2018年3月23日

更新日: 2026年7月17日

「身体障害者手帳」——目にしたことはありますか?
身体障害者手帳は身体障害者福祉法に基づき、身体に障害のある方の自立や社会活動への参加を促し、支援することを目的として交付されるものです。
手帳は「身体障害者福祉法等をはじめとする福祉サービスの利用資格があることを示す証明書」と言えます。当サイトでは主として血液透析を受けている透析患者を対象に取り上げています。
20年超透析を行っている私自身も、この手帳にはずいぶんお世話になってきました。知っているのと知らないのとでは、受けられる支援の幅がまるで違う——それが身体障害者手帳の実力です。
・身体障害者手帳を取得するには認定基準に該当していることが大前提
・申請に必要な「身体障害者診断書・意見書」は「都道府県知事の定めた医師(指定医)」が作成したもの
・平成30年4月より認定基準が改正:eGFR(推算糸球体濾過量)が3・4級の判定指標として追加
・自立支援医療(更生医療)や障害者医療費助成制度で活用できる
・民間サービスでも、手帳提示による割引・減免が受けられる場面が多い
透析療法(血液透析や腹膜透析)を行うことになった場合は、種別:腎機能障害(腎不全)で「身体障害者手帳」を申請することができます。
申請は各自治体の福祉担当窓口で行いますが、ここで大切な点があります。
身体障害者手帳は、認定基準に該当したとしても自動的に交付されるわけではありません。「申請」が必要です。
つまり、申請しなければ一切もらえない——これは障害年金と同じ構造です。腎臓病の診断を受けていたり、透析を始めたりしたからといって、黙っていれば何も届きません。自分から動くことが必要です。
種別:腎機能障害に基づく「身体障害者手帳」の申請手順を順を追って説明します。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① | 住民票のある自治体の福祉担当窓口(福祉事務所・福祉担当課など)へ行き、「交付申請書」と「身体障害者診断書・意見書」の用紙を入手する。 ※自治体のウェブサイトからダウンロードできる場合もある。 |
| ② | 「指定医」の診察を受け、「身体障害者診断書・意見書」を作成してもらう。 ※指定医=都道府県知事の定めた医師。腎機能障害の場合は「日本腎臓学会の腎臓専門医」または「日本専門医機構の腎臓専門医」などが該当。すべての医師が指定医ではないので注意! |
| ③ | 以下の書類をそろえて福祉担当窓口に提出する。 ・身体障害者診断書・意見書(申請書提出日から3か月〜1年以内の日付のもの) ・本人写真(2枚:縦4cm×横3cm、上半身正面・脱帽) ・印鑑(認印可、シャチハタ不可/自署の場合も可) ・マイナンバーカードまたは通知カード(通知カードの場合は運転免許証・保険証などの本人確認書類も必要) ※代理人申請も可能(委任状・代理人の身元確認書類が必要) |
| ④ | 「腎臓機能障害認定基準」に基づき、障害等級が判定される。 |
| ⑤ | 判定の結果、認められると通常1〜2か月で「身体障害者手帳」が交付される。 ※他種別障害の拡大や、より慎重な判定の実施などにより、交付までに日数がかかる傾向がある。 |
【住民票の所在地が申請先】というのが原則です。例えば熊本市に住民票があれば、熊本市の福祉担当窓口に申請します。ただし、申請先(窓口)と手帳の交付者は、必ずしも同じではありません。
| 居住地の種別 | 手帳の交付者 | 具体例 |
|---|---|---|
| 一般の市町村・特別区 | 都道府県知事 | 山形県大蔵村 → 山形県知事が交付 長崎県平戸市 → 長崎県知事が交付 |
| 政令指定都市 | 政令指定都市の長 | さいたま市 → さいたま市が交付 |
| 中核市 | 中核市の長 | 那覇市 → 那覇市が交付 |
(根拠:身体障害者福祉法第15条)
手帳の交付手続きを市区町村窓口で行ったのに、届く手帳には都道府県知事の名前が載っている——これが「申請先と交付者が異なる」ということです。制度の仕組みとして覚えておきましょう。
腎臓には指定難病(IgA腎症など)が存在し、難病医療費の助成対象となることがあります。平成25年4月に施行された「障害者総合支援法」で障害者の範囲に「難病等の方々」が加わりました。ただし、難病として受けられる福祉サービスと、身体障害者手帳で受けられる福祉サービスは別物です。混同しないよう注意しましょう。

