2018年4月26日

更新日: 2026年9月23日

透析を始めたばかりの頃というのは、本当に大変な時期が続きます。
「透析不均衡症候群」に苦しんだり、身体がなかなか透析に慣れなかったり、慣れてきたとしても「血圧が安定しない」「身体の調子が上がらない」「今日は透析に行きたくない」そんなこころと身体の揺れは、長く透析を続けていれば誰もが経験するものだと思います。
20年超透析を行っている私自身も、そういった時期を何度も経験してきました。症状や体験は本当に人それぞれで、数え切れないほどのケースがあります。
体調の波が「仕事が続けられない」「仕事を休みがちになる」原因になることもありますし、手術や入院が重なることもあります。特に血液透析の場合は、週に何度も病院に通う必要がありますから、会社勤めをしている透析患者にとっては給料の減少は避けられません。収入が不安定になり、生活に影響が出てしまう。そういうことが現実に起きてくるのです。
・障害年金を「申請」するための大前提は、(1)初診日要件 (2)障害認定日要件 (3)保険料納付要件のすべてを満たしていること!
・「老齢」「死亡」の年金以上に、障害年金の申請・審査はシビア(不正受給問題が多いため)
・腎臓は「沈黙の臓器」。痛みも痒みもないことが多く、「初診日」が分からないケースも多い
・透析の場合、「障害認定日」に特例がある。透析開始から3か月で申請可能になる
・2026年度(令和8年度)障害基礎年金2級:年額847,300円(月額約70,608円)に改定
透析患者の生活リスクをカバーし、金銭的に収入を補填してくれるのが障害年金です。
ところが、この障害年金は「申請すれば誰でももらえる」ものではありません。申請の大前提として、「障害年金を受けるための3つの要件(納付3要件)」をすべて満たしていることが求められます。
納付3要件のうち1つでも欠けていれば、申請すらできませんし、認定も受給もできません!
試しに国民年金法の条文を読んでみると、こんな難しい言い回しが出てきます。
「イ.障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。」
どうでしょうか?これだけでも、かなり難しいですよね。法律の条文と私たちの日常感覚の間には、どうしてもギャップが生まれてしまいます。
そして、障害年金の申請・認定は、老齢年金や遺族年金以上にシビアに扱われています。不正受給の問題が多いからです。「もらえると思ったのにもらえなかった」という現実が、実際に起きているのです。
なお、ここで言う「障害年金」とは、主に障害基礎年金のことを指します(障害厚生年金については後ほど触れます)。
透析のために障害年金を受け取るには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容(概要) |
|---|---|
| (1) 初診日要件 | 初診日に、その年金制度の加入者(被保険者)だったこと |
| (2) 障害認定日要件 | 初診日から1年6か月後(または症状固定日)に、支給対象となる障害の状態だったこと ※透析は例外あり(透析開始から3か月で申請可能) |
| (3) 保険料納付要件 | 初診日の前日までに、保険料の納付済・免除期間が被保険者期間の3分の2以上あること(または直近1年間に未納がないこと) |
申請〜認定後に受給できるための大前提は、(1)初診日要件から(3)保険料納付要件まで、すべてを満たしていること!これが絶対条件です。

