直近のニュースで障害年金の不支給問題が挙がりました。人工透析中なのに障害年金が不支給になるケースが考えられます(ありえます)。
ニュースによれば、判定基準の変更はないものの、年金機構の複数の関係者によれば、担当部署の上級幹部の交代により厳しい考え方の人間に代わった、とのこと。つまり、「属人的な要素が強くなり、判定基準は存在するが判断が左右されてしまう」と言えるわけです。
この記事では、今後の透析導入者や透析患者のために年金を受給するための対策を、図解と実例を交えてわかりやすく解説します。
「えっ、透析でも年金がもらえない?」
透析を始めたのに障害年金がもらえなかった…、そんな声が実際にあります。
実は、透析=年金自動受給ではないのです。
この記事では以下のような疑問に答えます。
- なぜ透析なのに年金がもらえないのか?
- 書類のどこに注意するべきか?
- 初診日ってそんなに大事なの?
【図解】障害年金の受給に必要な3条件
要件 | 内容 |
---|---|
初診日要件 | 病気で最初に医師にかかった日が特定できること |
保険料納付要件 | 初診日の前日時点で年金保険料を一定期間納めていること |
障害状態該当要件 |
障害等級に該当する障害状態であること |
参照:透析にかかる障害年金は収入補填が目的。受給には納付【3要件】が必須!
障害年金の受給に必要な3条件満たさない?
よくあるケース1:初診日が証明できない
事例:カルテが残っておらず不支給に
40代男性が糖尿病から腎不全を経て透析を始めたが、初診の病院が閉院していてカルテが取得できず、不支給に。
→ 後に「初診日申立書」と健康診断の記録などを組み合わせて再申請、受給決定。
ポイント
-
初診日は「最初に治療目的で医療機関にかかった日」です。
健康診断の日だけでは原則、初診日と認められません。
カルテがない場合でも、他の医療機関の記録やレセプトで補うことが可能です。
よくあるケース2:診断書の内容が不十分
透析中であっても、診断書に「週3回の透析」「日常生活への影響」などが記載されていないと、審査に通らない可能性があります。
-
透析の頻度(週3回以上か)
-
日常生活や労働への制限
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合併症(糖尿病性網膜症、神経障害など)の有無
記載漏れがないか、提出前に主治医と一緒に確認をしてください。
よくあるケース3:保険料未納で不支給に
初診日の前日に、一定の年金保険料を納めていなかった場合、不支給になることがあります。
年金を受け取るには、過去の保険料を納めているかが重要!たとえ現在透析中でも、納付状況に問題があれば受給できません。よって、納付状況を年金事務所で事前に確認することが重要です。
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「直近1年間に未納がないか」確認
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国民年金免除期間がある場合も含めて再確認
対策という対策とはありませんが、納付状況を年金事務所で事前確認しておきましょう。
相当因果関係にも注意!初診日がズレるケースとは?
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糖尿病→腎不全→透析のように長期の経過をたどると、初診日が思っていた日より前にずれる可能性があります!
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その結果、保険料要件を満たせないリスクも
盲点。透析開始=等級2級!でも注意点がある
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人工透析は原則「障害等級2級」に該当、ですが
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ただし、初診日や診断書が不十分だと不支給に
腎移植を受けた人の取り扱い
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移植しても、術後1年間は従来の等級が維持される
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予後や症状に応じて見直しされるが、即支給停止にはならない
【図解で理解】人工透析に関する障害年金の時系列
以下の図は、障害年金を申請するまでの流れを視覚的に示したものです。
腎疾患の症状が出始める
↓
最初の医療機関を受診(=初診日★)
↓
治療・経過観察(数年〜十数年)
↓
人工透析の導入(週3回以上★★)
↓
透析開始から3ヶ月経過 → 障害認定日(特例)
↓
診断書・申立書等を準備して申請
↓
障害年金受給開始(事後重症の場合は翌月分から)
多くの透析患者は「初診日から1年6ヶ月以内」に透析に至らないため、「事後重症請求」が主流です。この点を誤解して「待たなければならない」と思い込み、申請が遅れる例も見られます。
★初診日は「最初に治療目的で医療機関にかかった日」です。
★★「初診日から1年6ヶ月以内」
【事例紹介】受給に成功したケース
事例①:糖尿病性腎不(40代男性)
- 障害厚生年金2級、年間約135万円受給
- 透析開始は4ヶ月前、初診日から長期間経過
事例②:末期腎不全(30代男性)
- 障害厚生年金2級、年間約195万円受給
- 健康診断の記録→ネフローゼ→腹膜透析へ
【チェックリスト】申請前に確認すべきこと
-
申請の準備前に、次の項目をチェックしましょう。
✅ 初診日が明確に証明できる(カルテ・レセプト・検診記録など)
✅ 透析の頻度(週3回以上)と継続状況を診断書に記載
✅ 保険料納付状況に未納期間がない
✅ 病歴・就労状況等申立書に日常生活の制限を書けている
✅ 可能であれば、社労士に書類一式の確認を依頼
【図解】人工透析と障害等級の目安
一般状態区分 | 日常生活の目安 | 等級目安 |
---|---|---|
ア〜イ | 軽労働可、生活制限ほぼなし | 対象外〜3級 |
ウ | 日中の半数以上起きて生活、軽労働困難 | 2級 |
エ〜オ | ほぼ終日就床、身の回りのことも困難 | 1級 |
人工透析を週3回以上受けている方は、原則「2級」に該当します。加えて合併症や日常生活の制限があれば、1級も視野に入ります。
【補足】腎移植をした人はどうなる?
腎臓移植をした方でも、術後1年間は等級を維持できます。予後や検査結果によって見直しはありますが、すぐに年金が打ち切られるわけではありません。
ポイント:
-
術後1年間は、以前の等級が継続される
-
その後、状態に応じて等級見直しあり
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安定していれば、年金継続も十分可能
まとめ:透析導入者・透析患者こそ「早く・正確に」
透析導入者・透析患者でさえも申請するのが難しくなっていると思います。障害年金の専門家である社労士の方でさえ、最近の流れを踏まえて、不服申し立てを挙げるなど強気の姿勢を見せています。
障害年金を申請し、受給できるようにするためにも以下を徹底しましょう。
- 初診日の証明をあきらめない
- 診断書の内容を確認する
- 必要に応じて専門家(社労士)に相談する
透析は生活に大きな影響を与えます。障害年金の受給で、経済的な不安を減らす一歩を踏み出しましょう。