血液透析者にとってシャントを保護し管理していくことは、「シャントは命の手綱」であるがゆえにとても大事なことです。
シャントを作った頃、いろいろ悩みませんでしたか?
・日常生活のなかで、
「雪かきはできるのだろうか?」「タイヤ交換はできるだろうか」・・・。
・仕事のなかで、
「魚肉類の裁断や商品並び替えはできるだろうか可能か」「冷凍室での作業は可能だろうか?」・・・。
いろいろ場面のなかで、できるだけシャントに負担をかけまいと気を遣ってきたはずです。
毎日のことですがこれからも保護し、管理しなければなりません。
今回は、シャントの自己管理のうち「シャント運動」についてとりあげます。
シャント運動も「継続は力なり」。負荷にも十分に考慮して!
あなたの、今のシャントの状況はどうでしょうか?
シャント音は聞こえていますか、それは正常ですか?
透析のことで日々の慣れというのもありありますが、「してはいけないこと」「避けたほうがよいこと」などは、大体つかめたのでは無いのではないでしょうか。
私も仕事では書類や梱包など極端に重い物を運ぶ際には、一言添えて他のスタッフにお願いしてます。
日常行っている買い物でも、布団干しなどでも、シャントには十分慎重に行うようにしています。もちろん血圧管理も、食事療法も!
ところで、「シャント運動」していますか?
「透析者は運動不足である」とよく言われることです。シャント運動もふだんの運動と一緒に取り込んで行っていきたいところです。
シャントの保護・管理に関する悩みというと、「針がうまく刺せない」「穿刺痛がひどい」というのもあります。
もっともシャント側の方の手指では「キツメのもの、新しい瓶のフタを開ける」「ジュースのプルタブを開ける」といったことが厳しかったりすることさえあります。
大なり小なり悩みはあるのですが、いずれにしても、何らかのシャントのトラブルが生じてしまえば経皮的血管形成術(PTA)が必要になったり、将来的にはシャントを利き腕にするような手術さえ行わないような可能性でさえあるわけです(そのためには箸やスプーンの持ち方なども慣れておかないと・・・)。
それから透析期間が長くなってくると、個人差はあるにせよ慢性合併症(動脈硬化、脂質異常症、血管の石灰化、透析アミロイドーシス・・・)などの心配があります。
シャント肢の血管が細くなって、穿刺がしづらくなったり、上肢の筋力が劣ったように感じるといったような場面が、どうしても出てきてしまいます。
それら透析者の悩みや症状を少しでも改善するため、シャントを発達・成長させるためには、「シャント運動」が欠かせません。
強いて言うならば、透析者は4~5時間は透析で横になっていることもあり、どうしても運動を控えがちになる傾向にあることから「運動不足」なわけで、この「シャント運動」と一緒に、散歩やウオーキングといった有酸素運動も取り込んで一緒に行ったほうが効率が良いでしょう。
詳細は以下のリンク先ページをご確認ください。
「透析者は運動不足。骨格筋量の減少が顕著、末梢動脈疾患も!」
シャントの発達・成長には掌握運動が有効!
はじめてシャントを作製した際に、医師や看護師さんから「これから透析を始めるにあたって、しっかりシャント肢の運動をして、血管を発達させるようにしましょう」「立派なシャントを作ったところで安静は逆効果ですよ!」などと、説明を受けたと思います。
そして、軟式テニスボールやビニールボール等を手渡されて、ニギニギを繰り返す運動を行いませんでしたか?
このニギニギの動作、運動のことを掌握運動(しょうあくうんどう)と言います。
血液透析は長期的に継続治療していくものであり、シャントは絶対必要、絶対不可欠なもの!透析者はシャントを鍛え、血管を発達・成長させなければならないのです。
掌握運動(しょうあくうんどう)。ただシャントの腕力を鍛え、血管を発達・成長させるばかりではありません。
透析者ならでは悩み・痛みというものを、先ほど何点か挙げました。穿刺の痛みのほかにも肩コリや腕・肩の痛みなどもありますね。
長年の透析からどんなことを想像しますか?
穿刺の痛み。肩コリや肩・腕の痛み
⇒透析中はシャントのある腕側が長時間にわたって同一姿勢でいるため、肩コリや肩・腕の痛みが。そして頭痛にもなりかねません。
長年の透析
⇒透析を続けていけばいやでも自然と年齢を重ねていきます。
ということは、体は痩せ気味になり筋肉量も減少し、血管も細くなり衰えていくのが通常であり「老い」というものです。体力も次第に低下していくでしょう。
想像できますでしょうか?
「老い」ていきます。血管が細くなり劣ってくれば透析が困難なるし、あちこちコリや痛みが心身に影響が出てきます。
透析者でしなければならないことは「食事」「検査」「薬」「運動」・・・。
まあいろいろとあるわけですが、透析をよりよく続けるためには「シャント運動」も欠かせないのです。
◇まとめにかえて
シャント運動のまとめです。
Q:「シャントを太く、透析を円滑にすすめるためにはどうしたらよいでしょうか?」
A:「シャントを発達・成長させるためには、物を握る」「指を動かす」「手首を曲げる」といったような掌握運動(しょうあくうんどう)が有効だといえます。
シャント運動も「継続は力なり」。
負荷にも十分に考慮すれば、一番負荷の軽くて気軽にできる軟式テニスボールやビニールボールのニギニギ運動が良いわけです。
詳細は「シャントを鍛えるボール運動が簡単。今日から続けましょう!」でいくつかのシャント運動を挙げていますので、参照してみてください。
私は時々ジムに通うことがあります。
車での通勤、会社の建物内ではエレベータに頼り、PCと向き合った机上の仕事に加えて透析ともなれば・・・。これだけみても完全な運動不足です。
また年齢を重ねるごとに、足腰が弱ってきていることを感じています。
そのため寝たきりの要因ともいえる足腰を鍛えたいと思っていたし、末梢動脈疾患が怖くて、「エア自転車こぎ」を中心として行っています。
ジムで本来であればシャントを発達・成長させたいとの思いで、「腕立て伏せ」や「指立て伏せ」、「重たいダンベル」「懸垂(けんすい)」などのメニューを取り入れたいところですが、それらは避けています。
なぜなら、それらのメニューはかなりの割合でシャントに負担をかけてしまうからです。
「シャントをつぶした、壊した」等と言いますが、その可能性が十分にあり得るからです。
シャント再構築の手術もまた手間面倒ですし、入院期間も長引くでしょう。
私の周りの透析者でも稀にジム(民間、自宅と問わず)行っているよ!っていう方はいますが、本当に大丈夫でしょうか?
「腕立て伏せ」「重たいダンベル」など、メニューには気をつけてくださいね!
透析者はシャントを長持ちさせるために、日々の管理・保護こそ使命なのですが、どうせなら「シャント運動」も楽しみながら行うべきだと考えます。
遊びの要素も取り入れながら、日々継続していくことが大事ですね。
遊びの要素も入って継続できているのなら一番良いです。「継続は力なり」。
ぜひ今日からあなたなりのシャント運動を見つけてみてはいかがでしょうか?
(詳細:「シャントを鍛えるボール運動が簡単!今日から続けましょう。」)