透析者にとって、日常茶飯事気にしなければならないものの中に「ドライウエイト(DW)」があります。
ドライウエイト(DW)は、「基礎体重」「適正体重」「目標体重」などと呼ばれることもあります。
ドライウエイト(DW)は「体内にある水分が過剰でもないし、脱水もしていないような、ちょうどよい適度な状態に保たれているときの体重」だと言えます。
参照:「ドライウエイトって何?ズバリ「透析後の基礎体重」のこと。」
・ドライウエイト(DW)がきつかったり、甘かったりすると何らかの兆候や症状があらわれてくる
・ドライウエイト(DW)の見直し・再設定のために遠慮する必要はありません
ドライウエイト(DW)があわない?
ちょうどよい適度な状態が保たれていなければ、それはドライウエイト(DW)があっていないわけです。
何かしら、症状・兆候が出ているはずです。
適正なドライウエイト(DW)とは?
ちょうどよい適度な状態に保たれているときの体重であるとすれば、以下のような感じになります。
1.顔や手足に浮腫みがない 2.心胸比が正常範囲(心臓が大きくない) 3.血圧がほぼ正常範囲(低すぎず高すぎず) 4.無理なく日常生活ができる(体調が良い) |
ドライウエイト(DW)の増加は+3~+5%以内に!?
よく医師・看護師さんから、こういうふうに言われますね。
「ドライウエイト(DW)の増加は+3~+5%以内に収まるように調整してください」
なぜ+3~+5%以内という範囲の中で収める必要があるのでしょうか。
まずは、透析という「時間的制限」というものがあります。自分だけでない、ほかの透析者もいます。
血液透析は4~5時間以内という時間のなかで、除水しなければならないからです。
では、「除水時間を速くして、除水量も多くすれば良いのではないか?」
これ、分かります(私もそう、考えましたよ)。
時間短縮というものです。
これも一理にあり、透析者なら誰しもが一度や二度は、そう考えることってあります。
しかしながら、実際はそうはいきません。
考えてみてほしいのですが、透析者は生身の人間です。
透析時に急激な除水を行えば同時に、体内の水分量も急激に変化が起こってしまい、心臓や血管といったように身体へ大きな負担を与えてしまいます。
血圧低下やこむら返りといった筋肉のつり、透析疲労などが出てきます。
それらは透析者でしか経験しえないもの。辛いし、苦しいし、逃れたい。
周りの人からみてもどうしようもできないし、何もしてやれない。ただただ、負担なものです。
このような負担を避けるためにも、透析中の除水速度を緩やかにしつつ、目標とする除水量まで除水することが必要です。
透析時間を長くすれば、除水速度を緩やかにできるので、身体(心臓や血管系)への負担は少なくなります。
そのために、この負担を減らすために透析者ができることが、「中1日や中2日のドライウエイト(DW)の増加を+3~+5%以内に!」というわけです。
参照:「ドライウエイトって何?ズバリ【透析後の基礎体重】のこと。」
ところで、旅行先であったり、仕事で上司や同僚との付き合いをした、家族と一緒に外食したといったように、所々で飲食をする場面って、ありますよね。
このような時はどうしても食事や水分制限を緩めがち。「今日は気休めに・・・」とうふうに思いがちになりがちです。
透析も大変だから、自分のご褒美として、自分への労りとして。お付き合いとして・・・、どれもとても大事なことだと思います。
こうなると、次回の透析のときまでに「大幅に体重増やして来てしまった」ということが、出てきていまいますね。
ただ、あまりにも羽目を外して、大幅にドライウエイト(DW)の+5%を超えるまで体重増やしてきて、
・「透析時間内に除水ができなかった(また次回の透析で繰り越し除水)」
・「何とか時間内で除水をお願い!」と依頼。急激な除水で血圧低下や気分不良、こむら返しなどを起こす」
・「またしても、ドライウエイト(DW)オーバー。次の透析日でも繰り返してしまう」
このような状況では、ドライウエイト(DW)に対する自覚、認識に問題あり!と言わざる負えないでしょうね。
ドライウエイト(DW)があわないことって普通のこと?
なぜドライウエイト(DW)の増加を+3~+5%以内!なのかは、理解できたかと思います。
さて、透析は老廃物や水分を除去する治療ではあるのですが、
「透析でドライウエイト(DW)まで戻す」とは、どういうことかお分かりですか?
