非透析日の運動療法OFF HDエクササイズ|透析患者のメニューと注意点

2018年11月4日

非透析日の運動療法OFF HDエクササイズ|透析患者のメニューと注意点
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更新日: 2026年10月13日

非透析日の運動療法OFF HDエクササイズ

透析日、つまり透析中に行う運動のことを「ON HD エクササイズ」と呼びます。

それに対して、非透析日——透析をしない日に行う運動のことを「OFF HD エクササイズ」と呼んでいます。

透析でない日に行う運動ですから、場所は自宅でも、外でも、会社の休憩時間でも、通勤の途中でも構いません。日常生活のあらゆる場面で取り組めるのが、OFF HD エクササイズの大きな特徴です。

参照:
「透析患者は運動不足。骨格筋量の減少が顕著、末梢動脈疾患も!」
「透析患者の運動制限を変えるコツは無理しない、楽しむの2点!」

  • 非透析日に行う運動療法を「OFF HD エクササイズ」という
  • OFF HD エクササイズは自宅・外・会社・通勤中など、いつでもどこでも行える
  • シャント運動もあわせて行おう
  • 「何のための運動か?」「無理せず楽しむ。継続できる運動のコツとは?」を意識しておきたい
  • 2022年4月からは、透析中の運動指導に「透析時運動指導等加算」が保険収載された

透析患者が非透析日に行える「OFF HD エクササイズ」とは?

そもそも、透析患者はなぜ運動療法が必要なのでしょうか。

20年超透析を行っている私が実感するのは、透析生活を続けるなかで「気づいたら体力が落ちていた」という現実です。透析をしているからといって運動ができないわけではありません。むしろ、体力の低下・筋力の減少・足腰の衰えのほうが問題なのです。

日本腎臓リハビリテーション学会の「腎臓リハビリテーションガイドライン」では、透析患者への運動療法について「運動耐容能、歩行機能、身体的QOLの改善効果が示唆されるために、行うことを推奨する」と明記されています(推奨度B)。また2022年4月からは診療報酬に「透析時運動指導等加算」が新設され、透析中の運動指導が保険点数として評価されるようになりました。運動療法はもはや「やれればいい」ではなく、医療として推奨される時代になったのです。

特に近年、透析患者における「サルコペニア(筋肉量・筋力の低下)」や「フレイル(虚弱化)」の問題が注目されています。筋力が落ちれば転倒リスクが上がり、QOL(生活・人生の質)も下がります。OFF HD エクササイズは、この問題に自分でできるアプローチとして有効です。

透析患者の運動療法「ON HD」vs「OFF HD」の違い
種類タイミング場所主なメニュー例
ON HD エクササイズ透析中(透析日)透析室・リハビリルームストレッチ・チューブ運動・エルゴメーター
OFF HD エクササイズ非透析日(自由な時間)自宅・外・会社・通勤中などウォーキング・起立着席・自転車・シャント運動

OFF HD エクササイズには、費用ゼロでできるものもあれば、少しだけ道具を揃えるものもあります。ON HD エクササイズのメニュー(ストレッチ・チューブ運動・エルゴメーターなど)をそのまま自宅で行うこともできます。自分の体力と生活スタイルに合わせて選べるのが、OFF HD エクササイズの良さです。

OFF HD エクササイズのメニュー6選

OFF HD エクササイズのメニュー6選

 

1. 起立着席——筋肉をつけ・維持させる運動

安定した椅子やテーブルに手を置き、立ったり座ったりを繰り返します。

①最初は少ない回数(5〜10回)から始めます。
②慣れてきたら、少しずつ回数を増やしていきましょう。
③時間や回数は、自分の体力に合わせて決めてください。

  • とても簡単で、費用もゼロ。道具も不要です。
  • 日常の「立つ・座る」という動作自体が筋肉を使う運動になります。筋力を維持するには、起立着席が最も手軽で効率的な方法の一つです。
  • 高齢になっても自分で生活できる体力の目安として「階段を30段登れること」が言われていますが、起立着席はそのための土台づくりにもなります。

2. ストレッチ——柔軟性を保つ運動

本格的な運動の前に必ず取り入れてほしいのがストレッチです。透析患者は筋肉が硬くなりやすいという特徴があります。無理せず、痛くならない範囲でゆっくり行いましょう。

① 足首と足のストレッチ

  • 足全体を左右に揺らし、筋肉の緊張をほぐします
  • 足首を前後に曲げ伸ばしします(屈曲・伸展)
  • 最後に足首をゆっくり回転させます

② お尻と股関節まわりのストレッチ

  • シャントがない方の手で膝を抱え、膝を胸に引き寄せます
  • そのまま数秒キープしたら、反対の膝に替えて繰り返します(左右交互に)

