透析【リン値の高い状態】は副甲状腺機能亢進症や血管石灰化に!

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リン値の高い状態。副甲状腺機能亢進症、血管石灰化に

 

透析においては、慢性腎臓病の治療上ではあまり意識していなかった食事療養のなかに、「リン(P)の摂取に注意すること」が挙げられます。

 

現代の食生活において、加工品や冷凍品はとても身近なものであり、実に便利なものです。

ただ製造の過程のなかで食品保存や結着補強材といった目的のために、それらの中に添加されていて、当たり前になっています。

 

そのためリン(P)は非常に摂りやすくなっていて、過不足になることはほとんどありません。
健康な人以上に、摂取のしかたに苦労しているのが透析者なのです。

透析者にとってリン(P)は嫌でも入ってしまうだけでなく、尿が出ないので体内にも残ってしまいます。結果、後々体内や血管へ影響を受けてしまうために、上手につきあわなければならないのです。

 

・リン(P)は非常に摂りやすいが、透析者は健康な人以上に過剰になりがちで、調整が必要
・よって、透析でのリン値の高い状態は避けたい
・たんぱく質の多い食品には多くのリン(P)が多く含まれている、という事実
・高リン血症になると「二次性副甲状腺機能亢進症」や「血管の石灰化」に
・食事療法は大事だが、リン吸着剤はしっかり飲むこと
目次

透析でリン値の高い状態は避けたい!

リン(P)の働き知ってる?透析者の過剰摂取は【リスク大】」では、リン(P)のはたらきや含まれる食品について説明しました。

 

まとめると、

・リン(P)の働きはカルシウム(Ca)と共に歯や骨を作る大事な栄養素であり、相互関係にあること

・牛乳やヨーグルトといった乳製品、大豆、ししゃも、いわしの丸干しといったものに、リン(P)が多く含まれていること

・リン(P)摂取量は健康な人も透析者も過剰気味。加工品や冷凍食品にも注意すること

 

えっ!たんぱく質とリン(P)との意外な関係

たんぱく質の多い食品はリン多い

それから、もう1点。「これもそうなの!」と言える事実があります。

「たんぱく質※の多い食品には多くのリン(P)が多く含まれている」という事です。

たんぱく質には2種類あって、「動物性たんぱく質」「植物性たんぱく質」があります。

 

動物性たんぱく質・・・
肉類・魚類・卵・牛乳など。良質なアミノ酸を含み、コレステロールや飽和脂肪酸などの物質を含みます。

植物性たんぱく質・・・
大豆、凍り豆腐、きな粉など。必須アミノ酸を欠くことはありますが、低脂肪であり、コレステロールは含まれません。

 

【事例】

皮付き鶏もも肉(50g)と納豆(50g/1パック)があった場合。

鶏もも肉は、リン55mg・たんぱく質8.7g
納豆は、リン94mg・たんぱく質8.4g

 

もも肉と納豆には、「動物性たんぱく質」「植物性たんぱく質」という違いがあります。

ですがこの場合、ほぼ同じようなたんぱく質の量であっても、リン(P)の量は皮付き鶏もも肉の方が、納豆よりも約1/2と抑えられるわけです。

 

なお、具体的な「リン含有量が多い食品」についてはリン(P)の働き知ってる?透析者の過剰摂取は【リスク大】でも、確認することができます。

 

「たんぱく質の量」といってもなかなかイメージしづらいとは思います。
ざっくばらんで構いません、普段から食べるもので構いません。

 

自分に必要なたんぱく質の摂取量を知ることには、意義があります。
なぜなら、必要以上のたんぱく質を摂ってしまうということは、リン(P)の摂りすぎになってしまうからです。

 

なお、男女別に挙げてみましたので、こちらも参考にしてみてください。

必要なたんぱく質摂取量(g)=標準体重(kg)×(1~1.2g)です。

 

・標準体重70kgの男性では・・・
必要なたんぱく質摂取量(7000~8400g)=標準体重70(kg)×(1~1.2g)

 

・標準体重50kgの女性では・・・
必要なたんぱく質摂取量(5000~6000g)=標準体重50(kg)×(1~1.2g)

 

リンの値が高くなっていくと・・・

リン(P)の値が高くなっていくと・・・.

慢性腎臓病における食事療法では、ステージ(病期)3aから「低たんぱく食・高カロリー」にすることで、腎臓を保護してきました。

なぜなら、摂取するたんぱく質の量が増えれば、腎臓の負担が多くなって傷んでしまうからです。

 

さらに進行して、ステージ5である末期腎不全~透析ともなれば、本来腎臓のもつ体内の余分な水分や老廃物を排出したりすることが困難となるために、体内でもリン(P)が増えてしまいます。

とりわけ透析をしていても、たんぱく質も一定以上摂ってしまうと、血液中の尿素窒素※(BUN)やリン(P)が増加してしまいます。

 

※尿素窒素(BUN)は、体内たんぱく質の老廃物です。基準値より高値(=21以上)であれば腎臓の病気が疑われ、病態として腎炎、腎不全、糖尿病性腎症、アミロイドーシスなどが挙げられます。

そのために、

・血清リン値の上昇を招くために「高リン血症(=血液中のリン濃度が高い状態)」を起きるようになり、
・体は酸性に傾き、臓器の正常な働きを妨げることになります。

 

「高リン血症」は、血液中のリン濃度が高い状態と言いますが、体にはどのような症状が出てくるのでしょうか?

