透析の合併症を食事療法で予防!急性・慢性の種類と対策を解説

2018年3月1日

透析の合併症を食事療法で予防!急性・慢性の種類と対策を解説
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更新日: 2026年7月20日

透析による合併症。予防&対策は【食事療法】がもっとも有効!

 

ここでは透析による合併症について取り上げます。

透析療法には「血液透析」と「腹膜透析」がありますが、どちらにも特有の合併症があります。腹膜透析であれば、腹膜炎やカテーテル出口部・皮下トンネル感染症、被嚢性腹膜硬化症などが挙げられます。

日本では血液透析を選択している方が約97%と大多数なので、ここでは血液透析をしている場合の合併症に絞って解説します。

 

透析は長期にわたって続けていくものです。腎移植を受けて本来の腎臓を取り戻せれば良いのですが、日本での普及率はまだ低く、さまざまな課題がある中で透析を続けていかなければなりません。透析患者なら誰しも移植への希望を持ちながらも、現実と向き合っているのではないでしょうか。

 

そして、はじめて血液透析を始める透析導入者にとっての最初の関門が急性合併症(短期的合併症)です。そのなかで最もよく知られているのが「不均衡症候群(ふきんこうしょうこうぐん)」です。

不均衡症候群については、別記事で詳しく解説しています。
参照:「透析導入者は「不均衡症候群」を乗り越えなければならない。

 

・血液透析の合併症には急性合併症(短期的)と慢性合併症(長期的)の2種類がある
・急性合併症で最もよく知られるのが「不均衡症候群」
・慢性合併症は心臓・血管・骨など全身に及ぶ——医療的にはこちらのほうが重要
合併症の予防・対策の柱は「食事療法」——早い段階からの実践が鍵
・自分の定期検査データと食事の関係を知ることが、合併症予防の第一歩

 

透析による合併症、どのようなものか想像できますか?

透析のなかでの体・脳の反応

透析を導入した私は、「不均衡症候群」という言葉は事前に聞いていて、説明も受けていました。しかし、実際にどんなものかは、経験・体験してみないと分からない——今振り返ってもそう思います。

 

「血液透析をしているあいだ、体にどのような影響を与えているのか?」

 

血液透析は、本来の腎臓が24時間365日かけて行っていることを、3〜5時間/日・週3回というスケジュールの中で行っています。この間隔(中1日〜中2日)に体内に溜まった尿毒素や水分などを取り除かなければ、尿毒症に近い症状が出てきてしまいます。

 

生体の腎臓と血液透析を、時間的な処理面から「マラソン」と「短距離走」で例えてみます。

 

 生体の腎臓血液透析
例え中・長距離マラソン短距離走
特徴24時間365日、ゆっくり継続的に機能する3〜5時間で短時間に集中して処理する
体への影響体への急激な変化は少ない短時間で体内に様々な変化が起きる

 

透析前の体内は、尿毒素や水分が溜まり、血中濃度が高くなったり(逆に低くなったり)、カリウムやカルシウムなどのイオン(電解質)やpH(酸・アルカリバランス)が総崩れしています。それを短時間で「ほぼ健康な状態」に近づけていくのが血液透析です。

※透析治療が腎臓を回復させるものではなく、腎機能を完全に補うものでもないという点は、誤解のないようにお伝えしておきます。

 

透析中に体内で起きる「様々な変化」を整理するとこうなります。

 

変化の種類内容
1. 循環血液量・体液の低下除水を行うことで循環血液量が減少し、血圧低下を招く。最も大きな影響がある
2. 尿毒素類の血中濃度の低下短時間で尿毒素を一気に除去するため、脳との濃度差が生じる
3. 電解質の変動・pH異常の修正カリウム・カルシウムなどのバランスが急激に変化する
4. 熱の喪失・負荷体温調節への影響
5. 生体システムへの異常全身の恒常性維持機能が急激な変化に追いつかない

 

なかでも最も大きな影響を及ぼすのが「1. 循環血液量・体液の低下」です。透析では濾過(ろか)と同時に除水も行うため、循環血液量が減少し血圧の低下が起きやすくなります。これが血圧や脈拍の変化としてあらわれてくるのです。

※循環血液量は体重の約1/13とされています。例えば体重70kgの方なら70÷13≒5.4kgが循環血液量に相当します。

 

透析治療の詳細については、こちらの記事もご参照ください。
参照:「透析治療では何をするの?腎臓は本当にすごい司令塔だった!

