スマートウォッチの血圧測定の仕組みと精度|透析患者が使える?最新比較

2019年12月9日

スマートウォッチの血圧測定の仕組みと精度|透析患者が使える?最新比較
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更新日: 2026年9月22日

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スマートウォッチで血圧が測れる時代になりました。

透析導入後にシャントを作ってからというもの、私はずっと腕時計をやめていました。ガラケー、スマホで時間が確認できる時代ですし、シャントのある腕に何かを巻くことへの抵抗感もあって、ずっと「腕時計は縁のないもの」だと思っていました。

ここ数年、Apple WatchやSamsungをはじめ、さまざまなスマートウォッチが登場し、その動向は気になってはいました。歩数・脈拍・心電図……と機能が増えるなか、「血圧まで測れるようになるの?」と思っていた矢先、実際にそれが現実になってきています。

ただ、「スマートウォッチで血圧が測れる」と聞いて、何でも同じだと思うのは早計です。医療機器として認証を受けた精度の高いものと、あくまで参考値として血圧を推定するものとでは、仕組みも精度もまったく別物なのです。

参照:「【透析】高血圧の状態が続いています。大丈夫ですか?【経過観察】」
参照:「透析で怖い事。低血圧でシャントが閉塞!狭窄も知ってほしい。」

  • スマートウォッチの血圧測定には「カフ(腕帯)式」と「光学センサー推定式」の2種類がある
  • 正確な血圧を測るには、医療機器認証を取得したカフ式のモデルを選ぶことが必須
  • 光学センサー推定式はあくまで参考値。診断・服薬判断には使えない
  • 透析患者がスマートウォッチを使う場合、シャント側への装着は避けること
  • 2025年時点で国内の医療機器認証を取得した血圧測定スマートウォッチはオムロン HeartGuide・HUAWEI WATCH D2などがある

スマートウォッチで血圧を測れる原理と仕組み

透析患者にとって、血圧の管理は毎日の日課です。透析前後の血圧はもちろん、日常的な血圧変動が、後々の心筋梗塞や脳卒中などの脳・心血管疾患の発症リスクに直結しているからです。

だから「おおまかに」「大体こんな感じ」という血圧データは困ります。正確な数値で、継続的にモニタリングしたい——その思いは20年超透析を行っている私も同じです。

スマートウォッチの血圧測定機能は、現在大きく2つの方式に分かれています。

方式① カフ(腕帯)式——医療機器として正確に測れる

私たちが病院や家庭で使っている血圧計と同じ仕組みです。腕(手首)をカフ(腕帯)で圧迫し、そのときの動脈の振動を読み取って血圧を測定する「オシロメトリック法」を採用しています。

この方法の最大のメリットは正確さです。動脈をカフでしっかり圧迫することで、家庭用血圧計と同等の医療精度を実現できます。日本の薬機法(管理医療機器認証)やアメリカのFDA(食品医薬品局)の承認を取得したモデルが存在し、測定値は参考値ではなく「本当の血圧値」として信頼できます。

デメリットは、カフをスマートウォッチのサイズに収めるための技術的な難しさと、それに伴うコスト(価格が高め)、そして測定時に腕をじっとしていなければならない点です。

方式② 光学センサー推定式——参考値として使う

スマートウォッチの裏面にある光学センサー(PPGセンサー)が血管の振動を読み取り、心拍数の測定結果と組み合わせて血圧を算出(推定)する方法です。

具体的には「脈波伝播時間(PTT)」という技術が使われています。これは心臓が血液を送り出した瞬間から、手首の血管に脈が届くまでの時間差を計測することで血圧を推定するものです。血圧が高いときほど脈が伝わる速度が速くなるという生理学的特性を利用しています。

ただし、この方式は医療機器認証を取得していない製品が大半で、あくまで「参考値」です。個人差・体調・測定姿勢などによって誤差が大きくなることがあり、診断・服薬判断には使えません。

スマートウォッチ血圧測定 2方式の比較
項目カフ(腕帯)式光学センサー推定式
測定の仕組みカフで動脈を圧迫して実測(オシロメトリック法)光センサーで血流を読み取り血圧を推定(PTT法など)
精度高い(医療機器と同等)低〜中(参考値。誤差が大きい場合あり)
医療機器認証取得済み製品あり(薬機法・FDA等)ほとんど未取得
測定時の拘束測定中は腕を動かせない(数十秒)ほぼ拘束なし(常時モニタリングも可能)
価格帯4〜10万円台1〜5万円台(比較的安価)
透析患者への使用シャントのない腕への装着で使用可能シャントのない腕への装着で使用可能(ただし参考値)

医療機器認証を取得した主なスマートウォッチ血圧計——最新比較

2019年に日本で初めて発売されたオムロンのHeart Guideから始まり、2025年現在、スマートウォッチの血圧測定市場は大きく進化しています。ここでは国内で医療機器認証を取得した代表的なカフ式スマートウォッチを比較します。

