2025年5月2日

更新日: 2026年7月15日

「慢性腎臓病(CKD)は新たな国民病であって、人工透析予備軍だ」
と、「人工透析予備軍とは?気づかずに進行する慢性腎臓病に注意!」のなかで説明しました。
私は20年超以上、週3回の透析を続けてきた現役の透析患者であります。今回は「透析に至る原因疾患は何か?」「なぜ生活改善が重要なのか?」について、自分の経験もまじえながらお話しします。
慢性腎臓病(CKD)ですが、実は単一の病名ではありません。「腎臓が慢性的な経過をたどりながら徐々に機能を失っていく病気の総称」であり、症候群の名称です。
治療中に「慢性腎臓病」や「CKD」と言われても、最終的には具体的な診断名がつきます。「糖尿病性腎症」「慢性糸球体腎炎」「IgA腎症」というように、腎機能の低下に至った原因となる疾患名がつけられます(その点はご注意ください)。
ここで質問です。
Q:腎不全を経て毎年何万人の人が新たに透析を導入しているか、お分かりですか?
(選択肢:約1.5万人、約3万人、約4万人)
🔬新規透析導入患者数
答えは「約4万人/年間」です。日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」によると、2023年の新規透析導入患者数は38,764人、2022年は39,683人でした。元記事の「約3万人」は古いデータです。なお近年は減少傾向にあります。(出典:日本透析医学会 JSDT2023)
では、透析に至る原因疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。
| 順位 | 原因疾患名 | 新規導入割合(2023年) | 在籍患者での割合(2023年) |
|---|---|---|---|
| 1位 | 糖尿病性腎症 | 38.3% | 39.5% |
| 2位 | 腎硬化症 | 19.3% | 14.0% |
| 3位 | 慢性糸球体腎炎(慢性腎炎) | 13.6% | 23.4% |
出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2023年12月31日現在)」
⚠️ 原因疾患の順位が変わっています!
元記事では「2位:慢性腎炎、3位:腎硬化症」としていましたが、新規透析導入患者の順位は2019年以降、「2位:腎硬化症、3位:慢性糸球体腎炎」に変わっています。高齢化の進展とともに腎硬化症が増加し続けているためです。在籍患者全体では慢性糸球体腎炎が2位ですが、「これから透析を始める人」の中では腎硬化症が2位です。(出典:日本透析医学会 JSDT2023)
これらはすべて「慢性」によるものです。ある日突然ではなく、長年にわたって少しずつ腎機能が傷んでいった結果なのです。
腎不全が末期となると、治療法として「透析療法(主に血液透析と腹膜透析)」または「腎臓移植」のどちらかを選ぶことになります。
透析というと、9割方の方が「血液透析」を選んでいます。
医師の見解や治療の流れが、少しずつ変わってきました。
これまでは「腎臓病→腎不全→透析療法ないし腎臓移植」というシンプルな流れでした。
しかし今日では、
「慢性腎臓病(CKD)→(≒心筋梗塞や脳卒中)→腎不全→透析療法ないし腎臓移植」
という流れになっています。
何が変わってきたのかといえば、この図式の途中にある「CKD→(≒心筋梗塞や脳卒中)」という部分が新たに注目されるようになった点です。集約すると2点あります。
1点目:「慢性腎臓病(CKD)という概念の広がり」
昔から腎臓病はありましたが、近年は不規則・不健全な生活習慣や食生活が原因で腎臓病の方が増えています(現在も増加傾向が続いています)。そのため学会や医師が「腎臓の機能を理解してもらう」「慢性腎臓病を進行させない」「透析にならないようにする」という啓発活動を行ってきました。
2点目:「CKDと心筋梗塞・脳卒中の関係」
