2018年3月14日

更新日: 2026年7月15日

透析療法にかかる医療費のしくみは、複雑でわかりにくいものです。
「どの制度を使えば負担が軽くなるか」を知るだけでは、実は不十分です。
ご存知の通り、透析の医療費はとても高いものです。それだけ世間の目も厳しいものがあります。
「医療制度のしくみ、そしてその全体像を理解すること」。これは透析が生涯にわたる治療であり、今の制度がいつまでも続くとは限らないという「変化」と「危機感」を感じ取るうえでも、とても大切なことです。
「なぜ月40万円近い透析の医療費が、1〜2万円で済むのか?」——この”なぜ?”から、一緒に確認していきましょう。
・世界最高水準の透析技術を誇る日本——ゆえに医療費は高い!
・透析の医療費は高い!月約40万円、年間約480万円にのぼる
・以下の3制度を理解し、フル活用しよう
1. 特定疾病の特例(高額長期疾病)/2. 自立支援医療(更生医療)/3. 障害者医療費助成制度
・透析をとりまく環境は厳しい。制度改正の動向にアンテナを張っておこう!
まず日本における透析事情から。現在、透析を受けている方のうち97%が「血液透析」を選択し、通院して治療するのが一般的です。
病院で血液透析を行う場合、大きく2つの問題があります。
| 問題の種類 | 内容 |
|---|---|
| 時間的な問題 | 1回4〜5時間×週3回の通院拘束 |
| 経済的な問題 | 月約40万円弱という高額な医療費 |
透析者側からすれば「時間はできるだけ短く、拘束されたくない」というのが本音です。
しかし、透析が代わりに担える腎臓の機能は本物の腎臓のわずか約10%。はっきり言って、時間が足りないのが現実なのです。
参照:「透析時間の決め方。4時間透析「最低ライン」に過ぎません!」
腎臓病から透析へ——それはある種、病気や障がいとの向き合い方にもつながります。その人の生き方そのものでもあります。
「4〜5時間という治療時間をどう使うか?」は、考え方や行動次第で大きく変わります。
(これは別の機会に、20代・30代・40代と働き盛りの年代で透析を続けてきた私自身の経験も交えてお話ししたいと思います。何かのヒントになれば幸いです。)

血液透析は1人あたり月約40万円という非常に高額な医療です。しかも、生涯にわたって治療を続けなければなりません。
年間に換算すると——
| 期間 | 医療費の目安 |
|---|---|
| 1か月 | 約40万円 |
| 1年間 | 約480万円 |
| 10年間 | 約4,000〜5,000万円 |
この金額を自己負担で払い切れる人はいません。
そこで、透析者の経済的な負担を大幅に軽減するための国の医療保険制度が確立されています。手続きは必要ですが、実質的な自己負担は月1〜2万円で済みます。

