透析治療を始めたばかりの方や、これから透析を始める予定の方は、「透析って一体何時間かかるの?」という疑問をお持ちではないでしょうか。私も透析導入前は、毎週何時間も病院で過ごすことになると知って、仕事や生活との両立に不安を感じていました。透析時間は人それぞれ異なりますが、適切な時間を確保することが健康維持の鍵になります。
この記事では、20年超の透析経験から得た知識と体験をもとに、透析時間について詳しくお伝えします。
標準的な透析時間はどれくらい?
まず最初に、多くの方が気になる「標準的な透析時間」についてお話しします。私が透析を始めた頃は頭ではわかっていても、「なんで週3回も、しかも1回4時間以上も拘束されるんだろう」と正直思っていました。
一般的に、血液透析の標準的な時間は1回あたり4〜5時間程度です。週に3回、月・水・金や火・木・土などの日程で通院するパターンが多いですね。ただ、これはあくまで標準的な目安であって、患者さんの体格や腎機能の状態、合併症の有無などによって個別に調整されます。
私の場合は導入当初、週3回の4時間透析でしたが、体調や検査値に応じて時間が調整されてきましたが、現在は4.5時間に固定しています。祝日等によっては前もってにはなりますが、5時間や5.5時間透析する日もあります。透析時間は医師が決めるものですが、自分の体調や生活スタイルに合わせて相談することも大切です。
透析時間が決まる仕組み
「なぜ4時間なの?3時間じゃダメなの?」と思われる方も多いでしょう。実は透析時間が決まる背景には、科学的な根拠があります。
体格と体内の老廃物量
体格が大きい方ほど、体内の水分量や老廃物が多くなる傾向があります。私は身長170cm、体重65kgほどの平均的な体格ですが、同じクリニックに通う大柄な方は5時間透析の方もいらっしゃいます。逆に小柄な女性の方は3.5時間程度の方もいます。
体重1kgあたりの尿素除去率(Kt/V)という指標があって、これが1.2以上になるように透析時間が設定されることが多いんですよ。医学的な話になりますが、この数値が低いと長期的な生存率に影響するというデータもあります。
透析間の体重増加
透析と透析の間にどれだけ体重が増えるかも重要な要素です。これは主に飲食による水分摂取量に関係します。私の場合、透析間の体重増加が2kg以内なら4時間で十分でしたが、夏場に水分を多く摂ってしまい3kg近く増えた時は、透析時間を延長することもありました。
ドライウェイト(理想体重)の5%以上の体重増加があると、透析時間の延長が必要になることが多いです。あるいは、除水速度(体から水分を抜くスピード)を上げることになりますが、これはめまいや血圧低下などの副作用リスクが高まるので注意が必要です。
合併症の有無
心臓や血管に問題がある方は、ゆっくりと時間をかけて透析を行うことが多いです。急激な血圧変動を避けるためですね。私も一時期、透析中の血圧低下に悩まされた時期があり、その際は透析時間を少し延長して、より緩やかに水分を除去するよう調整してもらいました。
短時間透析と長時間透析のメリット・デメリット
透析時間については「短い方がいい」と思われがちですが、実はそれぞれにメリット・デメリットがあります。20年超の透析生活で両方を経験してきた私の視点からお伝えします。
短時間透析(3時間前後)のメリット
短時間透析の最大のメリットは、やはり拘束時間の短さです。仕事や家事、趣味などの時間を確保しやすくなります。透析導入当初は3時間でもよかったのです、なぜならまだ残存腎機能もありましたから!
