【透析患者の災害対策】豪雨・台風は年々多発、氾濫や洪水の大水害が発生!

2019年10月27日

【透析患者の災害対策】豪雨・台風は年々多発、氾濫や洪水の大水害が発生!
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更新日: 2026年7月31日

 

透析患者の災害対策とは!?(頻発する豪雨・台風の水害に向けて)

 

透析を続けていくうえで、天災は避けようがありません。

大雨であろうが、豪雨であろうが、まずは透析へ向かわなければならないのですから!

私自身、20年超透析を行っている経験から言えば、近年の気象の変化は明らかに激しくなっています。昔は「50年に一度の大雨」と言われていたものが、今や毎年のように発生しているのが現実です。

そもそも「水」による災害・水害とは、「大雨」「豪雨」「洪水」「台風」によるものが挙げられます。水害ともなれば広範囲に及び、川の氾濫や決壊、水路の氾濫、道路の損壊や断水、がけ崩れや土石流の発生、床上・床下浸水といった大きな被害をもたらします。いつも見ている田んぼが広範囲にわたって水没したり、家財道具や自動車などが流されたりといった非現実的な光景を目にすることになるわけです。

健康な人であれば、自宅待機や避難所への移動でひとまず落ち着けます。しかし透析患者はそうとはいきません。通院している病院へ通えなくなったり、病院そのものが被災して透析ができないというリスクにまで晒されてしまうわけです。

 

透析患者は被災しても透析を継続しなければならない
・「大雨」「豪雨」「洪水」「台風」など水害時の通院の際は細心の注意を!
・病院までの移動ができない、インフラの崩壊で透析機材が使えず透析ができないことも
『特定非常災害』に水害として初めて「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」が指定。「令和元年東日本台風(台風19号)」も指定された。

なぜ透析患者は水害に特に弱いのか

まずここを押さえておく必要があります。透析を受けていない方にはピンとこないかもしれませんが、透析患者が被災したときのリスクは、健康な人とは次元が違います。

透析(血液透析)は、腎臓の働きが失われた方が週3回・1回あたり4〜5時間かけて行う治療です。腎臓が本来担うはずの「老廃物の排出」「余分な水分の調整」「電解質バランスの維持」を、透析機器と透析液で代行します。

これが1回でも抜けると、体内に老廃物や余分な水分・カリウムが急速に蓄積し始め、数日以内に生命の危機につながりかねません。健康な人が「しばらく病院に行けない」という状況とはまったく意味が違うのです。

透析ができなくなる原因は「機械だけではない」

透析を行うには、以下がすべて揃っている必要があります。

必要なもの水害時のリスク
電気(透析機器の稼働)停電により機器がまったく動かなくなる
水(透析液の調製・機器洗浄)断水・水質汚染により使用不可になる
透析室・機材(浸水していないこと)床上浸水で機材が水没・使用不能になる
通院手段(病院まで行けること)道路冠水・通行止めで病院に辿り着けない
スタッフ(医師・看護師の出勤)スタッフ自身も被災して出勤できなくなる

「水」も「電気」も、どちらが欠けても透析はできない——これが透析医療の”弱さ”です。

令和元年東日本台風(台風19号)の際、私の通う病院でも他院の透析患者の緊急受け入れを行いました。それほどまでに「透析難民」が生まれるリスクがあるのです。

透析患者の災害対策(水害の歴史と最新事例)

冒頭でも触れた通り、「大雨」「豪雨」「洪水」「台風」「高波・高潮」……それらはすべて水害と呼ばれるものです。大なり小なり、日本のどこかで毎年発生しています。

しかしながら、異常気象のせいなのか、温暖化の影響なのか、私自身が20年超透析を行っているうちに、「今日は透析に行けるのだろうか」と不安になる場面が、年々増えてきたのを実感しています。

2018年・2019年と大水害が多発し、水害として初めて特定非常災害(※)に指定されたのが「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」でした。翌年には「令和元年東日本台風(台風19号)」が2019年10月11〜12日に関東〜東北を直撃し、2例目の特定非常災害となりました。

さらに近年も大きな水害が続いています。

  • 令和2年7月豪雨(熊本豪雨・2020年):球磨川が氾濫し、特別養護老人ホームで14名が犠牲に。透析患者を含む要配慮者の避難の遅れが課題として浮き彫りになった。
  • 令和4年台風15号(2022年):静岡県で記録的な大雨。広域で長期間の断水が続き、透析患者への影響が報告された。
  • 令和5年の線状降水帯多発(2023年):台風2号・台風13号などの影響で関東・東海・九州各地で河川の氾濫が頻発。気候変動により、今後も同様の事態が増加すると気象庁は警告している。

