人工透析予備軍とは?慢性腎臓病の進行と早期発見が命を守る理由

2018年1月22日

人工透析予備軍とは?慢性腎臓病の進行と早期発見が命を守る理由
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更新日: 2026年10月13日

People at Risk of Needing Dialysis

痛風予備軍、糖尿病予備軍、人工透析予備軍…。

何かと「○○予備軍」という言葉を耳にしますよね。でも実際にどういう状態を指すのか、よくわからないまま聞き流してしまっている方も多いのではないでしょうか。

私は20年超透析を行っている患者ではありますが、その経験から言えることがあります。「予備軍」という言葉は、あなたが気づかないうちに、すでに病気に向かって進んでいることを意味します。

特に人工透析予備軍——すなわち慢性腎臓病(CKD)——は、自覚症状がほとんどないまま静かに進行するのが最大の特徴です。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるほど、悲鳴を上げずに壊れていく臓器なのです。

この記事でわかること

  • 慢性腎臓病(CKD)は人工透析予備軍そのものである
  • CKDと診断されるには3つの診断基準がある
  • ステージ1〜2でも、早めに治療を始めるほど予後がよくなる
  • ステージ3までは食事療法で腎機能の低下を食い止めることができる
  • ステージ4は「高度の低下」、ステージ5は「末期腎不全」
  • CKD患者数は最新推計で約2,000万人——成人5人に1人(CKD診療ガイド2024・日本腎臓学会)

「人工透析予備軍」とは何か?

冒頭でふれた「痛風予備軍」「糖尿病予備軍」はいずれも腎機能と深くかかわっています。まずはここから整理しましょう。

痛風予備軍

痛風予備軍と腎臓の関係

血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)を放置すると、「痛風腎」を引き起こしたり、慢性腎臓病の進行を早めたりします。さらに悪化すると、腎機能が低下し、最終的には人工透析・腎移植に至る可能性もゼロではありません。

糖尿病予備軍と腎臓の関係

血糖値が高い状態が何年も続くことで、糖尿病へと進行します。そして腎臓の毛細血管がダメージを受け続けることで起きるのが「糖尿病性腎症」です。

透析の原因疾患
日本透析医学会の統計調査「わが国の慢性透析療法の現況(2023年末)」によると、透析患者全体における原因疾患の第1位は糖尿病性腎症で39.5%です。次いで慢性糸球体腎炎(23.4%)、腎硬化症(14.0%)が続きます。約4割が糖尿病性腎症由来です。なお糖尿病から透析になる人が最多であることは事実です。(出典:日本透析医学会 JSDT2023)

年齢を重ねるにつれて腎機能は自然と低下していくものです。つまり、「いつか人工透析予備軍に入ってしまうかもしれない」というのは、誰にとっても他人事ではないのです。

そして最後にくる「人工透析予備軍」ですが、端的に言えば——

「慢性腎臓病は人工透析予備軍である、といっても過言ではない」。

これが結論です。

【最新データ】CKD患者数は約2,000万人に更新(2024年)
2023年のCKD診療ガイドラインでは「約1,480万人・成人の約7〜8人に1人」とされていましたが、2024年に全国協会けんぽデータベース等を用いた新たな推計では、約2,000万人(成人5人に1人)であることが明らかになりました(2023年度日本腎臓学会公的研究班研究成果合同発表会・CKD診療ガイド2024)。国民の早期CKD診断率は10%未満ともいわれており、多くの方が気づかずに過ごしています。(出典:CKD診療ガイド2024・日本腎臓学会)

CKDが気づかれにくい理由

日本における慢性腎臓病(CKD)の推計患者数は約2,000万人、成人の約5人に1人が該当します(2024年最新推計)。これは「人工透析予備軍」が日本人の中にこれほど多く存在するということです。

それほど多くの方が該当するのに、なぜ気づかれないのか。理由はいくつかあります。

CKDが気づかれにくい主な理由
理由具体的な状況
腎臓は「沈黙の臓器」機能が低下しても痛みや目立った症状が出にくい
健診データを軽視しがちクレアチニンやeGFRの数値を「よくわからないから」と放置してしまう
治療への意欲低下治療しても痛みが消えるわけではないため、モチベーションが上がりにくい
初期診断率の低さ早期CKDの診断率は日本で10%未満との研究報告がある

実はあなたも、この「気づいていない予備軍」のひとりである可能性が、決して低くはないのです。

慢性腎臓病(CKD)の定義とは

慢性腎臓病(CKD)の定義とは

そもそも慢性腎臓病(CKD)とは何でしょうか。

腎臓は背中の腰あたりにあるソラマメ形の臓器で、大きさはこぶしほど。左右に1つずつあります。血液をフィルターのように濾過して、体に不要な水分や塩分・老廃物を尿として外に出す——それが腎臓の主な働きです。そのフィルターの役割を担っているのが「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる極細の血管の塊です。

