透析者|運動制限を変えるコツは【無理しない・楽しむ】の2点!

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透析者の運動制限を変えるコツ

今回は血液透析者の運動制限について取りあげていきます。

以降、血液透析者を「透析者」、スポーツや競技、運動などをまとめて「運動」と略称します。

 

前回の「透析者は運動不足!骨格筋量の減少が顕著・末梢動脈疾患も。」の続編的な位置づけです。

 

簡単におさらいをしますと、

1.透析者は運動不足!
2.透析者は「骨格筋量の減少が顕著」で、足には「末梢動脈疾患」を持ちやすい(身体問題とその影響)。
3.病院では運動療法として【ON HD エクササイズ】を取り組んでいるところがあり、注目されている。

 

ということを説明しました。

 

 

 

・シャント肢の保護のためには、運動でも球技は避けるべき
・運動強度は「3・4以上~5・6メッツの活動内容」で、運動強度の割合は「40~50%」
・「有酸素運動」が推奨。散歩・ウオーキング、少し早く歩く、早歩きあたりがよい
・透析者の運動制限を変えるコツは「無理しない」「楽しむ」の2点!

 

 

目次

透析者の運動制限。「透析あっての運動、運動あっての透析」

 

透析者の運動制限。「透析あっての運動、運動あっての透析」

私は日ごろから運動不足だと感じています。

スポーツ観戦することも好きですが、運動したくなるときってあります。

犬と散歩することが多いですが、今自分にできることに取り組むべきですね。

 

「今、あなたの好きな運動でもいいです。取り組んでいる運動はありますか?」



いくつか挙げてみてください・・・。

 

野球、サッカー、テニス、バスケットボール、ゴルフ、バレーボール、マラソン、散歩、水泳・・・。

運動といっても本当にいろいろありますよね!
オリンピック競技に認定されているものが400はあるのですから、それ以上あるのでしょう(驚)。

 

透析者は運動不足、とかく運動不足になりがちです。

2回も運動不足だ!と叫んだのは、透析することでの身体の影響があまりにも多いのに驚かされるからです。

 

参考:「透析者は運動不足!骨格筋量の減少が顕著・末梢動脈疾患も。

 

透析者が行う運動は、健康な人の運動や、慢性腎臓病(CKD)のときの運動とも違って、運動に取り組む際の配慮しなければならないこと、注意点というものがあります。

 

もっとも分かりやすいのは、シャントを作った際、その後の透析において「シャントを傷つけたり、痛めつけたりしないでくださいね」と、医師・看護師さんからよく言われますね。

 

透析者は日々「シャントの自己管理」を行わなければなりませんし、体調もベストな状態に持っていくようにしなければなりません(それでも透析により、予期せぬ血圧の不安定さや体調不良になることがあります)。

 

 

バスケットボールやバレーボールなどの球技、運動の例を挙げます。

バスケットボールは、常にコートの中を動き回る必要がありますが、体力がない大変つらい運動です。もっとも攻めたり守ったりしていると手首、シャント肢や身体がぶつかったり、不意な姿勢で落ちてしまうことがあります。

 

バレーボールの運動量は少なめに見えます。しかしそれも1時間続けたと仮定したら、意外と過酷なものです。

サーブやアタック、ブロック、レシーブといったものは、バレーボールの基本的な動作です。ボールが飛んできてそれらの動作を行うことになれば、どうしても手首やシャント肢に当たってしまいます。

 

いずれにしても、シャント肢の損傷は避けられないことは想像できますし、シャントの再手術は必要でしょう。

盲点にはなりますが、ふだんから行っている食事療法のために、リン(P)やカルシウム(Ca)の摂取も控えています。「骨折のしやすさ」にも注意してください!

 

これからシャントを作る予定がある人、透析導入者、現に透析者であってバスケットボールやバレーボールなどのように、シャント肢を損傷させてしまう運動をしている場合は、十分に気をつけてください!

 

少々厳しいことを言うかもしれませんが、

「自分の好きな運動をできる、続けていくことよりも透析のことを優先しなければならない」

 

ということを、くれぐれも念頭を置いてください。

透析を続けるだけじゃないですし、自分を守るためですからね。

 

そのため、あなたには今まで取り組んできた運動・好きな運動の見直しをしたり、ほかの別な運動への転換が迫られるかもしれません。

シャント肢をまず守られること。

類似するような運動、あなたにとって興味・関心のある運動であれば、十分に開拓をすることはできます。

 

これまでのバスケットボール・バレーボール⇒⇒⇒ピンポン(卓球)、ボーリングといったように、自分が楽しめて、ずっと続けることができる運動ならば、探せばいくらでもあります。

 

「透析あっての運動、運動あっての透析」。

 

 

すべては、透析をしていくためには必要なことだからです。

 

運動するのには「シャントの自己管理」だけでは足りない!

透析者は「酸素消費量は健康な人の50~60%」「酸素(O2)の輸送効率(FO2)も健康な人の48%」しかないといったように、あまり感じていない、意識していないような身体的な問題も抱えていて、実はその影響を受けています。

 

参考:「透析者は運動不足。骨格筋量の減少が顕著、末梢動脈疾患も!

 

 

そのため、
透析者は、運動するときは単にシャントを自己管理するだけでは足りず、身体的な問題や影響も踏まえて、それらに適した運動に取り組む、ということが大事になってきます。

 

バスケットボールやバレーボール、長距離のマラソンといった運動は、「短時間であるかまたは時間が一定しない運動」であり、「エネルギーが必要」となります。

そのため酸素の需要が増加し、息切れや呼吸がしにくいといったことが生じてしまいます(そのしくみは、血液中の酸素量の低下が起こり、二酸化酸素量が増加してくるので、呼吸が苦しくなるのです)。

 

健康な人でさえも呼吸が苦しいのに、透析者はそれ以上に無理があって負担になります。

まるで、エベレスト山の高山で登山へ行き、足元もふらついて空気が薄いなかで呼吸をしているのと同じ状態です(長い登山もまた無酸素運動)。

 

このように透析者は「運動の強度や種類、時間、頻度」などについても考慮しながら、運動していかなければならないわけです。

運動の強さ(メッツ)とは?

