【透析患者の熱中症】予防策は? 水分&ドライウエイト管理で乗り切る夏

2018年7月8日

【透析患者の熱中症】予防策は? 水分&ドライウエイト管理で乗り切る夏
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更新日: 2026年7月22日

透析者の熱中症予防策

梅雨から夏にかけて、テレビやニュースで「熱中症」の話題を見かけることが増えます。「こまめに水分補給を」「涼しい場所に避難して」といった呼びかけです。

でも、透析患者にとってはこの「こまめに水分補給を」がそのまま当てはまらないことがあります。水分を摂りすぎれば、体に余分な水分が溜まり、心臓や血管に大きな負担をかけてしまうからです。

この記事では、透析患者の熱中症予防のポイントを、水分管理とドライウエイト(基礎体重)の視点からわかりやすく解説します。透析を始めたばかりの方やご家族にも読みやすいように、専門用語をできるだけ避けてお伝えします。

この記事でわかること
  • 熱中症の重症度と症状の見分け方
  • 透析患者ならではの水分・食事の注意点
  • 透析前後・透析中にも熱中症は起こりうるという事実
  • ドライウエイト(基礎体重)を守ることが熱中症予防につながる理由

①2026年から新たに登場した「酷暑日」に要注意

体温を超える気温を示す新しい予報用語

まず知っておいていただきたいのが、気象庁が2026年4月17日に新しく発表した「酷暑日」という予報用語です。これまでの気温の呼び方に、新しい区分が加わりました。

25℃以上

夏日
30℃以上

真夏日
35℃以上

猛暑日
40℃以上

酷暑日(新語)
最低25℃以上

熱帯夜

「酷暑日」は体温を超える危険な気温

人間の体温は通常36〜37℃程度。気温が40℃を超える「酷暑日」は、体温を上回る温度であり、汗をかいても体が冷えにくくなる非常に危険な状態です。発汗による体温調節がうまく働かなくなるため、「酷暑日」の予報が出た日は、健康な人以上に透析患者は厳重な警戒が必要です。

この「酷暑日」という言葉自体は、実は2022年から日本気象協会が独自に使っていたものですが、2026年から気象庁の正式な予報用語として採用されました。近年、40℃を超える観測地点が毎年のように現れていることが背景にあります。透析患者は体温調節機能が低下しがちなため、「酷暑日」の予報が出たら外出を控える、涼しい室内で過ごすなど、いつも以上に注意してください。

②そもそも熱中症とは?なぜ透析患者はかかりやすいのか

汗をかきにくい体質が熱中症リスクを高める

私たちの体は、汗をかいたり皮膚から熱を逃がしたりすることで体温を一定に保っています。ところが透析患者は体内に溜まった毒素の影響で汗腺が萎縮し、汗をかきにくい傾向にあります。そのため体内に熱がこもりやすく、熱中症にかかりやすいのです。

熱中症になりやすいタイミング

 特に注意したい状況
  • 前日より急に気温が上がった日
  • 気温はそれほど高くなくても湿度が高い日
  • 涼しい室内や車内から急に外へ出たとき(温度差5℃以上)
  • 炎天下や高温多湿での長時間の外出・運動
  • 室温の高い屋内での生活や、睡眠不足・二日酔いの状態
  • 下痢や風邪で発熱しているとき

熱中症の重症度と症状をチェック

熱中症には重症度によって症状に違いがあります。以下の3段階で確認しましょう。

Ⅰ度(軽度)

筋肉痛・こむらがえり、血圧低下、あくび、めまい、立ちくらみ、大量の発汗、顔面蒼白、脈が速く弱くなる。⇒応急処置が必要です。

Ⅱ度(中等度)

頭痛、気分不快、吐き気・嘔吐、倦怠感、脱力感、集中力や判断力の低下。39℃未満の発熱も。⇒応急処置+医療機関の受診が必要です。

Ⅲ度(重度)

血液凝固障害、肝臓・腎臓の障害、意識障害、けいれん発作。39℃以上の発熱。⇒ただちに応急処置+医療機関の受診が必要です。

⚠️ 透析患者特有の注意点

透析患者は透析後や体調変化で血圧低下・めまい・立ちくらみが起こることがあり、熱中症のⅠ度(軽度)の症状と似ているため見分けにくいことがあります。「透析の時間まで様子を見よう」と我慢せず、透析の有無にかかわらず早めに受診しましょう。

