「透析で仕事できない?」働き続けるための7つの問題と解決策

2018年11月30日

「透析で仕事できない?」働き続けるための7つの問題と解決策
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更新日: 2026年10月1日

透析で仕事できない


「透析をしていると、仕事はできないのだろうか?」
透析を検討している方や、血液透析を始めたばかりの方は、こんな疑問を抱くことがあると思います。

私も20年超透析を行っているなかで、「自営業をしたい」「起業したい」と考えたことは何度もありました。でも結局のところ、覚悟も自信も今ひとつ踏み出せず、会社員をしながら、ひっそりと裏側で転職活動をしていたこともありました。

介護の現場からまったく未知のデスクワークに転身するために、転職活動のためにハローワークを訪れ、次いでに学校にも通い、資格を取りました。そして今日まで、ずっと会社員として働き続けています。

私なりの会社員としての経験から正直に言わせてもらえば、「透析しているから仕事ができない」と結論づけてしまうのは、少し考えといい、思いが浅いのではないかと思っています。当時の私の転職活動のときと比較すれば、仕事を探すだけの環境だけでも十分に整っていると思いますよ。だから、「透析していても、仕事はできます!」これだけは、声を大にして伝えたいです。

透析の医療費のこともあるでしょう。それでも、きちんと働いて給料をもらって生活できる。社会に貢献できる。それは当たり前のようでいて、とても大事なことだと思っています。

ただ、制約や制限があってできないことが多いのも事実。それを正直に向き合ってみることが大事です。

 

この記事は、次のような方に向けて書いています。

  • これから透析が始まる予定の方
  • 透析を始めたばかりで、仕事のことが不安な方
  • 転職を考えている透析患者の方やそのご家族

 

「仕事と透析を両立することってどういうことなのか?」そう考えているあなたへ。私の体験と、今持っている疑問や不安を一緒に洗い出していきましょう。

 

・透析を検討中・導入したばかりの方が「透析で仕事できないのでは?」と不安になるのは、自然なことです

・あらかじめ透析の現実的な問題点を知っておくことが大切

・時間的制約・経済的損失・機会的損失と、それぞれに向き合う方法があります

 

透析しているから仕事できない?現実的な問題点を正直に整理してみた

2023年末時点の統計では、日本の透析患者数は343,508人。そのうち約97%が病院で行う血液透析(施設透析)を選択しています(日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」2023年12月31日現在)。

医師・看護師がいて、きちんとサポートしてもらえる安心感が、この数字にも表れているのではないかと思います。

 

病院で血液透析を受けている会社員・OLの透析患者は、一人ひとり状況こそ違えど、「仕事への疑義・問題点」や、そこから生じる不安には、ある程度共通したものがあります。それは「すぐに解決できるものではない」「長く抱えていかなければならない」問題だからこそ、放置せずに向き合っておくことが重要です。

 

もっとも分かりやすい例が、「通院のために早退しなければならず、給料が減ってしまう」という問題です。

「オーバーナイト透析」「在宅血液透析」であれば、終業時間まで仕事ができる分、給料は確保しやすくなります。ただし在宅血液透析を選択している透析患者は全体の約0.2%(約800人)にすぎず、まだ非常に普及率の低い治療法です。誰でもすぐに選べるわけではないのが現実です。

 

1. 透析による「時間的な問題」(時間的な制約)

透析による時間的な問題

「透析時間+移動時間=5〜6時間」

透析は最低でも4時間かかります。そこに通院の移動時間、着替え、穿刺・針抜きの待ち時間が加わると、まとまった時間がまるごと取られてしまいます。

 

場面透析患者が直面しやすい時間的な問題
日中に仕事をしたい(転職希望)「夜間透析」の病院が近くにあるとは限らない。午前・午後の透析に対応できる仕事が見つかりにくく、短時間勤務になりやすい。
現在仕事をしている「自宅」「会社」「透析病院」の3か所の位置関係と交通手段を常に把握しておく必要がある。JR・バスの減便・ダイヤ改正が直撃することも。
転職・転勤を検討している知らない土地での透析病院探しは慎重さが必要。ベッドの空き待ちで採用取り消しになった事例もある(後述)。
持病や歯科通院がある透析以外の通院も加わると時間的な負担がさらに増す。会社への影響も大きい。

 