「なぜ月40万円かかる医療費が1〜2万円で済むのか?」
その答えは、以下の3つの制度を組み合わせて使うことにあります。利用する優先順位は1→2→3の順です。
| 優先順位 | 制度名 | 根拠法 |
|---|---|---|
| ① | 特定疾病の特例(高額長期疾病) | 健康保険法 |
| ② | 自立支援医療(更生医療) | 障害者総合支援法 |
| ③ | 障害者医療費助成制度 | 各自治体 |
根拠規定は健康保険法です。
これは通常の高額療養費とは別に、人工腎臓を実施している慢性腎不全に対して特別に設けられた制度です。
「特定疾病療養受療証」を取得することで、透析の医療費の自己負担上限が1か月あたり1万円(一定以上の所得がある方は2万円)になります。
差し引いた残りの約38〜49万円分は、最終的に国が公費で負担します。つまり、この制度が「月40万円が1〜2万円になる」最大の柱です。
根拠規定は障害者総合支援法(旧:障害者自立支援法)です。
「自立支援医療受給者証」「自己負担上限額管理票」を取得することで、自己負担額が原則「医療費の1割」に抑えられます。所得区分に応じた上限額も設けられています(入院時の食費などは原則自己負担)。
対象となる方は次のとおりです。
| 18歳以上で身体障害者手帳を持っている方(等級問わず) |
| 「高額治療継続者」に該当する方 ※過去1年間に高額療養費の支給を4回以上受けている方。透析・腹膜透析・腎移植にかかわる医療が含まれます。 |
なお、所得制限があり、世帯の市町村民税額(所得割)が235,000円以上の場合は対象外となります。詳細はお住まいの自治体窓口でご確認ください。
①・②の自己負担分をさらに各自治体(都道府県・市町村)が助成する制度です。
「心身障害者医療費助成制度」「重度心身障害者医療費助成制度」など名称はさまざまで、対象となる障害の種類・程度・年齢制限・所得制限も自治体によって異なります。
この制度を利用するには、「身体障害者手帳」を事前に取得していることが大前提です。
腎臓機能障害の等級は1級・3級・4級の3区分(2級は設定なし)。透析を受けている方はほとんどの場合、1級に認定されます。透析前でも腎機能の状態によっては申請・取得できるケースがあります。各自治体窓口にご相談ください。
参照:「透析前後でも身体障害者手帳は申請できます。窓口で確認を!」
東京都を例に挙げると、指定難病と透析を公費で助成する「難病医療費助成制度(マル都医療券)」があります。
①で自己負担1万円となっている方が「マル都医療券」を医療機関に提示すると、その1万円分を東京都が肩代わりしてくれます。つまり自己負担がゼロになる場合もあります。
余談ですが——地方在住の方が初めて東京で旅行透析(臨時透析)した際、会計で出てくる聞き慣れない用語に戸惑うことがあります。
「マル長」「マル障」「マル都」——わかりますか?
私も透析導入まもない頃、初めて東京に行ったとき(観光もしやすくて最高でした!)、会計でこの言葉が出てきて「何か大事な書類を忘れたのかな〜」と身構えてしまったのを今でも覚えています(笑)。
| 略語 | 正式名称 | 対応する制度 |
|---|---|---|
| マル長 | 特定疾病療養受療証 | ①健康保険の特定疾病の特例(高額長期疾病) |
| マル障 | 身体障害者手帳 | ②自立支援医療(更生医療) |
| マル都 | 人工透析マル都医療券 | ③障害者医療費助成制度(東京都版) |
東京に出かける際は、この3語だけでも頭の片隅に置いておくと安心です。
参照:
「旅行・出張先で臨時透析。病院を探す方法・段取り教えます!」
「旅行透析。東京は観光・病院に交通も充実!でも地方だったら」
①の特定疾病の特例を受けているということは、何らかの健康保険(組合健保・協会けんぽ・国民健康保険など)に加入しているはずです。
保険者によっては「医療費のお知らせ」を発行していて、自分や家族の医療費がどれくらいかかっているか確認できます。
例えば、透析の外来(月14日分)の場合:
この「自己負担10,000円」から、さらに②自立支援医療→③障害者医療費助成制度の順で差し引かれて、最終的な自己負担はさらに軽減されていきます。
また、医療費控除の手続きについて:確定申告の際に「医療費のお知らせ」と「医療費控除の明細書」を組み合わせて申告ができます。明細書は税務署のウェブサイトで入手できます。
1. 特定疾病の特例(高額長期疾病)
2. 自立支援医療(更生医療)
3. 障害者医療費助成制度
以上、3つの制度を順に見てきました。
透析者の医療費負担が月1〜2万円で済んでいるのも、健康保険上の「特定疾病の特例(高額長期疾病)」があるからです。透析者1人あたり年間400〜500万円近くを、国が「国庫負担」という形で肩代わりしています。透析にかかる医療費は、日本全体の医療費の約5%前後を占めます。
そのお金の出どころは、私たち国民が納めた保険料や税金です——ここが、世間の目が厳しくなる部分ですね。
「保険料や税金から出ているという事実」を、どう考えればいいのでしょうか?
透析療法が健康保険の給付対象となってから50年近くが経ちます。この間にも全腎協(全国腎臓病協議会)や各地の患者会の活動によって、制度は維持されてきました。しかし現在、医療保険財政は逼迫しており、地方自治体の財政も厳しい状況です。
診療報酬の見直しや透析者の自己負担割合の変更も、十分ありえます。加えて、高齢化による医療費の増大、生活習慣病(特に糖尿病)を起因とする慢性腎臓病(CKD)患者の増加による透析導入者の増加傾向——これらは目を離せない問題です。
いずれにしても、透析をとりまく事情は今後さらに改善されるとは考えにくく、むしろ「後退傾向」と言われています。
全国の透析患者会(腎友会)では、国会へ請願するなどして、透析の医療体制の維持・向上を訴える活動を続けています。
透析者やそのご家族は、透析に関わる制度改正や関連情報について、日頃からアンテナを張り巡らせておきましょう。