透析患者の起立性低血圧とシャント閉塞リスク|実体験から学ぶ予防と対処法

2018年10月21日

透析患者の起立性低血圧とシャント閉塞リスク|実体験から学ぶ予防と対処法
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更新日: 2026年7月19日

透析患者の起立性低血圧の原因

低血圧でシャント閉塞!再手術も。狭窄ともに徴候を知ろう。」では、透析患者の低血圧には3つある、ということを説明いたしました。

「1.透析低血圧」「2.常時低血圧」「3.起立性低血圧」があり、それら透析患者にみられる低血圧をまとめて「透析関連低血圧」と呼んでいます。

今回、ここでは「3.起立性低血圧」について取り上げていきます。

・「1.透析低血圧」「2.常時低血圧」「3.起立性低血圧」をまとめて、透析関連低血圧という
・「起立性低血圧」は健康な人でも起こりうるが、透析患者はシャントの閉塞・狭窄に注意すること
・症状は、めまい・ふらつき・立ちくらみ・目が真っ白・気が遠くなる・どっとした疲労感や脱力感

私自身、20年超透析を行っている現役の透析患者です。そして、起立性低血圧によってシャント閉塞寸前という、冷や汗もののリアルな体験をしました。この記事はその実体験をもとに書いています。透析患者の方やそのご家族に、ぜひ参考にしていただければと思います。

透析患者の起立性低血圧とは? 原因は?

朝会で立ちくらみ・めまいを覚えたことありますよね?

透析患者の「起立性低血圧」も透析関連低血圧のひとつに数えられます。その原因は大きく分けると、

自律神経による血管の調整が不十分で起こるものと、血液量の減少や筋の萎縮などによって静脈内に血液が貯留(ちょうりゅう)してしまって起こるものとに分けることができます。

医学的な定義としては、「臥位(横になった状態)や座位から立位へ体位を変換した際に収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、拡張期血圧が10mmHg以上低下した場合」を起立性低血圧と呼びます(MSDマニュアル・日本透析医学会資料より)。糖尿病患者や自律神経障害がある方で特に起きやすいとされています。

透析患者と健康な人、何が違う?

個人差はあるものの、透析中はベッドで横になっています。運動しているわけでもないのに、終了時に横の状態から起立することで血圧低下が起こり、脳の血流低下を招いてしまいます。

「1.透析低血圧」や「2.常時低血圧」は、たいがい透析治療中や透析前に起こることが多いので、近くにいる医師や看護師さんのもとで処置を受けられます。

しかし「起立性低血圧」の場合は、必ずしも処置を受けられるとも限りません。健康な人でさえ実際に起こりうるので、体験したことがある方も多いでしょう。

たとえば、小中学校での長丁場な朝会で「立つ」⇔「座る」を繰り返し、立ちくらみやめまいをしたことはありませんか?実際に倒れてしまった経験を持つ人もいるでしょう。社会人になってからも、デスクワークや小売業・製造業などで「立ちっぱなし」という場面もありますよね。

健康な人ならば「頭を低く、転倒に気をつけて!」「どうぞお大事に」で話は終わります。しかし透析患者の場合はそうはいきません。

さらにシャントの狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)を起こしてしまう危険性(リスク)を併せて持っており、最悪の場合は透析ができなくなってしまう恐れが出てくるのです。だからこそ、透析患者はいっそう注意しなければならないのです。

シャントを閉塞させた場合、シャント再構築のための手術と入院が必要になります。閉塞した状態では透析ができないため(言わば”水が流れなくなった河川”のようなもの)、手術・入院・透析という三重の負担が一気にのしかかります。