【実際にあった事例】

遠隔地で転職活動を行い、苦労してようやく内定をもらったものの、新しい職場近くの透析病院でベッドの空きが出るまでに2か月以上かかってしまい、結果として「採用取り消し」になったケースがありました。



「会社の近くに賃貸を借りれば大丈夫」という話ではなく、「透析ができる病院があるかどうか」「入社前後にベッドが確保できるか」まで確認しておかなければならないのです。タイミングはまったく読めません。就業の機会を逃してしまった、という現実は非常に重いものでした。これは実際に私が聞いた話です。

もし今の環境が許すのであれば、「オーバーナイト透析」や「在宅血液透析」を検討することで、フルタイム勤務が可能になる場合もあります。担当医師に相談してみる価値はあります。

2. 透析による「経済的な問題」(経済的な損失)

透析による経済的な問題

早退や遅刻が続けば、給料は減ります。収入が落ちる。やりきれない気持ちになるのは当然ですし、ある程度「割り切り」も必要になってきます。

また、透析にかかる医療費は高額です。毎月発生するものですから、医療保険制度を正しく使うことが家計を守る第一歩になります。

制度名内容優先順位の目安
特定疾病療養受療証(高額長期疾病)透析の自己負担を月1万円(または2万円)に抑えられる最優先で申請
自立支援医療(更生医療)自治体が一部負担。所得に応じた上限額設定あり次に確認
障害者医療費助成制度都道府県・市区町村ごとに異なる。身体障害者手帳の交付後に対象となることが多いお住まいの自治体へ確認

参照:「透析の医療費は高い!仕組みは知っておいたほうが良い理由。」

転職活動をする場合は、「自分に合った就業条件で仕事を探せているか(透析のことも含めて)」を改めて問い直してみましょう。「年収を透析前の水準に保ちたい」「現状維持以上を目指したい」のであれば、時給や月収の高い会社を選ぶか、自営業・起業という選択肢も視野に入れることになります。

3. 透析による「体調管理の問題」

透析による体調管理の問題



透析は長期的に続けるものです。体力がなければ続けられません。透析のある日は、まさに体力勝負でもあります。

透析後には疲労感や血圧低下が起きることがあります。透析年数が長くなるにつれ、慢性合併症が出てきやすくなるのも事実です。そして、透析翌日の仕事に影響が出ることも珍しくありません。


症状・リスク

症状・リスク内容と対応のポイント
起立性低血圧デスクワークで「立つ・座る」を繰り返す際に立ちくらみやめまいが起きることがある。ドライウエイト(基礎体重)の見直しを担当医に相談を。
シャントの自己管理シャント側の腕で重いものを運ぶのは避ける。日常的な自己チェックが欠かせない。
感染症リスク免疫機能が低下しやすいため、職場での風邪・インフルエンザ感染予防は透析患者にとって特に重要。
透析うつ・精神的ストレス仕事のミスや人間関係の悩みを透析にまで持ち込まないように。透析患者はうつになりやすいとも言われている。
食事療法の乱れ会社の付き合いでの外食・コンビニ食が続くと検査データに影響が出る。食事療法は基本中の基本。

参照:「透析患者の【起立性低血圧】もまた透析関連低血圧の一つです!」

参照:「コンビニ弁当はリンの宝庫!?便利で利用、だけど毎日は危険」



また、透析を導入したばかりの時期には「不均衡症候群」と呼ばれる身体的な不安定さが現れることがあります。
脳や身体が透析に慣れていないために起きる短期的な合併症ですが、いつ落ち着くかは医師にも予測が難しいのが現実です。この時期は精神的な葛藤とも重なりやすく、仕事がうまくはかどらないこともあります。「現実を受け入れるには時間がかかる」くらいの気持ちで、焦らずにいることも大切です。

参照:「透析導入者は「不均衡症候群」を乗り越えなければならない。」

健康な身体ではないにしても「ベストな状態」で仕事に臨み、その状態を維持していくことが、透析患者の努めだと言えます。

4. 「仕事上の諸問題」(機会的な損失)

早退・低収入・ストレスといった問題に加え、透析患者が見落としがちなのが「仕事そのもの」に関わる問題です。

「今の業種・職種・雇用形態(正社員から嘱託・パートなど)でこのままで良いのか?」と振り返るタイミングは、誰にでも訪れます。

透析は長期的な治療です。20年・30年と続けるなかで、30代だった自分が40代・50代になっていきます。透析を始めた頃にあった仕事への気力や通院するだけの体力が、自然と落ちていくことも感じるはずです。それは「自然の理」であり、仕方のないことです。