③ 股関節のストレッチ

  • 仰向けに寝て両膝を立て、片方の足首をもう一方の膝にかけます
  • かけた足の膝を、シャントがない方の手で軽く押します(数秒キープ→左右交互に)
  • 両膝を立てて揃え、膝と足首を閉じたまま、両足をゆっくり横に倒します(数秒後に反対側も)
  • ストレッチは運動の「準備体操」として必ず行いましょう。
  • 痛みが出たらすぐに止めてください。「気持ちいい」と感じる程度がちょうどよい強さです。
  • 透析患者はサルコペニアの影響で筋肉が硬くなりやすいため、ストレッチだけでも習慣にする価値があります。

3. 階段の昇り降り——筋肉をつけ・維持させる運動

通勤の駅ホームの階段や、自宅・会社内の階段を使って昇り降りを行います。エレベーターをあえて使わず、階段を選ぶだけで立派な運動になります。

  • 気軽にできて、筋力の維持・向上に効果があります。
  • 10分間の階段昇降は【運動強度=6〜7メッツ】。早足で昇れば【9メッツ】になりますが、透析患者にはきつすぎます。
  • 透析患者の推奨運動強度は「3〜4以上〜5・6メッツ」。階段をゆっくり昇り降りする程度が適切です。

ここで「メッツ(METs)」についてわかりやすく補足します。

身近な運動のメッツ(運動強度)目安
運動の種類メッツ(強度)透析患者向け目安
ゆっくり歩き(ぶらぶら歩き)2メッツウォームアップとして
ふつう歩き(ウォーキング・散歩)3メッツ推奨(有酸素運動の入り口)
自転車エルゴメーター(一定速度)5.5メッツ推奨範囲内(無理しない速度で)
階段昇降(連続10分)6〜7メッツ強度の上限付近。ゆっくりペースで
ジョギング6メッツ強度の上限。体力がある場合のみ
早足で階段・ランニング(速め)8〜10メッツ推奨しない(無酸素運動になる)

メッツとは、安静時の消費カロリーを「1メッツ」として、その何倍のエネルギーを使うかを示した数値です。透析患者には「楽」〜「ちょっときつい」と感じる3〜5.6メッツ程度の有酸素運動が推奨されています。それ以上の強度になると無酸素運動になり、心臓や血管への負担が増してしまいます。

OFF HD エクササイズのメニュー6選-2

 

4. ウォーキング・散歩——持久力をつける運動(特に推奨)

 

OFF HD エクササイズのなかで私が最も気軽にできると感じているのが、ウォーキング・散歩です。通勤時に1駅分だけ余分に歩く、休日に近所を散歩する——こんな積み重ねでも十分な効果があります。

正しいウォーキングのフォーム

①背筋を伸ばし、視線は10〜15m先に向けます(自然と姿勢が整います)
②膝はなるべく伸ばし、かかとで着地してつま先に向けてスムーズに重心を移します

  • 【運動強度=3メッツ】——透析患者に最もやりやすい有酸素運動です。
  • 「適度な速さ」で「長く歩く」ことが、体力向上・脂肪分解・末梢動脈疾患予防につながります。
  • 歩くなら良い靴の準備を!足への負担が大きく変わります。

ウォーキングシューズの選び方

  • かかとがしっかりしていて、指の付け根あたりが曲がりやすいもの
  • 幅や甲に圧迫感がなく、ひもで調整できるもの
  • クッション性があって通気性が良いもの

透析患者はむくみが出やすいため、ひもで締め具合を調整できる靴が特に便利です。また、体に合わない靴は転倒や怪我のリスクになるため、靴選びは侮れません。

5. 自転車エルゴメーター——持久力・筋力を同時につける運動

スポーツジムにある「フィットネスバイク」(自転車こぎ)のことです。一定時間・一定の速度でこぎ続けることで有酸素運動になります。膝関節への過度な負担をかけずに筋力を増強できるのが特徴で、膝に痛みや不安がある方にも取り組みやすい運動です。


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  • 【運動強度=5.5メッツ】——推奨範囲内の有酸素運動です。
  • AmazonやECサイトでは自宅用フィットネスバイクが比較的安価で購入できます。スポーツジムのものより機能は限られますが、自宅でこつこつ続けるには十分です。
  • 通勤時に自転車を使う方は、坂道を使うと筋肉への負荷が高まります。ただし長い上り坂は無酸素運動になりやすいため要注意です。
  • ランニング(速め)やサイクリング(170m/分)は【8〜9メッツ以上】になるため、透析患者には推奨しません。
  • 自転車や走るなら「話しながらできる速さ」を目安にしてください。それが有酸素運動の適切な強度の目安です。

6. シャント運動——シャントを発達・維持させる運動


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透析患者特有の運動として忘れてはならないのが「シャント運動」です。

軟式テニスボールやハンドグリップを握るいわゆる「ニギニギ運動」がこれにあたります。シャントを発達させ、透析のたびに安定して血液が流れるよう維持するための大切な筋肉運動です。

⇒シャント運動の詳細は「シャント運動に「継続は力なり」。負荷にも十分に考慮して!」を参照。

もう一度確認しておきたい——透析患者の運動の考え方

透析をしていても、運動ができないわけではありません。むしろ逆です。「体力がなくなっている」「筋力が落ちてきた」「足腰が弱くなっている」——それ自体が問題なのです。

