リン(P)の働き知ってますか?透析者の過剰摂取は【リスク大】

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リン(P)

 

リンという元素は聞いたことはあるでしょうか。

「マッチの原料」とか「赤潮」の原因といったら、きっと思い浮かべられるのではないでしょうか?

 

小・中学生の理科の授業では、空気中では自然発光を示すことの実験を、社会の教科書でも公害問題として出てきました。

 

実は、現代人にとってリン(P)摂取が過剰ぎみと言われます。
そして透析者にとってはリン(P)の摂り方、付き合い方で日々頭を悩ませているのが現実です。

 

なぜなら、高リン血症等といった合併症のリスクがあり、たいがいの透析者はリン吸着薬を飲んでいるからです。

 

・リン(P)は生体、農業、工業のいずれの場面においても必要不可欠なもの
・現代人にとってリン(P)摂取が過剰ぎみ。それ以上に透析者も摂取の仕方で悩んでいる
・リン(P)とカルシウム(Ca)というふたつの元素は兄弟姉妹なもの
・食事面では、加工食品や冷凍食品、乳製品・豆類などに多く含まれている

 

目次

リン(P)の働きって知っていますか?

地球には非常にたくさんの物質があるわけですが、それらを形づくっているが「元素」と呼ばれるものです。

「元素周期表」に載っているのは、なんと118種類の元素しかありません。

 

そのうちリンという元素は、原子番号でいうと15番目にあたる元素で、元素記号はPとなります(以下、リン(P)と表記)。

 

リン(P)の働き、知っていますか?

 

リン(P)は、私たちが生きていくうえで必要な元素であり、生命に重要な役割を持っています。

 

【生体面】

最初に生体面からみたリン(P)は、人体のなかではカルシウム(Ca)に次いでに多く、6番目に多く含まれる元素なのです。

人体に必要なミネラルの一種であって、骨や歯の成分として「リン酸カルシウム」があります。

 

ほかにも、生命活動の維持・必要性としては「有機リン化合物(核酸(かくさん)など)」も含まれています。

 

透析に注目すると、このリン(P)とカルシウム(Ca)というふたつの元素が兄弟姉妹のように例えられ、食事での摂り方においては、常のに注意しなければなりません。

参照:「摂りすぎかも!?リン(P)の栄養素と役割

 

農業面】

リンは農業3大要素のひとつ

次に農業面からみたリン(P)ですが、「肥料の三大要素」のひとつに数えられています。

「肥料の三大要素」って聞いたことありますか?三大要素出てきますか?

農業されている方や家庭菜園を趣味としている方だったらご存知かと思います。

「肥料の三大要素」を具体的に見てみると、

 

「窒素(N)」=植物の体づくりの基本材料
「リン酸」=植物の活力のもと
「カリウム(K)」=植物の体内の調整役


といったところでしょうか。

農業や家庭菜園の肥料には、必ずこれらが含まれています。

 

今回取り上げているリン(P)や肥料としての「リン酸」の役割というのは、「植物の活力のもと」だと言えます。

つまりこのリン酸が不足してしまうと生長(せいちょう)が悪くなったり、花や葉の数が少なくなったりしてしまうのです。

ちなみに、農作物は土からできるものですので、カリウム(K)値が高くなります。透析者が生野菜、生果物をできる限り避けて食べるのは、カリウムによって「くちびるがしびれる」「手や指がしびれる」「胸が苦しい」といった症状があらわれて、最悪は心臓障害(不整脈)をきたすことがあるからです。

【工業面】

最後に工業面をみてみます。

日本は資源に乏しいのでリン(P)の輸入国になっています。金属の表面加工や工業用の触媒(しょくばい)といったように、いろいろな用途で使われています。

 

ところで、どのように火をおこしますか?

今では100均に行っても、マッチやライター、チャッカマンなどがふつうに置いてあり、安く買える時代です。

小学生の理科の授業では「マッチの正しい使い方を教えています。

校外活動でのキャンプや食事づくりでも同じように教えています。マッチやライター、チャッカマンからは入っていきませんよね(^∇^)

 

そう、マッチ棒の先端にある赤々とした部分。
それが赤リンです。その赤い部分を擦ると「ボウーッ」と着火しますよね。

今も昔も変わらず火のおこし方。「マッチの使い方が登竜門」のようです。

マッチ棒

 


ここからは日本の経済成長の「負」の部分。

公害史のなかでも有名なのが、社会的公害である赤潮(あかしお)の発生があります。
別名では「苦潮」「腐潮」「厄水」とも言います。

 

ときは1970年代。当時の合成洗剤は「三リン酸ナトリウム」が使われていました。

家庭や工場からの流れ出る生活排水や工場排水、肥料の垂れ流しによって海や川などでは水が変色する赤潮(あかしお)が発生しました。

 

