安定した透析者の目標とする「正常な血圧値」はご存知でしょうか?
「最高血圧が140mmHg未満、最低血圧が90mmHg未満」
とされています。
高血圧よりはかは低血圧のほうが良いと思われがちですが、実はそうではないです。
大事なシャントが低血圧によっては閉塞(へいそく)してしまうことだってあるんですよ!
・透析者にみられる低血圧には3つあり「透析関連低血圧」と呼ぶ
L「1.透析低血圧」「2.常時低血圧」「3.起立性低血圧」である
・低血圧が続くとシャントが閉塞(へいそく)してしまうから。狭窄(きょうさく)にも注意が必要
・シャントの閉塞・狭窄が見られたら、一刻も病院へ連絡を
低血圧でシャント閉塞に。狭窄ともにその徴候を知って!
透析をすると「高血圧」になりやすいと言われますが、それは本来、生体の腎臓機能にあるうちの「血圧の調節」ができなくなるためです。
透析者は腎臓の機能が悪いか、機能を無くしているために、体内に塩分をはじめとする老廃物や水分が溜まって体重を増やし、血流量も増えるために血圧があがってしまうのです。
また腎臓には、血圧を上昇させるレニンや血圧を下降させるカリクレインといった、ホルモン分泌の調節することで血圧を正常に保つわけですが、ホルモン分泌が上昇し高くなってしまう場合もあります。
参照:「透析治療では何をするの?腎臓は本当にすごい司令塔だった!」
このようなことから、透析者は高血圧の管理が必要で、食事療法(塩分や水分摂取の制限)、ドライウエイト(DW=基礎体重)の適正化、体重の管理、降圧剤での調整などを行なっているのです。
対して「低血圧」というのもあります。
一般的な低血圧の分類というものはあるものの、実は定義というのが曖昧で未だ決まっていません。
以下、「透析者にみられる低血圧(=透析関連低血圧)」について説明していきます。
透析関連低血圧とは?
透析者にみられる低血圧には3つあり、「1.透析低血圧」「2.常時低血圧」「3.起立性低血圧」があり、これらを総称して「透析関連低血圧」と呼んでいます。
3.の起立性低血圧は、健康なときにも経験したことがあるのではないでしょうか。
立った状態になったときに立ちくらみや眩暈(めまい)を生じるのが、そうです。
1.透析低血圧(透析中に起こる低血圧)
透析低血圧(透析中に起こる低血圧)は、透析中に「最高血圧が20mmHg以上」急激に下がったか、「症状を伴っていて平均血圧が10mmHg以上」で急激に低下した場合とされています。
これは透析中に体の水分を引き過ぎること(=時間あたりの除水量の過剰)により起こるもので、体内では循環血液量※の減少、血管収縮能の低下、心機能低下の原因になります。
※循環血液量とは・・・「絶え間なく体内を循環している血液の量」のこと言い、体重の約1/13を占めるとされています。
例えば、男性で体重が70(Kg)の場合。
70(Kg)÷13で、約5.4Kg相当。つまり5.4リットルもの血液量が、体の隅々へ酸素や栄養素を運び老廃物を排出するために、絶え間なく体内を循環していることになります。
透析低血圧の対策について
透析中に起こりうる低血圧なので、その場にいる医者・看護師さんのもとで判断・処置されることが多いです。
医者・看護師さんは、以下のような処置を行います。
・除水速度の軽減、生理食塩液の補液、低温透析(透析液34.0~35.5℃)、血液透析濾過法(=HDFなどがあります。
・低血圧が続いて透析が難しい場合は、透析者へ経口昇圧薬を与えることもあります。
一方、透析者としてできることは、
・体重の増加(概ね水分量が多い)が原因となることが多いので、食事療法である塩分や水分摂取の制限が必要です。体重増加をドライウエイト(DW)の3~5%以内になるようにします。
・ドライウエイト(DW)が適正でないこともあるので、調整が必要です。
大概ドライウエイト(DW)を下方に設定している場合が多く、そのまま水分を引いている可能性が高いので、医師に相談しましょう。
・時間内での除水量を軽減するためには「長時間透析」を考えるのも一つの方法です。
