2018年10月21日

更新日: 2026年7月20日

透析患者にとって「シャント」は、いわば命綱ともいえる大切な血管です。せっかく手術で作ったシャントも、使わずにいると発達が進まなかったり、逆に負担をかけすぎると傷めてしまったりします。私自身、20年超透析を行っている中で、何度もシャントのトラブルを経験し、その都度「もっと早くケアの知識を知っていれば」と感じてきました。
ここでは、シャントを健やかに育てるための「シャント運動」を、実際に病院で勧められる方法から、自宅で手軽に続けられるグッズを使った方法まで、幅広くご紹介します。
運動するための道具は、100円ショップで気軽に買えるものもありますし、本格的なものならAmazonや楽天で購入してもよいでしょう。まずはシャントを鍛えるボール運動からはじめましょう!
そもそも「シャント運動」とは何のために行うのでしょうか。シャントは、動脈と静脈をつなぎ合わせて作られた血管で、透析の際に大量の血液を体外に取り出すための「通り道」です。作製したばかりのシャントは血管壁がまだ薄く、しっかり発達させないと十分な血流量を確保できません。
シャント運動は、血管に適度な負荷をかけて血流を増やし、血管を太く・丈夫に発達させることを目的とした運動です。特に手術直後から透析が安定するまでの期間は、医療機関でも積極的に勧められることが多いです。
ただし、シャントは非常にデリケートな血管でもあります。過度な負荷や誤った方法で運動を行うと、逆にシャントを傷めてしまうリスクもあるため、正しい知識を持って取り組むことが何より重要です。
一番簡単なのが、軟式テニスボールやビニールボールを使った運動です。
思い出して欲しいのですが(これからシャント作製手術を受ける方は、そのあとで)シャント手術後はよく、軟式テニスボールやビニールボールで「ニギニギ」するように勧められましたね。
病院側でも管理がしやすく、リハビリでも簡単に導入できることから常備されているくらいです。(20年ほど前は、軟式テニスボールはスポーツ用品店でしか購入できなかったように記憶していますが、今では手に入りやすくなりました。)
今では100円ショップでも玩具コーナーに行けば置いています(レクリエーション用という感じでしょうか。軟式テニス用の空気入れは見かけず、少し値が張ります。ビニールボール用はありました)。
硬式テニスボールよりも、軟式テニスボールやビニールボールの方が握りこむことができるので、効果が大きいと言えます。
さすがに握力など大きな筋肉を鍛えるということではなく、シャントを発達させるための簡単な、「登竜門トレーニング」「小さい負荷で繰り返しできる運動」という位置づけととらえてください。
ハンドグリップの使い方を知らない方はいますか?使い方は簡単で、ひたすらニギニギするだけです。テニスボール・ビニールボールと同様に100円ショップの玩具コーナーで売られています。ただし100円ショップの場合、負荷量によって単体で3〜4種類あるくらいです(置いていない店舗もあります)。
ハンドグリップの選び方ですが、「どのくらいの負荷(握ったときの重さ)のあるものを選ぶべきか」ということが大事です。
「適切な負荷(重さ)を持ったハンドグリップを選びましょう」ということです。
健康な人であれば、自分の握力よりも負荷のあるハンドグリップを選びますが、シャントを作製した透析患者の場合、負荷のあるハンドグリップを選んでしまうとシャントにとって酷であり、シャントを痛めてしまいます(発達もしていないので、下手すれば壊れてしまうかもしれません)。
繰り返しになりますが、自分の握力に見合った負荷(重さ)のあるハンドグリップを選んでください。メーカーや価格は特に問いません。ただし、極端に安すぎるものは手が痛くなったり、壊れたりする可能性もあるので注意してください。
ハンドグリップでニギニギするのは、ウォーミングアップだと思って、何十回も連続してできる「軽いもの」でも十分に構いません。何せウォーミングアップなのですから、「効率」を求めてはいけません。軽くて良いので何度かニギニギしてから、次の段階(レベル)の負荷があるハンドグリップを使っていくとよいでしょう。
負荷量には個人差がありますが、連続して10〜20回できるくらいの重さ(負荷)で良いでしょう。Amazonをのぞくと、一つのハンドグリップで負荷(重さ)を自在に変えられるものもあります。
「負荷調整式ハンドグリップ(=1つのハンドグリップに段階的に負荷を変えられるもの)」というものです。シャント側の手と反対側の手では握力が違いますから、「ハンドグリップを一台で兼用したい」というときは購入するのも一つの手でしょう。
先ほどの「その2」の純ニギニギ法とは違い、ハンドグリップを逆さにも握って、また向きを戻して握る、これを繰り返す方法です。
流れとしては、次の1〜5になります。
(※)瞬時に離すだけではなく、バネの負荷に耐えながらゆっくり握る・離してもよいです。
【表:ハンドグリップ運動のポイント】
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ウォーミングアップ | 負荷(重さ)の軽いハンドグリップで |
| 動きのバリエーション | 「素早く」や「ゆっくり」「握る」「離す」を繰り返す |
| 負荷調整 | 負荷調整式ハンドグリップは適度なセッティングで |
| タイミング | 仕事の休憩時間やTV視聴時にもニギニギできる |