私が腎臓病の治療を始めたのが2000年前後、20代前半のことです。当時は慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)が治療の中心でした。糖尿病性腎症が透析原因の1位に台頭したのが1998年から。それ以降、ずっと1位のままです。
原因疾患3位の「腎硬化症」も高齢化の進展に伴い増加しており、いずれも「糖尿病」「高血圧」と深い関係があります。
医学的な研究が進み、慢性腎臓病(CKD)の治療段階から「糖尿病」「高血圧」だけでなく、それらから生じる心筋梗塞や脳卒中もあわせて治療・予防するようになってきました。
「高血圧」の場合を例に見てみましょう。
腎臓には常に大量の血液が流れ込んでおり、血液や血管の状態に影響を受けやすい臓器です。高血圧が続けば、腎臓の中にある「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる極細の血管をじわじわ傷めます。
また腎臓には「血圧を調節する」機能もあります。ホルモン(レニンやカリクレイン)の分泌を調整することで血圧を正常に保っているのですが、高血圧が続けばそのコントロールが効かなくなり、さらに血圧が上がってしまいます。
「腎機能の低下→血圧の上昇→さらなる腎機能低下」という悪循環——これが次第に動脈硬化の進行へとつながっていきます。そこに「糖尿病」や「脂質異常症」も加わると、動脈硬化はさらに促進され、心筋梗塞や脳卒中を引き起こしやすくなるのです。
それでは、3つの主要な原因疾患をより具体的に見ていきましょう。
透析原因の第1位は「糖尿病性腎症」であり、糖尿病の合併症の一つです。
糖尿病が長く続くと、血液を濾過(ろか)して尿を作る腎臓の「糸球体」が傷んでしまい、たんぱく尿が出てきます。悪化すると腎臓への血流が悪化し、尿を作る機能も著しく低下します。
さらに、糖尿病の初期段階から心筋梗塞や脳卒中も引き起こしやすくなるため、腎臓だけでなく心臓と脳の両面からも注意が必要です。きちんと検査・治療を続けないと、静かに進行して慢性腎不全へとつながります。
🔬糖尿病の現状
元記事では「糖尿病が強く疑われる人820万人、可能性が否定できない人1050万人」(計1870万人)としていましたが、これは古いデータです。最新の2024年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省・2025年12月公表)によると、糖尿病が強く疑われる人は約1,100万人と推計されています。また糖尿病で治療を受けている患者数は令和5年(2023年)で552万2,000人(患者調査)。糖尿病の増加傾向は続いており、「糖尿病の増加=糖尿病性腎症の増加」という関係は変わっていません。
腎硬化症は、高血圧によって腎臓の糸球体や細い血管に動脈硬化が起き、血流が少なくなり、腎臓が萎縮して硬くなっていく病気です。
「塩分をとりすぎると高血圧になりやすい」というのはよく知られています。食塩を多く摂れば血圧は上がり、制限すれば下がります。高齢化の進展に伴い、腎硬化症は年々増加しています。
腎硬化症には良性と悪性があり、進行が緩やかな良性のものは進行を抑えられますが、悪性のものは急速に進行するため緊急処置が必要です。
腎炎とは「糸球体に炎症が起こった状態」「糸球体が障害される病気」のことです。急性と慢性があり、急性は比較的治りやすいものの、慢性糸球体腎炎は治りにくく徐々に悪化するのが特徴です。
慢性糸球体腎炎の中でもっとも多いのが「IgA腎症(アイジーエーじんしょう)」で、全体の約4割を占めます。
IgA腎症の特徴は、原因は不明ですが「免疫の異常で糸球体の一部が増殖して起こる」ということ、よく見られる症状が「たんぱく尿と血尿」であること、そして腎機能低下がみられても積極的な治療が必要な人とそうでない人が約半数ずついるという点です。
慢性糸球体腎炎には他にも「膜性腎症」「ネフローゼ症候群」などがあります。
| 疾患名 | 主な原因 | 代表的な症状 | 関連する生活習慣 |
|---|---|---|---|