2.低血圧症(常時低血圧ないし持続性低血圧)
透析者の一部にみられ、非透析時や透析前における最高血圧が100mmHg未満と低く、日常生活に支障を来すほか透析治療をすることも容易ではありません。
そのため透析時は除水不全に陥りやすく、うっ血性心不全を惹起しやすくなります。
自律神経機能異常や血管機能障害からくるものであり、長期透析者の合併症のひとつにもなります。
常時低血圧(持続性低血圧)の対策について
・ドライウエイト(DW)が適正でないこともあるので、上方修正が必要です。
・透析者へは経口昇圧薬を与えることもあります。
透析者としてできることは、
・透析終了後・・・寝た状態からすぐには起立せず、一定時間座位を保ったうえで起立するようにしてください。
・透析前後ドライウェイト(基礎体重)の適切な設定、次回透析間までの体重増の管理、食事摂取の管理(食塩・水分摂取量)を極力抑えるなどが大事になってきます。
・健康な人と同様に、特に目眩(めまい)や立ちくらみによって生じる、転倒や落下による頭部の打撲は一番危険です!まずは頭を守らなければなりません。真っ先に座るなどの失神回避法を身につけておくのもよいでしょう。
・血圧低下を防止する装具があります。弾性ストッキングや、ODバンドのような加圧式腹部バンドを適切に使用してみてください。
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3.起立性低血圧
こちらは「透析者の「起立性低血圧」は透析関連低血圧の一つです。」で、体験談を含めて説明しています。
大変苦労なことをしてしまいました。
◇まとめにかえて
高血圧には「定義」はあるのに、低血圧の定義はいまだはっきりしていなくて曖昧だということに、正直驚きました。
私は低血圧ぎみなので、透析時間の終了時間に近づけば近づくほど、血圧の低下で苦労することがあります。
(最近は長時間透析も少しずつ入れているので、その点改善してきました。)
不思議には思っていたのですが、降圧剤というお薬のことはよく聞きます。
でも、その逆である「血圧を上げるための処方」は・・・。
あることはあるようですが、「では薬で調節しましょうね」というのを、これまでに言われたことが無かったですね。
「どれくらい血圧をあげるの?」っていうことで、脳や血管などへの負担やリスクが大きく、実際にどうなるかも分からないこともあって、めったり処方されることは無いようです。
透析者は、高血圧もまた低血圧にもならないように日々、食事療法に血圧管理を続けていくことがとても重要です。
振り返ると、透析者にみられる低血圧として3つありました。
「1.透析低血圧」「2.常時低血圧」「3.起立性低血圧」があり、これらを総称して「透析関連低血圧」と呼んでいました。
最後の「3.起立性低血圧」は、透析後や非透析日に起こしやすいものです。
仕事や家事、プライベートな場面など、いつ・どこで起きるか分かりません。
必ずしも近くに医師、看護師さんがいるわけではありません!
次のような症状は「シャント狭窄・閉塞」の徴候ですので、知っておきましょう。
気づいたらすぐに病院へ連絡してください!
明日を待たずに連絡を入れてください!
早期発見、早期処置がとても大事なのです。
・ シャント音、スリル音が弱くなっている。または聞こえない。 ・ シャント血管が硬くなっている。 ・ シャント側の腕が腫れたり痛み、赤み、熱感などがある。 ・ シャントの繋ぎ目がドキドキする・・・など。 |
透析中に体の水分量を引き過ぎたり、ドライウエイト(DW)が適正でないなどが、主な原因です。
高血圧も避けるべきですが、低血圧の状態でいること、その起こりうる症状をずっと放置しておくことも、合併症や生命予後の危うさからの点からして、やはり避けるべきです。
血圧は日々の食事療法や血圧管理などでしかコントロールすることができません(自らの意思で血圧コントロールできればよいのですが・・・)。
きちんと医師・看護師さんに調節してもらうための報告、相談を行うようにしましょう。