腎臓リハビリテーションガイドラインでも、透析患者の運動療法の目標は「サルコペニア・フレイルの予防、骨格筋量・筋肉機能の維持」とされています。透析患者が運動をしない理由はなく、どう続けていくかを考えることが大切です。

「無理せずに楽しむ。継続できる運動のコツとは?」

運動を習慣化するためのコツが5つあります。目標の設定ややり方を工夫することで、モチベーションを保ちながら続けられる環境を作れます。

コツ① 運動と透析の相性を理解する

透析患者としてしてよい運動・避けたい運動を把握し、理解することが出発点です。

たとえば、バレーボールやバスケットボールはシャント肢に強い衝撃が加わる可能性があるため避けるべき運動の代表例です。「好きな運動が透析患者にはできない」と落ち込まなくても大丈夫——代わりになる運動を探すのが次のステップです。

参照:「透析患者の運動制限を変えるコツは無理しない、楽しむの2点!」

コツ② 運動を「楽しむ」ことを最優先にする

どんなに体に良い運動でも、苦痛に感じていては続きません。

(例)バレーボールが好きだったが、シャントへの影響を考えて代替の運動を探した。結果として卓球が楽しくなった——というように、「楽しめる運動」を探すことがモチベーション維持の核心です。趣味・興味を広げながら、運動への入り方を工夫してみてください。

コツ③ 継続できるペースで続ける

運動も「継続は力なり」です。

仕事をしながら、透析もしながら——その隙間に運動の時間を作るのは大変です。でも、無理なスケジュールは立てなくて良いのです。マイペースで、少しずつ積み上げる感覚が大切です。

何かを記録するのもおすすめです。万歩計・スマホの歩数計・ノートへの書き留めでも構いません。「先週より多く歩けた」という変化が、次のやる気につながります。

(例)ゆっくり歩き(2メッツ)→ふつう歩き(3メッツ)へ
(例)階段20段昇→30段昇へ

コツ④ 体調を最優先にする

どんなに運動したい日でも、体調が悪ければ迷わず休みましょう。

(例)今日は非透析日で運動したいが、収縮期血圧が80mmHg未満でめまいがある——こういう日は迷わず中止です。

運動を避けるべき状況は以下の通りです。

運動を中止・避けるべきとき
状況理由
血圧が80mmHg未満または180mmHg以上起立性低血圧・転倒・心血管イベントのリスクが高まる
体調が優れないとき無理すると体力をさらに消耗し、回復が遅れる
貧血症状があるとき(ふらつき・息切れ)腎性貧血が悪化している可能性がある
関節に痛みがあるとき無理に動かすと炎症が悪化する
シャント肢に負担をかける運動バスケットボール・バレーボールなど、シャントへの衝撃リスクがある

コツ⑤ 食事・運動・透析の三つのバランスを整える

「よく食べ(食事)、よく動いて(運動)、しっかり透析をする」——これが透析生活の基本中の基本です。どれかが欠けても、精神的にも肉体的にもうまくいきません。

自分へのご褒美や目標を作る感覚で、楽しみながら続けてみてください。

まとめ——OFF HD エクササイズを自分のペースで

OFF HD エクササイズを自分のペースで

透析患者の非透析日の運動療法——OFF HD エクササイズについてまとめます。

OFF HD エクササイズ まとめ表
確認項目内容
いつ行うか非透析日。透析中(透析前半)はON HDエクササイズ
どこで行うか自宅・外・会社・通勤中・スポーツジム・河川敷・公園など
どんな運動かウォーキング・散歩(特に推奨)、起立着席、ストレッチ、階段昇降、自転車エルゴメーター、シャント運動
運動強度の目安3〜5.6メッツ。「楽」〜「ちょっときつい」と感じる程度。1回20〜30分を目標に
有酸素+無酸素の組み合わせ有酸素運動(ウォーキング・自転車)と筋トレ(起立着席・階段)の併用が効果的
中止する目安血圧80以下・180以上、体調不良、貧血症状、関節痛があるとき

どのような運動が自分に合っているのか、どれくらいの強度から始めるべきなのか——これは透析クリニックの医師や、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)に相談するのが一番です。高血圧・心疾患・糖尿病・骨や関節の問題など、透析患者はさまざまな合併症を抱えているため、専門家の目から見た「自分専用の運動処方」を受けることが理想的です。

「今日はウォーキングを10分やってみよう」——そのくらいの小さな一歩から始めることが、OFF HD エクササイズを長く続けるコツです。

シャント運動の詳細はこちら:
⇒「シャント運動に「継続は力なり」。負荷にも十分に考慮して!」

参照:
「透析患者は運動不足。骨格筋量の減少が顕著、末梢動脈疾患も!」
「透析患者の運動制限を変えるコツは無理しない、楽しむの2点!」