よくある話しとして「透析前って障害者年金もらえないじゃないの?」ということがよくあります。
透析を導入することになって障害年金を請求したときに「原則として2級に該当する」という説明を受けて、分かることが多いです。実際にそうなのです。
例えば会社員しながら健康診断でひっかかって、腎疾患のために治療しているケースってあります。
まだ透析導入までには至らないが、検査項目及び異常値をみたときに、データが悪く中度の異常といったように。
・障害厚生年金3級には、1、2級にあるような配偶者加給年金は無い
・腎疾患による障害は「腎疾患の障害認定基準」が、年金の申請は納付3要件が満たす必要がある
・障害の状態が3級にあっても、透析を開始すると原則2級になる
透析前でも障害者年金はもらえない?という”誤解”
透析を受けるとなると、原則として2級に該当します。
もしあなたが、「初診日」に厚生年金に加入していたのであれば、透析前であっても3級に該当する可能性はあります。
なぜなら、厚生年金には「障害厚生年金の3級」があるからです(逆に言うと、基礎部分である国民年金の障害基礎年金に3級は存在しません)。
<私の場合>
私の場合で言うと、学生のときの健康診断でひっかかって、その後ずっと治療を行ってきましたが、28歳のときに透析導入となりました。
いくら週3回くらいのバイトはしていたとは言え、当時の厚生年金加入要件に満たしているわけでもなく、「初診日」に学生であって会社員でもないので厚生年金には入れません。
28歳で仕事をしているとは言え「障害厚生年金の3級」の申請はできません。
「初診日」が基準になっていますから。
障害基礎年金の受給申請するにあたり、納付【3要件】を確認するわけですね。
3要件とは、(1)初診日要件(2)障害認定日要件(3)保険料納付要件までの、「すべて」を満たしていること!
私の場合は(1)初診日要件は、学生のときに病院へ治療のための「初診日」があって、ほか(2)(3)も満たしていたので、障害基礎年金を受給するに至ったというわけです。
参照:「透析に障害年金が収入補填。受給には納付【3要件】が必須!」
透析前の治療中でも、障害厚生年金3級に該当する場合も
障害厚生年金の3級について、まとめます。
「透析前でも障害者年金はもらえない?」を着眼しているので、障害厚生年金1、2級については、ほぼ割愛しています。
厚生年金に加入している間に、障害の原因となった傷病の初診日の前日時点で前々月までの公的年金の被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて3分の2以上あること
引用:障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法 日本年金機構
これは、先述した3要件とは、(1)初診日要件(2)障害認定日要件(3)保険料納付要件の「すべて」を満たしていること!と同じことです。
厚生年金は2階部分であり、報酬比例の年金です。
そのため、障害厚生年金は会社に勤めている会社員などのためにあるもので、人によってその金額が違ってきます。
会社員の給与をベースに、その人の平均標準報酬額(厚生年金保険料の計算の元となる額)や厚生年金保険の加入期間などによって、年金額が変わてきます。
イメージ的には、給与が高く会社勤めの期間が長ければ、年金額が多くなるといった感じです。
1級と2級の場合は、障害厚生年金と併せて1階部分の障害基礎年金(子の加算を含む)が支給されます。
今回の障害厚生年金3級は、年金の仕組み上障害基礎年金がなく、2階部分である厚生年金の「報酬比例の年金のみ」の支給となるため、会社員とは言え「加入期間が短い」「もともと給与ベースが低い」といった理由から、厚生年金の金額が低くなることがあります。
昨今の非正規社員の雇用問題や給料があがりにくいといった諸問題が取り上げられていますが、金額が低くなりすぎないように、最低保証額が設けられています。
障害厚生年金の額
障害厚生年金3級
平均標準報酬額×[5.481÷1000]×被保険者期間の月数 最低保証額は585,100円(平成31年度=令和元年度(2019年度)の場合)となっています。 |
ちなみに、障害厚生年金1級と2級は、1階部分の障害基礎年金が同時に支給されるので、最低保証という概念はありません。また、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるとき、別に「配偶者加給年金」が支給されますが、3級にはありません。
障害厚生年金3級でいう障害の程度とは
障害厚生年金3級とは、障害程度はどの程度なのでしょうか。
透析導入前か導入を延ばすための治療を行っており、何かしら腎疾患があるはずです。
「腎疾患の障害認定基準」というものがあります。ここでは、3級に限ってみていきます。
(1) 認定基準(3級のみ抜粋)
厚生年金保険法施行令 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
(2)認定要領/慢性腎不全の場合(検査項目及び異常値)
区分 | 検 査 項 目 | 単 位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
ア) | 内因性クレアチニン | ml/分 | 20 ~30未満 | 10 ~20未満 | 10未満 |
イ) | 血清クレアチニン | mg/dl | 3 ~5未満 | 5 ~8未満 | 8以上 |
※クレアチニンが中等度異常や高度異常と判断できる数値であり、一般状態区分表実際に人工透析をされていなくても障害等級2級に該当と判断されるケースもあります。
(3)一般状態区分表(一部のみ抜粋)
区分 | 一般状態 |
ウ) | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
イ) | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
(4)各等級に相当すると認められるもの(3級のみ抜粋)
年金の3級に相当すると認められる障害の状態は、以下の通りとなっています。
3 級 | 1 上述した(2)認定要領の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ(3)一般状態区分表のウ)又はイ)に該当するもの ←慢性腎不全の場合 2 省略・・・ネフローゼ症候群の場合 |
引用:障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法 日本年金機構
まとめにかえて
年金の3級に相当すると認められる障害の状態については、上述してきたとおりです。
制度は違いますが、「じん臓機能障害」 に関する身体障害者手帳の認定基準が平成30年4月から変更されました。こちらは、身体障害者手帳に関するものです。
よくよく見ると、身体障害者手帳のじん臓機能障害3等級は、年金の3級に相当すると認められる障害の状態とほぼ同じくなっています。日本腎臓学会と日本透析医学会による要望という経緯もありますが、整合性という意味では分かりやすくなりましたね。
「じん臓機能障害」 に関する身体障害者手帳の認定基準
3級
内因性クレアチニンクリアランス値が10ml/分以上、20ml/分未満、
⼜は⾎清クレアチニン濃度が5.0mg/dl以上、8.0mg/dl未満であって、
かつ、家庭内での極めて温和な⽇常⽣活活動には⽀障はないが、それ以上の活動は著しく制限されるか、
⼜は次のいずれか2つ以上の所⾒があるものをいう。引用:「じん臓機能障害」に関する 身体障害者手帳の認定基準が変わります 厚生労働者