腎不全保存期の治療。食事療法しながら現状維持!がポイント

このページでは「腎不全保存期」についてとりあげています。

慢性腎臓病(CKD)ではステージ(=病期)を1~5の5段階のグループ分けしています(ステージ3にはさらに3aと3b)。
そのうち「腎不全保存期」は慢性腎臓病でいうところのステージ4、5に該当します。

端的に言うと、4が「腎臓の機能を回復させることができない段階」5が「機能が極度に低下している状態」です。

日本の成人の5人に1人は慢性腎臓病(CKD)の疑いがあると言われています。
この「疑いがある人」には、腎臓は痛みを伴わないために気付いていない人や進行しているのに治療を放置している人、「人工透析予備軍」と呼ばれる人たちがいます。

慢性腎臓病(CKD)の原因となる腎臓の病気には様々ありますが、人工透析になる原因疾患について、日本透析医学会が調査を行っています。

順番に「糖尿病性腎症」 「慢性糸球体腎炎」「腎硬化症」となっていて、1998年からずっと「糖尿病性腎症」が第1位になっています。年々伸びが右肩上がりです。
慢性腎臓病(CKD)の治療中は、繰り返し尿検査や血液検査、画像検査(超音波検査、CT検査、MRI検査など)を行って、その経過をみていきます。

「腎生検(じんせいけん)」というものもあります。

これは蛋白尿や血尿、腎機能の低下の原因となっている「腎臓病」を診断して、この先の治療に役立てることを目的としています。

慢性腎臓病(CKD)の3bと4、5(=腎不全保存期)の時期に行われます(残腎機能(GFR)でいうと44%以下)。
腎生検は、腎臓を針で穿刺して、採った腎組織を幾種類か染色をした後に顕微鏡で観察します。

例えば、この腎生検で医師が「慢性糸球体腎炎(IgA腎症)」と確定診断したとします。これは、IgAという免疫グロブリン※が確認されてはじめて診断される病気です。

超音波検査やCT検査などの画像検査では知ることはできないのです。
腎生検はほかの腎臓病※※である「糸球体腎炎」や「ネフローゼ症候群」「腎不全」などであると確定診断し、この先の適切な治療法を決定する場合でも同じです。

※免疫グロブリン・・・血液中や組織液中に存在、5種類あるうちの1つがIgAという型で、細菌やウイルス感染の予防に役立っています。

※※「腎硬化症」「糖尿病性腎症」など、腎臓機能が萎縮していたり高血圧は、止血ができない、感染の疑いがあるときは、腎生検を行うことはできません。

慢性腎臓病の3b、4および5(=腎不全保存期)にあるこの時期は「腎生検なくしては正確な診断を行うことはできない!」と言っても過言ではないのです。

腎生検についてまとめると、
・慢性腎臓病(CKD)ステージ3bやと4、5(=腎不全保存期)の時期に検査
・腎臓の組織の一部を顕微鏡で調べて「より正確な腎臓病」を診断
・検査時間は15~30分程度だが、5~7日程度の入院が必要
・結果は10日~2週間程度かかる

次に「腎不全保存期」についてみていきます。

冒頭で「腎不全保存期」という時期は、慢性腎臓病でいうところのステージ4や5であり、4は腎機能が「回復させることができない段階」にあり、症状が更に進んで5では「極度に低下している状態」と表しました。

では腎臓病の患者は「腎不全保存期でどのような治療を受けていくのかでしょうか?」

腎機能や症状等について見てみます。

ステージ4
→残腎機能15~29%(高度の低下・・・機能を回復させることができない段階)
症状:むくみ、疲労感、夜間多尿、無症状も多い

ステージ5
→残腎機能15%未満(末期腎不全・・・極度に低下している状態)
症状:疲労・食欲不振・嘔吐・下痢(軟便を含む)・皮膚の痒み・腎性貧血、無症状も多い

→残腎機能5%以下程度で老廃物の排泄ができなくなるため、毒素が体内に溜まる「尿毒症」の症状が出現。

→尿毒症は放置すれば命にかかわるので、透析療法(血液、腹膜)や腎移植の選択を行わなければならない
→透析に至るまでのデータとしてCr(クレアチニン)値の指標:
透析準備(シャント形成)の段階でのCr(クレアチニン)値が5.0~、透析導入期はCr:8、BUN(尿素窒素):80~100が目安

