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「4時間透析」を行っている病院もありますが、4時間は最低限のもの、最低ラインであることは認識すべきです。4時間よりは30分でも1時間でも透析時間が長ければ、生命予後や合併症発症の遅延など後々影響してくることは言うまでもありません。
・労働契約上の変更、年次有給休暇の活用、土祝祭日の日に時間を延長する、などがある
透析時間を延長するための工夫について ~透析者側で対応できると思われること~
サブ的に「~透析者側で対応できると思われること~」としているのは、透析者が透析時間を延長したいと希望していたとしても、病院の事情(他透析者やスタッフ配置の事情、医師の治療方針・姿勢、病院経営など・・・)によって、どうしても「できる」「できない」という事が生じてしまいます。
ですので、その点はあらかじめご了承いただきたいと思います。
そして、透析者の置かれている立場(会社員、自営業、パート・・・)や環境(仕事や交通、家庭、家族の理解など)にも左右されるからです。
ここでは日中は仕事をし夜間透析(※)をしている会社員の場合で、透析時間を延ばすための工夫について事例を交えて説明していきます。
※「夜間透析」は、会社員や自営業者など仕事をしている透析者などを優先的に治療しています。
そのほとんどは医療サービスとしては、透析者の「社会復帰の促進」目的が多いです。
「透析時間を延長したい」「延ばしたい」ときはどのようにしたら良いか?
医師、看護師さんから聞きだして、今後の透析について考えるきっかけなり、アクションを起こすための参考としていただければと思います。
透析時間を延長するための工夫1.(労働契約上の変更)
仕事をしているのですから、労働契約上の変更や年次有給休暇を活用することで、時間を30分でも1時間でも伸ばすことができます。
労働契約上の変更
旧)9時~17時勤務(7時間の労働時間)
↓
新)9時~16時勤務(6時間の労働時間)
「出来る限り長い時間だけ働いていたほうが給料確保のためには・・・」と思うのが、透析者の本音でしょう(経営者、自営業の立場からすれば、そのマインド甘い!って言われますよ。)
でも実際は、労働時間と透析時間は天秤にかけるほかはなく「自分ならどう考えるか」「どちらのほうに重きを入れるのか」ということで、透析者一人ひとりみても違ってきます。
通常は8時間勤務がふつうですが、透析する場合はどうしても時短勤務とか、隔日の早退が発生しますので、
労働契約上(勤務時間などに関して)の変更を話しあう、書類を更新するといった手続きが発生します。
「治療方法の変更(透析時間を増やしたい)」という理由で、その旨を会社側に伝えなければなりません(総務・人事担当者に要確認)。
そもそも論で言うと、なぜ透析時間を長くしなくてはならないのかということは、担当者は理解していませんから、きちんとした説明は必要ですね。
いったん労働契約を結び直すことになりますが、そう頻繁に行うものではないことは言うまでもありません。
ほかにも、正社員→非正規社員・パートへ。部署替えなどといった方法もありますが、そこらへんは慎重に検討し行うようにしたいものです。
透析時間を延長するための工夫2.(年次有給休暇を使う)
政府や世間では「ワークライフバランスをとろう!」「働き方改革」などと叫ばれ、透析者にとってその言葉が相応しいかどうかは、正直言えば疑問が湧いてきます。
「ワークバランスってあるのか?」「ますます仕事の時間が減るのでは?」などといったものですね。
透析自体は治療なのでしょうが、透析は個人の解釈次第によっては、仕事でもありまたプライベートもあるのです。
あなたはどうとらえていますか?
2019年4月から、働き方改革関連法案施行に伴い「年10日以上」の年次有給休暇が付与される従業員については、会社には「年5日」の年次有給休暇を、確実に取得させることが義務化されました。
会社は年5日の年次有給休暇について、労働者の休暇の取得希望時季を尊重しつつ、取得日を指定し、取得させることが必要です(例えば会社側としては「9月18日(水)に休んで下さい」と言えるわけです)。
透析時間を少しでも確保して延長、延ばしたいと考えるのならば、権利として与えられた年次有給休暇を有効的に活用することは有効です。
そして、今回の働き方改革関連法案施行(労働基準法の改正)を機に、年次有給休暇を確実に取得させることは、透析者にとって透析時間を延長するのには、良い機会だと言えるのです。
また、毎月行われている定期検査やイザとなったときの外来診察、緊急入院などの際も使うべきです(少日数でも年次有給休暇は残すべきですが、日頃から心身ともベストな状態に持っていくことは大事ですね)。
会社には就業規則があります。
労働基準法第39条に「年次有給休暇」について規定されています。
年次有給休暇は原則「日単位」の取得が原則となります(←半日年休の規定はしていない!)が、「労使協定」により所定事項を定めることで「時間単位の付与」が可能となります。
→まず確認すべきところは、あなたの会社で年次有給休暇が原則の「日単位」であり、所定事項で定められた「半日単位」や「時間単位」なのかを就業規則で確認してください!もし分からなければ、総務・人事担当者等へ確認してください。
年次有給休暇の付与条件とは
<<年次有給休暇の付与条件>>
年次有給休暇は一定の要件を満たすと発生する、従業員全員の「権利」です。
1.雇入れから、6か月以上の継続勤務し、 かつ 2.全労働日の8割以上出勤 |
この2要件を満たした従業員に「継続または分割した10日」の年次有給休暇が与えられます。
詳細については除きますが、年次有給休暇は、6か月を超えて継続して勤務をすると、1年ごとに与えられる日数が増えていきます。
また、
最大の付与日数は20日です。
「年次有給休暇の半日付与※」や「時間単位付与」もありますが、会社によってまちまちです。
ただし、「半日付与」にせよ「時間単位付与」にしても、そもそも従業員からそれらの有給休暇の取得請求があった場合は、「日単位」の取得が原則なので、企業はこれに応じる義務はありません。
ということは、「半日付与」にするか、「時間単位付与」にするかどうかは、会社が決めることができるということになります。
※半日単位の年休取得について
年次有給休暇は「日単位」で取得することが原則ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、労使協定が締結されていない場合でも、日単位取得の阻害とならない範囲で半日単位で与えることが可能です。
いずれにしても付与日から1年で消えてしまう「付与日数分」を、透析のために充ててみてはいかがでしょうか?