 

高リン血症になると「二次性副甲状腺機能亢進症」や「血管の石灰化」などが起きます。

 

二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症

⇒血液中のカルシウムが低下し、リンが上昇することで、副甲状腺を刺激し、副甲状腺ホルモン※(PTH)が過剰に分泌されます。

この歯止めが利かない分泌状態が長時間続くと、副甲状腺が肥大してしまい、血液中のカルシウム濃度が必要以上に高くなります。

 

症状:骨から血液中へのカルシウム吸収を引き起こし、骨がもろくなる「線維性骨炎」となり、骨痛や骨変形・病的骨折などの原因となります。

※副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨を溶かし血液中のカルシウム濃度を上昇させる作用を持っています。

血管の石灰化

⇒副甲状腺ホルモンの過剰な分泌により、さまざまな場所へカルシウムが沈着(異所性石灰化※)していきます。

症状:動脈硬化や心臓弁膜症・関節炎など

 

※異所性石灰化は、背骨の変形や関節痛、骨痛といった激しい痛みを伴います。

透析でリン(P)を取り除けるのは700~800mgでしかない

透析でリン(P)を取り除くにしても時間的制限があります。
透析者が確実に実践しなければならないことは、やはり「食事療法」です。

 

食事療法がうまくできていない、リン(P)の過剰摂取から来るリスクとは、二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症や血管の石灰化の原因になる「高リン血症」になること、そして死亡リスクも高まるということです。

 

なので、

「十分な透析、食事療法、リン吸着剤の服用」することが必要なのです。

 

・透析者のリン(P)摂取量は700~800(mg/日)以下に制限されます。


→健康な人と比較して低くなっていますが、成人女性並みととらえてください。
→1回の透析で取り除けるのが700~800mgだからです。

 

逆に言うとリン(P)を多く含むたんぱく質は控えめに、加工食品や冷凍食品もなるべく避けるべきです。

・リン(P)はたんぱく質が豊富な食品に多く含まれる!


→血清リン値が高い(5.0mgEq/dl以上)の場合はリン(P)を多く含んでいる食品(牛乳、ヨーグルト、ししゃも、いわいの丸干しなど)は控えましょう。

・加工食品、冷凍食品など

→ハンバーガーやカップラーメンなどのファーストフード、インスタント食品、加工したもの、冷凍したものは大概リン(P)は多いです!

 

また、盲点である清涼飲料水や炭酸水にも注意してください。パッケージの裏側をよくよくみるとその表記が見受けられます。

食品の多くは食品添付物として「無機リン」が多く含まれているので摂りすぎに注意し、できるだけ避けるべきです。

◆まとめにかえて

私が透析導入後の食事療法で苦労してきたのは、水分や塩分制限でもなく、今回取り上げた「リン(P)の摂取量」でした。

透析しはじめたのが20代後半でしたから、医者からは「痩せないためにも、まずは食べなさい」と言われました。

当時は若かったうえに、「1に透析、2にリン吸着剤で調整」という治療方針があったからです(まあ若くなくても、透析者は同じように説明を受けると思いますが・・・)。

仕事もこなすためには、大きめのおにぎりを作っておなかを満たすことも多かったのですが、菓子パンやサンドウイッチを買って食べることもありました。

菓子パンやサンドウイッチと言えば、膨らし粉のベーキングパウダーが入っていて、何とリン(P)含有量は3700mgと突出してますし、加工品のハムもはさんであります。

 

「食直前」というリン吸着剤の飲み方がなかなか習慣化されなくて、忘れてしまうこともありました。

なかなか1日のリン(P)の摂取量を把握することは意外と難しく、リン吸着剤を増やしたり、中止したり、また再開するなどを繰り返していました(透析者であれば、ふつうにあることではあるのですが・・・)。

その結果、「副甲状腺機能亢進症」になってしまいました。

リン吸着剤を飲んでいても副甲状腺ホルモン(PTH)値の高い状態が、ふつうになってしまったのです。なかなか値が戻らなくなっていたのです。

ふだんから乳製品やファーストフード、加工食品もインスタント食品もなるべく摂らないようにしていたにも関わらず、です。

とは言え、やはりおにぎり、特に加工品でもある菓子パンやサンドウイッチといったものを摂ってきたことや吸着剤の飲み忘れというのが、多く影響しているものだと実感と反省をしました。

 

副甲状腺機能亢進症のため手術→入院しました(入院中でも「透析」は行うことになります)。こうして退院後、仕事復帰までには2週間ほどかかりました。

年齢も積み重なってきて、さすがに若い頃のように食べる量は落ちてきました。

菓子パンやサンドウイッチよりは、リン(P)が少ないおにぎりをなるべく食べるようにしてきました。リン吸着剤の飲み方も習慣化もあってそのおかげで、リン(P)の値も良いデーターで推移しています。

ただ今後もしっかりと食べていかないと、体重減や筋肉量減はみるみる進んでいくと透析で苦労します。

また慢性合併症ということで、今後副甲状腺機能亢進症になったり、血管の石灰化も進行していったりしているのかもしれません。

会社員をしていると、仕事に透析もあって、どうしても自炊もできないときが出てきます。

加工品や冷凍品を頼ってしまうことは、どうしても仕方がないと思います。

 

割り切りは必要でしょうが「食べ方の工夫」は必要でしょう!

「リン(P)含有量の少ない低たんぱく米を食べる」「リン(P)の低い豚しゃぶや鳥もも、胸肉を食べる」「清涼飲料水よりは煎れたほうじ茶」といったように・・・。

あなたはリン(P)とどのように付き合っていきますか?

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