「障害の程度が法の定める程度かどうか」は、腎臓機能障害認定基準に基づいて判定されます。主なポイントは以下の3つです。
| 判定の柱 | 内容 |
|---|---|
| 1. 永続性 | 腎臓機能障害が将来とも回復する可能性が極めて少ないこと |
| 2. 判定時期 | 慢性透析療法実施前の状態で判定する(透析中の値ではない) |
| 3. 等級の決定 | 腎機能検査値・生活活動能力・その他の所見を総合して1・3・4級のいずれかに認定(2級はない) |
日本腎臓学会と日本透析医学会の連名による要望を受け、平成30年(2018年)4月1日以降、「じん臓機能障害」の認定基準が見直され、eGFR(推算糸球体濾過量)が3・4級の判定指標として追加されました。
| 指標 | 改正前(〜平成30年3月) | 改正後(平成30年4月〜) |
|---|---|---|
| 内因性クレアチニン クリアランス値 | 12歳を超える者には適用できない場合があった | 年齢制限なし(全年齢に適用可) |
| eGFR (推算糸球体濾過量) | 適用できなかった | 3・4級の判定時に適用可能 ※1級には適用されない |
eGFRは臨床現場で広く使われている指標で、年齢・性別が加味されているため、女性や高齢者など筋肉が少ない患者の腎機能も適切に反映できるメリットがあります。
eGFRの値と等級の対応(3・4級のみ)は下表のとおりです。
| eGFR(ml/分/1.73㎡) | 相当等級 |
|---|---|
| 10以上20未満 | 4級相当 |
| 10未満 | 3級相当 |
※eGFRのみで等級が確定するわけではなく、生活活動能力などの要件もあわせて判定されます。また、血清クレアチニン濃度や内因性クレアチニンクリアランス値のいずれかが認定基準に該当すれば、eGFRとの併用も可能です。
腎臓機能障害の等級は1級・3級・4級の3種類(2級は存在しない)です。等級が重い(数字が小さい)ほど、腎機能の低下が深刻であることを示します。
| 腎機能検査(いずれかに該当) | ・血清クレアチニン値(Cr):8.0mg/dl以上 ・内因性クレアチニンクリアランス:10ml/分未満 |
| 生活活動能力 | 自己の身辺の日常生活活動が著しく制限されるか、または血液浄化を目的とした治療を必要とするもの、もしくは極めて近い将来に治療が必要となるもの |
| ポイント | ・シャントを作った時点で「極めて近い将来に治療が必要となるもの」に該当しうる ・透析を行っていない慢性腎不全の人でも、データ次第で1級申請の対象になりうる ・1級の判定にeGFRは適用されない |
| 腎機能検査(いずれかに該当) | ・血清クレアチニン値(Cr):5.0mg/dl以上8.0mg/dl未満 ・内因性クレアチニンクリアランス:10ml/分以上20ml/分未満 ・eGFR:10ml/分/1.73㎡未満(平成30年4月〜) |
| 生活活動能力 | 家庭内での極めて温和な日常生活活動には支障はないが、それ以上の活動は著しく制限される |
| その他の所見(下記のうち2つ以上) | ①腎不全に基づく末梢神経症 ②腎不全に基づく消化器症状 ③水分電解質異常 ④腎不全に基づく精神異常 ⑤X線写真所見における骨異栄養症 ⑥腎性貧血 ⑦代謝性アシドーシス ⑧重篤な高血圧症 ⑨腎疾患に直接関連するその他の症状 |
| 腎機能検査(いずれかに該当) | ・血清クレアチニン値(Cr):3.0mg/dl以上5.0mg/dl未満 ・内因性クレアチニンクリアランス:20ml/分以上30ml/分未満 ・eGFR:10ml/分/1.73㎡以上20ml/分/1.73㎡未満(平成30年4月〜) |
| 生活活動能力 | 家庭内での普通の日常生活活動または社会での極めて温和な日常生活活動には支障はないが、それ以上の活動は著しく制限される |
| その他の所見 | 3級と同様、上記の所見のうち2つ以上があること |
腎臓機能障害認定基準はガイドライン扱いのため、各自治体が独自の判断基準を持てる場合もあります。国の基準では「1級に不該当」と判定されても、自治体の独自基準で1級になることも十分ありえます。「自分はどの等級になるのか」は、必ず窓口で確認しましょう。