「初診日」に、その年金制度の加入者(被保険者)だったことが必要です。
「初診日」とは、障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日のことです。初診日において、以下のいずれかに該当していることが必要です。
| ① 国民年金の加入者(自営業・農業・学生・フリーランスなど) |
| ② 厚生年金保険の加入者(会社員・公務員など) |
| ③ 年金制度に未加入だが、以下のすべてに該当する方 ・日本国内に住所を有している ・60歳以上65歳未満である ・過去に厚生年金または国民年金に加入していた ・老齢基礎年金の繰上げ請求をしていない |
| ④ 初診日に20歳未満だった方(20歳になった時点で申請可能) |
ここで重要なのは「初診日にどの年金に入っていたか」によって、受け取れる年金の種類が変わる点です。国民年金のみの加入者は「障害基礎年金」、厚生年金加入者はそれに加え「障害厚生年金」の両方を受け取れる可能性があります。
原則として、初診日から1年6か月後(または症状固定日)に、支給対象となる障害の状態にあることが必要です。ただし、透析の場合には特例があります。
【透析の場合の特例】
「人工透析療法を始めた日から3か月を経過した日(初診日から1年6か月以内の日に限る)」が障害認定日となります。
つまり、透析を開始してからわずか3か月で申請の準備に入れるということです!
これは、透析療法でしか治療できない状態=「症状固定(治った状態)」として扱うためです。他の多くの障害では初診日から1年6か月待つ必要があるため、透析患者にとってはありがたい特例と言えます。
なお、透析は国民年金法の障害等級認定基準において、原則として2級に認定されます。主要症状や合併症の程度によっては1級になる場合もあります。
受給のカギを握る、最後にして最重要の要件がこちらです。
| 区分 | 条件 |
|---|---|
| 【原則】 | 初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上が「納付済」または「免除」されていること ※「免除」には学生納付特例・若年者納付猶予も含みます |
| 【特例】 | 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納がないこと |
年金事務所の窓口では、必ず「初診日はいつですか?」と聞かれます。この初診日を基に、保険料の納付状況を確認することになります。
「もしかしたら、過去に未納の期間があるかも?」という方は、申請前にあらかじめ年金事務所で照会してもらうことを強くおすすめします。未納のまま放置するのが一番もったいない選択です。
透析を受けている方は、原則として障害年金2級に認定されます。受給できる金額は、初診日にどの年金制度に加入していたかによって異なります。
| 年金の種類 | 2026年度(令和8年度)月額(目安) | 年額 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金 2級 (国民年金加入者・自営業・学生など) | 約70,608円 | 847,300円 |
| 障害基礎年金 1級 | 約88,260円 | 1,059,125円 |
| 障害厚生年金 2級 (会社員・公務員など:基礎年金と合算) | 報酬比例部分を加算 月15万円前後が目安 | 人によって異なる |
※上記は昭和31年4月2日以後生まれの方の金額です。それ以前生まれの方は一部異なります。年度ごとに物価・賃金スライドで改定されますので、最新額は日本年金機構のウェブサイトまたは「ねんきんネット」でご確認ください。
会社員(厚生年金加入者)の場合は、「障害基礎年金+障害厚生年金(報酬比例部分)」が合わせて支給されるため、受給額が国民年金加入者と比べて大幅に増えます。
初診日時点でどの年金に加入していたかを確認しておくことが、とても重要です。
障害基礎年金を受給している方で、18歳の年度末(障害がある子は20歳未満)までの子を扶養している場合、以下の「子の加算額」が上乗せされます。
| 加算の対象 | 2026年度の加算額(年額) |
|---|---|
| 1人目・2人目の子(各1人につき) | 243,800円 |
| 3人目以降の子(各1人につき) | 81,300円 |
また、障害基礎年金1級・2級を受給している方には「障害年金生活者支援給付金」が上乗せ支給されます。2026年度(令和8年度)の金額は、2級で月額5,620円・1級で月額7,025円です。
ただしこれは前年の所得が一定額以下の方が対象で、別途手続き(請求)が必要です。自動的には支給されません。対象になる可能性のある方は、日本年金機構または市区町村窓口に確認してみましょう。

会社や学校で行われる定期健康診断。「腎臓機能の異常を指摘された日」を初診日だと思いがちですが、平成27年10月以降の取り扱い改定により、健康診断の検診日は初診日としては扱われません。
では、いつが初診日になるのか。「健康診断で異常を指摘された後に、初めて医療機関を受診した日」が初診日です。ここは要注意のポイントです。

腎疾患の特徴として「痛みを感じない」「初期症状がわかりにくい」「症状がゆっくり進行する」「放置しやすい」といったことが挙げられます。
腎臓病の原因疾患第1位である糖尿病性腎症(日本透析医学会調査)のように、最初の受診から透析開始まで何年もかかるケースが多くあります。
医療機関のカルテの保存期間は5年間(医師法第24条)とされていて、5年を超えると医師の判断で廃棄することができます。つまり、「初診日」を証明しようとしても「当時のカルテはもうありません」と言われてしまうことが、実際にかなり多いのです。
| 初診日の証明が困難になる主なケース |
|---|
| カルテの保存期間(5年)を超えて廃棄されている |
| 当時の医療機関が閉院・廃業してしまっている |
| 最初に受診した病院・クリニックを思い出せない |
| 何科を受診したかがはっきりしない |
私自身の場合、(20代になった頃の)学生時代に健康診断でたんぱく尿を指摘され、朝から身体がだるく疲労回復できない状態が続いたため、学校近くの内科のクリニックに通い始めました。当時はまだ「腎臓内科」という専門科がなじみ深くなく、内科でひとまず診てもらうというのが普通の流れでした。
「初診日=初めて腎臓内科に行った日」ではありません。腎臓の異常との関連が疑われる症状で、はじめて医師に診てもらった日で、「どんな科」であれ、初診日のポイントになります。
具体的なケースでイメージしてみましょう。