運動の強さである「運動強度」について説明していきます。

運動強度の基準に「メッツ(METs)」という単位があって、これは生活している中での活動、運動などの身体活動の強度単位となり、簡単に言えば、体力の単位です。

 

Q:「椅子に座る場合にどれだけの酸素が必要だと思いますか?」

A:椅子に座る・・・「体重1Kgあたり1分間に3.5mlの酸素が必要」になるのですが、これを1メッツ(METs)と呼んでいます。

 

 

座っている状態が1メッツ、ゆっくりした歩行(ぶらぶら歩き)では2メッツといったように、動作や運動によって何メッツか決まっています。

 

ちなみに運動強度の基準である「メッツ(METs)」が編み出されたのかというと、もともとは生活習慣病の予防・改善を目的に作られたものでした。最近、新基準に改められました。

新基準では、増え続ける慢性腎臓病(CKD)や透析の腎疾患に関わりのある高血圧症や脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの慢性疾患に適応したものとなっていて、それらの疾患を予防・改善し運動することを推奨しています。

運動強度と活動内容

 

運動強度と活動内容

【表示上の注意】
※メッツ(METs)⇒活動内容・・・1エクササイズに相当する時間の順に表示
※△or▲・・・シャント保護の観点、無酸素運動のために避けたほうがよい運動

 

1メッツ⇒ベッドで横になる、安静、TV・音楽鑑賞

2メッツ⇒入浴、着替え、身の回り(手洗い、歯磨き、髭剃りなど)洗濯、調理や食材の準備、ゆっくりした歩行(ぶらぶら歩き)、ボウリング、ヨガ、ストレッチ

 

3メッツ⇒掃除、ふつう歩き、犬と散歩、ゲートボール、グラウンドゴルフ、大工仕事、車の荷物の積み下ろし、階段を降りる・・・20分

4メッツ⇒庭仕事、少し早く歩く、日本舞踊、ラジオ体操、水泳(ゆっくり)、水中ウォーキング、介護、子どもと遊ぶ(歩く・走るは中強度)・・・15分

 

5メッツ⇒農作業(軽いもの)、通勤、早歩き、自転車に乗る(16km/時)、卓球、ダンス、野球△、ゴルフ、スケート子どもと遊ぶ(歩く・走るは強度)・・・12分

5.5メッツ⇒自転車エルゴメーター・・・11分

 

6メッツ⇒ジョギング、水泳△、ウエイトトレーニング△、美容体操、バレーボール▲、バスケットボール▲
・・・10分

 

このように運動の強度メッツ(METs)は細かく定められています。

 

しかし、ここではあえて6メッツまでしか挙げませんでした。

というのも、更に上に上がるほどつまりメッツの値が大きく7,8とかになっていくほど、いっそう無酸素運動(=レジスタンス運動とも呼びます)になっていきます。

 

 

透析者は、有酸素運動が推奨されています。

 

(無酸素運動は酷ですが、たまには良いです。)

 

それから、運動を行うときの「目安(個人の感覚)」というのも大事です。

運動すれば脈拍数も違ってきて「きつい」とか「楽だ」と感じますし、汗が出たり、汗が出るか出ないかの快適さを感じるでしょう。これがここでいうの「目安(個人の感覚)」です。

 

透析者の運動(生活している中での活動を含む)は、運動の強度の40~50%程度にしてすることが大事です。

 

 

なぜなら、
最大強度の40~50%ぐらいの運動が、透析者にとって「無理のない運動」であり「疲労を残さない運動」なので、適度な運動になるからです。

 

 

運動の強度の40~50%程度とはどういうものなのか?

最大強度が40%である目安(感覚)・・・
「非常に楽」と感じますが、運動に物足りなさを感じるかもしれません。

最大強度50%である目安(感覚)・・・
「楽」で、汗が出るか出ないか位の快適さを感じることができます。

 

【運動強度と活動内容を踏まえた事例:】

「5メッツ:早歩き」の場合(←3メッツ以上の運動が推奨されている)

平坦な道もあれば、上り下りの坂道を早歩きしただけでも「楽さ」「きつさ」は全然違いますし、汗ばむ程度も違ってくるでしょう(個人差あり)。

 

◇まとめにかえて

透析者の運動強度と活動内容の目安は、

・「運動強度が3・4以上~5・6メッツの活動内容」で、「運動強度の割合は40~50%(=「非常に楽」~「楽」と感じる」ぐらいで、運動は「20分~30分間」に留めてください。

 

運動の基本中の基本ですが、すぐに運動したり、運動を続けたりするのではなく、

・ストレッチ(ほぐし運動)をしてから運動を始めてください。
・続けて運動を行う場合は、必ず途中で休憩を入れましょう。

 

適度に運動を続けていくことで、運動不足から解放されるでしょう。

日々透析を行っています。

運動前はもちろんのこと、運動の途中で「体調の悪さ」を感じたり、「血圧の低下」や「疲労感」などを覚えたら、「無理をしない」で中断するなり、休むようにしましょう。運動できなかったことへの嫌悪感は要りません、きっちりとする必要はなく、マイペースで構わないです。

 

適度な運動をするように心がけましょう。

 

透析者の運動制限を変えるコツは「無理しない」「楽しむ」の2点!でした。

 

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