透析患者に起立性低血圧が起こりやすい理由

原因カテゴリ具体的な要因
自律神経の乱れ腎不全や糖尿病による自律神経障害。立った瞬間の血管収縮がうまくいかなくなる
循環血液量の減少透析による除水・水分制限・夏場の発汗による脱水状態
筋力・血管緊張の低下長時間の臥位(横になった状態)後、静脈に血液が貯留しやすくなる
季節変化・環境要因気温・湿度の急変で血圧が不安定になる(梅雨・夏への移行期など)
便秘・薬の影響便秘状態での長時間トイレ、リン吸着薬など一部薬剤の副作用

今回のように低血圧だけでなく(高血圧も含めて)、透析患者は日ごろから血圧管理をすることが重要です。血圧管理=シャントの管理でもあるからです。

透析中・終了後・帰宅途中も油断できない

透析時や透析終了の際も注意が必要です。通常、透析中は緩やかに血圧が下がっていくものなのですが、急激に血圧低下が起こったりすることもあります。

やっと透析が終わった!と思っていても、透析終了間際に、ベッドで横になった状態から立ち上がったときに「起立性低血圧」が起きることがあります。

透析が終わって「やっと血圧が正常になった」と思いきや、病院をあとにしての冬場や雨の日にひんやりした外の空気で、車や電車・バスの中で血圧が下がってしまう、という場面も実際にあります。だからこそ帰宅途中や自宅に帰ってきてからも、油断はできません。

「血圧が低い状態」というのは何となく自覚できるものです。車を運転しているときでも、帰宅したときも、トイレに入っているときでも……。「何となく具合が悪い」し、「意識が朦朧(もうろう)とした感じ」を覚えます。

起立性低血圧の主な症状は、座ったり寝たりした姿勢から急に立ち上がることで、めまい・ふらつき・立ちくらみ・目が真っ白になる感覚・気が遠くなる・どっとした疲労感や脱力感といったことが起こります。

起立性低血圧の主な症状特徴・注意点
めまい・ふらつき立ち上がった瞬間にぐらっとくる。最もよくある初期症状
立ちくらみ・目が真っ白になる脳への血流が一時的に不足するために起こる
気が遠くなる・耳鳴り重症化のサイン。そのまま失神(意識消失)につながることもある
どっとした疲労感・脱力感症状が落ち着いたあとにも残ることがある。要注意
シャントの音が弱くなる血流が落ちているサイン。閉塞の危険を示す。すぐに病院へ

私はふだん低血圧ぎみです。透析患者として日々血圧管理していても、また繰り返したくない「起立性低血圧」の体験をしました。このときばかりは「自己判断ミス」を犯し、「嫌でも会社出勤」し「つらい透析」を行いました。参考にしていただければと思います。

「これが、透析患者の起立性低血圧か!」シャント閉塞寸前まで経験した実体験

足を上にあげた

私は透析を始めた身として、起立性低血圧によりシャント閉塞の寸前まで起こしたことがありました。

そのときの私の状態——重なった”悪条件”

当時の状況詳細
季節の変わり目春から夏への移行期で、血圧が低下しつつあった
透析疲れ・翌日の倦怠感疲労が取れないことが度々あり、仕事中に立ちくらみやめまいが起きていた
リン吸着薬による便秘処方されていたリン吸着薬の性質上、かなりの便秘に悩まされていた(データは良くなっていても体との相性が悪かった)
水分制限による血液のドロドロ化夏に向かって水分の摂取制限が厳しくなっていた時期だった

当時、透析中にしだいに血圧が低下していくのは見られたものの、透析が終わる頃に血圧が著しく下がって帰宅できない等ということは、ありませんでした。起立性低血圧が起きたのは、透析が終わったあとの家の中で、でした。

発症から翌朝まで——刻々と変わる状況

透析が終わって自宅にはいつもの時間に帰宅し、いつもの遅めの夜食をとりました。これまで特に調子が悪かったり食欲不振に陥ったりということはありませんでした。

しかし前々から分かっていたのは、私にとって「春から夏への季節の移り変わり」の時期は何となく調子が悪くなっていくので、ドライウエイト(=基礎体重)を見直す時期だということ。「翌日にも疲労が残る」「だるさがある」という自分の感覚は、大事にしなければなりません。