また、透析中のストレスや身体的な負担が少なくて済むという面もあります。長時間同じ姿勢でいることによる腰痛や肩こりなどの問題も軽減されます。
短時間透析のデメリット
ただし、短時間で同じ量の老廃物や水分を除去しようとすると、体への負担が大きくなります。特に除水速度(水分を抜くスピード)が速くなるため、血圧低下やめまい、吐き気などの症状が出やすくなります。
私も若い頃に「早く終わらせたい」と3時間透析を試みたことがありますが、透析後の疲労感が強く、結局は元の時間に戻しました。また、中分子量の老廃物(β2ミクログロブリンなど)の除去効率が下がるため、長期的には合併症リスクが高まる可能性もあります。
長時間透析(5時間以上)のメリット
長時間透析の最大のメリットは、より効率的に老廃物を除去できることです。特に尿毒症の症状改善や、長期的な生存率向上につながるというデータもあります。
また、除水速度を緩やかにできるため、透析中の血圧低下などのトラブルが少なくなります。私の透析仲間のなかには5時間以上の透析を受けている方もいますが、「透析後の疲れが少ない」と言っていました。
長時間透析のデメリット
当然ながら、拘束時間が長くなるというデメリットがあります。仕事や家庭との両立が難しくなる場合もあるでしょう。また、長時間の透析は医療機関側の負担も大きくなるため、受け入れていない施設もあります(私の通うクリニックでは、夜間透析を行っていますが最長6時間までの透析しか対応していません)。
透析時間を有効活用する私の工夫
透析時間は「失われた時間」ではなく、むしろ「自分だけの特別な時間」と捉えることで、気持ちが楽になります。20年超の透析生活で編み出した時間活用法をいくつか紹介します。
仕事や勉強の時間に
ノートパソコンやタブレットを持ち込んで、仕事をすることも可能です。私は会社員ですが、仕事の持ち込みはしません(できません)。なので、透析中は仕事で必要になりそうな資格取得のための講座を視聴することで、業務をカバーしています。
施設によってはWi-Fi環境が整っていないこともあるので、スマホやポケットWi-Fiでテザリングをすることも踏まえて事前に確認しておくといいでしょう。
「どうせ拘束される時間なら有効活用しよう」というプラスの発想転換が大切です。
リラックスと趣味の時間に
透析中は読書や映画鑑賞など、普段忙しくてできないことに取り組む絶好の機会です。私は電子書籍リーダーを愛用していて、透析室では小説や自己啓発本を読むことが多いです。イヤホンで音楽を聴いたり、動画配信サービスで映画やドラマを見たりすることもあります。
最近は、透析中に瞑想アプリを使ってマインドフルネスを実践する時間にしています。透析中の緊張感が和らぎ、終わった後の疲労感も軽減されるような気がします。
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人間関係を深める時間に
透析室での会話は、同じ境遇の仲間との貴重なコミュニケーションの場になります。私は長年の透析生活で知り合った患者さんから、食事のコツや旅行先での透析施設の情報など、実生活に役立つ情報をたくさん得てきました。
また、看護師さんや臨床工学技士さんとの関係を良好に保つことで、透析中の細かな調整(温度や除水速度など)にも柔軟に対応してもらえるようになります。人間関係も透析生活の質を左右する重要な要素です。
透析時間を短縮できる可能性はある?
「どうしても透析時間を短くしたい」と考える方も多いでしょう。実際に、条件によっては透析時間の短縮が可能なケースもあります。
残存腎機能の維持
自分の腎臓がまだ少しでも機能している場合、その機能を維持することで透析時間を短くできる可能性があります。私も透析導入初期は少し尿が出ていたため、3.5時間の透析で済んでいました。
残存腎機能を維持するためには、腎臓に負担をかける薬剤の使用を避けたり、水分管理を徹底したりすることが大切です。医師と相談しながら、自分の腎臓を大切にする生活習慣を心がけましょう。
食事・水分管理の徹底
透析間の体重増加を抑えることができれば、透析時間の短縮につながる可能性があります。私も日々塩分制限(1日6g未満)と水分制限(1日800ml程度)を徹底することで、透析間の体重増加を1.5kg以内に抑えられるようになってはいます。
先述したとおり透析時間を4.5時間に固定していますから、3.5時間の透析に短縮するということは、これまではありませんでした。むしろ、相当体調が悪すぎて・・・といったように、早めに切り上げる事例は、ほかの患者さんを見てわかりますね。
高効率ダイアライザーの活用
医療技術の進歩により、より効率的に老廃物を除去できる高性能なダイアライザー(透析器)も開発されています。私は転職して数年来して、高効率ダイアライザーを使用するようになり、透析効率が向上しました。
ただし、高効率ダイアライザーを使用しても、必ずしも透析時間が短縮できるわけではありません。あくまで医師の判断によるものですし、除水(水分除去)の観点からは時間が必要なケースも多いです。
透析時間に関するよくある質問
最後に、透析患者さんやご家族からよく聞かれる質問にお答えします。
透析時間を自分で決めることはできる?