 

血液透析の急性合併症(短期的合併症)

合併症にも2つあって、短期と慢性(長期)とがある

血液透析導入時にみられる急性合併症(短期的合併症)の代表は以下のとおりです。

 

急性合併症の種類主な症状・特徴
1. 不均衡症候群透析開始2〜3時間後に頭痛・吐き気・血圧低下・脱力感・発熱など。体が透析に慣れていない導入期に起こりやすく、透析に慣れると徐々に軽減する
2. 血圧の低下除水による循環血液量の減少が主因。頭痛・めまい・ぼんやり感が出やすい
3. こむら返り(筋肉けいれん)電解質バランスの急激な変化や循環血液量の低下が原因
4. 発熱(透析中〜透析後)感染や回路・ダイアライザーへの反応が原因のことも

 

急性合併症で最もよく知られ、起こりやすいのが「不均衡症候群」です。透析によって血液中の尿毒素は除去されますが、脳内の老廃物は除去されにくく、血液と脳との間に濃度差が生じます。脳内の老廃物のほうが濃いため、濃度を薄めようとして水分が脳へ流れ込み、脳が浮腫んで内圧が上昇します。これが不均衡症候群のメカニズムです。

程度も期間も個人差があり、透析に慣れていくと徐々に減っていきます。私の場合、この不均衡症候群から抜け出すまで2か月超はかかりました。仕事終わりに夜間透析をしていた分、疲労感も手伝って長引いたと感じています(透析患者によって個人差があります)。

 

透析患者が長期的に直面する「慢性合併症」とは

急性合併症(短期的)に対して、慢性合併症(長期的合併症)は、医療的にはこちらのほうに重きが置かれています。なぜなら、血液透析は長期にわたって続けるものであり、それに伴って合併症が生じやすくなるからです。

急性合併症と同じように、「いつの時点で」「どのような症状が出るか」は、透析患者によって異なります。

 

慢性合併症の種類おもな原因・関連する管理項目
二次性副甲状腺機能亢進症リン(P)・カルシウム(Ca)の管理不良→骨の異常・血管石灰化
高血圧・心臓肥大塩分・水分の過剰摂取→体重増→心臓への負担増
心不全除水不足や体重管理の失敗→体内の余分な水分が心臓を圧迫
脳血管障害(脳卒中)長期の高血圧→動脈硬化→脳出血・脳梗塞のリスク上昇
高カリウム血症カリウムを多く含む食品の過剰摂取(野菜・果物・加工食品など)
貧血腎性貧血(エリスロポエチン産生低下)・造血機能への影響
感染症免疫機能の低下・シャントへの感染リスク
アミロイド骨関節症β2ミクログロブリンの蓄積→長期透析患者に多い。手根管症候群など

 

リン(P)・カルシウム(Ca)の管理と合併症

リン(P)の管理は本当に難しく、大変です。私自身、この二次性副甲状腺機能亢進症になってしまいました。当時の原因として疑われたのが、市販の菓子パンの摂りすぎです。会社出勤時に朝食を手軽に済ませるためだったのですが……。

包装袋の裏面を見てみてください。リン酸塩などの食品添加物が使われた加工食品は、リンを非常に多く含んでいます。日本透析医学会の2025年改訂ガイドラインでも、清涼飲料水や加工食品の食品添加物由来のリン過剰摂取には注意が呼びかけられています。

リン(P)が高くなると副甲状腺ホルモンが増加・異常をきたし、カルシウム(Ca)との相関でバランスが崩れます。結果として骨以外の場所への石灰化(骨の石灰化)や骨密度の低下が起きてきます。

リン管理の詳細は、こちらもご参照ください。
参照:「透析でリン値の高い状態。副甲状腺機能亢進症、血管石灰化に

 

塩分・水分管理と心臓への影響

透析患者は尿量が減少し、最終的には無尿になります。塩分を摂りすぎると必然的にのどが渇いて水分も増え、体重増=心臓への負担増という連鎖が起きます。

またドライウェイト(DW:理想体重)まで除水できない場合、体内に過剰な水分が残り、これもまた心臓への負担を増やします。長期的に続けば心不全につながりやすくなります。

さらに長期にわたる高血圧は心臓肥大を引き起こし、動脈硬化症とも深く関わることから、脳血管障害(脳卒中:脳出血・脳梗塞)のリスクも高まります。

 

カリウム管理——最近の研究では柔軟な視点も

透析患者にとってカリウム制限は伝統的に重要な食事管理の柱でした。しかし最近の研究では、透析患者においてもカリウム摂取量と血清カリウム値が必ずしも単純に相関しないことが報告されています。

特に栄養障害のある高齢の透析患者やさまざまな合併症を持つ患者では、過度なカリウム制限がたんぱく質摂取の低下を招き、QOL(生活の質)の低下や予後不良と関連する可能性があります。

とはいえ、高カリウム血症は透析患者が日常的に警戒すべき合併症であることに変わりはありません。自己判断でカリウム制限をやめるのではなく、主治医や管理栄養士と相談しながら、自分に合った管理を進めることが大切です。

 

合併症の予防・対策に「食事療法」がもっとも有効な理由

ここまで紹介してきた慢性合併症を振り返ってみてください。ほとんどすべてに「食事」が深く関わっていることに気づくはずです。

 

