透析日の運動、透析中に行う運動のことを【ON HD エクササイズ】と呼びます。
それに対して非透析日、つまり透析でない日に行う運動のことを【OFF HD エクササイズ】と呼んでいます。
これは透析でない日に行う運動なので、ふだんの生活の場面において(たとえば自宅や外で、会社の休憩時間、通勤途中・・・)でできるメニューがあります。
参照:
「透析者は運動不足。骨格筋量の減少が顕著、末梢動脈疾患も!」
「透析者の運動制限を変えるコツは無理しない、楽しむの2点!」
・【OFF HD エクササイズ】は家の中、外で、会社、通勤中といつでも・どこでも行うことができ、
しかもメニューが多い
・シャント運動も一緒に行おう
・「何のための運動なのか?」「無理せずに楽しむ。継続できる運動のコツはあるのか?」は
意識しておきたい
透析の運動療法。透析でない日に行える【OFF HD エクササイズ】とは?
メニューはふだんの生活での場面で行えるメニューになります。
自宅の中でやったり、外でしてみたり・・・。
また一銭もお金のかからないものもあれば、若干出して準備するものもあります。
ここでは取り上げませんが「シャント運動」もありますし、透析中に行う【ON HD エクササイズ】のメニューをそのまま導入し行っても良いですね。
【ON HD エクササイズ】なら、ストレッチング、チューブ運動、エルゴメーターによる自転車こぎなど、そうです。
参照:「透析者は運動不足。骨格筋量の減少が顕著、末梢動脈疾患も!」
【OFF HD エクササイズ】のメニュー
1.起立着席・・・筋肉をつけ・維持させる運動
①安定した椅子やテーブルに手を置いて、起立と着席を繰り返します(時間や回数は体力に応じて決める)。
②最初は少ない回数で行い徐々に回数を増やしていきましょう(時間や回数は自分の体力に応じて決める)。
2.骨格筋量を意識したストレッチ・・・純軟性を保つ運動
① 足首と足のストレッチ
・足全体を左右に揺らし、筋肉の緊張をほぐします。
・次に足首を前後に屈曲・伸展させます。
・最後に足首を回転させます
② お尻と股関節周囲のストレッチ
・シャント肢で無い方の手で膝を抱え、膝を胸に引き寄せます。
・そのまま数秒保持したら、膝を変えて行います(左⇔右交互に)。
③ 股関節のストレッチ
・両膝を立て、片方の足首をもう一方の足首にかけます。
・かけた足の膝あたりをシャント肢で無い方の手で押します(数秒間保持したら足を変えます)
・両膝を立てて、膝・足首をしっかり閉じて、膝を閉じたまま両足を横に倒します(数秒したら、同じように反対側も行います)。
・体をほぐしていくのですが、透析者は筋肉が固くなりがちです。無理しないで痛くならない範囲でストレッチを行いましょう。
3.階段の昇り降り・・・筋肉をつけ・維持させる運動
通勤時(駅ホームでの階段)や自宅や会社内にある階段等で昇り降りを行います。
・10分ほど階段を連続して昇ると【運動強度=6~7メッツ※】ですが、階段を早く昇るには【運動強度=9メッツ※】となり、きつくなります。
※運動強度の基準は「メッツ(METs)」であらわします。
透析者は「運動強度が3・4以上~5・6メッツの活動内容」で行いましょう。
それ以上の内容になると、無酸素運動になってしまうので、有酸素運動が推奨されます。
4.ウォーキング・散歩・・・持久力をつける運動 (←推奨)
ウォーキング・散歩のほか、通勤の際に歩く方法(1駅分だけ余分に歩くなど)もあります。
①背筋を伸ばします。視線は10~15m先に向けます (きれいな姿勢を保つことができます)
②膝はなるべく伸ばします。踵で着地し、重心を踵からつま先へ滑らかに
・ウォーキング・散歩が気軽にできて、やりやすい!
・歩くなら良い靴の準備を!
