透析効率×時間=透析量」秘められた積算の意味を知ろう!

ここでは透析者の8割方が選択しているとされる血液透析の「透析効率」について取り上げています。

透析者は日常の食事や水分摂取などを介して、尿として排泄することはできないので、次第に体内では毒素やら水分が溜まっていくだけで、尿毒素ができあがってしまいます。

説明上するうえでは、尿毒素=尿毒症性溶質(単に溶質※)と、大きくとらえても差し支えありません。

※尿毒症性溶質≒溶質・・・尿毒症を引き起こす体内から発生する老廃物(尿素窒素、クレアチニン、β2-MG、α1-MG、アルブミンなど)を言います(具体的には後述する「透析効率(K)」についても参照)。

■「透析量」=「透析効率」×「時間」だけは覚えておきたい

「透析量」という言葉は聞いたことはあるでしょうか?
透析者にとって大事な概念でもあり、知っておいて良い用語です。

「① 透析量(Kt)」=「②透析効率(K)」×「③時間(t)」

「透析効率」に「時間」を掛け合わせれば「透析量」が出てくるのです。
このことからどんなことが言えるのかというと掛け算なので、透析効率も高くし「かつ」透析の時間も長くすれば、透析量の増加が見込まれるわけです。

※「K」はクリアランスという意味で、透析においては「ダイアライザーの尿素(※※)を浄化する能力=透析効率」を指します。

※※ダイアライザー(=血液透析器のこと)を通過した血液200ml中の何ml中の溶質(=窒素、クレアチニンなど老廃物や酸・不必要な電解質のこと)が除去されるかという意味です。生体の腎臓であれば、腎臓の排泄能力の大きさになります。
「t」は「時間」を表します。

※※尿素・・・尿素はたんぱく質が分解された最後の代謝産物です。
なお尿素の分子量は60と小さく、細胞膜を自由に通過できたり体液中に均等に分布しているという性質があり、透析効率の指標として使われています(後述する「透析効率(K)」についても参照)。

では「①透析量(Kt)」、「②透析効率(K)」、「③時間(t)」を各々見ていきます。

「透析量」について

① の「 透析量(Kt)」は透析量の増加が見込まれると言いました。
もっともどれだけ「体液が浄化されたのか」「どれだけの体液中の毒素が除去できたのか」という意味になります。

血液透析なので「血液が浄化されたか」「血液中の毒素の除去されたのか」と言うふうに「血液」に着目しがちですが、そうではなくて「体液」とされているのがポイントなのです。

なぜ「体液」なのでしょうか?

透析者は日常の食事や水分摂取などを介して、体内では次第に毒素・水分が溜まっていきます。
尿として排泄されないので、透析前は「尿毒素で汚れた体液」が体内循環している、満たされていると言っても過言ではないわけです。少しずつ尿毒症のような状態になっていくわけです。

なので、本来持っていた生体の腎臓には及びませんが、人工的な、代替的な治療として血液透析をすることで、「尿毒素で汚れた体液」を浄化・除去しているわけです。

説明上「体液」としましたが、より具体的に言えば、体液の一部分である「血漿(けっしょう)」から尿素を抜いています(もとを言えば「細胞内液→間質液→血漿」の順)。

■「透析効率」と「時間」

「透析効率(K)」について

②の「透析効率(K)」は言葉どおりイメージが沸くと思います。

行き着くところは「いかに透析効率を上げるためにはどうしたら良いのか?」ということです。

透析効率といってもいろいろな方法があり、組み合わせもあります。
これまでにも透析に関する研究や調査結果も出ていますが、未解明部分もあります。
また医師や医学会の間での共通認識もあれば、意見の相違もあります。

