2018年2月23日

更新日: 2026年9月10日

ここでは、透析を受ける人の側から見た、血液透析(HD)※の手順や流れについて、できるだけわかりやすく説明していきます。※血液透析(Hemodialysis:略称HD)
はじめて血液透析を受ける方はもちろん、すでに透析に慣れた方にとっても「あらためて確認する」という意味でお役に立てると思います。
血液透析(HD)の手順・流れは、院内ルールがあるため病院によって微妙に違うことがあります。
たとえば、あなたが出張先や旅行先で臨時透析を受けることになるとします。予約している「臨時透析の病院」では、当然ながらかかりつけ病院とは対応が違うことに戸惑いや違和感を感じる場面も出てきます。携帯電話の持ち込み禁止、テレビの視聴方法の違い……私もそうでしたので、その気持ちはよくわかります。
「郷に入っては郷に従え(ごうにいってはごうにしたがえ)」
臨時透析や旅行透析における基本姿勢は、これがいちばん無難です。分からないことや疑問点は医師や看護師さんに聞けばよいですし、透析にかかる医療費の会計や交通案内などは医療事務の方に聞けば、まずは解決するはずです。
参照:
「旅行・出張先で臨時透析。病院を探す方法・段取り教えます!」
「旅行透析。東京は観光・病院に交通も充実!でも地方だったら」
「透析前準備」「透析前」「透析中(透析時)」「透析終了」「退室及び帰宅」の各場面とポイントをまとめましたので、順を追って確認していきましょう。
・透析前…ドライウエイト(DW=基礎体重)の増減は?
・透析中…些細なことでもOK。体調などに変化は無かったか?医師の回診中に相談しよう。
…時間の使い方は透析を受ける人しだい。透析中の血圧低下には注意!
・透析後…ドライウエイトは適切か?「透析疲れ」を起こす原因にもなる。
…帰りの車の運転等には注意。透析後の入浴やシャワーは避けること。
| 場面 | 主なポイント |
|---|---|
| 1. 透析前の準備 | 体重測定、トイレ、便の色チェック、ドライウエイト確認 |
| 2. 透析開始前 | 体調確認、血圧測定、穿刺(せんし) |
| 3. 透析中(透析時) | 定期的な血圧測定、医師の回診、栄養・運動指導 |
| 4. 透析終了 | 抜針・止血、透析後の体重測定 |
| 5. 退室〜帰宅 | 血圧管理、運転注意、入浴・シャワーは避ける |

・透析前に体重測定
午前透析の方は朝食、午後透析の方は昼食、夜間透析の方は夜食を摂ったうえで来院するケースがほとんどです。中1日ないし中2日分の体重は増えているはずです。
→いつも着用している同じくらいの重さの衣服(パジャマ等)で体重を測ってください。
夏から冬、冬から夏へと季節が変わるとき、衣服の重さが変わります。前の衣服と比べて何百グラム増減しているのかを把握し、その増減や誤差の数値は必ず看護師さんなどに申告してください。
もし申告なしにドライウエイト(DW=基礎体重)のままで除水量を設定してしまうと、その誤差の分だけ体内の水分が過不足になり、血圧の変動や体調不良につながることがあります。
・事前にトイレに行く
→透析中でも排尿・排便は可能ですが、透析前にトイレを済ませておくことが望ましいです。
→排便のタイミングには注意が必要です。排便時は一時的に血圧が低下しやすくなります。透析直前に排便すると血圧が戻らないまま透析に入ることになるため、様子を見ながらトイレに行くようにしましょう。
・排便の際は便の色に注意
→透析を受ける人は、水分制限や薬の副作用により便秘になりやすい傾向があります。
→赤い便(血便)は、肛門周囲の出血(痔・切れ痔など)のほか、大腸の炎症・ポリープ・がんなどが原因として考えられます。
→黒い便(タール便)は、食道・胃・十二指腸など消化管の上流での出血を示すことが多く、潰瘍(かいよう)・炎症・がんの可能性があります。気になる便の色が続く場合は、早めに医師に相談してください。
簡易的な便潜血検査は年1〜2回行われています。また、定期的な大腸内視鏡検査(大腸カメラ)も受けるようにしましょう。透析患者は消化管出血のリスクが一般の方より高いと言われています。
・月次ごとのドライウエイト(DW)の確認・設定
→1か月ごとに、透析前に胸部レントゲン(心胸比=心臓の大きさを確認)や心電図検査を行います。これらの結果をもとに、ドライウエイトの見直しが行われます。
ドライウエイトは一度設定したら終わりではありません。体格の変化(筋肉量・脂肪量の増減)や季節による浮腫みの変化などによって、定期的に調整が必要です。医師や看護師とこまめにコミュニケーションを取りながら最適な値を探っていきましょう。
ドライウエイト(DW)についてはこちら↓
参照:「ドライウエイトって何?ズバリ「透析後の基礎体重」のこと。」
透析ベッドに横になると、看護師・臨床工学技師さんから以下のような確認と機器の設定が行われます。
・中1日ないし中2日での体調変化の確認
→体重が増えた原因(食事・水分の摂りすぎ等)はあるか? 自己管理の状況(血圧の上下、薬の飲み具合、シャントの音)、体調の変化(些細な風邪や発熱、薬の副作用など)はなかったか、確認されます。
必要に応じて医師に相談してください。かかりつけ以外の病院での受診・投薬があった場合も必ず報告しましょう。薬の種類によっては、透析との相性や除去されやすい薬剤など、考慮が必要なものがあります。
・透析中の食事・水分の加算申告
→透析中に食事や間食をする場合、水分を摂る場合は必ず事前に申告してください。食べる量・飲む量を除水目標量に加算する必要があります。申告なしに食事・水分を摂ると、除水が追いつかず体重が増えた状態で透析が終わることになり、心臓や血管への負担が増します。
・透析開始前の血圧測定
→シャントとは反対側の腕で血圧測定を行います。腕は心臓の位置と同じくらいの高さに保ってください。シャント側の腕で血圧を測ると、シャントを傷める原因になります。
・穿刺(せんし)&透析開始
→穿刺前にシャント部分を消毒します。消毒後は手で触れないでください。
その後、注射針をシャント側の腕に2か所刺して(脱血・返血)、透析を開始します。
穿刺時に強い痛みを感じやすい方は、あらかじめ透析前に「ペンレステープ」などの局所麻酔テープを貼っておくことで痛みを和らげることができます。担当の看護師さんに相談してみてください。
→穿刺が完了したら、透析条件(目標除水量・除水速度・透析時間・終了時刻・食事量の加算など)を確認し、透析装置に設定されます。
※シャントのセルフチェックについて
透析患者にとってシャントは「命綱」とも言えるアクセスです。毎日、指でシャントに触れてスリル(振動・ザーザーという感覚)が感じられるかを確認する習慣をつけましょう。スリルが弱い・感じられないときは狭窄や閉塞のサインである可能性があるため、すぐに病院へ連絡してください。