ウォーキングシューズを選ぶ際の注意点
①かかとはしっかりし、指の付け根が屈曲しやすいものを。
②幅や甲に圧迫感がなく、できれば紐を締めて調整できるものにしてください。
③クッション性があって通気性がよいものが望ましい。
・ジョギングも持久力をつける運動ですが【運動強度=6メッツ】です。
5.自転車エルゴメーター・・・持久力をつける運動、筋肉をつけ・維持させる運動
ウルトラスポーツ レーサー Fバイク 折り畳み式フィットネスバイク デジタルメーター・心拍センサー付き、ライトブルー
スポーツジムでよく見かける自転車に模した装置で「自転車こぎ」「ペダルこぎ」とか呼ばれるものです。
自転車エルゴメーターは、ウォーキング・散歩やランニングと同様に、一定時間・一定距離を漕ぎ続けることで有酸素運動となります。
膝関節に過度な負担をかけずに筋力増強の効果が期待できます。
・Amazonや楽天では、自宅用の自転車エルゴメーターが販売されています。
安価ですが、スポーツジムにあるような逆回転やパワーアシスト機能が省かれたりします。
・ランニング(150m/分、170m/分、200m/分)では【運動強度=8、9、10メッツ】、
サイクリング(170m/分でも【9メッツ】となるため、きつくなります。
6.シャント運動
シャントを発達させるために、軟式テニスボールやハンドグリップやのニギニギは、筋肉をつける運動にあたります。
⇒「シャント運動に「継続は力なり」。負荷にも十分に考慮して!」を参照。
もう一度確認しておきたい、透析者の運動
透析をしているといっても運動ができないわけではありません。
慢性腎臓病(CKD)よりは緩くなっているはずで、透析していることにより、むしろ「体力が無い」「筋力がなくなってきている」「足腰から弱くなり老化していること」・・・。
それら自体が問題です。
「無理せずに楽しむ。継続できる運動のコツはあるのか?」
運動を習慣化するためにもいくつかのコツというものがあって、目標設定ややり方を工夫することによって、モチベーション向上・維持や、無理なく運動を行える環境を整えることができます。
①運動と透析との良し悪しを把握・理解
⇒透析のためにしてよい運動、してはいけない(避けたい)運動を把握し理解する。
(例:▲バレーボール、バスケットボールなど)
参照:「透析者の運動制限を変えるコツは無理しない、楽しむの2点!」
②運動を楽しむということ
⇒①を踏まえて、ほかにどのような運動があるだろうか?運動への入り方が楽しくなければ、長く続けられません。
(例:バレーボールをしていたが、シャントを保護するために代替できる運動を探してみた。趣味・興味を広げる、楽しめる運動を探してみた。結果、卓球にしてみた)
③運動を継けるということ
⇒運動も「継続は力なり」。
ふだんから仕事をし、透析もしています。そのなかから運動をする時間を見い出します。
しかし、無理なスケジュールはたてなくて良いです。マイペースで良いのです。
②にも関連しますが、楽しみの中から目標設定、やり方を工夫することで、更なるモチベーション向上へ繋がります。何か記録をつけるのも良いでしょうね。
(例:2メッツゆっくりした歩行(ぶらぶら歩き)⇒3メッツふつう歩きへ)
(例:階段昇り20段⇒30段は昇れるようにする(←高齢になっても自由に生活できるための体力が30段!)
④体調の優先することが先!
⇒①を踏まえて自分の体調をつかみ、運動をして良いとき、よくないときを把握しましょう。無理しての運動はやめましょう。
(例:今日は非透析日で運動したいところだが、血圧が80未満なので立ち眩み、めまいも覚える。今日は中止しよう・・・。)
⑤よく食べ【食事】、よく動いて【運動】、しっかり透析をする
⇒透析の基本中の基本。どれかが偏っても精神・肉体的に宜しくありません。
自分への報酬・ご褒美を作る感覚で!
◇まとめにかえて
透析者の運動療法、運動についてまとめました。
1.いつ行うか?
・非透析日・・・【OFF HD エクササイズ】
・透析中(透析前)・・・・【ON HD エクササイズ】
2.どこで行うか?
・施設外・・・自宅、会社、通勤中
・外で・・・道路、河川敷、スポーツジム、公園、プール、体育館
・施設・・・透析室、リハビリルーム etc.
3.どんな運動を行うか?
・運動強度が3・4以上~5.6メッツまでがベスト
・ウォーキングや散歩は「有酸素運動」。習慣化もできて取り組みやすい!
⇒「適度な速度」で「長く歩く事」で体力向上や脂肪分解にも効果的であり、末梢動脈疾患の予防にも期待できる。
⇒有酸素運動(ウォーキングや散歩、自転車エルゴメーター)と無酸素運動(筋トレ)は併用すると良い。
⇒どのような運動が良いのか?どの程度の運動をしたらよいのか?などは、医師や理学療法士等へ相談したほうが良い(ほか付随する疾病、心臓病や高血圧、骨関節の異常などもあるので)。
・シャント運動も行おう!
⇒「シャント運動に「継続は力なり」。負荷にも十分に考慮して!」を参照。
4.どんな強さで行うか?(運動強度)
・「運動強度が3・4以上~5.6メッツの活動内容」で、「運動強度の割合は40~50%(=「非常に楽」~「楽」と感じる」くらいで、「20分~30分間」に留める。
・メッツ1~3~6といったように、徐々にあげていくべき(運動レベルをあげていくべき)。
・筋力の弱い人は負荷(重さ・抵抗)をかけない。
⇒筋トレ、起立着席、階段の昇降などに注意!
⇒筋力に合わせて負荷をふやしていく。指導者が必要(医師、リハビリという面でのプロ・理学療法士がいれば要相談)。
5.避けるべき運動、運動を避けるべきときとは?
・運動を始める前に、以下のようなときは避けましょう。
⇒体調が優れないときは行わない
⇒血圧が80以下、180以上では行わない(血圧が高い、低い)
⇒貧血症状がある
⇒関節に痛みがある
⇒シャント肢に負荷かける、損傷させる運動も避ける(▲バスケットボール、▲バレーボールなど)
・ふだんの生活での日常動作で、筋肉を活動させる、筋力を維持させるには起立着席が効率的です。