なので、透析者は複雑な公式や難しい医学用語などを理解することは、医療者でもない限りは意味がありません。せいぜい触りとして、要点だけをつかむだけで良いでしょう。

結論としては、1.ダイアライザー(血液透析器)の性能や透析膜の面積を上げる、2.透析液量(QD)を上げる、3.血液流量(QB)を上げる、ことになります。

1~3をみると、透析者があれこれ言ったところで何か術があるのかというと無いことに気づくでしょう。

ダイアライザーでも器材でも薬剤でも何でもそうですが、透析者の身体にすぐにマッチすれば良いのですが、そう簡単にはいきません。透析者一人ひとりが違います。

試行錯誤しながらも “透析者に似合ったもの”でなければいけません(=生体適合性)
そうしなければ、血圧低下やアナフィラキシー様反応や免疫系への影響といったものが、出てしまうのです。

そのため医師はふだんの血液データやシャントの機能などから総合的に判断して、透析者の一人ひとりに似合ったダイアライザーを選択したり、透析液量や血液流量を変えるなどの指示等を行っているわけです。

透析者はそれらを踏まえて、経緯について説明を受け、分からなければ質問する。そして承諾して治療を受けるようにしましょう(身体に合わないのは、何らかの影響・サインです。医師に相談してください!)

1.ダイアライザー(血液透析器)の性能や透析膜の面積を上げる

透析治療前は「尿毒素で汚れた体液」が体内循環している、満たされていると例えましたが、だんだん蓄積されていけば確実に尿毒症状に未解明な病態に陥っていくのは事実です。

ダイアライザー(血液透析器)はどんな役割をしているのかというと、

ダイアライザー(血液透析器)の中では、汚れた血液中にある老廃物や余分な水分、電解質などが器内にある透析膜を通り抜けて透析液へ移動しています。

透析膜のなかでは、化学的には濾過(ろか)と拡散(かくさん)という反応を利用して老廃物や水分、電解質(カリウムやカルシウム、リンなど)が透析膜を通り抜けて、透析液へ移動しています。

その後は浄化された血液として、また体内へ戻っていくのです。最低限4時間という透析時間ならこの時間内で、これを連続的に繰り返しています。

ところで、血液透析で使うこのダイアライザーは、病院ごとに取り扱うメーカーも種類も、選定方法も違います。しかも透析者一人ひとりよっても、ダイアライザーは違ってきます。

ダイアライザー(血液透析器)は1回決めればそれで終わり!というわけではありません。

実は、透析導入のときは、少々の尿も出ていて残腎機能も活かすという意味では(生体の腎臓+血液透析)という形では、クリアランスも低くて小型なダイアライザーで済んでいました。

しかしながら透析にも慣れてきて、無尿で少々データも悪くなってきたと医師が判断し、そろそろといったときにダイアライザーの変更を行ったはずです。

では、「どんなときにダイアライザーの変更を行うのでしょうか?」

一つ目が「透析膜の種類」や「ダイアライザーのメーカー」を変える場合です。

メーカーはもちろんですが「性能」にも様々あります。
そのなかに「透析膜の種類」を変える方法があります。

例えば、10数年ほど前まではダイアライザーでは「セルロース系膜」を使ったもの多かったのですが、β2-MG(※)といった低分子量蛋白物質の除去を目的とする「合成高分子系膜」が普及してきました。

※β2-MGは、ベータ2ミクログロブリンといいます。長期的に透析することで「透析アミロイドーシス」という慢性合併症にかかりやすいうえに、治療が難しいです。

二つ目が、「ダイアライザーの透析膜の面積を上げる」場合です。

ダイアライザーが大きくなるので、尿毒素などの物質がたくさん除去されることになります(仕組みとしては、中にある中空糸全体が大きくなる(=本数や長さが長くなる)ため、膜面積も大きくなるからです)。

尿毒素といっても様々な物質で構成されています(小分子量物質、中分子量物質、大分子量物質※)があります。

※物質については、以下の通りに分類しておきます。

尿素(分子量:60で小分子)、ビタミンB12(分子量1,355で中分子)
ミオグロビン(分子量:7,500で大分子)、ベータ2ミクログロブリン(分子量:11,600で大分子)、α1-MG(分子量:33,000で大分子)アルブミン(分子量:66,000で大分子)