| 糖尿病性腎症 | 高血糖による糸球体へのダメージ | たんぱく尿、むくみ、血圧上昇 | 食べすぎ・運動不足・ストレス |
| 腎硬化症 | 高血圧による腎臓の血管の動脈硬化 | 高血圧、夜間多尿、軽微な血尿 | 塩分過多・肥満・喫煙 |
| 慢性糸球体腎炎 | 免疫異常(原因不明のものも多い) | たんぱく尿、血尿 | 生活習慣の乱れ・ストレスが増悪因子 |

透析療法に至る3つの主要な慢性疾患について見てきました。
ただ、自分も含め家族や親類に慢性腎臓病の方がいる場合など、遺伝によるものや突然変異によるものもあります。また年齢を重ねれば自然と腎機能は低下することもある。生活習慣や食事だけが原因ではありません。
しかし、現在慢性腎臓病(CKD)の方も、透析療法を行っている方も、治療を進めるには「生活習慣の改善」は必要不可欠です。
以下に挙げた方は、慢性腎臓病になりやすい生活習慣を持っている可能性があります。将来腎不全に至って透析や腎移植が必要になる可能性も否定できません。透析をすでに行っている方も同様に確認し、生活習慣の改善に取り組んでいただきたいと思います。
| チェック項目 | 腎臓へのリスク | 今すぐできる生活改善 |
|---|---|---|
| ✅ 糖尿病がある | 糸球体ダメージ→糖尿病性腎症 | 食事管理・運動・ストレス軽減 |
| ✅ 高血圧がある | 腎硬化症・腎機能低下・心筋梗塞リスク | 減塩(透析者は6g未満/日) |
| ✅ 太りすぎ | 内臓脂肪→動脈硬化→腎機能低下 | 適度な食事量の見直し・運動 |
| ✅ メタボリックシンドローム | 複数の生活習慣病が重なり動脈硬化加速 | 腹囲・血糖・血圧・中性脂肪の管理 |
| ✅ 高尿酸血症(痛風)がある | 腎臓に尿酸塩が沈着→痛風腎・腎結石 | プリン体の多い食品を控える |
| ✅ 脂質異常症がある | 動脈硬化→腎機能低下・心筋梗塞リスク | 脂質バランスを意識した食事 |
| ✅ 動脈硬化が進んでいる | 腎臓への血流低下→虚血性腎症 | 禁煙・適度な運動・食生活改善 |
| ✅ 喫煙している | CKD発症・進行の重大危険因子 | 今すぐ禁煙!電子式も同様にリスクあり |
| ✅ 著しい運動不足 | 肥満・メタボ・生活習慣病のリスク上昇 | CKD・透析者でも適度な運動は推奨 |
| ✅ 不規則・不健全な生活 | ストレスが腎機能の悪化を招く | 規則正しい生活リズムを取り戻す |
糖尿病には「1型」と「2型」があり、9割方は「2型」です。糖尿病になると高血糖のために血管障害が進みます。糸球体の濾過機能が障害を受け、腎機能は低下します。これが糖尿病性腎症です。
高血圧になると腎臓に大きな負担がかかり、腎機能が低下します。慢性腎臓病だけでなく、心筋梗塞や脳卒中の重大な危険因子でもあります。
| 対象 | 1日の塩分目標量 |
|---|---|
| ステージ1 | 10g未満 |
| ステージ2 | 6g未満 |
| ステージ3〜5 | 3〜6g未満 |
| 透析患者 | 6g未満/日 |
塩分を摂りすぎると水分も多く飲みたくなり、体に水分が滞留してしまいます。1回の透析で除水しきれなくなるうえ、急速な除水は低血圧・こむら返り・血管ダメージを招きます。
肥満の元凶は過度な食習慣の積み重ねです。内臓脂肪がついている状態では腎臓にも脂肪が蓄積されていきます。脂質代謝の異常や動脈硬化が進んで腎機能の低下につながり、脂質異常症・心臓病・脳卒中・高尿酸血症へとつながっていきます。
いわゆる「メタボ」も腎臓病の危険因子です。運動不足や過度な食習慣によってお腹まわりに脂肪がつき(内臓脂肪型肥満)、これだけで糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病の発症リスクが高まります。複数の軽度な生活習慣病が重なれば動脈硬化が加速し、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。
→ 太りすぎの人、メタボリックシンドロームの人。過度な食習慣や運動不足になっていませんか?