一方で、こんな問題も起きやすいです。

状況起きやすい「機会的損失」
管理職・ポジションをもらっている部下のマネジメントで透析時間の確保が難しくなってきた。通院が遅れ気味になる。
会社から病院が遠くなってきた体力的にしんどくなり、近い病院への転院を考えはじめる。
残業・不規則勤務ができない本来なら就けるポジションに就けない。貢献度が評価されにくい。

年齢・体力・気力・興味の変化を客観的に見つめながら、部署移動や配置転換の申し出、あるいは転院(自宅や職場から通いやすい病院への変更)なども、念頭においておきましょう。

配偶者や家族がいれば、「仕事と透析」のことをいつでも話し合える状態にしておくことが、長期的には大きな支えになります。

 

5. 透析患者と家族間の諸問題(育児・介護……)

透析患者と家族間の諸問題

家族と同居していれば、育児・介護などの問題は避けて通れません。

家族サービスや育児・介護の場に居合わせたくても、透析のためにその時間はいられない。これは透析患者本人にとっても、家族にとっても、切実な問題です。

「どのようにして時間をつくるか」「どのように時間調整するか」なかなか折り合いをつけることが難しいのが現実です。面倒をみてくれる家族がいるか、有料サービスを使うなどしない限り、根本的な解決は難しいこともあります。

もし個人事業主・フリーランス・起業という選択肢を持っているなら、時間のやりくりが自由になる分、育児や介護の問題が解決しやすくなる場合もあります。ただし、周到な準備・計画・覚悟と、配偶者や家族への丁寧な説明と納得が必要です。

また、透析によって「年収●万円以上は確保する」「住宅ローンはこのペースで返す」「子どもの教育費はこう考えていた」といった、これまでの家族の生活設計や生活目標が崩れてしまうことがあります。そのときは、無理に以前の基準にこだわらず、「これからの家族のかたち」を話し合って見直すことが大切です。

6. 会社・スタッフとの諸問題

透析患者は「内部障害」にあたります。見た目では分からないため、会社や職場に対して、自分から正確に伝えることが求められます。

《会社側の問題》

「透析患者の採用の仕方が分からない(何をすれば良いか分からない)」
「仕事上、どのような配慮が必要なのか判断できない」
「配慮しすぎることで、かえって仕事の範囲を制限してしまっていないか?」
「体力的に続かないのでは」「生命に危険のある方の雇用はリスクが高い」という先入観から、そもそも採用を見送る会社も少なくない
「残業・不規則勤務ができないなら、正直扱いにくい」(会社・経営者の立場として分からなくはないが……)
表向きは「採用に前向き」と見せつつ、実態は透析患者の採用を避けているケースもある



《スタッフ(職場全体)の問題》

「透析」という言葉を聞いたことはあっても、どんな治療なのか・仕事上でどんな配慮が必要なのかは、上司も同僚も意外と知らないものです。

見て分かる障害は気づいてもらいやすいですが、内部障害は見ても分からない。「透析」が「内部障害」に含まれること自体、知らない人の方が多いのが現実です。

透析のことや、仕事上で配慮してほしい点は、正しく・具体的に伝えましょう。

「どのように仕事に取り組んでいくのか」「スタッフとどう付き合っていくか」これは透析患者自身が、場面ごとに考えて伝え続けることが大事です。

7. 透析患者自身の問題

  • 透析をしているからといって「仕事ができない」と思い込んでいませんか?
  • 透析の時間を有意義に使おうと、考えたり行動していますか?
  • 「すべては自分のなかにある」という思い込みで、一人で抱え込んでいませんか?