そのため海や川などには動植物の栄養源となる窒素(N)や「高濃度なリン(P)」などが溶け込んでいて、プランクトンといった微生物や海藻、水草等が異常に繁殖してしまいました。

その結果、水中の酸素が少なくなったり(=低酸素)、水質の汚濁、魚の斃死(へいし)等がみられ、生態系バランスの崩壊につながり、漁業や養殖業に大きな影響を与えました。

 

時代は流れて複雑化かつ地球規模化する環境問題に対応するために、公害基本法を廃止して「環境基本法」が施行されました。

しかしながら昨今でも温暖化のせいなのか、春から夏場などにかけて赤潮がみられることが多く、「養殖魚や貝の斃死」や「海苔(のり)の色落ち」「貝毒」などといった影響があります。

 

このようにリン(P)は動・植物に含まれているほか、農作物や食肉、海産物などをはじめ多くの食料品、工業品でも多く使われていているのが分かり、欠かせないものなのです。

 

 

摂りすぎかも!?リン(P)の栄養素とその役割

リン(P)の栄養素とその役割とは

ここからは、もっとも身近な食事面からみたリン(P)についてみていきます。

 

意外に思われるでしょうが、現代の食生活においてリン(P)は非常に摂りやすい状態と言えます。リン(P)の過不足ということはほとんどありません。むしろ摂りすぎのほうが多いと言われています。

 

リン(P)ですが、肉や豆類などに多く含まれる重要な栄養素であり、ミラネルの一種です。

成人で体重70(Kg)の人であれば約700~800(g)は含まれていて、体重全体の1%を占めます。そして生体内ではリン酸(H3PO4)として存在しています。

 

 

リン(P)の役割は主に3つあります。

 

1.骨や歯の生成

⇒リン(P)はカルシウム(Ca)とともに歯や骨をつくる大事な栄養素です。リンの約80%はカルシウムと結合して「リン酸カルシウム」となり、歯や骨を作っていきます。

 

2.エネルギー代謝

⇒残りの20%は、脳や神経、筋肉にも存在していて、細胞膜や(核酸(かくさん)の構成要素として体内の細胞に存在するほかエネルギー代謝に関わっています。

 

3.細胞(DNAやRNA)のPhバランス調整

⇒細胞のPh(ペーハー※)バランスや浸透圧を保つ働きも行っています。

※Ph(ペーハー)とは細胞内の酸・アルカリのバランス調整のことを言います。

日本人の食事摂取基準でのリン(P)の目安量は、健康な成人男性が1000(mg/日)、成人女性で800(mg/日)とされています。

 

なお、リン(P)の耐容上限量は、18才以上の男性・女性とも3000mg/日とされています。

リン(P)は足りなければ様々な病気を引き起こします。繰り返しになりますが、現代ににおいて男性、女性ともにリン(P)は摂りすぎと言われています。

 

摂り過ぎれば「老化の加速」や「カルシウム量低下」、「副甲状腺ホルモンの分泌異常」などの原因になります。なので、透析者のリン(P)摂取量は700~800(mg/日)とされていて、健康な人と比較して低くなっています。摂取量は成人女性並みととらえて良いでしょう。

 

透析者にとってのリスクは、リン(P)の過剰摂取からくる「高リン血症」になりやすくなるからですね。

食品には多くのリン(P)が含まれている

食品には多くのリン(P)が含まれている

 

では食品全般で見てみましょう。

リン(P)は、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)、豆類(枝豆、きな粉)、魚介類(いわしの丸干し、シシャモ、しらす干し、肉(レバー)などに多くの含まれています。


 

以下、リン(P)含有量が多い食品を挙げてみます(カッコ内、mg)。

・穀類:オートミール100gで(370mg)、スパゲティ100gで(130mg)、米飯150g=軽く1杯(51mg)、6枚切食パン1枚(50mg)

⇒オートミールは栄養バランスが富んでいるがゆえに、リンも高めです。茹でうどん100gではわずか(18g)です。

 

・豆・卵類:
きな粉100mg(660mg)、もめん豆腐1/3切れの100gで(110g)、鶏卵1個50gで(90mg)枝豆50mg(85mg)、納豆40g(85mg)

⇒意外にも、きな粉は含有量多し!豆、卵類の摂りすぎも注意。

 

・ナッツ類:
ごま(560mg)、カシューナッツ(490mg)、アーモンド(480mg)落花生(390mg)

⇒おつまみで食べる機会が多いですし、ナッツ類の健康効能に期待してついつい食べ過ぎてしまいがちです。日本栗だと(72mg)ですが、甘露煮だと(25mg)になります。

 

・乳製品:
脱脂粉乳粉100g(1000mg)、牛乳200cc(186mg)、プロセスチーズ1切れ(146mg)