オムロン HeartGuide(HCR-6900T-M)——日本初・医療精度のウェアラブル血圧計

2019年12月3日に国内で医療機器認証を取得して発売された、日本発のウェアラブル血圧計のパイオニアです。「先行販売されていた米国でのFDA承認を取得し、国内でも薬機法の認証を取得している」という点で、当時は画期的な製品でした。

Heart Guideの最大の特徴は、スマートウォッチのバンド部分に微小なカフ(腕帯)を内蔵し、従来の手首式血圧計と同じオシロメトリック法で正確な血圧を測れる点です。測定精度は圧力±3mmHg以内と医療機器としての基準を満たしています。

歩数・消費カロリー・睡眠パターンなどの計測機能も搭載し、専用アプリ「Heart Advisor」(iOS・Android対応)でデータを管理できます。

オムロン HeartGuide 主なスペック
項目仕様
測定方式カフ(腕帯)式・オシロメトリック法
測定精度圧力±3mmHg以内、脈拍数±5%以内
医療機器認証薬機法(管理医療機器)認証取得・FDA承認取得
その他の機能歩数・距離・消費カロリー・睡眠パターン
バッテリー約2〜3日間(1日8回血圧測定の場合)
対象手首周16〜19cm(Mサイズのみ)
連携アプリHeart Advisor(iOS・Android)

個人的には「オムロンがスマートウォッチとして第1世代を出した」という位置づけで理解しています。血圧測定の実績あるメーカーが医療精度にこだわって作った製品という信頼感はありますが、スマートウォッチとしての機能の多様性(音楽・通知・スマホ連携等)はやや限定的で、「医療機器としての血圧計が腕に巻ける」という割り切り方が必要です。

HUAWEI WATCH D2——2025年発売、24時間自動血圧測定が可能な最新モデル

2025年2月に国内で発売されたHUAWEI WATCH D2は、日本の管理医療機器認証を取得したカフ式スマートウォッチで、現時点での最注目モデルです。HeartGuideが「測りたいときに測る」モデルだったのに対して、WATCH D2は睡眠中を含む24時間の自動血圧モニタリングが可能という大きな進化を遂げています。

「夜間だけ血圧が上がっている(夜間高血圧)」という透析患者に多いパターンも、WATCH D2があれば日中と夜間それぞれの血圧平均値として記録できます。これは従来の家庭用血圧計ではできなかったことです。

さらに心電図(ECG)機能についても日本のプログラム医療機器承認を取得しており、不整脈の早期発見にも役立てられます。

HUAWEI WATCH D2 主なスペック
項目仕様
測定方式カフ(エアカフ)式・オシロメトリック法
自動測定24時間自動血圧モニタリング対応(睡眠中も可)
医療機器認証日本管理医療機器認証取得(認証番号:306AGBZI00008000)
心電図ECG機能搭載(日本のプログラム医療機器承認取得)
ディスプレイ1.82インチ AMOLEDディスプレイ
バッテリー約6日間(1日6回血圧測定の場合)。自動測定モード時は約1日
その他機能心拍数・血中酸素・ストレス指数・睡眠分析・Bluetooth通話など

光学センサー推定式の代表例——参考値として使う製品

Apple Watch・Samsung Galaxy Watchシリーズ・ASUS VivoWatch SPなど多くのスマートウォッチは、光学センサーによる血圧推定機能を搭載しています。

2025年後半からは、Apple Watch Series 9以降に「高血圧パターンの通知」機能が日本でも管理医療機器として承認されました。ただし、これは血圧の具体的な数値を測る機能ではありません。光学センサーのデータを30日間継続的に解析し、高血圧の兆候を検知した際に「医療機関を受診してください」と通知するスクリーニング機能です。数値を見て自己判断するためのものではないため、透析患者の日常的な血圧管理に使うには不十分です。

2025年時点 血圧測定スマートウォッチ比較(代表例)
製品名測定方式日本の医療機器認証透析患者への適合
オムロン HeartGuideカフ式取得済み(管理医療機器)◎(シャントのない腕に使用)
HUAWEI WATCH D2カフ式(24時間自動)取得済み(管理医療機器)◎(シャントのない腕に使用)
Apple Watch(Series 9以降)光学センサー(通知のみ)高血圧パターン通知のみ承認(数値測定は非認証)△(参考値のみ。血圧管理には不十分)
Samsung Galaxy Watch光学センサー推定未取得(FDA承認のみ)△(参考値のみ)
ASUS VivoWatch SP光学センサー推定(PTT法)未取得△(参考値のみ)

透析患者がスマートウォッチを使う際の注意点

ここからは、同じ透析患者として特に気になる視点でお伝えします。

注意点① シャント側の腕には絶対に装着しない

これが最も重要です。シャント(内シャント)のある腕には、いかなるスマートウォッチも装着しないこと。

シャントは透析の命綱とも言える血管アクセスで、外部からの圧迫・締め付けはシャントの閉塞・狭窄リスクに直結します。カフ式スマートウォッチはとりわけ空気圧でカフを膨らませる仕組みのため、シャント肢への装着は絶対に避けなければなりません。