なお「慢性糸球体腎炎(IgA腎症)」にあると診断されて治療を行うも、10年で20%、20年で40%、30年で50%の人が末期腎不全や透析へ移行したという調査結果があります。

このように「腎不全保存期」にあるとき「腎臓病の進行をストップすること(=現状維持の治療)」「透析をできるだけ遅らせること」が大事になってきます。
そのため、最重要課題は何より食生活の改善を進めていくことになります。

慢性腎臓病の各1~3ステージでも食生活の改善に努めてきたでしょうが、「食事療法」は継続しなければなりません。
ほかにも薬物療法、運動制限(適度な運動は可)も同様に行っていきます。

「食事療法」について
腎臓の残存機能をできるだけ長く維持することが第一優先となるため、「①たんぱく質の摂取コントロール②適正なエネルギー摂取③減塩」にすることが食事の基本となります。

①たんぱく質の摂取コントロール
たんぱく質を摂りすぎると代謝されるときに多くの老廃物が生じ、それを排泄するために腎臓に大きな負担をかけることになります。

そのためたんぱく質の摂取コントロールが必要です。
たんぱく質でも「低たんぱく」でも「「良質なたんぱく質※(=アミノ酸のスコアが高い)」を摂っていくことが推奨されます。
※アミノ酸でも、体内で作り出すことができない必須アミノ酸のことを言います。

「アミノ酸スコアが100に近い食材は、老廃物が少ないたんぱく質であるので、腎臓に負担がかかりにくいという図式ができあがります。

たんぱく質でも植物性なら大豆が、動物性なら「肉」「魚」があるでしょう。「アミノ酸スコアが高い動物性のたんぱく質」で言えば、鶏→牛→豚の順でタンパク質は少なくなります。

アミノ酸スコアが低い食材もありますが、スコアが高いものと組み合わせることでたんぱく質の栄養価を上げて体内での利用率を上げることはできます。
また、ステージ4、5におけるたんぱく質摂取は0.6~0.8g/Kg/日になります。

②適正なエネルギー摂取
エネルギーを摂りすぎ、食べ過ぎになれば肥満になってしまい、糖尿病や脂質異常症の原因になり腎臓の負担が大きくなり機能低下してしまいます。
一方で、①の「低たんぱく・良質なたんぱく質」を意識するばかりか、痩せ(体重の減少)、筋肉量の減少といったことが起きることがあります。
これはエネルギーが適正に摂れていない状態です。

(これはこれで矛盾するような話ですし、体の仕組みに驚きを覚えますが、)筋肉からのクレアチニンやたんぱく質からBUN(尿素窒素)という毒素が生産されてしまい、この毒素によってまた腎臓の負担になってしまいます。
ここあたりが食事療法の難しさ、腎臓病治療の難しさだと言えます。

③減塩
塩分の摂りすぎ→水が欲しくなる→また塩分を摂る→また水が欲しくなる。
塩分を摂りすぎると、過剰な食塩を尿中に排泄させるために糸球体の過剰濾過を起こして腎臓に負担をかけます。

また血液中の水分量の増加は循環する血液量を増やすため、血管に負担をかけたり、高血圧を引き起こしたりします。
腎機能の低下につながります。

さらに悪化すれば心不全、肺水腫になることもあります。
またステージ4、5における食塩量は3~6g/日未満になります。

薬物療法について見ていきます。

ステージ4、5でも薬物療法は続きますが、進行につれ治療に必要な薬の種類が増えてきます。

その種類には、腎障害の原因となるもの、危険因子のコントロールもの、腎機能を保護するもの、腎臓の働きを補佐するものなどがあります。
運動療法ですが、腎臓病における運動制限は「軽い運動なら可能」とされています。

かつては「運動は避けるべき」とされてきました。
運動をしないことによるリスク(身体が思うように動かない、寝たきり状態など)もあるので、有酸素運動(ゆるゆる体操やウォーキング程度)であれば、腎臓に負担はかけにくいとされています。

「腎不全保存期」を端的にまとめますと、「食事療法」が基本中の基本!

腎臓病の患者は「現状維持の治療を継続」し、「透析を遅延させる」こと。
これに尽きます。

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