このページでは「シャントの自己管理」についてみていきます。
シャントは、血液透析をするためにはなくてはならない大切なものです。
透析導入への準備→シャント手術→シャント運動(血管を広く・太く発達させる)→透析導入→透析(日々、シャント管理)という流れになります。
「シャント手術」について。
「腎不全保存期(慢性腎不全ステージ4→5)」である頃には、徐々に尿毒症の症状も強くなってきて、ステージ5に至っては末期腎不全に陥ります。
医師から「そろそろ透析導入への準備をしてください」と説明を受けたとき、シャント(≒バスキュラーアクセス)の手術を受けることになります。
シャントとは何なのか、まとめておきます。
①大概、利き腕とは逆の腕に「シャント」を作ることになります。
⇒なぜ腕なのかというと、腕の血管を太く発達させることができること、緊急透析をしなければならないといった場合があり、「非常時でも即対応できるということ」が挙げられます。
なお、利き腕でもシャントが作ることができなくなった場合など、足の付け根や胸にシャントを作る人もいます(緊急、一時的に首にカテーテル(=管)を入れるのもあり)。
②「動脈と静脈をバイパスさせる事により静脈を動脈化させる」手術です。
⇒血液透析では、器械を通して体内にある毒素の濾過や水分除去を行っていきます。
1分間に200mlくらいの血液流量が必要とされます(献血よりも早い速度です)。
200mlもの血液流量、透析の効率性、動脈と静脈各々のメリット・デメリット(本来ある動脈では透析するのには血流量が多すぎ、静脈では十分な血液量が無い)を補完するためには、もっとも適したものです。
③腕であると、看護師等穿刺・針抜がしやすい、透析者も管理しやすい
⇒注射するのと同じように、穿刺・針抜しやすく、透析者は腕でできる「血圧管理」「シャント管理」だけに集中し、管理することができるとされています。
シャント管理でいうと、日本では「自己血管内シャント」で作ることが多く、感染に対して強いと言われています。
手術後はすぐ透析ができるわけではなく、通常4時間×3日もの透析に耐えうるだけの血管を作っておかなければなりません。「シャント運動」を行って「血管を広く・太く」発達させておかなければならないのです。ハンドグリップやテニスボールなどで手指に適度な刺激を与えることでできます。
透析を行っていても、シャント運動は行っていたほうが良いです。
手術後ですが、シャントの手術跡を気にする透析者が多く、女性に至っては多いようです。気になるようなら、サポーターで覆ったり、長袖の衣服で調整したりすると良いでしょう。
「シャントの自己管理」について。
シャントは長年にわたって使うものですが、耐用年数や寿命というものがあります。血管が細くなったり、拍動音が弱くなったりということが見られます。(もし、今あるシャントは使えなくなれば、反対の利き腕にシャントを作ることもあります。)
透析者にとって「いかにシャントを長期間にわたって使えるようにしていくか!?」が、毎日の宿題でもあり課題といっても言えるでしょう。
そのためには、毎日血圧測定をするのと同じように、シャントあたりを手で触れてみて、拍動を触知すること。朝昼晩、いつでもどこでもできます。
これは「習慣化」はできますね。
更には「シャント音を聴診器で聞く」ことも有効です。“シャント音”とか“スリル”と呼ばれますが、聞いてみると音に特徴があります。
正常なシャント音は「低音で連続的な音」をしているのが分かります(もちろん異音の場合もあり、後述します)。
聴診器はそう高くなくても良いですから、一つAmazonや楽天などで購入し、聞いてみることをお勧めします。
透析者にとってシャントは「命の手綱」と言われるほど非常にシビアなものです。
「シャントのトラブル」も以外と起こりやすいものです。
トラブルの原因にはいろいろありますが、例えば血圧が低かったり、急速に水分を除去したり、重いもの乗せただけでも、血管に影響を与えています。
主なトラブルには、シャント吻合部や接続部付近で起きる「狭窄(きょうさく)」と「閉塞(へいそく)」があります。
「狭窄」の場合、血管の一部が細くなっている状態で、シャントから必要な血液量が得られなくなります。
笛吹き音、「断続的な音や風が吹いたようなヒューヒュー音」の異常な音がします。
もし、早期発見できれば点滴やPTA(=血管拡張手術)でほぼ済みます。
「閉塞」は血管が閉じてしまっているので、透析ができません。早急なシャント再建のための大手術を行わなければなりません。
体調面(異常に血圧が低い状態が続くなど)やシャント音がおかしい、シャント部に違和感(血管が硬い、圧痛がある)などを感じたら、非透析日、夜中であろうが翌日の透析で!ということなく、すぐに病院へ連絡し指示を仰ぎましょう。
トラブルには「早期発見」が大事です。
早く連絡したことで「狭窄」で留まり、点滴やPTA(血管拡張手術)で済んだということは、よくあります。
シャントを長持ちさせるための注意点についてもみていきましょう。
・衝撃や腕のシャント側の鷲掴み、シャント側の腕で重いもの(バッグや買い物袋)を持つということは避けてください。
・運動(スポーツ)する際は、野球やソフトボール、バレーボール、バスケット等いった球技、格闘技などで腕をぶつけたり、シャントを潰してしまうことになるため、避けましょう。
⇒運動はマラソンやサッカーなどのような激しい運動は避け、「有酸素運動(散歩やラジオ体操など)」を心がけてください。
・透析で穿刺した後の入浴やシャワーは避けましょう。
⇒穿刺したところから感染が起こり(=感染症)、シャントが閉塞することがあります。
⇒入浴・シャワーの際、穿刺部分は優しく洗いましょう。
・長時間カットバンをつけっぱなしにしたり、針を穿刺した付近に爪などでひっかけたことで、そこが感染元になることがあります。
⇒カットバンも新しくする、爪は短くしておくといったこともしておきましょう。
なお、「感染」には肺炎やインフルエンザ、院内感染、疥癬、B型・C型肝炎等もあります。肺炎やインフルエンザのように、発熱を生じて脱水をきたしシャント閉塞することがあります。
・低血圧によるシャント閉塞も十分に起こりえます。
⇒血圧が低い状態は、自己管理が上手く行かなくて体重が増え過ぎ、除水量が多いのが一つ。ドライウエイト(基礎体重)が低過ぎるのも原因。
⇒ふだんから血圧が低めの透析者方は、透析後血圧が下がり狭窄・閉塞しやすいので注意しましょう。
⇒透析間の体重の増え幅を体重の3~5%に抑えるようにし、ドライウエイト(基礎体重)も適正なものにするようにしましょう。
最後に余談にはなりますが、「透析終了後は(針抜部分は)止血バンドで留めたほうがよいか、指で押さえたほうが良いのか?」という声があります。
「シャントの耐用年数や寿命が変わる?変わらない?」とか「止血に時間短縮になるのか否か?」とかというのがと透析者間であるようです。
実のところ透析者個人、病院側の方針・指導によるところあり、どちらが正しいかは一概には言えません。
ただ、止血バンドで留めた場合、そのまま就寝してしまった場合、長時間シャント側の腕を束縛、圧迫していることになるので、早めに外すようにしましょう。