「仕事」と「透析」の両方を回しながら、家族・会社・上司・スタッフのことまで考えなければならない。それは本当に大変なことです。

だから、背負い込まず、できることからご自身のペースで付き合っていきましょう。

いちばん無難なのは「できることから始める、人の手を借りる、解決しやすいものから片付けていく」こと。一人で抱え込まず、周りの透析患者にも同じような悩みを持っている方はたくさんいます。

 

就労を後押しする支援制度—一人で抱え込まないために

仕事のことで悩んだとき、あなたが頼れる場所があります。使わないと損です。

ハローワークの「難病患者就職サポーター」

全国のハローワークには「難病患者就職サポーター」が配置されており、透析患者を含む難病のある方の症状特性を踏まえた就労支援や、在職中に発症した場合の雇用継続支援を行っています。

「透析を続けながら転職したい」「今の職場で続けられるか不安」そのような状況でも、一緒に考えてくれる専門の担当者がいます。予約なしで相談できる窓口も多いので、まず足を運んでみることをおすすめします。

障害者就労支援センター・地域障害者職業センター

身体障害者手帳の交付を受けている透析患者は、障害者雇用の対象となります。

各都道府県に設置されている「地域障害者職業センター」では、職業評価・職業リハビリテーション・ジョブコーチ支援など、就職前後の一貫したサポートを受けることができます。


支援機関主な支援内容問い合わせ先
ハローワーク(難病患者就職サポーター)求職活動支援・雇用継続相談・求人のマッチング最寄りのハローワーク
地域障害者職業センター職業評価・リハビリテーション・ジョブコーチ各都道府県に1か所以上設置(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)
障害者就業・生活支援センター就業支援と生活面のサポートを一体的に提供全国に約330か所(2026年時点)
全国腎臓病協議会(全腎協)無料電話相談・各地の相談会。仕事・生活全般の悩みに対応全腎協公式サイトで確認

 

障害者雇用率制度と企業側の動き

民間37.5人以上の企業には常用労働者の2.7%以上の障害者を雇用する義務(障害者雇用率制度)が課されています(2026年7月現在)。

この雇用率を達成できない企業には納付金が課される一方、積極的に障害者を雇用する企業には助成金が支給される仕組みになっています。身体障害者手帳を持つ透析患者は、この制度の対象者として企業の雇用ニーズと結びつく可能性があります。

【補足】

こちらは企業側の話しで、障害者雇用促進に関する助成金があります。現在、「障害者トライアルコース」「障害者介助等助成金」などの制度に整理・統合されました。最新の助成金制度については、最寄りのハローワークまたは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に確認することが求められます。

 

まとめ—自分の状況を「書き出す」ことから始めよう

「透析しているから仕事できない」のではなく、透析によって時間的制約・経済的損失・機会的損失が生じて、それ自体が問題になっている。ここまで読んでいただければ、その構造がお分かりいただけたかと思います。

私にも、今すぐ解決できない問題はいくつもあります。あまり悩み過ぎないようにしています。透析をすること自体が、すでに大変なことなのですから。「会社の倒産」「AIに仕事を奪われるかもしれない」という不安だって、透析患者の私にも普通にあります。

大事なのは「自分のこと、自分の置かれている状況や環境をきちんと把握しておくこと」です。

今のこと、これからのこと。考えられることや想定されることを紙に書き出しておきましょう。そのタイミングは1回だけでなく、転職・転勤・結婚・子どもの誕生・親の介護・マイホーム購入・車の買い替えなど、人生の大きなイベントのたびに振り返っておくべきです。


書き出しておきたいこと(チェックリスト)
仕事関連年収・給料・ポジション・役割・雇用形態
透析関連透析病院の場所・透析時間帯・シフト・今後の治療方針
健康・体調持病・定期受診している病院・服薬状況
家族関連家族構成・育児・介護状況・家族との話し合いの状況
生活設計ローン・教育費・生活費・目標としている収入ライン


困ったときの相談先まとめ


・仕事のこと:最寄りのハローワーク(難病患者就職サポーターに相談)

・生活全般:全国腎臓病協議会(全腎協)の無料電話相談・相談会

・障害者雇用での就職支援:地域障害者職業センター・障害者就業・生活支援センター



こちらも参考にしてみてください!

・生き方そのものに影響を与えそうなとき(大きなイベント)とは?

透析をしながらのなかで、大きな入院、転職や転勤、倒産、結婚(離婚)、子どもの出生、小中高への入学(卒業)、マイホーム取得、車の購入、親の介護、死去……。

・自分のこと、自分の置かれている状況や環境は?

「仕事(年収、給料、ポジション・役割……)」「透析のこと」「ほかの持病(病状)は」「透析病院はどこ」「年齢」「家族のこと」など……。