軟式テニスボールやビニールボール、ハンドグリップのニギニギは、いつでもどこでもできます。しかし単調なうえに、なかなか集中力が途中で途切れてしまうこともありますよね。
そこで単調さや集中力の続かなさから解放できるのが、パワーボールを使った方法です。『パワーボールでグルグル法』と言います。
「パワーボールは気軽に導入~」・・・とはなかなかいかないのですが、ある程度シャントが発達・成長したような透析患者向けに良いと言えます。
『パワーボールでグルグル法』は軟式テニスボールでもハンドグリップでもありません。はじめて見たときの第一印象は、昔流行っていたヨーヨーにも似ています。しかし、パワーボールは手首の筋肉トレーニングになります。遊びの要素を取り入れながらできる点では十分で、飽きにくいのが特徴です。
遊び感覚で楽しめるものですが、コツといえばコツがあります。パワーボールの形状は、丸いプラスチック(メタルのものも)ケースの中に重量のある野球ボールや公式テニスボールのようなものが入っています。そのボールには穴があります。
(※)オートスタート機能と呼ばれる紐なしタイプもあります。
手首を回すことで中にあるボールが回転し、暴れるように動き出します。ただし、暴れまわるこのボールをしっかり押さえながら回し続けるのは、実は大変なことです(泣)。
繰り返しになりますが、パワーボールはシャントが発達・成長したような透析患者向けということです。シャントの痛みもなく、ある程度の血管が発達・成長して、透析ができるようになった頃に利用してみたほうが良いでしょう。
パワーボールの性質上、手首の動き次第で、簡単に負荷を調節することができます。当初は負荷を小さく、手首の動きも小さくする。慣れてきたら、負荷を大きくするには手首の動きを遅くすれば良いのです。
期待できる効果としては、手首や指、腕の強化が期待できます。
【表:パワーボール運動のポイント】
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 取り組み方 | 遊び感覚で楽しんでください |
| 対象者 | シャントが発達した患者向け(初心者は要注意) |
| 動かし方 | 手首をひねるようにすると回しやすい |
| 注意点 | 無理に回そうとしない、力を入れすぎない |
| 購入の目安 | 2,500円以上(安価なものは音がうるさい傾向) |

シャント運動を始める前に、必ず主治医や看護師に「今のシャントの状態」を確認してもらいましょう。特にシャント作製直後は血管がまだ安定していないため、自己判断で強い負荷をかけるのは危険です。
シャント部分に痛み、腫れ、発熱、しびれなどの異常を感じたら、すぐに運動を中止し、医療機関に相談してください。私自身、シャント運動中に違和感を感じてすぐに中止し、受診したことで大事に至らなかった経験があります。「ちょっとおかしいな」と感じたら我慢せず、早めに伝えることが何より大切です。
シャント運動と並行して、日常的にシャント音(スリル)や拍動を自分で確認する習慣もおすすめです。シャント部分に軽く触れて「ザーザー」という血流音や拍動が普段と変わらないかを確認することで、閉塞などの異常を早期に発見できる可能性が高まります。もし普段と違う静かな感じや拍動の変化を感じたら、運動を中止し、速やかに医療機関へ連絡しましょう。
「早く鍛えたい」という気持ちから、つい負荷を上げすぎたり、頻度を増やしすぎたりする方もいますが、これは逆効果になることがあります。シャントは血管という繊細な組織であるため、無理な負荷は血管を傷め、最悪の場合、シャントの機能不全につながるおそれもあります。
医者、運動指導員の方から「どれを使ったらよいか」「どの程度負荷をかけて良いか」などを相談しながら行ってください。
シャント運動はやりやすいのですが、透析患者は運動不足になりやすいと言われています。ウォーキングや散歩、体操といった有酸素運動と一緒にセットで行うと、より効率的に体力維持につながります。
また、シャント側の腕に重いものを持たせたり、腕枕にして寝たりすることは、シャントの血流を妨げる原因になるため避けましょう。腕時計や血圧測定、採血などもシャント側ではなく反対側で行うことが基本です。日常生活の中でシャントを守る意識を持つことが、運動の効果を最大限に活かすことにもつながります。
シャントのある腕側は、「作製してから何か月で未発達・発達過程にあるか」「筋力が強いか弱いか」といったように個人差があります。
ここで紹介したように、軟式テニスボール⇒ビニールボール⇒ハンドグリップ(軽)・パワーボール⇒ハンドグリップ(重)といったように段階を追っていけば良いでしょう。あとは「楽しく」「できる限りシャント運動を継続」していけば良いのです。
シャント運動の仕方やその負荷(重さや抵抗)のかけ方は「運動」なのですから、体調も意識しつつ無理はしない!今あるシャントの状況をみることが何より大事です。シャントを傷めるような運動は当然にNGです。
医者、運動指導員の方から「どれを使ったらよいか」「どの程度負荷をかけて良いか」などを相談しながら行ってください!
シャント運動はやりやすいのですが、透析患者は運動不足と言われていますから、ウォーキングや散歩、体操といった有酸素運動と一緒にセットにして行うとなお効率的です。
ほかにも簡単にできるシャント運動、シャント運動に使えるような良い商品などがありましたら、紹介していきたいと思います。