透析者の腎臓は、機能が低下して尿が少なくなったり、完全に出なくなったりしているため、毎回透析を通じて機能しなくなった腎臓の代わりに身体に溜った水分を、設定したドライウエイト(DW)の値まで取り除いていくわけです。
その具体例をあげてみましょう。
<事例>
ドライウエイト(DW)70Kgで設定している男性会社員Aさん。
Aさんは週末、家族と一緒に外食を楽しみました(中2日で体重2.5Kg増加)。
また透析中は+@として食事分300gも加算するものとします。
→計算式
ドライウエイト(DW)70kg+中2日分の2.5kg=72.5Kg
72.5kg+@食事分の0.3Kg=72.8Kg※
※中2日分ドライウエイト(DW)の増加率は+4%なので、許容範囲。
72.8Kg-70kg=2.8Kg
増えた72.8Kgからドライウエイト(DW)70kgを差し引いた2.8Kgを、血液透析中に余分な水分として取り除いていきます(=除水)。
このように透析開始時にドライウエイト(DW)の体重に戻るように計算したうえで、除水量を設定しているわけです(透析は除水だけではなく同時に血液の老廃物の濾過も行っています)。
以上、家族と外食をして体重を増やしたAさんの場合を挙げました。
今回のAさんは、70Kgというドライウエイト(DW)が「ちょうどよい適度な状態に保たれているときの体重」なのですが、このドライウエイト(DW)は年中いつまでも、同じ状態でいられるわけではありません。
健康な人が日々、季節ごとに体重が変化していくのと同じように、考え方は基本的には同じです。
Q:「ドライウエイト(DW)があわないことって普通のこと」? A:「いいえ、普通のことです。」 |
なぜなら、透析者であっても健康な人と同じように、日々食欲の増減があったり、体重の増減(太ったり、痩せたり)、体調の良し悪し(浮腫みや血圧の変化など)というものがあり、相互に影響を与えているからです。
一度ドライウエイト(DW)を決めたからといって、透析ずっと同じのままでいるということはなく、それらの相互影響をなるべく避けるべく、定期的にドライウエイト(DW)を見直しを行い、調整をすることが必要になるのです。
よって、
「ドライウエイト(DW)は変化するもの、変化させていくもの」
と理解しておきましょう。
微調整は必要ですが、透析者が「体調が良い!と思えるべく適正なドライウエイト(DW)にすればいいのです。
こんな症状・兆候が出たらドライウエイト(DW)の見直し・調整を!
透析者の日常生活において、低血圧や高血圧、浮腫み、立ちくらみといった症状は、個人差はあれどよく感じることです。
しかし、透析中や透析終了前といったときでも、ドライウエイト(DW)がうまくいかないことからくる兆候や症状があらわれてきます。
その具体例をあげましょう。
<事例>
ドライウエイト(DW)は70Kgで設定し、夜間透析をしている男性会社員Bさん。
最近Bさんは、透析中は血圧は下がり気味で、透析後も横になることも度々。
しかも透析による疲労は、翌日の仕事にまで残っている。
このように、透析中や透析後に血圧低下や倦怠感などを覚えるのなら、ドライウエイト(DW)の見直し・再設定が必要です。
これは「ドライウェイトが低すぎ(軽すぎ)」「ドライウエイトがきつい」状態なので、ドライウエイト(DW)を上げる必要があります。
→ドライウエイトがきつい!ときは、値を上げてもらいましょう!
《ドライウエイトがきついときの症状》
ドライウェイトがきつい状態で無理な除水を行うと・・・
1.透析中に血圧低下が起こります
→透析中はどうしても血圧低下気味になります。
→血圧低下が重篤な場合(低血圧が80mmHg以下に下がった場合)は、ショック状態になります。
→気分不良や吐き気、嘔吐、筋痙攣、視力障害といった急性症状があらわれます。→急性症状だけではなく、脳や心臓といったところに脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、不整脈等循環障害も出てきます。
2.透析終了後もベッドで休んでいる時間が長い
→上にあるような急性症状。透析後の疲労感も強い。
→透析の終わりの頃に、こむら返し(足がつったり)、声が枯れていたり、耳が塞がった感じがしたりする(これらは透析者にとって特有のものであったりするもので、よくある分かりやすい症状と言えます)。
3.シャント閉塞の危険性(=バスキュラーアクセスの閉塞)
→生命線であるシャント閉塞は避けなければなりません。
4.生命予後の悪化
→脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、不整脈等循環障害によるもの。
一方でドライウエイトがきつい!とは逆のパターンもあります。
具体例をあげましょう。
<事例>
ドライウエイトが70Kgで設定している男性会社員Cさん。
何か透析が終わっていても、手足が浮腫んでいたり、体が重い感じがするように感じてるCさん。
--1か月が経過--
引き続きドライウエイト70Kgで維持していたが、定期検査の結果、筋肉・脂肪は減っていたが、代わりに体内水分は増えていた。
確かに1か月前後でみたら同じドライウエイト70Kgです。
しかし透析後でも体内の水分は過剰な状態になっています。
そのために手足の浮腫みや体が重い感じを感じていたわけです。
これをはドライウェイトが高すぎ(重すぎ)」「ドライウエイトが甘い」状態と言えるので、
同じように、ドライウエイト(DW)の見直し・再設定が必要です。
→ドライウエイトが甘い!ときは、値を下げてもらいましょう!