いっそう夏に向かって水分の摂取制限が厳しくなったのと同時に、(当時飲んでいた)リン吸着薬の副作用によって長いこと「便秘」に悩み、苦しんでいました。何となくお腹の張っている感じが続いていて、調子が悪くなっていく予感がする。仕事やらプライベートではお腹に苦しさが残り、気持ちが悪いのです(←これ、分かります?)。

そしてトイレへ。長時間同じ姿勢でいて、ただただ時間だけが過ぎました。

「水分の摂取制限(=水分不足)→便秘→血液はドロドロ→脳貧血からはじまる」。

この間に「起立性低血圧」に陥っていたわけですね。

トイレが終わって何となく排泄は不十分なまま、自分の部屋に戻るまでにも低血圧の症状(めまい・立ちくらみ・耳鳴り)が続いていました。透析を導入してからこのような症状はあまり感じたことがなかったのですが、2階にある自分の部屋まで行くにも、階段を登るのも、ちょっとベッドに横になることも大変だったことを記憶しています。

そしてベッドに横になり、頭に血液が昇るようにするために、足を上にあげました。当初は「もう落ち着いたかなあ」と思いながら立ち上がるも、やはりフラフラ感・視野(目の周り)が真っ白になる感じ・ぼ〜っとする。低血圧の症状がふたたび呼び起こされてしまうのです。

「心臓音も弱いようだし、何だかシャントの音も弱い。」
「何か危険な気がしてきた。本当に血圧が戻ってきたのか?」
「夜間透析後、もう病院も終わっているし…」
「明日の朝まで様子見…」
「明日も仕事もあるし、調子悪かったら病院に行こう…」

そんなことを自問自答しながら「起きて」⇔「寝て」を幾度か繰り返しているうちに、仕事や透析による疲労感もあったでしょう。眠気に誘われてそのまま寝てしまいました。

寝ているといっても、何となく耳鳴り音があったり、シャントの音が弱い。シャント周辺が痛いのが微かに感じられて、すっきり寝ていたわけではありません。そして、朝を迎えてしまったのです。

もう、お分かりですね。

「朝まで様子見」とか「会社出勤。翌日の透析前に診療受けよう!」といった自己判断・対処法は間違いです!

もしこのような症状になったら自己判断・自己対応ではダメですよ。

「起立性低血圧」になってシャント閉塞に近い状態になったかもしれない(シャントの音が弱ってしまった)ときは、すぐに病院へ連絡し夜間診療でも受けるべきです。

眠気で寝てしまったり、翌日まで様子見にしたり、仕事を最優先にしてしまったことが、何よりお粗末でした。

シャント閉塞寸前から首透析へ——その後に起きたこと

結果的には、シャント閉塞寸前で済みました。ただそれで済んだわけではありません。

PTA(経皮的血管拡張術)とは何か

以前からシャント周辺で狭窄部分があり、PTA(経皮的血管拡張術)を行う予定がありました。PTAとは、先端に風船(バルーン)のついたカテーテルをシャント内の狭くなった部分(狭窄部)に進め、そこでバルーンを膨らませることで狭窄部を拡張する治療法です。手術時間は30分〜1時間程度、局所麻酔で行われます。

治療名内容・特徴
PTA
(経皮的血管拡張術)
シャントの狭窄部にバルーンカテーテルを入れ、内側から広げる治療。局所麻酔で行い、手術時間は30分〜1時間程度。透析効率の回復を目的とする
内頸静脈カテーテル透析シャントが使えない期間に、首の内頸静脈に留置カテーテルを入れて行う透析。PTA前後の一時的な対処として行われる
シャント再建手術PTAで対応できない閉塞・狭窄が重篤な場合は、新たなシャントを作り直す手術が必要になる