③透析患者の熱中症予防:食事・水分補給のポイント

食事は「抜かない」ことが基本

暑いと冷たくて口当たりの良いものが欲しくなりますが、冷たいものばかりだと胃腸が弱まり食欲低下につながります。普段通り3回の食事をしっかり摂っていれば塩分不足になることはまずありません。食事を抜くことのほうが避けるべきです。

 夏の果物はカリウムに注意

夏場に多いスイカやメロンは、水分とカリウムが豊富な果物です。1日の摂取量には気をつけましょう。食べてはいけないわけではないので、少量で旬を楽しんでください。

水分補給は「こまめに・少量ずつ」が基本

透析患者にとって過度な水分補給は厳禁です。一気に大量に飲むのではなく、こまめに少しずつ摂ることを心がけましょう。冷たいものを大量に飲むと体重が増え、食欲低下という悪循環にもつながります。

 水分補給の目安
  • 1日500mLを1〜2本程度を目安に
  • ペットボトルの水は「軟水」を選ぶ
  • 氷を舐めるのも効果的
  • 屋内では麦茶や玄米茶がおすすめ(玉露はカリウムが多いので避ける)

スポーツ飲料は基本的に「不要」

健康な人は水分・ミネラル補給にスポーツ飲料を活用しますが、透析患者は基本的にスポーツ飲料を飲む必要はありません。普段の食事に加えて、透析中は「透析液」で不足分を補っているためです。

スポーツ飲料の飲み過ぎに注意

スポーツ飲料は塩分・水分の過剰摂取になりがちなうえ、糖分やミネラルも豊富です。下痢・嘔吐・多量の発汗があるときだけ、コップ1杯程度など少量にとどめて飲むようにしましょう。飲むならナトリウム値が低めの製品を選ぶと安心です。

屋外で長時間過ごし、汗を多くかいた場合はナトリウムが体外に出ているため、スポーツ飲料を少量飲んでも良いとされています。ただし摂取量はコップ1杯程度に抑える工夫をしましょう。

④日常生活でできる熱中症対策

服装は「通気性」と「淡色」を意識する

皮膚からの熱の出入りには服装が大きく関わります。襟元をゆるめ、体を締め付けない服を選びましょう。

服装選びのポイント
  • 風通しがよく、汗を吸収する速乾性のある素材を選ぶ
  • ゆったりとした服で首元に直射日光が当たらないようにする
  • 屋外では黒や紺など日光を吸収する色を避け、白や水色などの淡色系を選ぶ

室内では温度・湿度をしっかり管理

家でじっとしていても、室温や湿度が高ければ体温は上がります。「電気代がもったいない」ではなく、エアコンと扇風機を上手に併用しましょう。

室内環境の目安
  • 室温は24〜28℃、湿度は60%以下を目安に
  • 温度計・湿度計・熱中症計をこまめに確認する
  • クーラーと扇風機を併用し、扇風機で冷気を循環させる
  • 窓はすだれやカーテンで直射日光を遮る
  • 冷たいおしぼりや冷たいタオルを脇にはさむのも効果的

屋外・車内・外出時の注意点

透析施設への通院など、外出が必要な場面もあります。

外出時に気をつけたいこと
  • 直射日光のある場所は避け、日陰を歩く
  • 日傘や帽子を着用し、こまめに休憩をとる
  • 車はあらかじめ換気し、エアコンで適温にしてから運転する(運転時の血圧変化にも注意)
  • 電車・バスから屋外へ出るときの温度差(5℃以上)に注意する

⑤日常の健康管理で熱中症リスクを減らす

運動不足は汗をかきにくい体質をつくる

熱中症予防には、実は「運動」が効果的です。透析患者は運動不足になりやすく、そのぶん発汗機能がうまく働かない傾向があります。汗腺が萎縮して汗が出にくいため、体内に熱がこもりやすいのです。

日頃からウォーキングや散歩などの有酸素運動を「非常に楽〜楽」と感じる強度で続けることで、汗をかく力を育て、暑さに慣れておくことができます。ただし梅雨〜夏の日中の運動は体温が異常に上がりやすいため避け、透析による体調変化があるときは無理をしないでください。

睡眠・血圧・薬の管理も見逃さずに

項目注意点
睡眠透析の疲れと寝苦しさによる睡眠不足、二日酔いに注意。エアコン・扇風機を上手に活用する
血圧管理汗をかくと血圧は低下する。血圧測定・記録は欠かさず行う
薬の管理利尿薬・降圧薬を使用している場合は熱中症リスクが高まる。薬の飲み方の見直しは医師と相談する
健康管理下痢や発熱があるときは感染症にもかかりやすいため注意する