これからも特定非常災害になりえる水害は続くでしょう。透析患者は、この現実を常に念頭に置いて備えることが必要です。

特定非常災害に指定された主な災害(一覧)

特定非常災害西暦(元号)天災・概要
①阪神・淡路大震災1995年(平成7年)震災。1月17日5時46分、兵庫県南部地震(M7.3)が発生。これを契機に「特定非常災害特別措置法」が制定された。
②平成16年新潟県中越地震2004年(平成16年)地震。10月23日17時56分、新潟県中越地方を震源とするM6.8の直下型地震。
③東日本大震災2011年(平成23年)震災。3月11日14時46分、三陸沖を震源とするMw9.0の超巨大地震。東北地方太平洋沖地震として記録。
④平成28年熊本地震2016年(平成28年)地震。4月14日21時26分以降、熊本県熊本地方を震源とするM6.5、最大震度7が発生。
⑤西日本豪雨(平成30年7月豪雨)2018年(平成30年)水害。水害として初めて特定非常災害に指定。6月28日〜7月8日、西日本を中心に記録的な集中豪雨。死者・行方不明者220名超。
⑥令和元年東日本台風(令和元年台風19号)2019年(令和元年)水害。10月12日に伊豆半島に上陸。関東・甲信・東北で記録的大雨。最低気圧915hPa。令和2年2月19日、気象庁が「令和元年東日本台風」と命名(43年ぶりの命名)。

透析患者の災害対策(実体験:令和元年東日本台風)

私の生活圏では、2011年(平成23年)に東日本大震災を経験しました。被害は甚大で、沿岸部では犠牲者も出ましたし、津波被害のほか塩害により田畑が使えない、住宅が建てられないといった影響が長く続きました。あれから時間が経過し復興が進んでいるとはいえ、今日でもその影響は残っています。

そして2019年、関東・千葉県を中心に「令和元年房総半島台風(台風15号)」が9月9日に上陸。その1か月後には「令和元年東日本台風(台風19号)」が10月11〜12日にかけて直撃しました。

 

 

 

私の住んでいる町は1級河川の下流にあたるため、道路の浸水や陥没が起こりやすく、河川の氾濫・決壊のリスクも高い地域です。小学生の頃に実際に氾濫があり、町が水浸しになった経験があります。その後、河川は「平成の大改修」を経て整備されてきたのですが……。

10月11日、私は仕事を終えて夜間透析に向かいました。会社から病院へ向かうまで、すでに雨風は強く、いつもの渋滞以上に道路が混んでいました。

透析中はラジオを聴きながら仕事の疲れでうとうとしていました。しかし治療の終わり、深夜が近づくにつれてスマホへのJアラートが次々と届きはじめます。

「避難勧告」から「避難指示」へ。

「どのルートで帰宅するか」——そればかりが頭を占めていました。過去にも台風や豪雨の際に途中で引き返し、別ルートを迂回した経験があったからです。帰宅はできたものの、いつ堤防が氾濫・決壊するかわからない状況。Jアラートはひっきりなしに鳴り続けます。

私の町からも避難指示が出ていました。ただ、自宅から指定避難所は1級河川の近くにあり、他の指定避難所もやや遠く、農道や川沿いを通らなければならない経路でした。

避難したいのは山々でも、まず「今後の透析が確保できるか」の情報収集が必要。電気が生きている今のうちにスマホや充電器を充電しておきたい。無理に動かないほうがいい——そう判断し、自宅待機を選びました。

夜が明けるまで台風が去るのを待ち続けました。町はギリギリで河川の氾濫・決壊を免れましたが、川の支流・中流域の町では氾濫や決壊が発生。住宅の床上・床下浸水が相次ぎ、ある透析病院では浸水によって透析機材が使えなくなり、私の通う病院でも他院の透析患者の緊急受け入れが行われました。

引用:Jアラート(全国瞬時警報システム)

透析患者が知っておくべき「警戒レベル」と行動基準

近年、防災情報は「警戒レベル」という形で5段階に整理されました。透析患者はこの情報を正確に理解したうえで、避難指示が出る前から自分で判断して動けるようにしておく必要があります。

内閣府の「避難情報に関するガイドライン」では、「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動をとることが基本方針とされています。多くの場合、防災気象情報は自治体が発令する避難指示よりも先に発表されます。キキクル(気象庁の危険度分布)や河川の水位情報を使って、避難指示が出ていなくても自分で判断して行動を開始することが求められています。

警戒レベルと取るべき行動(一覧表)