1週間の「首透析」——想像以上の不便とストレス

ふつう腕に穿刺して行う透析も、医師の出張やほかの透析患者のPTA予定もあって、すぐに手術にはなりませんでした。そのため、首から行う透析(内頸静脈という首の血管へ留置カテーテルを使用)を1週間ほど行いました。

はじめての経験であり、首の血管から行う透析があることに——このような方法があることに、正直驚きました。

時期的には夏に入る頃だったので、汗や匂いも気になります。透析翌日の入浴やシャワーがなかなかうまくできませんでした。洗髪にはドライシャンプー(水のいらないシャンプー)を使ってみました。


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仕事のときは業務への影響は感じませんでしたが、首に包帯をしているだけあって違和感はありましたね。また買い物などに外出すれば(首から行う透析なので)首先の白包帯だけが目立って、世間の目——興味本位な人の目が、とても気になりました。ふだんあまり意識していなかったですが、何もかも”ストレス”というものを感じました。

シャントはなぜそれほど大切なのか——「生命線」の意味を改めて考える

PTA(経皮的血管拡張術)をすることで血管が広がって、また透析効率がよくなるわけですが、その効果が永遠に続くものではありません。治療を重ねたり、年齢を重ねたり、合併症があったりすることで、また血管が狭くなっていきます(=シャントの狭窄)。

なので、次第に透析効率が落ちてゆき、またPTAを行うことになります。いざ使えなくなれば、また新しい場所でシャントを作り直さなければなりません。いかにシャントを大事に、長く使えるようにしなければならないか、ということが分かると思います。

シャントに起きること対処・リスク
狭窄(血管が細くなる)透析効率が低下。PTAで広げることが多い。早期発見が重要
閉塞(血流が完全に止まる)直ちに透析不可能に。血栓除去術・血栓溶解療法・シャント再建手術が必要
シャント音の変化音が弱くなる・途切れる・高音になるなどは狭窄・閉塞のサイン
シャントの寿命PTAを繰り返しながら使い続けるが、永久ではない。次第に再建が必要になる

「起立性低血圧」でまた同じようなことを繰り返し、シャント閉塞になってまた一から作り直す——面倒ですし、「ゾッ〜」としてきます。

◇まとめにかえて——「私の二の舞にならないように」

私は今まで経験したことがなく、透析患者として「起立性低血圧」を体験しました。もっと血液透析に対する知識を持っていれば、「病院に相談する」「駆け込む」といった初期対応ができたのだと、つくづく反省させられました。

幸いにして、シャント閉塞寸前ながら狭窄があってPTA(経皮的血管拡張術)で済みました。経験しなければ分からないこともあります。でも今となっては恥ずかしいことですし、苦い思い出ですね。

今はまだ高血圧に悩まされることはないですが、今の私はどうも体質上低血圧の傾向にあるので「起立性低血圧」にはいっそうのこと注意していかなければなりません。最悪の状況はシャントの閉塞ですから、本当に怖いです。

起立性低血圧と上手に付き合うために——日常でできること

場面注意ポイント・対策
透析終了直後ベッドからいきなり起き上がらない。数分間、ゆっくり体を起こしてから立ち上がる
帰宅途中冬場・雨の日など気温が低い環境で急激に血圧が落ちることがある。運転中や電車内でも油断しない
トイレ・入浴長時間の同一姿勢のあとに立ち上がるときに特に注意。起立はゆっくりと
季節の変わり目(春→夏)血圧が不安定になりやすい。ドライウエイトの見直し時期と重なることが多い
シャントの音の確認毎日シャントのスリル(音・振動)を確認する習慣をつける。音が弱いと感じたらすぐに病院へ
「変だな」と感じたとき自己判断で様子見しない。夜間でも透析施設・救急に連絡する


ドライウエイト(DW)の見直し・シャントの自己管理——これが、透析患者が日々できる最大の予防策です。

私の二の舞にならないように。血圧管理そしてシャントの自己管理を行っていきましょう!