・透析治療中の過ごし方
→透析中は基本的にベッドから自由に動くことはできませんが、TVを観る、ラジオを聴く、読書する、眠るなど、ほかの透析患者さんやスタッフの業務に支障を与えない範囲で自由に過ごすことができます。
→食事や間食も可能です(病院によっては透析食・お弁当を提供しているところもあります)。
→トイレへ行くことも可能です(スタッフさんに声をかけてから移動してください)。
・透析中の血圧測定
→透析中は一定の時間間隔で血圧と脈拍を確認します。スタッフさんが手動で測る場合もあれば、透析装置が自動で測定する場合もあり、病院によって対応が異なります。
→血圧測定はシャントとは反対側の腕で行います。心臓の位置と同じくらいの高さを保ってください。
→一般的に、透析が進むにつれて次第に血圧が低下しやすくなります。特に食事中や食後は、消化のために血液・神経の働きが胃腸に集中するため、血圧低下が起きやすくなります。
→気分が優れなくなったり、めまいや冷や汗を感じたりしたときは、無理をせずすぐにスタッフさんを呼んでください。その時々の症状に応じた処置が行われます。
・血圧低下(透析低血圧)のサインを知っておく
透析中に血圧が急激に低下することを「透析低血圧」と呼びます。主な症状としては、めまい・立ちくらみ・冷や汗・吐き気・こむら返りなどがあります。透析低血圧が繰り返し起きると、シャントの閉塞リスクも高まります。
| 透析低血圧のサイン | 主な原因 |
|---|---|
| めまい・立ちくらみ | 急激な除水、除水量が多すぎる |
| こむら返り(足がつる) | 急激な血液量の低下 |
| 吐き気・冷や汗 | 食後の血流再分配+除水の重なり |
| シャントのスリル低下 | 循環血液量の低下による血流減少 |
・医師による回診
→透析中に医師による診察(回診)があります。ドライウエイトや血圧管理、日常生活(仕事中・家事中など)や透析前後の体調変化について確認されます。
→月1回の定期検査(レントゲン・心電図)や週1回の血液検査データの結果をもとに、今後の治療方針についての説明もあります。
何か分からないことや気になる症状・疑問点があれば、遠慮なくその場で相談しましょう。
(例:「リン吸着剤を飲み始めてから便秘気味で調子が悪いです。薬を変えることはできますか?」)
(例:「昨日から喉がイガイガして痰が絡みます。漢方薬のほうが効く気がするのですが、どうしたらよいですか?」)
・栄養指導・運動指導
→病院によっては、透析時間を活用して個人または集団で栄養指導や運動指導を実施しているところがあります。
透析食を提供している病院では、食事の塩分量・リン含有量・カリウム量などの栄養バランスの説明を行ったり、献立表や食の工夫を凝らした印刷物を配布したりしています。また最近では、病院のWebサイトやSNSでの情報発信も積極的に行われています。
透析患者の食事管理の基本(2024年現在の指針):
| 管理項目 | 目安の考え方 |
|---|---|
| 塩分 | 1日6g未満(体重増加・血圧管理のため) |
| 水分 | 透析間の体重増加が中2日でドライウエイトの5%以内を目安に |
| カリウム | 1日2,000mg以下(高カリウム血症・不整脈予防) |
| リン | 1日800〜1,000mg以下(骨・血管石灰化予防) |
| たんぱく質 | 透析患者は制限緩和。適切量の確保が重要 |
※目安の数値は体格・病状によって個人差があります。必ず担当医・管理栄養士の指導に従ってください。
・抜針(ばっしん)
→透析が終了すると針を抜きます(抜針)。抜いた箇所をしっかりと押さえてください。
止血には10分ほどかかります。出血が止まったことを確認してから消毒し、ガーゼや脱脂綿を当てます。
→止血バンドで圧迫する方法もありますが、病院によっては禁止しているところがあります(手動での止血でも、出血が止まった確認は必ず行ってください)。
→ガーゼや脱脂綿、絆創膏(ばんそうこう)は、衛生面から長時間貼ったままにしないでください。帰宅後は適切なタイミングで取り外しましょう。
→脱脂綿や絆創膏は常に携帯し、多めにストックしておきましょう。万が一、帰宅後に出血が再発した場合にすぐ対処できます。
・透析終了後の体重測定
→透析後の体重測定を必ず行い、ドライウエイト(DW=基礎体重)の値になっているかを確認してください。
→ドライウエイトの値より低い場合は「水分の引きすぎ」(除水過剰)の状態です。血圧が下がりやすくなり、めまい・立ちくらみ・こむら返りなどの症状が出ることがあります(=透析低血圧)。
→逆にドライウエイトより高い場合は水分が残っている状態(除水不足)であり、心臓や血圧への負担が続くことになります。どちらの場合もスタッフさんや医師に報告してください。
※透析低血圧について「低血圧でシャント閉塞!再手術も。狭窄ともに徴候を知ろう。」を参照。