CKDの診断基準(3つの条件)

慢性腎臓病(CKD)と診断されるには、以下の基準があります。

CKDの診断基準
番号診断基準の内容
①腎臓の構造や機能に明らかな異常(傷ついている状態)があること
②腎臓の働きが正常の60%未満(糸球体濾過量=GFRが60mL/分/1.73㎡未満)
③①または②のいずれか(あるいは両方)が、3か月以上続いていること

つまり、「腎臓が傷ついて、その状態が3か月以上続いている」とCKDと診断されます。腎臓が傷むということは、血液を濾過して原尿を作る力(=糸球体濾過量、英語でGFR)が落ちているということです。

このGFRの値は、そのまま「腎臓が今どれくらい残った機能で動いているか(残腎機能)」を示す数値として読み替えることができます。たとえばGFRが28%であれば、腎臓は本来の力の28%しか使えていない状態です。

健診で必ず確認してほしい2つの数値

CKDの早期発見に最も役立つのが、健康診断で確認できる以下の2つの数値です。これらを「よくわからないから」と放置することが、気づかないうちに進行する慢性腎臓病の最大の落とし穴です。

健診で確認すべき腎機能の2大指標
指標名何を示すか要注意のライン
eGFR(推算糸球体濾過量)腎臓がどれだけ血液を濾過できているかを示す数値。100に近いほど正常60未満で要注意。45未満は腎臓専門医の受診を
クレアチニン(Cr)筋肉の代謝産物で、腎機能が落ちると血中に増える老廃物。高いほど腎機能が低下している男性1.1mg/dL以上・女性0.8mg/dL以上で異常値の目安

慢性腎臓病のステージは5段階ある

病気の重さ(重症度)によって、ステージ1〜5の5段階に分類されています。自分や家族がどのステージにあるかを知ることが、適切な治療を選ぶ第一歩です。

ステージ1〜3:自覚症状がないことが最大の危険

CKDステージ1〜3の詳細
ステージ腎臓の状態GFR(残腎機能)主な自覚症状推奨される対応
1障害はあるが機能は正常90%以上ほぼなし生活習慣の改善・定期検査
2障害あり・軽度低下60〜89%ほぼなし食事療法・生活習慣改善
3a中等度低下45〜59%ほぼなし〜軽微食事療法の徹底・通院継続
3b中等度〜高度低下30〜44%軽微な症状腎臓専門医(腎臓内科)への受診が必要

腎臓が「沈黙の臓器」と言われるのは、まさにこのステージ1〜3の間にあります。かなり腎機能が落ちていても、痛みも腫れも出ない。だから気づけないのです。

5段階のステージ中で最も患者数が多いのはステージ3とされています。「多くの人が、気づかないままステージ3にいる」という現実があります。

ステージ1・2であっても、早めに治療を始めるほど予後がよくなります。そしてステージ3までであれば、食事療法を徹底することで腎機能の低下を食い止めることができます。

ステージ3は「まだ大丈夫」ではありません。
同時に、ステージ4・5への進行がいっそう早まる転換点でもあります。特に3bになれば、これまでの内科やかかりつけ医ではなく、腎臓専門医(腎臓内科)での治療が必要になってきます。同じステージ3でも、3aと3bでは対応がまったく異なります。

ステージ4・5:透析・腎移植を検討する時期

では、ステージ4・5とはどのような状態なのでしょうか。

端的に言うと、腎臓病の治療を続けながらも、人工透析や腎移植について本格的に検討・準備を始める時期です。

CKDステージ4・5の詳細と主な症状
ステージ腎臓の状態GFR主な症状治療の方向性
4高度の低下15〜29%腎性貧血・高カリウム血症・むくみ・疲労感・夜間多尿透析・腎移植の準備を本格的に検討開始
5末期腎不全15%未満むくみ・疲労感・食欲不振・吐き気・息切れ透析・腎移植の導入。GFR10%以下で尿毒症の出現

ステージ4ではGFRが15〜29%になり、腎臓がほぼ使い物にならなくなっています。体内に老廃物や余分な水分がたまり、腎性貧血(腎機能低下による貧血)や高カリウム血症、むくみ、疲労感、夜間多尿といった症状が現れてきます。

