透析を導入した頃は不均衡症候群というものに苦しみ、時間も経ってやっと透析に慣れてきたといっても、「血圧が安定しない」「身体の状態が芳しくない」「透析に行きたくない」といったことが、身体やこころの不安や不調というものが、どうしても出てきます。
そしてそれらの症状は個人差もあり、経験・体験は数知れず。
そのことが「仕事が続かない」「仕事を休みがちになる」といった原因になったり、手術や入院をすることになることもあるのです。
特に血液透析の場合は、通院しかつ治療のために時間を要するので、会社勤めの透析者となると給料減は避けられずません。収入が不安定になり、そのため生活に影響が出てしまうことがあるのです。
(1)初診日要件(2)障害認定日要件(3)保険料納付要件までの「すべて」を満たしていること!
・「老齢」「死亡」の年金以上に、障害年金の申請・審査はシビア!(∵不正受給の問題が多い)
・腎臓は沈黙の臓器と言われるので、腎機能の障害の特性上痛みや痒みもない
L「初診日」が分からないことも多い。また「障害認定日」の取扱いも意外とシビア
透析で障害年金が収入を補填。受給には3要件が欠かせない!
析者の生活に対するリスクをカバーし、金銭的補填(ほてん)するのが障害年金なのです。
障害年金を受給するためには「申請」することが必要なのですが、その大前提として「障害年金を受けるための3要件」が欠かせません。
3要件のいずれかの1つでも欠けていては申請はできませんし、認定されるわけでもないので、当然に受給はできません!
もし機会あればで良いのですが、国民年金法などの法律等を読んでみてください。
障害基礎年金の条文構成から、聞きなれない用語や法律の独自の言い回しで理解しがたく感じるでしょうし、「障害認定基準」なども確認することができるでしょう。
例えばこんな感じです。
・「初診日」や「障害認定日」といった用語
・「イ.障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。」
といった、言い回しなどがそうです。
どうでしょうか?これだけでも、難しいですよね!
条文から、私たちが考えたり理解することとの間には、多少なりともズレが生じてしまうものなのです。
それから、障害年金の申請を行い(国に)認定してもらうことは、かなりシビアに扱われているということも肝に銘じておきましょう。
現実的に「障害年金がもらえない(もらえなかった)」といったことが発生しているからです。
以降、ここでいう障害年金とは「障害基礎年金」のことを言います。
透析で障害年金を受給するための3つの要件
透析のために障害年金を受け取るには、(1)初診日要件、(2)障害認定日要件、 (3)保険料納付要件の3つの要件が存在します(細かな点や例外説明は、概ね省略しています)。
つまり、
手続きである申請~認定後、受給できることの大前提とは、(1)初診日要件~(3)保険料納付要件までのすべてを満たしていること!が必要になってくるのです。
(1)初診日要件
初診日に、その年金制度の加入者(被保険者)だった
⇒初診日(障害の原因となった傷病について、初めて医師等の診療を受けた日)において、以下のいずれかに該当すること
・国民年金の加入者
・厚生年金保険の加入者
・未加入者(次のすべてを満たす方)
・日本国内に住所を有し、
・60歳以上65歳未満であり、
・過去に厚生年金または国民年金に加入していた者で、
・老齢基礎年金の繰上げ請求をしていない方
・未加入者(20歳未満であった方)
(2)障害認定日要件
初診日の1年6ヶ月後、またはその前の症状固定日に、支給対象となる障害の状態だった(※例外規定あり)
※例外規定(初診日から1年6ヶ月しなくてもよい場合)
⇒透析者については、この例外規定が適用され、人工透析療法を始めた日から3ヶ月を経過した日が障害認定日となります。
腎疾患⇒障害認定日「透析療法施行中の人は、人工透析療法を始めた日から3ヶ月を経過した日(初診日が1年6ヶ月以内の日に限る)と定められています。
(3)保険料納付要件
【原則】
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、当該被保険者期間のうち、3分の2以上の期間が納付済か免除※されている
※納付しているとみなされるのは、「保険料納付済期間」と「保険料免除期間(学生納付特例、若年者納付猶予を含む)」の合計です。
【特例】直近1年間に未納が無い(※※)
※※初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料がないこと
以上、3要件を挙げました。
申請の手続きをする準備として必要書類などを受け取る必要があります。年金事務所等で行うことができるようになります。
その際に、年金事務所等の窓口では、必ず「初診日」を聞かれます。
また、この初診日を基にして(3)の保険料納付状況(納付済期間がどのくらいあるか)などを確認することにもなります(「もしかしたら?」ということもあるので、申請前にあらかじめ照会してもらった方が良いです)。
繰り返しますが、透析と関わらず障害年金を受給するためには、3つの要件をすべてを満たす必要があるわけです。
シビアな「初診日」「障害認定日」の取扱いについて
(1)初診日要件について
・健康診断日は初診日としない(原則)
会社や学校などでは、健康診断が行われます。
この健康診断に絡み、平成27年10月から「初診日」の取り扱いの改定が行われました。
「健康診断日は初診日としては取り扱わない」と変更されました。そのため健康診断は検診日である、というものです(但し書きあり)。
例えば、会社員が定期の健康診断で「腎臓機能の異常を指摘された」といった場合、この健康診断の検診日=初診日とはならないのです。
「健康診断の検診日以後に、初めて医療機関で診療を受けた日」が初診日となります。
↑この点はご注意ください!