《ドライウエイトが甘いときの症状》
ドライウェイトの甘い状態で除水を続けても・・・
これはドライウエイトが甘いので、体内では水分過剰な状態が続くことになります。
そのため「血圧が上昇→心臓に負担→心不全」といったふうになる恐れがあります。
次のような症状や兆候が見られるときは、ドライウエイト(DW)を下げる必要があります。
1.日頃から血圧が高い
→高血圧のの背景には、体内での水分過剰が原因です(例えば塩分摂りすぎで水分飲用)。
→降圧薬を飲むも高血圧の管理が難しい。
2.透析前に息切れなどの心不全症状がある
→血圧が上昇→心臓に負担→心不全に
3.透析後でも浮腫んでしまう
→未だ体内では水分過剰な状態なので、手足などに浮腫みが出てしまいます。
4.うっ血肝(うっけつかん)などが認められる
→うっ血肝は心筋梗塞や肺炎などで、は心臓機能が低下したり正常に機能しないことにより、肝臓に血液が滞留して障害が出ることをいいます。
5.風邪や下痢などで体調を崩したとき
→ふだんの風邪やインフルエンザなどでどうしても食欲不振に陥ることがあります。そのために痩せる可能性が高くなるため、ドライウエイト(DW)を下げる必要が出てきます。
まとめにかえて
私が特に感じている「ドライウエイト(DW)を調整する時期」というのがあります。
透析者でも、同じように感じているかと思います。
透析という経験則から、ある時期を特定し導きだした!?からです。
そうですね、イメージ的には、花粉症のようなもので「鼻がムズムズしてきた」「目がかゆくなってきた」ときのように、自分にとって花粉症対策をしなければならない頃には、そろそろ予防・対策を・・・という事と同じでしょうか。
時期的には梅雨の頃です。
梅雨時は、高温と低温を繰り返しながらも多湿です。確実に夏に向かっている時期です。
私ながら血圧がなかなか安定せず、調子はというとどうしても落ち込み気味。
少し食欲が落ち込んでいるのがわかります。
先述していたこんな症状・兆候が出たらドライウエイト(DW)の見直し・調整を!」でも話しましたが、透析中や透析後に、自分なりの自覚症状というものが、次第に現れてくるのがわかります。
透析時には血圧低下があらわれ、透析後も血圧が低いままで、声枯れも目立ちます。
「こんな症状は、たまたま今日だけなのかな?(今日は除水しすぎたかな?)」
「今度の透析でも同じような症状が出てくるのか?」
・・・色々問答してきました。
梅雨時は、自分にとって体調の変わり目!ドライウエイト(DW)を調整すべし!
これが、私の透析での経験則です。
もちろん、年齢を重ねれば、透析歴も長くなっていけば少しずつ変わっていくのでしょうね。
このようにして、ドライウエイト(DW)を上げてもらっています。
年を、透析年数を重ねればまた、ドライウエイト(DW)の調整する時期は変化していくのかもしれませんね。
いかがでしょうか。
ドライウエイト(DW)の見直し・再設定のために、遠慮する必要はありません。
ドライウエイト(DW)の増加は+3~+5%以内にという、日々の食事等の調整は必要ですが、透析中やその後に急性症状が起きたり、生命予後に影響を与えることのほうが辛く大変なものであり、絶対避けたいと思うはずです。
医師がふだんの体調や血圧動向、心胸比やエコーの定期検査を等を踏まえて、試行錯誤しながらも透析者と一緒になって、ドライウエイト(DW)を決めてくれます。
透析者ができること。
1.ドライウエイト(DW)について知っておきましょう。(今のドライウエイトは?) |
しっかりと自己管理を行ないながら、適切なドライウエイト(DW)設定に努めましょう。