警戒レベル防災気象情報取るべき行動・透析患者の対応
レベル5
緊急安全確保
特別警報
キキクル「災害切迫」(黒)
命の危険が迫っている。直ちに身の安全を確保。避難は不可能に近い状況。近くの頑丈な建物の上階へ移動。
レベル4
避難指示
危険警報
キキクル「危険」(紫)
危険な場所から全員避難。避難指示がなくてもキキクル・河川水位情報で自ら判断。透析患者はこの段階で病院へ必ず連絡を。
レベル3
高齢者等避難
警報
キキクル「警戒」(赤)
透析患者・高齢者・障がいのある方は危険な場所から避難。一般の方も避難準備を開始し自ら避難判断を。
レベル2注意報
キキクル「注意」(黄)
ハザードマップで自宅・病院周辺の浸水リスクと避難ルートを確認。モバイルバッテリーを充電しておく。
レベル1早期注意情報
(警報級の可能性)
最新の防災気象情報に注意し、災害への心構えを高める。透析スケジュールと天気予報の照合を始める。

 

透析患者にとって重要なのは、レベル3が出た時点で行動を開始すること。「レベル3=高齢者等避難」のカテゴリには透析患者も含まれると考えてください。腎機能の代替を機械に頼っている以上、健常者と同等の時間的余裕はありません。

避難先は「あらかじめ指定された避難所」にこだわらなくてOKです。川や崖から少しでも離れた、近くの頑丈な建物の上層階に逃げるなど、そのときの状況で最善の安全確保行動をとることが大切です。

参考:気象庁「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」

透析患者の災害対策(仕事中に豪雨・台風が来たら)

細心の注意が必要だ

 

会社で仕事をしているときに大雨警報や特別警報が発令されると、いつもの渋滞以上に異常な渋滞が発生します。高速道路の閉鎖や在来線の運休で一般道に一斉に流れ込んでくるからです。

ゲリラ豪雨、「体験したことのないような大雨」……運転するだけで視界が悪く危険ですし、病院に着くまで神経をすり減らします。

透析導入した頃や仕事に慣れない頃は、「入室時間に遅れまい」と渋滞にイライラし、時間にあせる日々でした。入室遅刻への引け目や惨めさも感じましたね。しかし結局のところ、早めに出ても状況は変わりません。

 

まず電話一本、病院へ入れましょう!
(電話が難しければメールでもOK!)

 

自分の身の安全が最優先です。
「自動車事故を起こさない!」
安全運転で、無事に病院へ着くことだけを考える。

そのような考え方に切り替えました。そうしなければ、透析はやっていけません。

 

入室時間の遅刻だの、マナーだのと言っている場合ではないのです。いまだに「早く来てください!」という病院があると聞きます。スタッフから「気をつけて来てください」とも言えないような病院があるとも。正直、驚きを通り越しています。

透析は大切です。しなければならないのはわかります。しかし、人を傷つける自動車事故の代償のほうが、透析の遅刻より圧倒的に大きいのは誰の目にも明らかです。本当に気をつけてください。

透析患者の災害時に役立つ「DMSO」と避難先透析について

万が一、かかりつけ病院が被災して透析ができなくなった場合——そのとき頼りになるのが日本透析医会が運営する「災害時情報ネットワーク(DMSO:Disaster Medical Support Organization)」です。

DMSOは、災害時に透析が継続できない患者に対して、受け入れ可能な透析施設の情報を迅速に共有するためのシステムです。過去の大規模災害(東日本大震災・西日本豪雨・熊本地震など)でも実際に活用されてきた実績があります。

DMSOを活用するために今できること

  • かかりつけ病院がDMSOに加入しているか確認する(主治医か担当看護師に聞いてみましょう)
  • 透析手帳(透析患者証)を常に携帯し、最新の透析条件が記載されているか確認する(ドライウェイト・透析時間・使用薬剤・血液型など)
  • 避難先で別の透析施設を受診する場合、この情報がなければ適切な透析が受けられないことを理解しておく
  • 自治体によっては「災害時要援護者登録(避難行動要支援者登録)」制度があり、透析患者も登録できる場合がある。お住まいの市区町村の担当窓口に確認しておくことをすすめます。

豪雨・台風に備える「気象情報アプリ」の活用法

スマートフォンが普及した今、防災情報の収集はアプリで格段に楽になりました。透析患者として特に役立つアプリ・サービスを紹介します。

ツール名特徴と使い方
キキクル(気象庁)土砂・浸水・洪水の危険度を地図で色分け表示。警戒レベル判定の基準となる情報。スマホにブックマーク必須。
NHKニュース・防災アプリプッシュ通知で地域の避難情報・警戒レベルが届く。停電時でもラジオと併用できる。
ハザードマップポータルサイト(国土交通省)自宅・病院・避難所の浸水想定区域・土砂災害危険箇所を地図で確認できる。事前の確認に最適。
川の防災情報(国土交通省)全国の河川水位をリアルタイムで確認できる。自宅近くの川が危険水位に達しているか即座に判断可能。
Yahoo!防災速報地点登録しておくと、自宅・職場・病院など複数地点の防災情報をプッシュ通知で受け取れる。