以上の分類から見ると、小⇒中⇒大分子量物質になってくれば、それだけ除去することが難しくなり、身体の中で蓄積しやすくなるわけです。

分子量の大きいもの(=大分子量物質)には、透析アミロイドーシスの発症になるベータ2ミクログロブリン、原因不明で筋萎縮等の発症になるα1-MGなどがあり、これらは「除去すべき」です。

片やアルブミンは、身体に必要な栄養源であるたんぱく質でありながら、その後は尿毒素結合型たんぱく質となることから(除去ではなくグレーな存在なので、)「漏出すべき」なのです。

「腹面積の大きなダイアライザーを使おう」「大きな尿毒素を抜きたいときは除去性能が高い膜を選ぶ・・・」。
このように医師は、性能やら腹面積等々から試行錯誤しながらも透析者に似合ったダイアライザー選びを行っているのです。

いろいろと聞き慣れないような物質やら用語が出てきましたが、透析者ができることは、「現在、自分は何というダイアライザーを使っているか?」を知ることはできます。

透析の始まりで終わりでも、嫌でも見ることはできるのですから。
「ダイアライザー 性能」というキーワードで、メーカーのカタログで確認すると良いですね。

それから慢性合併症である「透析アミロイドーシス」。それからたんぱく質である「アルブミン」は頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

2.透析液流量(QD)を上げる

透析液は、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムんど)やブドウ糖といったものが入っており、血液とは違う濃度で入っています。その役割は、血液中の老廃物の除去や電解質濃度の調節・酸・アルカリのバランスの調整を行うことにあります。

通常1回の透析で使う透析液は120~150Lほど使用され、「ダイアライザー(血液透析器)の中では、汚れた血液中の老廃物や、余分な水分、電解質が透析膜を通り抜けて「透析液」へ移動してい」きます。

この透析液で尿毒素を効率よく除去しつつ、乱れた体液の成分を修正しているわけです。

「透析液流量(QD)を上げる」とはどういうことか?というと、これは透析液を回す速度のことを言います。日本における透析液流量は一般的には400~500mL/分です。

しかしながら、より早く速度を速めれば一層透析効率が良くなるように思えますが、500mL/分超でもさほど変わらないという結果が出ています。

3.血液流量(QB)を上げる

血液流量(QB)は、血液を回す速度のことを言います。日本における血液流量は、200~220mL/分が一般的です。

「血液流量(QB)を上げる」とは、血液を多く流し速度を速めること。
しかしこちらも、一定程度になると透析効率は頭打ちになってしまいます。

また、透析者の9割方は「自己血管内シャント」を作っているわけですが、血流量を上げることは透析者の心臓への負担にもつながります。速くなるのですから。

クリアランスつまり「透析効率(K)」から見ると、いかに早く「血液と透析液とを多く触れさせられるか」がポイントになります。

とは言え、速度のほうも「変わらない」「頭打ち」とあるように、効率を追求するがうえに実は無駄にある、手に入らないものが出てきます。

そこで、実際には透析液流量(QD):血液流量(QB)の比率は、2:1のバランスで設定されているの一般的です。

「t(時間)」について

①の「透析効率(K)」は、ダイアライザーの性能やら透析膜の面積を上げるというのは医師の判断によるので、透析者には何もできません。

しかし、②「時間(t)」のほうは、透析者が透析時間の確保に対する意識、延長することへの努力次第では、変えることができる部分です(もちろん病院や医療制度の壁も存在します)。

なぜなら、「透析する時間」が長い方が良いことが分かっているからです。

長時間透析のメリットを挙げると、
・時間あたりの除水量が少ない(低血圧リスク減)
・生命予後が良好
・尿素だけではなく、ベータ2ミクログロブリンの除去量の増加に期待
・P(リン)の吸着薬の服薬量が減る
・栄養状態が良くなる