・医療機関のカルテ廃棄の問題
腎疾患の特徴として「痛みを感じない」「初期症状がわかりづらい」「症状がゆっくり」「放置しやすい」・・・といったことが挙げられます。
このようなことから透析に至った原因疾患として、第1位に「糖尿病性腎症」が挙がっています(日本透析医学会「人工透析導入患者の原因疾患」より)。
糖尿病性腎症は原因疾患が糖尿病であり、進行はゆっくりとすすみ、経年してから透析に入るというのが実情です。
「進行はゆっくり、経年してから」というところに問題があります。
医療機関でのカルテの保存は5年間(医師法24条)とされていて、5年以上経てば医師の判断で破棄することができるのです。
そこで、糖尿病性腎症といったように「初診日」の証明をするときに「(保存期間である5年は過ぎているので)当時のカルテは破棄しました」等といったように、手元にカルテが残っていなくて、初診日の証明が困難になることが実は多いのです。
初診日要件。それが分かればよいのですが、糖尿病性腎症の例をのように、証明することが容易でない場合もあります。容易でないとすれば、立ちはだかる高い壁だと言えるでしょう。
・最初の医療機関が存在しない、診療科がはっきりしない・・・。
初診日の証明がとれないケースでは、ほかにも「当時の病院が存在しない(つぶれた)」「最初の病院が思い出せない」「どこの診療科を受けたかははっきりしない」・・・といったことも出てきます。
定期の健康診断で腎疾患がまだ軽い程度だと、直接に腎臓内科に通うといったことはあまり無いかもしれません。自宅・会社近くにあるクリニックなり、よくある内科なり通院するのが一般的かと思います。
腎疾患の自覚症状は人により様々であり、いろいろな症状として現れます。
私の場合でいうと、学生時というと授業・ゼミ、サークル、バイト、ボランティアなどの過密なスケジュールのためか、健康診断でたんぱく尿が出るようなり、腎疾患が疑われました。
そして朝から体がだるく、疲労回復できず、貧血の症状も出てきたのです。授業などの兼ね合いもあったので、移動する時間も惜しかったのです。
学校近くにある内科のクリニックに行きました。年1回の学校の健康診断とは別に、月1ペースで尿検査等を行うも数値は悪くなる傾向になっていきました。
私は内科のクリニックにはじめて通ったわけです。
今でこそ腎臓内科という立派な診察科がありますが、「初診日=はじめて腎臓内科に受診した日」ということではありません。
いくつかの事例を挙げてみましょう・・・。
(事例)
・男性会社員。営業をしているが不規則な生活、上司からの叱責などからストレスを溜め込み、うつ病にかかっているのではないかと思い、心療内科へ行った。
・百貨店で販売業している女性販売員。立ち仕事なので、特に足は浮腫みやすいのは承知。疲労感もひどくなり浮腫みが異常であったので、クリニックへ行った。
・初老の40代男性。過去健康診断でにたんぱく尿でひっかかった事がある。尿が近くなり不安になって泌尿器科へ行った。
どうでしょうか?
人によって自覚症状は異なり、ストレス、浮腫み、疲労感、たんぱく尿が・・・。
どれでもそうですが「透析に至った原因疾患となるものが」があって、「初診日」とは症状を自覚して初めて医師の診療を受けた日とされるので、事例のような場合であっても「初診日」と捉えることができます。
以上のように「初診日」の証明はとても重要です。
補足にはなりますが、障害厚生年金を受給する場合も、この初診日によって年金額が変わってくるため、
障害年金を受ける手続きをするためには、初診日の確認が重要な意義を持つと言えます。
(2)障害認定日要件について
腎臓に障害を持ち、透析療法(血液透析、腹膜透析)を行うようになった場合、例外規定が適用されます。
条文をみてみると、その例外規定では「透析療法施行中の人は、人工透析療法を始めた日から3ヶ月を経過した日(初診日が1年6ヶ月以内の日に限る)」とあります。
⇒(よって通常、原則である障害年金では、初診日から1年6ヶ月経過しないと申請できませんが、)
例外規定にある透析の場合は、
①透析を初めて受けた日から起算して3か月を経過した日が「障害認定日」とされます。
そして、
②初診日から1年6ヶ月を経過する前に透析(血液透析、腹膜透析)を始めたのであれば、その日から障害年金の申請ができることになります。
「初診日から1年6ヶ月以内」とか「人工透析療法を始めた日から3ヶ月を経過した日」とあるのは、腎臓に障害を持ったことで透析療法でしか治療するしかなく、行わなければならないためであり、これを治った日(症状固定日)として扱っているのです。
なお透析は原則として、国民年金法の障害等級認定基準でいうところの2級にあたります。
◆まとめにかえて
最後に、透析になった場合で障害年金の要件のポイントは、
・(1)初診日要件、(2)障害認定日要件、(3)保険料納付要件のすべてをみたさなければならないこと。
・透析の場合「初診日」「障害認定日」に特徴があり、扱い方がシビアであること。
(1)「初診日」
→腎疾患は「進行はゆっくり、経年してから」糖尿病性腎症になるといったことがあり、医療機関には(保存期間超えで)カルテが無い、医療機関がなくなった・・・といった理由で、「初診日」証明ができないこともあるので注意!
(2)「障害認定日」
→ほかの通常の障害とは異なっている。
「人工透析療法を初めて受けた日から起算して3か月を経過した日(初診日から起算して1年6ヶ月以内の日に限る)とする」としているので、透析開始から3か月で申請可能。
(3)「保険料納付要件」
(1)初診日要件、(2)障害認定日要件は満たしたとしても、「保険料をきちんと納めていなかった」「納付しているとみなされる期間が足りなかった」などで、最後の(3)保険料納付要件が満たせず、障害年金がもらえない(もらえなかった)ということも、十分に起こりえます。
年金制度は崩壊しただとか、保険料を納める意味が無いのでは!?という方もいますが、イザとなったとき、障害を持った時に収入を補填してくれる必要なものです。
くれぐれもそういうことにならないようにしたいものです。