基本的に透析時間は医師が決定します。ただし、仕事の都合や体調などを考慮して、相談の上で調整することは可能です。私も仕事の繁忙期には、透析スケジュールを調整してもらったことがあります。
大切なのは、「なぜその時間が必要なのか」を理解した上で、医師と率直にコミュニケーションを取ることです。一方的な要望ではなく、「仕事と両立するために何ができるか」という建設的な話し合いが重要です。
透析時間を短くするとどんなリスクがある?
透析時間を必要以上に短くすると、老廃物や水分の除去が不十分になり、様々な健康リスクが生じる可能性があります。短期的には倦怠感やかゆみ、むくみなどの症状が現れ、長期的には心血管疾患のリスク上昇や生存率の低下につながるというデータもあります。
私の透析仲間で「時間短縮にこだわりすぎて体調を崩した」という方もいました。透析時間は「必要な治療時間」であることを理解し、安易な短縮は避けるべきでしょう。
海外旅行中の透析時間はどうなる?
海外旅行先での透析は、基本的にその国や施設の標準的な透析時間に合わせることになります。欧米では4時間程度が一般的ですが、アジアの一部地域では3〜3.5時間の短時間透析が主流の国もあります。
事前に主治医から透析条件(時間や透析液の種類など)が記載された英文の紹介状を用意してもらい、現地の施設に伝えることで、できるだけ普段に近い条件で透析を受けられるよう調整することが必要です。
透析時間を前向きに捉えるための心構え
透析時間は確かに長く感じることもありますが、その時間をどう捉えるかで生活の質は大きく変わります。20年超透析と付き合ってきた私の経験から、いくつかのアドバイスを送ります。
「治療の時間」ではなく「自分の時間」と捉える
透析中は体を動かせませんが、心と頭は自由です。この時間を「失われた時間」ではなく「自分だけの特別な時間」と捉え直すことで、気持ちが楽になります。
私は透析時間を「強制的な休息時間」と考えるようにしています。普段の忙しさから解放され、自分の趣味や思考に集中できる貴重な時間です。このプラスの発想転換が、長期の透析生活を乗り切るコツだと感じています。
同じ境遇の仲間とのつながりを大切に
透析患者同士の交流は大きな支えになります。同じ悩みを持つ仲間との会話は、専門的な情報交換だけでなく、精神的な支えにもなります。
私も透析室で知り合った方々から多くの知恵や勇気をもらってきました。「あの人も頑張っているから自分も頑張ろう」という気持ちが、長い透析生活を支える原動力になっています。
小さな目標や楽しみを作る
透析生活が長くなると、どうしても単調に感じることもあります。そんな時は、小さな目標や楽しみを作ることが大切です。
私の場合は、「透析が終わったら行きたいカフェがある」「次の休日には家族で出かける計画がある」など、透析後の楽しみを意識的に作るようにしています。また、透析中に読む本や見る映画をあらかじめ選んでおくことで、透析日が「あの本を読める日」という前向きな意味を持つようになります。
まとめ:透析時間は健康維持のための大切な投資
透析時間は単なる「拘束時間」ではなく、健康維持のための大切な「投資時間」です。標準的な4〜5時間という時間は、科学的根拠に基づいて設定されており、適切な透析時間を確保することが長期的な健康維持につながります。
私自身、20年以上の透析生活を通じて、透析時間の捉え方が大きく変わりました。導入当初は「なぜこんなに長い時間が必要なのか」と思うこともありましたが、今では「自分の体のためにも、生活の質を維持するためにも必要な時間」と理解しています。
透析時間を有効活用する工夫を凝らし、前向きな気持ちで透析生活を送ることが、長期的な健康維持と生活の質向上につながると信じています。皆さんも、ぜひ自分なりの透析時間の過ごし方を見つけて、充実した透析生活を送ってください。
最後に、透析時間について悩みや不安がある場合は、遠慮なく担当医や看護師に相談することをおすすめします。あなたの状態や生活スタイルに合わせた最適な透析条件を一緒に考えてくれるはずです。透析は確かに大変ですが、工夫次第で充実した日々を送ることができます。一緒に前向きに透析生活を乗り切っていきましょう。