などがあります。

「透析量」=「透析効率」×「時間」の積算。ならば、透析効率を上げたら短時間透析できるのでは(「時間を短くできるのでは?「長くしなくて済む!」)と、透析者ならそう考えたことがあるのではないでしょうか。

「透析量」について触れましたが、血液透析は体液の一部分である「血漿(けっしょう)」から尿素を抜いています。もとを言えば「細胞内液→間質液→血漿」と言う風に細胞内の尿毒素も抜ける仕組みになっています。

抜く・浄化されるのには時間がかかるのです。
「短時間透析では、細胞内の尿毒素まで抜けきれない、浄化されない」のです。

そのため尿毒素を十分に抜く、浄化させるためには、透析効率だけを高くしても時間は短くしてはいけないわけです。

【まとめ】

治療歴の長い透析者や医師、看護師が言うには、「昔は酢酸透析液を使っていた」「近年ダイアライザー(血液透析器)の性能が改善、向上してきた」と少しずつ透析環境が良くなってきていることを実感しているようです。

透析医療の世界においても、医療技術や薬の効能などは少しずつ進化・発展しているのですね。

冒頭にあげた「透析量(Kt)」=「透析効率(K)」×「時間(t)」はよく知られて式であり、透析者は知っておくべきです。

医療技術や薬の効能が進化、発展しているとは言え、口揃えて言うのは「時間(t)」の部分で、「時短を考えてはいけない」「それでも透析時間は足りない」ということです。24時間フルに働いている生体の腎臓からみても明らかなのですから。

よって、透析者は「時間(t)」の部分、透析時間をできるだけ延ばすといった努力が必要です。

どうしても青壮年期で透析を始めた方であると「まだ身体は元気だ」「体力はある」「まだ慢性合併症にかかっていない」などと考えがちです。

また仕事上「何としても働いておきたい(=給料が欲しい・確保したい)」ために、どうしても透析時間を犠牲にしてしまう傾向にあります。

理解はできます。会社員、自営業していればそう感じるでしょう。
私もそうでした。透析したところで、給料も売り上げも発生するわけではないですから。

ただ、時間については何度でも考えて欲しいし、透析時間を作る、延ばすことは考えて欲しいのです。

・「慢性合併症について見たり、聞いたりしたことありますか?」
・「長生きしたいですか?」
そして、
・「透析効率」のことは、医師の判断に委ねましょう。分からなければ、質問しましょう。

透析時間を最低限確保する(4時間なら4時間透析)どころか、30分でも1時間でも長く透析する時間に充てることが、結果的には、除水量が少ない(低血圧リスク減)とか合併症発症の遅延、生命予後に影響するということを知っておきましょう。

時間は長時間透析(5時間以上、オーバーナイト透析、在宅透析)といった方法もありますし、頻回透析(例:3時間×7日=21時間/週は確保)というやり方もあります。

何か時間を確保する手立てを見つけてもらいたいと思います。

透析効率とは

「透析時間の延長はできますか?」そのひと声からはじまる。

透析時間の延長には、仕事やプライベートの見直しが必要です。30分や1時間ですが「塵も積もれば山となる」となり、生命予後の改善、血圧の正常化等の効果に繋がります。透析時間を延長するにも病院側の諸事情もあるので医師・看護師さんに相談するとよいでしょう。
透析効率とは

透析時間の決め方。えっ!4時間透析は【最低ライン】なの?

透析時間の決め方、4時間が「当たり前」でしたか?いいえ、それは「最低ライン」でしかありません!30分でもいい、生命予後、合併症リスク抑止のため長くしてください。透析時間の決め方。仕事やプライベート等から総合的に考え、時間の確保を図っていきましょう。
透析効率とは

血液透析の【効率】をあげるためにはどうすればいい!?

血液透析の効率をあげるためには?「透析量(Kt)」=「透析効率(K)」×「時間(t)」の図式から、ダイアライザーの性能や透析液流量などそう自分では決められません。透析効率をあげるためにも、日ごろから「シャント管理を行う」こともその一つになります。