スマートウォッチはシャントのない腕に装着してください。これはスマートウォッチに限らず、腕時計・血圧計・アクセサリーすべてに共通することです。

注意点② 腕時計・スマートウォッチの装着を長年やめていた理由

私がシャント造設以来ずっと腕時計をやめていたのは、単純に「シャント側には巻けないし、反対の腕に巻くことも忘れていた」という感覚からです。スマートウォッチを検討する場合も、まず「どちらの腕のシャントか」を確認することが出発点になります。

注意点③ 測定データは治療判断の材料にはならない——現状の課題

正直に言います。現段階では、スマートウォッチで記録した血圧データを医師に見せても、治療判断の材料として採用されないのが現実です。

透析患者が血圧を管理する方法は今もアナログが中心です。病院から配布された用紙に手書きで記録するか、アプリやエクセルの管理表にまとめるか——いずれにしても、医師・看護師への提出は「その紙や画面」の範囲を出ません。スマートウォッチのデータがそのまま電子カルテに飛んで、治療に反映されるシステムは、まだ一般化していないのです。

これは「スマートウォッチが使えない」という話ではなく、「医療との連携システムの整備に時間がかかっている」という話です。自分の健康管理として血圧の傾向を把握するうえでは、十分に活用価値があります。

注意点④ バッテリーの問題——透析患者の現実的な悩み

スマートウォッチ全般にいえることですが、バッテリーの持続時間は課題です。HeartGuideは1日8回血圧測定で約2〜3日。HUAWEI WATCH D2は1日6回測定で約6日、24時間自動測定モード時は約1日となっています。

セイコー・カシオ・シチズンのソーラー電波時計は光エネルギーで充電し、放置しておいても動き続けます。スマートウォッチは2〜数日ごとにUSBやマグネット式で充電が必要です。どちらが便利かは目的次第ですが、「充電を忘れて測定できない」という事態は、血圧管理に使う場合には注意が必要です。

スマートウォッチで血圧測定——透析患者の目線でほしい機能

Heart Guide

20年超透析を行っている私が、スマートウォッチに対して感じる透析患者目線の要望をまとめます。単なる個人的なつぶやきではなく、同じ立場の方が感じることと重なるのではないかと思っています。

透析患者がスマートウォッチに期待する機能
期待する機能現状と背景
バッテリー持続時間をもっと長く2〜6日での充電は現実的だが、ソーラー式のような「ほぼ充電不要」が理想
血圧データを医療機関へ自動送信スプレッドシートや電子カルテへ自動で同期・グラフ化できれば、透析クリニックでの治療管理にも活用できる
緊急時・災害時のヘルプカード機能透析患者であること・シャントの有無・透析施設の連絡先・禁忌事項などを瞬時に提示できる機能があれば、もしもの時に命を守れる
高カリウム血症の検知透析患者の危険なリスクである高カリウム血症を非侵襲的に推定・警告できれば理想的

災害時のヘルプカード機能については特に現実的な需要があります。透析患者が倒れたとき・災害時に移動できないとき、まず知ってほしいのは「この人は透析が必要な患者だ」ということです。スマートウォッチがその橋渡しをしてくれれば、と切実に思います。

オムロン ウェアラブル血圧計 HCR-6900Tシリーズ HCR-6900T-M


HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計 LCA-B29:ブルー

まとめ——透析患者にとってスマートウォッチの血圧測定は使えるか?

結論をシンプルに言うと、「正確な血圧管理をしたいなら、医療機器認証を取得したカフ式モデルを、シャントのない腕に装着すること」です。

私自身はまだ手首式の家庭用血圧計を使い続けています。乾電池交換・メモリ容量の少なさなど不満もありますが、正確さという点ではスマートウォッチの医療機器認証モデルと大差はありません。ただし「24時間自動で記録できる」「睡眠中の血圧がわかる」という機能は、家庭用血圧計にはできないことで、ここにスマートウォッチの大きな付加価値があります。

透析患者の血圧変動は透析日・非透析日で大きく異なり、夜間高血圧のリスクも高いと言われています。24時間自動モニタリングできるカフ式スマートウォッチは、そのニーズに応える可能性を持っています。

治療への直接連携はまだ先の話かもしれませんが、スマートウォッチの進化は確実に続いています。「血圧データを医師に見せる」「災害時のヘルプカード機能」「透析患者専用の健康管理機能」——これらが実現する日がくることを期待しながら、今できることを使い続けていきたいと思っています。

参照:「【透析】高血圧の状態が続いています。大丈夫ですか?【経過観察】」
参照:「透析で怖い事。低血圧でシャントが閉塞!狭窄も知ってほしい。」