⑥透析前後・透析中でも熱中症は起こりうる

炎天下での通院や、透析室内の温度・湿度、透析機器から発せられる熱など、いくつもの要因が重なることで、透析前後・透析中であっても熱中症になる可能性は十分にあります。

⚠️ 特に注意が必要な人

厚着の人(冬用パジャマやルームジャージのまま)/普段から運動をしていない人/暑さに弱い人/疾患のある人/体調を崩している人/ドライウエイトが40kg以下の人など。

対策内容
透析前に透析室の気温・湿度を確認しておく
夏用の服装(パジャマやルームジャージ)で調節し、暑ければ透析液の温度を低めに設定してもらう
透析中も必要に応じて水分補給を心がける
調子が悪くなったら医師・看護師にすぐ声をかける(体は変化を起こしているので無理はしない)

もし熱中症になってしまったら

透析患者は健康な人と違い「塩分と水分をしっかり摂って」というわけにはいきません。無尿または少尿のため、体に余分な水分が溜まっているからです。

1

涼しい場所へ避難する

クーラーの効いた室内や涼しい場所へ移動し、衣服を緩めて風通しを良くします。

2

体を冷やす

冷たいタオルや氷、冷たい缶ジュースなどを首の付け根・脇の下・大腿の付け根や股関節部に当てて冷やします。汗をかいていれば水分をかけるのも効果的です。

3

重症度に応じて受診する

先述のⅠ度〜Ⅲ度の重症度に合わせて応急処置を行い、必要に応じて医療機関を受診してください。

⑦ドライウエイト(基礎体重)管理が熱中症予防のカギ

ドライウエイトとは何か

ドライウエイト(基礎体重)とは、体の中に余分な水分がない状態の体重のことです。体内の水分が過剰でもなく脱水もしていない、ちょうど良い状態の体重を指します。

夏と冬で水分摂取量は変わる

夏場と冬場では明らかに水分摂取量の傾向が違います。暑さや塩分の摂りすぎで水分超過になることもありますし、逆に冬場の乾燥でも水分超過になることがあります。季節ごとの水分摂取量の目安を知ることが大切です。

 増減を知るためのシンプルな方法

「どれだけ食べて、飲んで、体重が増えたか」をこまめに測ることで、ドライウエイトからの増減を把握できます。無尿の透析患者が1日1L飲めば、単純に体重は1kg増えます。

水分の飲み過ぎは、むくみや血管内脱水、血圧の不安定を招きます。透析中の除水量が多くなれば心臓や血管への負担が増え、除水しきれない分を次回まで残してしまうこともあります。

反対に、透析後のドライウエイトより体重が低い状態は、体内の水分が少ない「脱水」状態になりやすく、シャントの狭窄や閉塞、脳梗塞などの原因にもなります。

🎯 目標:ドライウエイトの3〜5%以内

体重の増減をドライウエイトの3〜5%以内に抑えられるよう、食事と水分摂取量を自分でコントロールすることが大切です。これが夏場の熱中症予防にも直結します。

⑧まとめ:透析患者だからこその熱中症予防を

健康な人や高齢者・小児の熱中症予防と似ている部分もありますが、水分補給の考え方はまったく違います。透析前後・透析中でも熱中症が起こりうることも、意外と知られていない事実です。

2026年から新たに登場した「酷暑日」という言葉が示すように、近年の暑さは体温を超えるレベルにまで達しています。透析患者は汗をかきにくく、体に熱がこもりやすい体質であることを忘れずに、無理をしない夏を過ごしてください。

20年超透析を行っている私自身も、毎年この時期は水分量とドライウエイトの記録を欠かさずチェックしています。「なんとなく」ではなく、数字で管理する習慣が、熱中症予防の一番の近道だと実感しています。

この記事のまとめ
  • 「酷暑日」(40℃以上)は体温を超える危険な暑さ。厳重警戒を
  • 透析患者は汗腺の萎縮により熱がこもりやすい体質
  • 水分は「こまめに少量ずつ」が基本。スポーツ飲料は基本不要
  • 透析前後・透析中でも熱中症は起こりうる
  • ドライウエイトの3〜5%以内を目安に体重管理を続ける
  • 体調に異変があれば、透析の時間を待たずすぐ受診を

どうか熱中症になりませんように、十分にご注意ください。

 

【免責事項】
本記事は情報提供のみを目的としており、医療上のアドバイスや診断に代わるものではありません。透析患者の水分管理・ドライウエイト設定・熱中症対策については、必ず担当の腎臓内科医や看護師、栄養士の指導のもとで実践してください。体調に異変を感じた場合は、透析の時間にかかわらず速やかに医療機関を受診してください。