※メタボリックシンドロームの診断基準(以下の1に加えて、2〜4のうち2項目以上当てはまれば該当)
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 1. 腹囲(内臓脂肪蓄積) | 男性:85cm以上/女性:90cm以上 |
| 2. 血中中性脂肪 または HDLコレステロール | 中性脂肪150mg/dL以上 または HDL 40mg/dL未満 |
| 3. 空腹時血糖値 | 110mg/dL以上 |
| 4. 血圧(最高または最低) | 最高130mmHg以上 または 最低85mmHg以上 |
尿酸値が高いと、腎臓に尿酸塩という結晶が沈着して炎症を起こし、腎機能が低下します。これを痛風腎(つうふうじん)といい、腎臓結石や尿路結石を併発する場合もあります。高血圧・肥満・メタボリックシンドロームと合併していることが多いです。
血液中の脂質バランスが悪い状態をいいます。善玉(HDL)コレステロールが少なすぎるか、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる状態です。脂質でできた塊(プラーク)が血管壁に沈着して血管を厚く硬くし、動脈硬化を進行させます。さらに糸球体や血管に障害を引き起こし、腎機能低下・心筋梗塞・脳梗塞のリスクも高まります。
動脈硬化が進むと血管が細くなり詰まりやすくなるため、腎臓への血流量が減少します。そのため「虚血性腎症(きょけつせいじんしょう)」になることがあります。
喫煙は心筋梗塞・脳卒中などの危険因子であるほか、慢性腎臓病の発症とその進行においても重大な危険因子です。
→ 喫煙は癌(がん)をはじめ健康に様々な悪影響をもたらします。多くの有害物質を含むことは周知の事実です。電子式でも同じです。止められるのなら今すぐにでも禁煙を!
特に太りすぎの人、メタボリックシンドロームの人、まったく運動をしない人は注意が必要です。
→ 適度な運動をしましょう。
→ 慢性腎臓病(CKD)の方や透析者でも、適度な運動は推奨されています。特に透析者は圧倒的に運動不足になりがちです!
仕事やプライベートで不規則・不健全な生活習慣になっていませんか?
ストレスやフラストレーションを溜め込んでいませんか?
→ 慢性腎臓病(CKD)や透析の治療、不規則・不健全な生活習慣、過度なストレスは厳禁です。とりわけ透析者は通院負担・食事制限・透析時間という拘束があるため、ストレスが溜まりがちです。
→ 腎臓は非常にタフで複雑な構造を持っており、片方を切除しても機能を維持できるほどです。しかしいったん壊れてしまうと再生されることはありません。そのためストレスやフラストレーションが慢性的に加わると、腎機能の悪化につながります。
透析の原因疾患は、
新規導入では:1位:糖尿病性腎症 / 2位:腎硬化症 / 3位:慢性糸球体腎炎
在籍患者全体では:1位:糖尿病性腎症 / 2位:慢性糸球体腎炎 / 3位:腎硬化症
の順で、すべて「慢性」によるものです。
近年は糖尿病の増加で糖尿病性腎症から慢性腎臓病(CKD)となり、透析療法や腎臓移植へというケースが多いのが現状です。
いずれにしてもこれら慢性疾患は、必ずしも透析療法や腎臓移植が必要になるというものではありません。
「発見が早ければ進行を抑えることも可能である!」ということです。
ですので、決して諦めてはいけません。
✅ この記事のまとめ
📌 透析に至る原因疾患:新規導入では1位:糖尿病性腎症(38.3%)・2位:腎硬化症(19.3%)・3位:慢性糸球体腎炎(13.6%)(日本透析医学会JSDT2023)
📌 年間新規透析導入者は約3.9万人(2023年:38,764人)で減少傾向
📌 原因疾患の2位・3位は2019年以降順位が入れ替わり、腎硬化症が新規2位に
📌 糖尿病が強く疑われる人は約1,100万人(2024年国民健康・栄養調査)
📌 発見が早ければ進行を抑えることができる。諦めないで!
📌 ステージ1・2など腎機能障害が軽い段階でこそ、治療を始めることが最善策
📌 透析を導入する可能性があるなら、「できるだけ食い止める・導入を引き延ばす」努力が重要
📌 共通して言えること——食事をはじめ生活習慣の改善を行い、その維持を続けていかなければならない。
・もしあなたが現在ステージ1や2といった段階にあるなら、今すぐ治療を始めることが何よりも大事です。確実に治る病気もありますし、完全には治らなくても進行を止められる病気もあります。
・もしあなたが今後透析を導入する可能性があるなら、「できるだけ透析を食い止める」「透析導入を引き延ばす」努力が必要です。
何事も「自己管理」は大切だということです。
今すぐにでも生活改善を始めてください。