⇒脱脂粉乳粉=スキムミルクです。蛋白質やカルシウム、乳糖などを多く含んでいて栄養価が高いがゆえに、リンも高いです。



⇒牛乳、チーズは摂りすぎない。またチーズは塩分も高めです。
⇒牛乳よりは豆乳!豆乳200ccで(98mg)と1/2に落とせます。

参照:
透析者は牛乳を飲まないほうがいいの?【骨粗鬆症も心配!】
透析者とヨーグルトの話し【リン・便秘対策についての実践】

 

 

・魚類・魚介類 ※可食部の100gあたり:
するめ、煮干し(1500mg)、干しえび(990mg)、かつおぶし(790mg)しらす干し(470mg)、ししゃも(360mg)、わかさぎ(350g)

⇒干物は全般的に高め!しらす干しやししゃもなどを摂りすぎない。

 

・肉類 ※可食部の100gあたり:
ハムロース(340mg)、豚レバー(340mg)、牛レバー(330g)、ショルダーベーコン(290mg)鶏ささみ(220mg)、ウインナー(190mg)、牛もも肉・ひれ肉(190mg)、豚ばら肉(140mg)、鶏ひき肉(90mg)

 

⇒肉類ではレバーがリン(P)多めです。ほかの部位は100~200台です。
⇒同じ肉類でも食品添加物が多く含まれるハム、ベーコンなどの加工食品には要注意!

 

 

・海藻類 ※100gとして:
焼きのり(700mg)、素干しわかめ(350mg)、乾燥こんぶ(240mg)

⇒味付けのり、焼きのりは同等。驚くべき、同じ海藻類でも、何とところてんや寒天はわずか(1mg)、もずく(2g)です。ところてん、もずくは目の付け処だと思います。

 

・その他 ※100gとして:
ベーキングパウダー(3700mg)、ホットケーキ(170mg)カップラーメン(120mg)

⇒ベーキングパウダーは3700mgと突出!パンや焼き菓子などの膨らし粉と使われています。生地を膨らませるための食品添加物で、菓子パンなどがそうです。

⇒ホットケーキやカップラーメンも同じく食品添加物が多く含まれています。

 

◆まとめにかえて

 

 

2017年10月に放送されたNHKスペシャルでは「腎臓」について取り上げられ、最新の腎臓の役割などが紹介されていました。腎臓機能と「寿命」の関係についてもピックアップされていました。

 

「寿命」とは血液中に含まれるリン(P)が老化に影響しているというものでした。

 

 

一般的には酸素(O)が、たんぱく質の酸化や遺伝子の損傷などを引き起こすことで、老化や癌(がん)などの原因になることが知られていますが、この最新の研究調査によれば、リン(P)の摂りすぎが生命余命に影響を与える、とのことでした。

正直驚きました、「えっ~、透析者は…一体どうなるの!?」

 

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NHKスペシャル 人体 神秘の巨大ネットワーク 第1集 “腎臓”が寿命を決める [DVD]
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シリーズ「人体」第1集の主役は「腎臓」だ。“尿を作る臓器”ぐらいにしか考えられず、目立たぬ存在とさえ言われる腎臓。実は今、世界中の研究者たちが競うようにしてそのパワーの解明に乗り出している。浮かび上がってきたのは、腎臓が体中に情報を発信しながら、さまざまな臓器の働きをコントロールしているという驚きの姿だった。

シリーズ 人体 神秘の巨大ネットワーク 
第1集“腎臓”が寿命を決める

出演: タモリ, 山中伸弥
出典:NHKスペシャル 人体 神秘の巨大ネットワーク 第1集 “腎臓”が寿命を決める [DVD]

 

現代、リン(P)は多くの食品に入っていて不足するということは、まずありえないわけです。多くの食品に入っているわけですが、ハムやソーセージ、カップラーメンといった加工品や冷凍食品にも、かなりの量があたりまえのように入っているのです。

よく医者や栄養士さんから透析者に「ハムやソーセージ、カップラーメンなどの加工食品はあまり食べないで!」と言われます。

 

透析者としては、あまり痛みや変化を感じることのない「高リン血症」や「副甲状腺ホルモンの分泌異常」などは避けなければならないのです。

 

ですが、嫌でも入ってきてしまいます。こればかしは回避しようがありません。
そのためのリン吸着剤を飲むことになります(吸着薬の飲み方にポイントがあるのですが、なかなか透析者のなかでも定着しづらいところ)。

 

慢性腎臓病(CKD)の治療では気にする必要が無かったのに、リン(P)やカルシウム(Ca)といったものまで、食事の摂取・調整に気を遣わなければならないのですから、苦労します。

次回は仕事やプライベートにおいて、コンビニや外食を使う機会があると思いますので、
その際に買って食べるコンビニ弁当とリン(P)との関係について、説明していきたいと思います。

 

参照:「コンビニ弁当はリンの宝庫!?便利で利用、だけど毎日は危険

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