2018年5月5日

更新日: 2026年7月19日

血液透析患者にとってシャントを保護し管理していくことは、「シャントは命の綱」であるがゆえにとても大事なことです。
シャントを作った頃、いろいろ悩みませんでしたか?
・日常生活のなかで、 「雪かきはできるのだろうか?」「タイヤ交換はできるだろうか」・・・。
・仕事のなかで、 「魚肉類の裁断や商品並び替えは可能か」「冷凍室での作業は可能だろうか?」・・・。
いろいろな場面のなかで、できるだけシャントに負担をかけまいと気を遣ってきたはずです。 毎日のことですが、これからも保護し、管理しなければなりません。
今回は、シャントの自己管理のうち「シャント運動」についてとりあげます。
あなたの、今のシャントの状況はどうでしょうか? シャント音は聞こえていますか、それは正常ですか?
透析生活には日々の慣れというのもありますが、「してはいけないこと」「避けたほうがよいこと」などは、だいたいつかめているのではないでしょうか。
私も仕事では書類や梱包など極端に重い物を運ぶ際には、一言添えて他のスタッフにお願いしています。
日常行っている買い物でも、布団干しなどでも、シャントには十分慎重に行うようにしています。もちろん血圧管理も、食事療法も!
ところで、「シャント運動」していますか?
「透析患者は運動不足である」とよく言われることです。シャント運動もふだんの運動と一緒に取り込んで行っていきたいところです。
シャントの保護・管理に関する悩みというと、「針がうまく刺せない」「穿刺痛がひどい」というのもあります。
もっともシャント側の手指では「キツめのもの、新しい瓶のフタを開ける」「ジュースのプルタブを開ける」といったことが難しく感じられることさえあります。
大なり小なり悩みはあるのですが、いずれにしても、何らかのシャントトラブルが生じてしまえば経皮的血管形成術(PTA)が必要になったり、将来的にはシャントを利き腕にする再手術さえ検討しなければならない可能性があるわけです(そのためには箸やスプーンの持ち方などにも慣れておかないと・・・)。
それから透析期間が長くなってくると、個人差はあるにせよ慢性合併症(動脈硬化、脂質異常症、血管の石灰化、透析アミロイドーシスなど)の心配もあります。
シャント肢の血管が細くなって穿刺がしづらくなったり、上肢の筋力が劣ったように感じる場面が、どうしても出てきてしまいます。
それら透析患者の悩みや症状を少しでも改善するため、シャントを発達・成長させるためには、「シャント運動」が欠かせません。
強いて言うならば、透析患者は毎回4~5時間ほど透析で横になっていることもあり、どうしても運動を控えがちになる傾向にあり「運動不足」になりやすいものです。この「シャント運動」と一緒に、散歩やウォーキングといった有酸素運動も取り込んで行ったほうが効率が良いでしょう。
詳細は以下のリンク先ページをご確認ください。
「透析患者は運動不足。骨格筋量の減少が顕著、末梢動脈疾患も!」
はじめてシャントを作製した際に、医師や看護師さんから「これから透析を始めるにあたって、しっかりシャント肢の運動をして、血管を発達させましょう」「立派なシャントを作ったところで安静は逆効果ですよ!」などと、説明を受けたと思います。
そして、軟式テニスボールやビニールボールなどを手渡されて、ニギニギを繰り返す運動を行いませんでしたか?
このニギニギの動作、運動のことを掌握運動(しょうあくうんどう)と言います。掌握運動を行うことで血管内の血流量が増え、血管壁への圧力が高まることでシャント血管の発達が促されるとされています。
血液透析は長期的に継続していく治療であり、シャントは絶対に必要、絶対に不可欠なもの!透析患者はシャントを鍛え、血管を発達・成長させなければならないのです。
掌握運動(しょうあくうんどう)は、ただシャントの腕力を鍛え、血管を発達・成長させるだけではありません。
透析患者ならではの悩み・痛みというものを、先ほど何点か挙げました。穿刺の痛みのほかにも肩こりや腕・肩の痛みなどもありますね。
長年の透析からどんなことを想像しますか?
穿刺の痛み。肩コリや肩・腕の痛み ⇒透析中はシャントのある腕側が長時間にわたって同一姿勢でいるため、肩コリや肩・腕の痛みが出やすくなります。そして頭痛にもつながりかねません。
長年の透析 ⇒透析を続けていけば、いやでも自然と年齢を重ねていきます。 体は痩せ気味になり筋肉量も減少し、血管も細くなり衰えていくのが通常であり、これが「老い」というものです。体力も次第に低下していくでしょう。
想像できますでしょうか?