身体障害者手帳を取得すると、以下の2つの医療費助成制度を利用できるようになります。利用の優先順位は①→②の順です。
根拠規定は障害者総合支援法(旧:障害者自立支援法)です。
「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限額管理表」を取得することにより、原則として自己負担額は「医療費の1割」に抑えられます。所得区分に応じた上限額も設けられています(入院時の食費などは原則自己負担)。
対象者は以下のいずれかに該当する方です:
| 18歳以上で身体障害者手帳を所持する方(等級問わず) |
| 高額治療継続者(重度かつ継続) 過去1年間に高額療養費の支給を4回以上受けている方。透析(血液透析・腹膜透析)や腎移植にかかわる医療が含まれます。 |
なお、所得制限があります。世帯の市町村民税額(所得割)が235,000円以上の場合は原則対象外となります。詳細はお住まいの自治体窓口でご確認ください。
18歳未満の場合は「自立支援医療(育成医療)」があります。
各自治体(都道府県・市町村)が心身に重度の障害がある方に対して行う医療費助成制度です。①の自立支援医療の次に適用されます。
対象者は「身体障害者手帳」の取得者ですが、制度の名称・対象となる障害の種類・障害の程度・年齢制限・所得制限は自治体によってまちまちです。必ず自分の住む自治体の窓口で確認しましょう。
「身体障害者手帳」についての意外な勘違いが、いくつかあったのではないでしょうか?
改めて、腎機能障害の「身体障害者手帳」に関する重要ポイントをまとめます。
| 1. | 腎機能障害の「指定医」による診断書・意見書が必須。すべての医師が指定医ではないので注意。 |
| 2. | 腎臓機能障害認定基準はガイドライン扱いのため、自治体によって独自の認定基準を持つ場合がある。窓口での確認が必須。 |
| 3. | 腎臓機能障害の等級は、重いほうから1級・3級・4級(2級は存在しない)の3区分。 1級はCr値8.0mg/dl以上が目安。 |
| 4. | 平成30年4月以降、eGFRが3・4級の判定指標として追加(日本腎臓学会・日本透析医学会の連名要望により改正)。 eGFRの記載があれば、血清クレアチニン値の要件を満たさなくても3・4級の認定が可能になった。 |
| 5. | 再交付が必要な場合:障害の程度が変わった時、新たな障害が生じた時、手帳を紛失した時。また、居住地変更・氏名変更・死亡・認定基準非該当になった場合も手続きが必要。 |
| 6. | 腎臓移植後でも抗免疫療法を行っている間は手帳の返還不要。ただし、抗免疫療法を要しなくなった後に認定基準に該当する場合は再認定の検討が必要。 |
| 7. | 障害年金の等級(1・2級)と身体障害者手帳の等級は、まったくの別物。手帳の等級が年金額に影響することはない。 |
最後に、私自身の経験から一つ。
透析を始めてからハローワークへ行き、転職支援セミナーに参加したとき、はじめて「身体障害者手帳」を提示しました。障害者枠の求人に応募する際や、会社と労働契約を結ぶ際に手帳のコピーを求められることは珍しくありません。就職・転職活動の場面では「必携」と思っておいていい書類です。
それ以外にも、手帳の活用場面は実に多岐にわたります。
| 場面 | 主な内容 |
|---|---|
| 就職・転職 | 障害者枠への応募、労働契約時の提示 |
| 税金の減免 | 所得税・住民税の減免(等級・所得による) |
| 交通機関 | バス・地下鉄の半額割引、タクシーの割引、高速道路半額割引など |
| 自動車関連 | 自動車税の減免、駐車禁止除外指定など |
| 通信・民間サービス | 携帯電話料金の割引、各種民間サービスの割引など(各社・各サービスで異なる) |
| 医療費助成 | 自立支援医療(更生医療)・障害者医療費助成制度の利用 |
腎機能障害の認定基準に該当しているのであれば、できるだけ早く申請しておくことを強くおすすめします。
申請すれば「すぐに使える」ものではありませんが、取得しておけば今後の生活を支える大きな武器になります。まずは自治体の福祉担当窓口に相談することから始めてみてください。