透析を年次有給休暇に活用した事例
(事例1)
9時始業、18時終業(8時間勤務)が基本。
就業規則に「半日の有給休暇」について、午前休(9時-13時)、休憩時間(13時-14時)、午後休(14時-18時)と規定されていた。
⇒(夜間透析の場合)午前9時-13時の4時間はきっちり仕事をし、(会社で休憩時間をとるか、休憩とらずにあがって)日常できなかった用事をこなし、余裕をもっての移動、定期検査の時間等に充てる。そして、透析時間はふだんより30分でも、1~2時間でも確保することができる。
(事例2)
9時始業、18時終業(8時間勤務)が基本。
就業規則に、午前休(3時間分)、午後休(5時間分)と休憩時間の前後で区分したうえで規定されていた。
⇒(夜間透析の場合)午前9時-12時の3時間は勤務。午後休(5時間分)は有休なので、事例1と同様に、用事や移動、定期検査の時間等に充てる。そして、透析時間はふだんより30分でも、1~2時間でも確保することができる。
参照:「働き方改革と仕事。透析にどのような影響を受けたのか?【備忘録】」
土祝祭日等を活用する
基本的に土日祝祭日が休みだとして、会社との間には拘束力はありません。
(日曜日は透析がありません。)
そこで土祝祭日は、プライべートを優先させたい(家族サービス、趣味の時間に・・・)と思うのが、ふつうだろうと思います。家族のため、自分の時間を楽しみたい、ゆっくりしたい気持ちは十分に理解できます。
そこでなのですが、わずかな「30分」や「1時間」という時間を透析時間に充ててみてはいかがですか。
これも時間の積み重ねです!
私の場合ですが、祝日にあたる日は4時間半を5~6時間へ延長して透析を行っています。
事前に看護師さんに一言添えればよいのです、事前準備、スケジューリングしやすくなるのですから。
「透析時間の延長はできますか?」と。
◆まとめにかえて
医者、看護師さんが、透析者の「仕事」のことまで踏み込むということは、あまりありません。
仕事の繁閑、天候や交通事情などによっては、透析時間にどうしても間に合わないことは出てきてしまいます。
遅れていたりすれば、確認の電話なり入ってくるでしょう。
「何かありましたか、透析時間に間に合うようにしてください」と。
どこの会社に、何の仕事(業種で)就いていて、社名・電話番号くらいまでは、把握しています(親類等の緊急連絡先も含めて)。
正直にいうと、「透析のために仕事を変えるとか」「仕事の時間を削るように」などと言われるのは、おかしな話しだと思いませんか。
仕事あっての透析、透析あっての仕事なのですよ!
現実、医師・看護師さんの言い分もあるでしょうが、追い込まれている透析者もいますから。
透析者が著しく透析治療への姿勢を見せていないとか、透析への最低の時間確保ができていなければ・・・というのなら、話しは別ですが。
会社には「年5日」の年次有給休暇を、確実に取得させることが義務化され、当然に中小企業にも順次導入されていきます。
中小企業の割合が99.7%にものぼる日本です!
しかし、有給休暇の取得率のほうは世界的にみても、その数値は芳しくありません。
日本の会社の有給休暇取得率は49.4%(2016年)と、世界的に見ても圧倒的に悪いものです。
しかも政府が目指すとしている70%(2020年取得率目標)にも程遠いです。
正直、そのような中で有給休暇を透析の時間に活用すること自体が至難の業なのであり、至難の連続だし、高い壁がそびえているのは目に見えています。
これは今の日本が抱えている介護・育児問題と似たような構造問題と言えるでしょう。
透析については、会社、上司や周り人の理解そして協力が必要です。時期によっては繁忙期があったり、繁閑期んあったりすることもあるでしょう。
透析者も仕事をしている以上は、それなりに仕事の姿勢を見せることは必要ですね。
ちなみに、年次有給休暇の「時間単位付与」について触れたので情報として。
島津製作所が導入済み。パナソニックやNECも時間単位年休の導入に向けて協議中とのことです。
透析時間の確保は絶対的ですが、「透析時間を延長するための工夫※」はやろうと思えばできます!
※あえてここでは触れませんでしたが、「透析時間を延長、延ばすことに積極的な病院に転院すること」もひとつの方法にはなります。
私個人的には、有給休暇の取得率の一層の普及を願うとともに、透析のための時間確保と言わずに、介護・育児問題にも絡んでいるので、少しでも解消すべく有給休暇の「時間単位付与」のほうも考えてもらいたいと思っています。
透析者一人ひとり、置かれている立場・環境はそれぞれ異なります。
あなたなりの方法を見つけてみてください。
そして見つけたのなら、「透析時間の延長はできますか?」と声をかけてみてください。