「老い」ていきます。血管が細くなり劣ってくれば透析が困難になるし、あちこちのコリや痛みが心身に影響を及ぼしてきます。
透析患者がしなければならないことは「食事」「検査」「薬」「運動」・・・。
いろいろとあるわけですが、透析をよりよく続けるためには「シャント運動」も欠かせないのです。
ここで大切なのは、「シャント運動=何でもやればいい」わけではないということです。負荷(=運動の強さ)の考慮を誤ると、逆にシャントを傷めてしまうことがあります。
シャント側の腕に強い力がかかる運動(腕立て伏せ、重いダンベル、懸垂など)は、血管への負担が大きくなるため注意が必要とされています。実際に医療機関でも、シャント側の腕に体重をかけるような運動は避けるよう案内されています。
負荷の考慮という観点から、シャント運動の「やってよいこと」「避けたいこと」を、以下の表に整理しました。
| 負荷レベル | 具体例 | 考慮点 |
|---|---|---|
| 低負荷(推奨) | 軟式テニスボール・ビニールボールの掌握運動、指を動かす、手首を曲げる | 毎日無理なく続けられる。シャント血管の発達に有効 |
| 中負荷(要相談) | グリップハンド、デジフレックスなどの器具を使った運動 | 効果は高いが、強さは主治医・看護師と相談して調整する |
| 高負荷(避ける) | 腕立て伏せ、重いダンベル、懸垂、シャント側での荷物の持ち上げ | 血管への負担が大きく、閉塞や損傷のリスクが高い |
私の周りの透析患者でも、稀にジム(民間・自宅を問わず)に通っているという方がいますが、本当に大丈夫でしょうか? 「腕立て伏せ」「重たいダンベル」などのメニューには気をつけてくださいね!
私自身も時々ジムに通うことがあります。 車での通勤、会社の建物内ではエレベーターに頼り、PCと向き合った机上の仕事に加えて透析ともなれば・・・。これだけみても完全な運動不足です。
また年齢を重ねるごとに、足腰が弱ってきていることを感じています。 そのため寝たきりの要因ともいえる足腰を鍛えたいと思っていたし、末梢動脈疾患が怖くて、「エア自転車こぎ」を中心に行っています。
ジムでは本来シャントを発達・成長させたいとの思いから「腕立て伏せ」や「指立て伏せ」、「重たいダンベル」「懸垂(けんすい)」などのメニューを取り入れたいところですが、それらは避けています。
なぜなら、それらのメニューはかなりの割合でシャントに負担をかけてしまうからです。
「シャントをつぶした、壊した」等と言いますが、その可能性が十分にあり得るからです。
シャント再構築の手術もまた手間がかかりますし、入院期間も長引くでしょう。
シャント運動に限らず、透析患者の運動全般については、開始前に運動負荷試験などで体力レベルを確認し、無理のない強度から少しずつ段階的に上げていくことが望ましいとされています。自己判断で強度を上げず、必ず主治医や理学療法士に相談しながら進めましょう。
また、透析直後は血圧が下がりやすいタイミングのため、激しい運動は避け、透析前や非透析日の落ち着いた時間帯に行うのが良いとされています。「負荷の考慮」とは、運動の種類だけでなく、「いつ行うか」というタイミングの考慮も含まれているのです。
シャント運動のまとめです。
Q:「シャントを太く、透析を円滑に進めるためにはどうしたらよいでしょうか?」
A:「シャントを発達・成長させるためには、『物を握る』『指を動かす』『手首を曲げる』といったような掌握運動(しょうあくうんどう)が有効だといえます。」
シャント運動も「継続は力なり」。 負荷にも十分に考慮すれば、一番負荷の軽くて気軽にできる軟式テニスボールやビニールボールのニギニギ運動が良いわけです。
詳細は「シャントを鍛えるボール運動が簡単。今日から続けましょう!」でいくつかのシャント運動を挙げていますので、参照してみてください。
透析患者はシャントを長持ちさせるために、日々の管理・保護こそが使命ですが、どうせなら「シャント運動」も楽しみながら行うべきだと考えます。
遊びの要素も取り入れながら、日々継続していくことが大事ですね。 遊びの要素が入って継続できているのなら一番良いです。「継続は力なり」。
ぜひ今日からあなたなりのシャント運動を見つけてみてはいかがでしょうか? (詳細:「シャントを鍛えるボール運動が簡単!今日から続けましょう。」)