ステージ5ではGFRが15%未満、腎臓がほとんど機能しない「末期腎不全」の状態です。むくみ、疲労感、食欲不振、吐き気、息切れなどの症状が出てきます。

さらにGFRが10%以下になると「尿毒症」があらわれます。心臓・消化器・脳神経などに障害が起こり、体全体がダメージを受けます。

尿毒症の症状が出現した場合、血液透析のための「シャント手術」(腕の血管を太くする手術で、血液の出入り口をつくる処置)が行われ、その後、人工透析または腎移植が導入されます。

ステージ別:今すぐできる対策一覧

20年超透析を行っている私が、ステージごとに「今すぐできること」をまとめました。早く動くほど、腎臓の機能を長く保てます。

慢性腎臓病ステージ別のケア

CKDステージ別・今すぐできる対策
ステージ今すぐできる対策ポイント
1〜2生活習慣の見直し・食塩制限・定期検査この段階で動けば、透析を長期間遠ざけられる可能性が高い
3a食事療法(たんぱく質・塩分・カリウム制限)の徹底かかりつけ医と連携し、栄養士への相談も始めよう
3b腎臓専門医(腎臓内科)への受診かかりつけ医だけでは限界。専門医と連携する時期
4透析・腎移植の準備を本格的に開始シャント手術のタイミング・透析施設の選択を検討
5人工透析または腎移植を導入透析の種類(血液透析・腹膜透析)や生活スタイルを確認

慢性腎臓病と心臓・脳血管の関係——透析だけがリスクではない

慢性腎臓病(CKD)について知る際に、見落とされがちな重要な点があります。それは「CKDは透析にならなくても、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める」という事実です。

医学的な研究が進み、現在の治療の流れは以下のように変わっています。

「慢性腎臓病(CKD)→(心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇)→腎不全→透析療法ないし腎臓移植」

これまでは「腎臓病→腎不全→透析」というシンプルな流れで理解されていましたが、CKDの治療段階から「糖尿病」「高血圧」だけでなく、心臓と脳のリスクもあわせて管理・予防する時代になっています。

CKDが進行すると高まる合併症リスク

CKDが進行すると高まる合併症リスク
合併症なぜ起こるか予防のポイント
高血圧腎機能低下→血圧調節ホルモンが乱れる→さらに腎臓が悪化する悪循環減塩・降圧薬の服用・定期的な血圧測定
心筋梗塞・脳卒中動脈硬化が進行し、血管が詰まりやすくなる禁煙・脂質管理・適度な運動
腎性貧血腎臓でのエリスロポエチン(造血ホルモン)の産生が低下する透析患者はエリスロポエチン製剤を使用
骨粗しょう症ビタミンDの活性化障害・リンの蓄積で骨が弱くなるリンの食事制限・活性型ビタミンD製剤の服用

まとめ:「気づかない」ことが最大の敵

「慢性腎臓病(CKD)は新たな国民病であって、人工透析予備軍だ」。

もはや、これに尽きます。

どのような病気でも早期発見・早期治療が基本ですが、腎臓病はとりわけ早期発見と早期治療が重要です。

なぜなら、腎臓は「沈黙の臓器」。症状は出ないまま、気づかないうちに悪化していきます。かなり機能が落ちるまで、自覚症状すら出てこないことがほとんどです。

そして一定のステージを超えて進行してしまうと、腎臓がよくなることはなく、症状の進行を止めることさえ難しくなります。

結局のところ、ステージが進んでしまった場合は、いずれ来る人工透析・腎移植の時期まで、食事療法や薬物療法で「これ以上悪化させない」治療を続けていくことになります。

だからこそ、ステージ1や2という、腎機能障害がさほど進んでいない段階で治療を始めることが何よりも大事なのです。

この記事のポイントまとめ

  • CKD(慢性腎臓病)は人工透析予備軍の別名。最新推計で日本人の成人約5人に1人(約2,000万人)が該当(CKD診療ガイド2024・日本腎臓学会)
  • 透析の原因疾患第1位は糖尿病性腎症(39.5%)(日本透析医学会JSDT2023)
  • ステージ1〜3は自覚症状がほぼなく、気づかないまま進行するのが最大のリスク
  • ステージ3まで食事療法を徹底すれば腎機能低下を食い止められる
  • ステージ3bからは腎臓専門医への受診が必要
  • ステージ4は「高度の低下」、ステージ5は「末期腎不全」——透析・腎移植の準備時期
  • 健診でGFRやクレアチニン値が指摘されたら、絶対に放置しないこと!

健康診断でクレアチニンやeGFR(推算GFR)の数値を指摘されたことがある方は、ぜひ一度、腎臓専門医に相談してみてください。「気になった今」が、行動するベストなタイミングです。

参照:「透析へ至る原因疾患は何?今すぐにでも生活改善を始めて」