2018年5月20日

更新日: 2026年7月15日

今日は「透析前って障害者年金もらえないの?」という、よくある質問についてお話しします。
よくある話として「透析前って障害者年金もらえないじゃないの?」というものがあります。透析を導入することになって障害年金を請求したときに「原則として2級に該当する」という説明を受けて、初めてこの仕組みを知ることが多いです。実際にそうなのです。
例えば会社員をしながら健康診断でひっかかって、腎疾患のために治療しているケースってありますよね。まだ透析導入までには至らないけれど、検査項目や異常値をみたときに、データが悪く「中等度の異常」といった状態になっている方もいらっしゃると思います。
透析を受けるとなると、原則として2級に該当します。
もしあなたが、「初診日」に厚生年金に加入していたのであれば、透析前であっても3級に該当する可能性があります。
なぜなら、厚生年金には「障害厚生年金の3級」があるからです(逆に言うと、基礎部分である国民年金の障害基礎年金には3級は存在しません)。つまり、「透析前は障害者年金がもらえない」というのは、実は誤解なのです。
私の場合で言うと、学生のときの健康診断でひっかかって、その後ずっと治療を行ってきましたが、28歳のときに透析導入となりました。
いくら週3回くらいのバイトはしていたとは言え、当時の厚生年金加入要件を満たしているわけでもなく、「初診日」に学生であって会社員でもないので厚生年金には入れませんでした。28歳でもしっかりと仕事をしているとは言え、「障害厚生年金の3級」の申請はできなかったのです。なぜなら、
「初診日」が基準になっているからです。
障害基礎年金の受給を申請するにあたっては、納付【3要件】を確認します。3要件とは、(1)初診日要件 (2)障害認定日要件 (3)保険料納付要件の、「すべて」を満たしていることです!
私の場合は(1)初診日要件について、学生のときに病院へ治療のための「初診日」があり、ほか(2)(3)も満たしていたので、障害基礎年金を受給するに至ったというわけです(当然ながら、学生時はバイトはしていても、会社員のようには働いていませんから、障害厚生年金は非該当です)。
参照:「透析に障害年金が収入補填。受給には納付【3要件】が必須!」

ここからは、障害厚生年金の3級について、もう少し詳しくまとめます。「透析前でも障害者年金はもらえない?」という点に着目しているので、障害厚生年金の1級・2級についてはほぼ割愛します。
厚生年金に加入している間に、障害の原因となった傷病の初診日の前日時点で前々月までの公的年金の被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて3分の2以上あること
引用:障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法 日本年金機構
これは、先述した3要件、つまり(1)初診日要件 (2)障害認定日要件 (3)保険料納付要件の「すべて」を満たしていること!と同じことです。
厚生年金は「2階部分」であり、報酬比例の年金です。そのため、障害厚生年金は会社に勤めている会社員などのためにあるもので、人によってその金額が違ってきます。
会社員の給与をベースに、その人の平均標準報酬額(厚生年金保険料の計算の元となる額)や厚生年金保険の加入期間などによって、年金額が変わってきます。イメージとしては、給与が高く会社勤めの期間が長ければ、年金額が多くなるといった感じです。
1級と2級の場合は、障害厚生年金と併せて1階部分の障害基礎年金(子の加算を含む)も支給されます。
今回の障害厚生年金3級は、年金の仕組み上障害基礎年金がなく、2階部分である厚生年金の「報酬比例の年金のみ」の支給となります。そのため、会社員とは言え「加入期間が短い」「もともと給与ベースが低い」といった理由から、厚生年金の金額が低くなることがあります。
昨今の非正規社員の雇用問題や給料が上がりにくいといった諸問題が取り上げられていますが、金額が低くなりすぎないように、最低保証額が設けられています。
障害厚生年金3級
平均標準報酬額×[5.481÷1000]×被保険者期間の月数 最低保証額は年額635,500円(月額換算で約52,958円)となっています(2026年度=令和8年度の場合)。 |
2026年度は物価変動を反映して障害厚生年金が前年度比プラス2.0%の改定となり、この最低保証額も引き上げられました。年金額は毎年見直される可能性があるので、最新の金額は日本年金機構からの「年金額改定通知書」で確認するのが確実です。
ちなみに、障害厚生年金1級と2級は、1階部分の障害基礎年金が同時に支給されるので、最低保証という概念はありません。また、生計維持関係にある65歳未満の配偶者がいるときは、別に「配偶者加給年金」が支給されますが、3級にはこの加給年金がありません。
障害厚生年金3級とは、障害程度はどの程度なのでしょうか。透析導入前、あるいは導入を延ばすための治療を行っている方は、何らかの腎疾患があるはずです。この判定には「腎疾患の障害認定基準」というものが用いられます。ここでは、3級に限ってみていきます。
(1)認定基準(3級のみ抜粋)
| 厚生年金保険法施行令 | 3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
(2)認定要領/慢性腎不全の場合(検査項目及び異常値)
| 区分 | 検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
| ア) | 内因性クレアチニンクリアランス | ml/分 | 20~30未満 | 10~20未満 | 10未満 |
| イ) | 血清クレアチニン | mg/dl | 3~5未満 | 5~8未満 | 8以上 |
※クレアチニンが中等度異常や高度異常と判断できる数値であり、一般状態区分表を合わせて見た場合、実際に人工透析をされていなくても障害等級2級に該当と判断されるケースもあります。
(3)一般状態区分表(一部のみ抜粋)
| 区分 | 一般状態 |
| ウ) | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
| イ) | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
(4)各等級に相当すると認められるもの(3級のみ抜粋)
年金の3級に相当すると認められる障害の状態は、以下の通りとなっています。
| 3級 | 1 上述した(2)認定要領の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ(3)一般状態区分表のウ)又はイ)に該当するもの ←慢性腎不全の場合 2 省略・・・ネフローゼ症候群の場合 |
引用:障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法 日本年金機構
年金の3級に相当すると認められる障害の状態については、上述してきたとおりです。
透析前だからといって、必ずしも「障害者年金はもらえない」わけではありません。初診日に厚生年金に加入していたかどうかが、大きな分かれ道になります。「もらえないと思い込んで申請すらしない」という状況は、非常にもったいないことです。
制度は違いますが、「じん臓機能障害」に関する身体障害者手帳の認定基準が平成30年4月から変更されました。こちらは、身体障害者手帳に関するものです。
よくよく見ると、身体障害者手帳のじん臓機能障害3等級は、年金の3級に相当すると認められる障害の状態とほぼ同じになっています。日本腎臓学会と日本透析医学会による要望という経緯もありますが、整合性という意味では分かりやすくなりましたね。
「じん臓機能障害」に関する身体障害者手帳の認定基準
3級
内因性クレアチニンクリアランス値が10ml/分以上、20ml/分未満、
又は血清クレアチニン濃度が5.0mg/dl以上、8.0mg/dl未満であって、
かつ、家庭内での極めて温和な日常生活活動には支障はないが、それ以上の活動は著しく制限されるか、
又は次のいずれか2つ以上の所見があるものをいう。引用:「じん臓機能障害」に関する 身体障害者手帳の認定基準が変わります 厚生労働省
もし今、透析前の治療中で「働くのが少しつらい」「収入面が不安」と感じている方がいたら、まずは初診日に厚生年金に加入していたかどうかを振り返ってみてください。年金事務所や社会保険労務士に相談することで、思いがけず障害厚生年金3級の対象になっている可能性もあります。