透析しながら輝いた芸能人|渡辺徹の生き方に学ぶ

2019年2月28日

透析しながら輝いた芸能人|渡辺徹の生き方に学ぶ

渡辺徹

透析している有名人・芸能人って、気になりますか?

芸能人の結婚・離婚から入院・手術まで、世間が気にするネタは尽きないものですね。私はどちらかというと芸能ニュースには疎いほうですが——それでも、透析をしながら第一線で活躍し続けた方々のことは、同じ透析患者として他人事には思えません。

  • 透析を経験しながら、あるいは腎移植を経てTV・舞台に復帰した有名人・芸能人は確かに存在します。
  • 芸能界は華やかに見えて、実態は不規則な仕事・食事・睡眠の連続です。そのしわ寄せは確実に腎臓へ向かいます。
  • もともと腎臓が弱い体質の方もいます。健康番組に出ていても「大丈夫?」と余計に心配してしまうのは、同じ患者だからこその目線かもしれません。

参照:「人工透析予備軍とは?気づかずに進行する慢性腎臓病に注意!



透析をしながら生きてきた芸能人の姿から、何かヒントを受け取れるはずです。

透析している有名人・芸能人って気になりますか?

今はネットで何でも調べられる時代ですが、約20年前——私が透析を導入したころは、情報源といえばTV・ラジオ・新聞・雑誌がせいぜいでした。

導入前後、医師や看護師から「透析はこれからずっと必要なもの」と説明を受けながら、私は同時に転職活動もしていました。「仕事をしながら透析するにはどうすればいいか」を、担当医に相談していたのです。

参照:「透析で仕事ができない?まずは疑義・問題点から洗い出して!

そのとき担当医がこう言いました。

「会社員だけが透析患者じゃないですよ。自営業の方も、お店を経営している個人事業主も、透析しながら続けている人はいます。実はね、芸能人や元力士の親方だっているんですよ」

元力士というのは、あの体格や食事量を想像すれば「なるほど」と思えました。でも芸能人と聞いたときは、「えっ、そうなの」と少し驚きながらも、当時はさらっと流してしまいました。

今になって思えば——芸能界が腎臓に厳しい環境であることは、透析患者の目線で分解するとよくわかります。

芸能人が腎臓に負担をかけやすい主な要因
要因具体的な内容
不規則な仕事収録・ロケ・稽古・営業など、スケジュールが読めない
偏った食生活食レポ・ロケ飯・業界の食事づきあいで食事内容が偏りがち
慢性的な睡眠不足移動・深夜収録・舞台の連投などで睡眠が削られる
疲労・ストレスの蓄積視聴率・評価・人間関係など、精神的プレッシャーが大きい
健康診断の後回し多忙を理由に定期検査を受けられないケースが多い

こうした要因が重なると、気づかないうちに腎機能が低下し、透析が必要になる「慢性腎不全」へとつながります。透析に至る直前には、極度の疲労・貧血・吐き気・食欲不振といった症状が出てきます。私自身も経験しましたが、これは芸能人であっても、元力士であっても、同じ体のサインです。

参照:「透析へ至る原因疾患は何?今すぐにでも生活改善を始めて

「芸能人もふつうの人間なんだ」——当たり前のことですが、透析患者の目で見ると、その言葉がずっとリアルに響きます。

透析も組み入れ。仕事は減らしても「芸能魂」!

透析している芸能人って気になりますか?[太陽にほえろ・風雲たけし城]

私が透析している芸能人に関心を持つのは、「最近テレビで見かけないな」という話ではありません。「透析の4時間を、どうやって過ごしているんだろう?」という点なんです。

腎移植でもしない限り、透析は週3回・1回あたり4時間が基本。必然的に仕事量は絞られますが——それでも「芸能魂」と呼ぶしかない姿勢で活動を続けた方々がいます。

渡辺徹さん

俳優・渡辺徹さんは1981年、人気刑事ドラマ「太陽にほえろ!」でラガー刑事(竹本淳二)役としてデビューし、一躍人気を集めました。高校時代のラグビー経験からついた「ラガー」の愛称は、明るくやんちゃで正義感あふれるキャラクターとぴったりでした——その素顔の渡辺さんとも重なる部分が大きかったように思います。

太陽にほえろ!1986+PART1と2 DVD-BOXがありました。ラガーはどちらにも入っていますが、2が主ですかね。

太陽にほえろ!1986+PART1 DVD-BOX

太陽にほえろ!1986+PART2 DVD-BOX



伝説のテレビドラマシリーズ「太陽にほえろ!」DVD化計画!