透析は体に大きな負担がかかる治療です。「透析疲れ」になることも多く、帰宅後はゆっくり休むことが大切です。
→除水量が多かった日は、体内の血管にも負担がかかっており、血圧が下がりやすい状態が続きます。帰宅後も慌てず、ゆっくりと動くことを心がけてください。
→車で通院している方は、運転には十分注意してください!
透析後とはいえ、血圧が低い状態が続いている場合があります。運転中に気分が悪くなったり、ふらつきを感じたりした場合は、いったん安全な場所に車を停め、血圧が安定するまで休んでから運転を再開してください。
→帰宅時や自宅での「起立性低血圧」にも注意してください。急に立ち上がったときなどに血圧が急低下し、シャントの血流低下・狭窄・閉塞につながるリスクがあります。
→帰宅後や自宅で血圧低下、シャントのスリル低下・狭窄・閉塞の予兆など、気になるトラブルが起きたらすぐに病院へ連絡してください。早期発見・早期処置が重要です。
→透析後の入浴やシャワーは避けましょう(穿刺部分からの細菌感染を防ぐためです)。翌日以降、穿刺跡がしっかり閉じてから入浴してください。
・透析後に気をつけたい帰宅時のチェックリスト
| 確認事項 | ポイント |
|---|---|
| 透析後の体重 | ドライウエイトの値になっているか |
| 血圧 | 低すぎる場合は無理に動かない |
| シャントのスリル | 振動・音が感じられるか手で確認 |
| 穿刺部位の出血 | 帰宅後も再出血がないか確認 |
| 入浴・シャワー | 当日は避ける(感染リスク) |
| 車の運転 | 体調・血圧が安定してから |
参考:
「透析を受ける人の「起立性低血圧」もまた透析関連低血圧の一つです!」
「低血圧でシャント閉塞!再手術も。狭窄ともに徴候を知ろう。」
今回は円滑な血液透析を受けるために、「血液透析の手順・流れ」を時系列に整理してみました。これだけ詳しく書かれているページは、病院のWebサイトではなかなか見かけないのではないでしょうか。
「はじめて透析を始めたころにリーフレットをもらって一度説明を受けただけ」という方も意外と少なくありません。隔日に通う透析だからこそ、血液透析の手順・流れをあらためて確認することで、日々の治療をより主体的に受けることができるようになります。
私自身、20年超透析を行っていますが、旅行透析や臨時透析の際には今でも「ここではどういうルールなんだろう」と新鮮な気持ちで確認することがあります。
院内環境もスタッフさんも器材も、かかりつけ病院とはまるで別物に見えてきたり、血液透析の手順・流れが微妙に異なっていたりすることがあります。典型的な例として「止血バンドによる圧迫は当院では禁止しています。10分間は手で押さえてください」というケースがありました。
止血方法ひとつとっても、「どちらがシャントにとって優しいか」「時間短縮になるか」という考え方によって病院ごとに違いが出ます。ふだん透析が終わって止血バンドを留めて帰宅している私ですが、旅行透析のときは「そういう指導方針なのだ」と理解して10分程度手で押さえています。
かかりつけの透析病院でも、臨時透析(旅行透析)でも、頭の片隅に入れておきたいのはやはりこれです。
「郷に入っては郷に従え(ごうにいってはごうにしたがえ)」。
参照:
「旅行・出張先で臨時透析。病院を探す方法・段取り教えます!」
「旅行透析。東京は観光・病院に交通も充実!でも地方だったら」