特に「キキクル」と「川の防災情報」は、避難の判断をするうえで最も直接的に役立ちます。Jアラートが届くより前に、自分でリアルタイムの状況を確認できるのが強みです。スマホが充電切れになるようでは情報収集もできません。モバイルバッテリーは常にフル充電を維持しておきましょう。

透析患者の避難時「持ち出しリスト」

いざ避難となったとき、何を持って出るべきか。健康な方とは違う、透析患者ならではの持ち出し品があります。

優先度持ち出し品理由・ポイント
★★★透析手帳(透析患者証)ドライウェイト・透析時間・使用薬剤・血液型が記載されたもの。避難先の透析施設でこれがないと適切な治療が受けられない。
★★★保険証・医療費受給者証のコピー原本も可能な限り持参。コピーを防水袋に入れて常時携帯しておく。
★★内服薬・処方薬(数日分)透析患者は降圧剤・リン吸着薬・鉄剤など複数の薬を服用していることが多い。薬の名前・用量をメモしておくとより安心。
★★モバイルバッテリー・充電ケーブル停電時のスマホ充電に不可欠。防災情報の収集・病院連絡のために必須。大容量タイプを選ぶ。
★★携帯ラジオ・乾電池停電・スマホ電池切れ時でも情報を得られる。手回し充電タイプも便利。
現金(小銭含む)停電時はカード・電子マネー不可。公衆電話や自動販売機のために小銭も必要。
飲料水・非常食(カリウム・リン配慮)透析患者はカリウム・リンの摂取制限がある。バナナや生野菜、干し柿などカリウムの多い食品は避ける。レトルトご飯や塩分・カリウムの少ない非常食を選ぶ。
かかりつけ病院の緊急連絡先メモ(紙)スマホが壊れたり電池が切れた際でも連絡できるよう、紙に書いて財布に入れておく。

 

特に食事管理は要注意です。避難所では炊き出しや支援物資として、バナナ・おにぎり・カップ麺・缶詰などが配られることがあります。しかし透析患者にとってカリウム・リン・塩分が多い食品は命に関わることがあります。遠慮せず周囲に「腎臓の病気があり、食事制限があります」と伝えることが大切です。

まとめ:今すぐできる透析患者の水害対策チェックリスト

数年前のこと、連日の大雨が続いたある朝、出勤しようとしたタイミングでJアラートが鳴り出しました。「記録的短時間大雨情報」に続き、すぐに「土砂災害警戒情報」も。独特のアラート音に思わず固まりました。

そのとき私は、会社に電話を入れました。「今日は出勤できません。自宅付近が危険です。透析の確保が必要ですので、病院とも確認が必要なため休ませてください」と。

無理して出勤しても、また早退して透析に向かうことになる。渋滞で苦労するのは目に見えている——そう直感しました。水害時に透析ができない、あるいは透析時間が短くなるリスクは十分にあります。そのような事態がいつ起きるか、誰にもわかりません。

だからこそ、「何かあってから考える」ではなく、「何かある前に準備しておく」ことが透析患者の命を守ることになります。

今すぐやっておくべきこと(チェックリスト)

自宅・病院周辺のハザードマップを確認する(浸水想定区域・土砂災害危険区域を把握する)
複数の避難ルートを事前に確認しておく(川沿い・農道を避けたルートも必ず)
透析手帳・保険証コピーを防水袋に入れて持ち出しやすい場所に保管する
かかりつけ病院の緊急連絡先を手帳・スマホ・紙メモに記録する
携帯ラジオ・乾電池・モバイルバッテリーを購入し、常に充電を維持する
キキクルと川の防災情報をスマホにブックマーク登録する
警戒レベル3が発表された時点で病院・家族への連絡と避難準備を開始する
かかりつけ病院がDMSO(日本透析医会・災害時情報ネットワーク)に加入しているか確認する
自治体の「避難行動要支援者登録(災害時要援護者登録)」に申請しておく
避難時の非常食はカリウム・リン・塩分に配慮したものをあらかじめ選んでおく

 

引用:ハザードマップポータルサイト 国土交通省

ハザードマップポータルサイトは今すぐ確認できます。自宅と通院先病院、両方の浸水リスクを調べておいてください。今すぐにでも、行ってみてください。

 

参考:「【透析患者の災害対策とは?】自宅・会社で起きたら!備えは!」(地震・停電など豪雨・台風以外の災害への備えはこちらで詳しく解説しています)
参照:「透析アプリを探してみました。現実は・・・【随時更新】