3Dプリンターって知っていますか?
私なら、映画『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』を思い出します。3Dプリンターは侵入用の変装マスクを作るためのもので、劇中では持ち運びもできていました。
相手の顔をスキャンすると3Dで再現できてしまう!
そのすごいハイクオリティーで、誰にでも変身できてしまうのに驚きました。
ここまでは映画の話しのですが、透析の世界でも3Dプリンターと人工血管のニュースが取り上げられていました。
バイオ3Dプリンターで細胞製人工血管をつくる
佐賀大、バイオ3Dプリンターで人工血管作製 患者由来細胞で世界初、透析患者への移植臨床研究へhttps://t.co/pfzDQ9KWI5
— 日刊工業新聞電子版 BizLine (@Nikkan_BizLine) November 13, 2019
透析者の細胞を使って立体的な組織にし、バイオ3Dプリンターを使って「細胞製人工血管」にすることに成功したというニュースがありました。
今後とも臨床研究を続けていくとのことです。
なぜ今回のニュースで注目されたのか?ということですが、「透析者本人の細胞のみで作った人工血管が世界初である」という点です。
ぶっちゃけなところ、当初「透析者本人の細胞のみで作った」こと自体に、あまり理解できませんでした。
もう少し深堀りして考えてみたときに、やっと分かりました。
「透析者本人の細胞」なのですね。生きていくうえで、ふつうに体験してます。
自分自身以外のものが体内に入ってくると異物と認識して、排除しようとする働きがあります。これが「免疫」と呼ばれるものです。
一番分かりやすいのは、風邪やインフルエンザなどでの発熱やせき、痰などがそうです。
これも細胞製人工血管でも同じなことが言えて、血管を移植するとやはり異物であると認識します(=拒絶反応)。
拒絶反応については割愛しますが、自分の細胞で作った「細胞製人工血管」であれば、ほかの人で作った「細胞製人工血管」よりは、拒絶反応はあっても最小限にもできますし、コントロールすることができるわけです。
少し話しは逸れますが、透析者ならできれば望みたい腎移植。
腎移植は腎提供者(ドナー)から腎臓の提供してもらうので、やはり拒絶反応があります。
「急性拒絶反応」と「慢性拒絶反応」があります。
移植後、予防的に免疫抑制剤を飲む必要性があるのは、拒絶反応を最小限にするためですね。
話を戻します。
透析者本人の細胞のみで作った「細胞製人工血管」を挙げていました。
現在、血液透析の透析者で自己血管が使えなくなった場合に使われている人工血管は、樹脂(プラスチック)のものです。
メリットもあるでしょう。
樹脂の人工血管となると、自己血管の内シャントに比べて、
1.閉塞することなく血液透析に使用できる期間が劣る 2.シャントへの血流量が多大なため心臓への負担が大きい(心不全の原因に) 3.最近の感染リスクが高い 4.スチール症候群(指先に血液が流れず、冷たく・白くなって、痛みを感じる)や静脈高血圧といった合併症になることも |
といったデメリットやリスクもあります。
バイオ3Dプリンターって何だ!
度々話題にあがり、価格も下がって購入しやすくなってきている「3Dプリンター」です。
が、頭のほうに”バイオ”ってついていますね。
ということは、違うということになります。
では、「バイオ3Dプリンター」って何だ!ってことです。
これまで「透析者本人の細胞のみで作った」ということを踏まえてまとめますと、
・細胞などを積み重ねて、生体に近い立体的な組織を形成する装置が「バイオ3Dプリンター」 ・バイオ3Dプリンターは(今回なら血管のように)内部構造を一層一層作る積層造形が一般的 ・現在は単一細胞をシート状に培養したものが主で、皮膚や軟骨、心筋、角膜上皮などがつくられている ・今後は立体的な組織や再生医療用の臓器(心臓や腎臓など)を作ることへ移ってきている ・国内企業では、澁谷工業やリコーが、海外企業では、アスペクト・バイオシステムズ(カナダ)、コスモ・バイオ(アメリカ)などが力を入れている |
このように見ると、細胞でつくったり、積層を造っていくといったように、通常の3Dプリンターにはない・できない特徴があり、再生医療用の臓器や創薬の作製・研究に活かされているわけですね。
まとめにかえて
私は「佐賀大、バイオ3D血管を作製=透析患者の臨床研究へ(時事ニュース)」のニュース知って、すぐに確認してしまいました。
なぜなら、シャントのことだなと直感で感じましたし、近い将来必ず遭遇する問題であるからでした。
また、実現しそうな未来も感じました。
これから臨床研究に入るということなので、今後移植できるのは、十年来の話しになるのかなと個人的には思っています。
「今日のシャント音が何となく弱いなあ~」と感じてしまう日、手術する直前・後は、特にシャントに不安を抱いてしまうものです。
私もこれまで2度ばかし、シャントの拡張手術(PTA=経皮的血管拡張術))を行いました。
「シャントをできるだけ長く使えるように・・・」という事は、医師・看護師さんから教わってきました。
それは、透析をしている以上、私たち透析者の役目でもあります。
役目というのは、日々の血圧管理やシャントの維持、シャント運動ですよね。
参照:「【シャント運動】「継続は力なり」。負荷にも十分に考慮して!」
とはいえ、透析歴が長くなればなるほど、歳も重ね身体も老いていきます。
血管だって細くなりますし、弱くなったりもします。血管の老化現象ですよね。
シャントも同じ理屈です。透析には耐えられない、使えなくなるかもしれないのです。
3Dプリンターで、立体的な腎臓を作る研究も海外で行われています。こちらの動向も気になるところです。年月は経つでしょうね・・・、いつの頃になりますかね。
今は主となっている樹脂の人工血管から、自分の「細胞製人工血管」が移植ができる日が来ることを期待して、待ち続けたいです。
・シャントの拡張手術(PTA=経皮的血管拡張術)しても、いずれ限界の日は来ます
・透析していくなかで、血管同様シャントも劣化・老化していきます
・日々シャントの管理は大事ですね(血圧管理、シャント管理、シャント運動など)