管理が必要な項目過剰摂取した場合の合併症リスク目安(血液透析・週3回)
リン(P)二次性副甲状腺機能亢進症・血管石灰化・骨密度低下たんぱく質量(g)×15mg以下が目安
カリウム(K)高カリウム血症→心臓への影響2,000mg以下が目安(個人差あり)
塩分(Na)高血圧・体重増・心不全・脳血管障害6g未満/日が目安
水分体重増・除水量増・心臓への負担・透析中の血圧低下できるだけ少なく(個人差あり)
たんぱく質過多→リン増・尿毒素増、過少→栄養不足・筋肉量低下0.9〜1.2g/標準体重kg/日
エネルギー不足→栄養不良・体力低下、過多→肥満・代謝異常30〜35kcal/標準体重kg/日

※上記はあくまで目安です。個人の体格・尿量・合併症・身体活動度により異なります。必ず主治医・管理栄養士に確認してください。

 

合併症の予防・対策には「食事療法を主」として、薬物療法や運動療法を継続していかなければなりません。

そして、早い段階から食事療法を始めることで、合併症の発症や悪化を比較的抑えられると言われています。誰にでも必ず起こるものではないので、むやみに心配せず、定期検査のデータを見比べながら食事療法を続けていくことが大切です。

 

加工食品のリンに要注意!「食品添加物リン」の落とし穴

リン制限の観点で特に注意したいのが加工食品に含まれる食品添加物由来のリンです。

天然食品に含まれるリンは腸管からの吸収率が40〜60%程度ですが、食品添加物(リン酸塩)として使われているリンの吸収率はほぼ100%と言われています。つまり、同じ量の食品でも加工食品のほうが体内に吸収されるリン量が格段に多くなります。

 

食品添加物リンが多く含まれる食品の例
練り物(ちくわ・かまぼこ・はんぺんなど)ハム・ソーセージなどの加工肉
インスタント麺・スナック菓子菓子パン・市販のパン類
一部の清涼飲料水(コーラなど)ファストフード全般

 

市販食品を購入する際は、包装袋の裏面の「原材料名」で「リン酸塩」「ポリリン酸」「メタリン酸」などの表示がないか確認する習慣をつけましょう。私が菓子パンを朝食代わりにしていた頃にこれを徹底できていたら……と今でも思います。

 

◆まとめにかえて——食事療法は「しんどい制限」ではなく「自分を守る手段」

はじめて血液透析をした頃のことを振り返ります。

看護師さんから不均衡症候群をはじめとする急性合併症について詳しく説明を受けたとき、「前もって知っておくのと知らないのとでは全然違う」と今でも思います。透析に対する不安や、透析せざるを得なくなった落ちこみの中で、体がどんな状態になるのかを知っておくことは、精神的な準備として本当に大事なことです。

 

不均衡症候群の感覚は本当に独特なものでした。「体が変な感じがする」「いつもの自分ではないような気がする」——言葉にするのが難しい、いろんなことが同時に起きる感じ。透析時間の経過とともに気分や体調がどんどん芳しくなくなっていくのがわかって、気持ちが悪いのです。

「早くこの時間が終わってくれないかなあ」と、透析のたびに何度も叫びたい気持ちで過ごしました。今だから言えますが「頭(脳)も体も本当に正直!」——透析するには時間も「慣れ」も必要なのだということを、身をもって学びました。

 

20年超透析を行っている今の私は、透析中の血圧低下とともに、最近では痒み(かゆみ)が強くなってきたという変化も感じています。幸いにも手術・入院を経験したことがあっても、仕事に支障が出るような体調不良はなく「ほぼ健康に近い状態」を維持できています。

 

参照:「透析患者の仕事上の相談ごと。上司・同僚への説明・理解から!

 

どうしても慢性合併症は避けられないとは言われます。しかし、食事療法をしっかりと続けることで、発症の時期を遅らせたり、重症化を防いだりすることは十分可能です。

 

食べ過ぎ・飲みすぎで心臓をバクバクしながら除水量を増やすとか、翌日も透析の疲れが残って仕事にならないとか——そういう苦労はできればしたくない。それが正直な気持ちです。

 

最後に、急性合併症・慢性合併症に対して透析患者ができることをまとめます。

 

1.急性・慢性それぞれの合併症にどんなものがあるかを正しく理解する
2.食事療法を主として、薬物療法・運動療法と組み合わせて継続する
3.定期検査データ(リン・カリウム・塩分摂取量の目安など)と食事内容を照らし合わせる習慣をつける
4.加工食品の食品添加物リンに注意。原材料名の確認を習慣に
5.自己判断ではなく、主治医・管理栄養士と相談しながら自分に合った食事管理を進める

 

透析導入時点ですでに別の合併症を持っている場合は、さらに悪化しないよう注意が必要です。「怖いから」と過剰に構えるのではなく、正しく知って、できることを続ける——それが、長く透析生活を続けていくための一番の力になると、私は思っています。