スニーカーの後任として、若さあふれる最年少刑事ラガー刑事の登場!ボス不在の中、原点に立ち返り「刑事の成長ドラマ」を描いた1981年後半の放映作品26話。



出典:Amazon、楽天

ドラマの放送中、子どもだった私でも渡辺さんの体型の変化は分かりました。ロケ先での「大食い」エピソードも多かったのはそのためでしょう。

30歳のとき急性糖尿病と診断され、以来、食生活の改善やダイエットに取り組みましたが、糖尿病の合併症はじわじわと進行し、慢性腎不全から人工透析が必要な状態になりました。所属事務所も「透析を受けているのは事実」と認め、活動の形を変えながらも前に進み続けます。

透析のスケジュールに合わせて時間調整のしやすいナレーターやラジオ番組のパーソナリティを中心に活躍されていたそうです。

透析をしながら台本を読み込む時間に充てたり、頭の中で番組の流れをイメージする時間に使ったり——私なりに想像しています。私自身も透析導入直後の4時間を、転職のための勉強や資格取得に充てていたので、その感覚はよく分かります。

不均衡症候群(透析開始初期に起こる体のだるさ・頭痛などの症状)でつらかった時期があっても、「透析時間を無駄にしない」という姿勢は今も変わっていません。

渡辺さんは2021年4月下旬に大動脈弁狭窄症(心臓の弁が硬くなる病気)の手術を受けて退院後、その年の9月には舞台で復帰。コロナ禍での自身の感染も乗り越えながら活動を続け、2022年2月のブログでは「夫婦でコロナに感染しました」「俺は咳がまだ止まらない」と率直に書いていました。

私が思うに——妻・榊原郁恵さんとの35年以上のおしどり夫婦生活、2021年の芸能生活40周年・還暦という節目に息子の渡辺裕太さんも交えた3人での初共演——これだけ大事な瞬間を積み重ねてきたことが、何より素晴らしかったのだと思います。

渡辺徹さんは2022年11月28日午後9時1分、敗血症のため61歳で亡くなりました。11月20日の発熱・腹痛をきっかけに細菌性胃腸炎と診断されて入院し、その後敗血症へと進行しました。若すぎる別れです。

謹んでお悔やみ申し上げます。



ゴールデン☆ベスト 渡辺徹~シングル・コレクション~ [ 渡辺徹 ]

梅宮辰夫さん

俳優の梅宮辰夫さんといえば、娘さんにモデル・タレントの梅宮アンナさんがいます。深作欣二監督の「仁義なき戦い」を筆頭に、「不良番長シリーズ」「前略おふくろ様」「スクール☆ウォーズ」「はぐれ刑事純情派」「特命係長 只野仁」など、日本映画・ドラマ史に残る作品に次々と出演してきました。

また美食家としても「くいしん坊!万才」の6代目リポーターを務め、料理家・事業家としても知られていました。

梅宮さんは生涯に6度のがん手術を経験されました。2019年1月には尿管がん(左腎盂尿管がん)の手術で左の腎臓を摘出。その後、週3回・4時間の人工透析を始めたことをご自身で告白されています。

病名をこれまで伏せてきた理由も、梅宮さんらしい言葉でした。

  • 「病名が知れると、はつらつとした役柄を演じにくくなる」
  • 「ロケ中に倒れることを心配され、キャスティングから外される」

会社員である私には完全には分からない、芸能界ならではの葛藤です。

兄貴分として慕っていた梅沢富美男さんは、「本当に一番尊敬する俳優さん」と語り、梅宮さんの口癖をこう伝えていました。

「先輩はいつも、具合が悪いとか休んでますとか病気で戦っていますとは言いたくない、と言っていた」「役者というのは、キャスティングに必ず名前が出るようにしたいから」

透析をしながらもカメラの前に立ち続けた姿勢——「仕事のオファーがあるうちは仕事がしたい」という言葉が、今も胸に刺さります。

仁義なき戦い

出演:菅原文太, 田中邦衛, 金子信雄, 松方弘樹, 梅宮辰夫

監督:深作欣二

出典:Amazon、楽天



不良役者 梅宮辰夫が語る伝説の銀幕俳優破天荒譚

2019年12月に出版された「不良役者~梅宮辰夫が語る伝説の銀幕俳優破天荒譚」(双葉社刊)。週刊誌連載をまとめたこの本の「あとがき」に、梅宮さんはこう書いていました。

「映画ファンに、生きているうちに別れのあいさつくらいしておいたほうがいいだろうな。死んだら、何も言えないからさ。じゃあな、あばよ」

そして同年2019年12月12日、永眠。81歳でした。長年スターであり続けた、本当に素晴らしい人生でした。ゆっくり休んでください。ありがとうございました。

グレード義太夫さん

グレード義太夫さんは、私には先入観がありました——が、透析をしながら書籍執筆やバンド活動など多方面で活動を続けていたことを知り、「透析時間の使い方」という点でもとても参考になる方です。

透析を経験した後、腎移植を経て芸能界に復帰した方もいます。電撃ネットワーク・南部虎弾さん、演歌歌手の松原のぶえさん、歌手のピコさんがその代表です。

参照:「透析してる芸能人グレード義太夫さん|南部虎弾さんら腎移植で復帰

まとめにかえて

透析をしながらもTV・ラジオ・舞台で活躍し続けた方々の話を、20年以上透析をしてきた私の目線でまとめてみました。

彼らが見せてくれたのは「病気があっても仕事はできる」という現実です。仕事の形を変えながら、透析時間を有効に使いながら、「芸能魂」というべき姿勢で前に進み続けた——その生き方は、透析患者である私たちにとっても、腎臓病を心配している方にとっても、大きな励みになるはずです。

透析は確かに週3回、時間を取られます。でも、その時間をどう使うかは自分次第。渡辺徹さんが台本を読み込んだように、梅宮辰夫さんが「キャスティングに名前が出るように」と踏ん張ったように——透析は人生の終わりではなく、新しい生き方のはじまりでもあるのだと、私は思っています。