないため

透析で「代行できること」と「できないこと」
透析で代行できること:老廃物の除去、余分な水分の排出、電解質の調整
透析で代行できないこと:造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌、ビタミンDの活性化など
これらは薬剤や注射で補う必要があります。

 

まとめにかえて——仕事をしながら透析を続けるための選択パターン

末期腎不全まで進行し、透析療法か腎移植のいずれかを選択することになると冒頭で説明しました。特に日中に仕事をしている会社員・自営業の方の場合、「透析の組み合わせ」は以下のようになるでしょう。

仕事をしながら透析を続けるための主な選択パターン
パターン内容ポイント
①腎不全
⇒血液透析(夜間透析)
もっとも多い方法。午後から夕方に仕事の方は午前透析も選択肢日中仕事を続けやすいが、夜間の拘束が増える
②腎不全
⇒腹膜透析
⇒(7〜8年後)
⇒血液透析
当初は腹膜透析、その後血液透析へ移行。移行時は夜間透析・オーバーナイト透析を検討QOLを重視した選択。残腎機能を長く保てる可能性
③腎不全
⇒オーバーナイト透析
睡眠時間を利用した血液透析。首都圏での施設が多く地域差がある日中に仕事をしながら透析が可能。施設数が限られる
④腎不全
⇒在宅透析
自宅で自分の好きな時間に透析可能。毎日の実施も可QOLを最も上げやすい選択肢の一つ。ただし水道・電気工事が必須で機材の保管スペースも必要

仕事や家庭・プライベートを最優先にしたい場合で、QOL(生活・人生の質)を高めたいのなら、血液透析の中では在宅透析が最も自由度が高いと言えます。なお、腎移植についてはここでは取り上げませんでしたが、「腎不全⇒腎移植」または「腎不全⇒透析⇒腎移植」という流れもあります。

この記事のまとめ
・透析療法の日本での内訳はHD+HDF(施設通院型)約96%、PD(腹膜透析)約3%(2024年末・日本透析医学会)
・透析は腎臓を治すものではなく、腎臓の働きの「一部を機械で代替」するものと理解することが大切
・QOL向上を重視するなら「腹膜透析⇒血液透析」の流れ、または在宅血液透析も選択肢

・血液透析のメリット:専門スタッフが管理・長期継続可能・透析効率が高い
・血液透析のデメリット:通院・時間拘束が大きい・食事水分制限が厳しい・精神的・心身的負担が大きい

・腹膜透析のメリット:自宅・職場で治療可能・通院少・食事制限が緩やか・残腎機能を保ちやすい
・腹膜透析のデメリット:腹膜機能が8年程度で限界・自己管理が必須・腹膜炎のリスク

・2026年8月から高額療養費の自己負担上限額について「据え置き状態」を維持。今後段階的に引き上げられる可能性あり。引き続き、特定疾病療養受療証や障害者医療費助成制度などの組み合わせ活用を忘れずに

 

参照:「【透析の選び方】自分に1番マッチした治療方法を選ぶべき!」
参照:「血液透析の【手順・流れ】は確認しておいた方が良いです!」
参照:「透析時間の決め方。えっ!4時間透析は【最低ライン】なの?」
参照:「ドライウエイトって何?ズバリ【透析後の基礎体重】のこと。」
参照:「オーバーナイト透析は勤労者にメリット【大】課題は普及率!」