| 職業・状況 | 最初の受診先 | 初診日となりうる可能性 |
|---|---|---|
| 営業職の男性 不規則な生活やストレスでうつ症状が現れた | 心療内科 | 後に腎疾患が見つかっても、この心療内科受診日が初診日になりうる |
| 販売業の女性 立ち仕事で足のむくみがひどくなった | 近くのクリニック(内科) | 浮腫みは腎疾患のサインであることも多い。このクリニック受診日が初診日に |
| 40代男性 健診でたんぱく尿を指摘、尿回数が増えた | 泌尿器科 | 泌尿器科への受診日が初診日となりうる |
「腎臓に関係のある症状で初めて医師を受診した日」を広い視点で確認することが大切です。
初診日の証明は障害年金受給において最重要ポイント。立ちはだかる高い壁になることもありますが、諦めずに確認してみてください。
通常の障害年金では、初診日から1年6か月が経過しないと申請できません。しかし透析の場合には特例があります。
条文には「人工透析療法施行中のものは、人工透析療法を始めた日から3か月を経過した日(初診日から1年6か月以内の日に限る)を障害認定日とする」とあります。
| 条件 | 障害認定日(申請可能になる日) |
|---|---|
| 通常の障害年金 | 初診日から1年6か月後 |
| 透析(特例適用) | 透析開始日から3か月後 ※初診日から1年6か月以内の場合 |
①透析を初めて受けた日から3か月を経過した日が「障害認定日」。
②初診日から1年6か月が経過する前に透析を開始していれば、透析開始から3か月後に申請できる。
「透析しか治療の選択肢がない」状態を「症状固定(治った状態)」として扱うことで、早期に申請できる仕組みになっています。
透析を開始したら、できるだけ早く申請の準備に取り掛かりましょう!
「自分は受給できるのか?」「初診日はどこで証明できるか?」。こういった疑問が出てきたときは、ひとりで抱え込まず、まず相談することが大切です。
| 相談先 | 特徴・できること |
|---|---|
| 年金事務所・年金相談センター | 納付要件の確認・申請書類の案内。まず初診日を伝えて納付状況を照会してもらうのが最初のステップ。予約制の場合が多い。 電話:ねんきんダイヤル 0570-05-1165 |
| 社会保険労務士(社労士) | 申請書類の作成・カルテが廃棄されている場合の初診日証明の方法・不支給決定に対する審査請求など、複雑なケースに対応してもらえる。費用は成功報酬型が多い。 |
| 市区町村の福祉窓口 | 身体障害者手帳の取得や、各種福祉サービスとのつなぎ。障害年金との組み合わせを一緒に整理してもらえることもある。 |
特に「初診日のカルテが残っていない」「昔受診した病院がなくなってしまった」というケースは、書類作成に専門知識が必要になることが多いです。このようなケースでは、社会保険労務士(社労士)に相談することを強くおすすめします。
最後に、透析と障害年金の要件のポイントを整理します。
| 要件 | 透析患者が特に気をつけること |
|---|---|
| (1) 初診日 | 腎疾患は進行がゆっくりなため、カルテが廃棄済・医療機関が閉院などで証明が困難になることも。「腎臓に関係する症状で初めて受診した日」を幅広く確認しておこう。 また、健康診断の検診日は初診日にならない(平成27年10月改定)。 |
| (2) 障害認定日 | 通常は初診日から1年6か月後だが、透析患者は透析開始から3か月後に申請可能(初診日から1年6か月以内の場合)。早めの準備を! |
| (3) 保険料納付 | (1)(2)を満たしても、保険料未納が多いと受給できない。未納がある可能性があれば、申請前に年金事務所で照会を。 納付が難しい時期は「免除申請」を活用しよう。 |
「年金制度は崩壊した」「保険料を納める意味がない」という声もよく聞きます。でも、いざ障害を持ったときに収入を補填してくれる、頼りになる制度が障害年金です。
特に(3)保険料納付要件は、(1)(2)を満たしていたとしても「保険料をきちんと納めていなかった」「納付したとみなされる期間が足りなかった」だけで、障害年金がもらえなくなります。そういうことが現実に起きているのです。
万が一の時のために、保険料はきちんと納めておきましょう。そして、納付が難しい時期は「免除申請」を活用することも大切です。未納のまま放置するのが一番もったいないことです。
申請の手続きや、初診日の証明が難しいケースなど、複雑な問題が多いのが障害年金です。「自分は受給できるのだろうか?」と感じたら、年金事務所や社会保険労務士(社労士)に相談することをおすすめします。