透析治療を受けている方なら、「痛み」という言葉に敏感に反応するのではないでしょうか。私自身、透析歴20年以上の身として、あの針を刺す瞬間の緊張感や、治療中の不快感は今でも忘れられません。
透析は命を支える大切な治療ですが、痛みや不安を感じることは珍しくありません。あなたが今、透析の痛みに悩んでいるなら、一人ではないことをまず知ってください。この記事では、長年の経験から編み出した痛みを軽減するコツや心の持ち方をお伝えします。
透析時の痛みはなぜ起こる?その種類と原因
透析治療で感じる痛みにはいくつかのパターンがあります。まず理解しておきたいのは、痛みの種類によって対処法が変わってくるということ。私も最初は「痛いのは仕方ない」と諦めていましたが、原因を知ることで随分と楽になりました。
痛みの種類を整理すると、大きく分けて次のようなものがあります。
穿刺(せんし)時の痛み
これが最も一般的で、多くの患者さんが経験する痛みです。透析のために太い針を血管に刺す瞬間の痛みですね。私の場合、透析導入当初は冷や汗が出るほど怖かったのを覚えています。
穿刺の痛みが強く出る原因としては、以下のようなことが考えられます。
- 針のサイズや種類が合っていない
- 穿刺する場所が毎回同じで皮膚や血管が硬くなっている
- 穿刺技術に個人差がある
- 緊張や恐怖心で痛みを強く感じている
ある時、担当の看護士さんが変わったときに「あれ、今日はあまり痛くない」と感じたことがきっかけで、穿刺技術に差があることに気づきました。これは意外と重要なポイントです。(つまり、穿刺がうまい人・う~ん避けてという人がいるわけです。)
透析中の痛み
透析治療が始まってからも、様々な痛みを感じることがあります。
- 血流不足による筋肉の痙攣(けいれん)
- 血圧低下に伴う頭痛や胸痛
- シャント部位の違和感や痛み
- 不均衡症候群による頭痛
私の場合、特に冬場は体が冷えて筋肉の痙攣(けいれん)が起きやすく、ふくらはぎがつるような痛みに悩まされていました。”こむら返り”ですね。これは除水(体内の余分な水分を抜くこと)のスピードが関係していることが多いんです。まあ、誰にも言い尽くせないような痛みです。近くにスタッフさんいれば良いのですが・・・。
透析後の痛み
治療が終わった後にも、こんな痛みが残ることがあります。
- シャント穿刺部の内出血や腫れによる痛み
- 疲労感からくる全身の倦怠感
- 血圧変動による頭痛
透析後は「なんとなくだるい」という方も多いですよね。これは単なる気分の問題ではなく、体内環境が急激に変化したことによる反応なんです。
透析の痛みを和らげる7つの実践的な方法
長年の透析生活で試行錯誤した結果、痛みを軽減するためのいくつかの方法を見つけました。これから紹介する方法は、私自身が実践して効果を感じたものばかりです。
1. 穿刺前の準備で痛みを軽減
穿刺の痛みを和らげるには、事前の準備が重要です。
まず試してほしいのが、穿刺部位の温め。私は会社や自宅を出る前に、シャントのある腕を温かいタオルで10分ほど温めてから病院に向かいます。血管が拡張して穿刺しやすくなるので、痛みが軽減されることが多いんです。
また、シャント音(血管内の血流の音)をよく確認することも大切です。シャント音が最も明確に聞こえる部分は血流が良く、穿刺時の痛みが比較的少ないことが多いです。看護士さんに「ここが音がよく聞こえるので、できればこの辺りで」と伝えると、対応してくれることが多いですよ。
2. 麻酔クリームやスプレーの活用
病院によっては、穿刺前に麻酔クリームやスプレーを使用できることがあります。私も最初の頃はエムラクリームというリドカイン含有の麻酔クリームを使っていました。
使用方法は簡単で、穿刺予定の30分〜1時間前に塗布し、ラップなどで覆っておくだけ。針を刺す瞬間の痛みがかなり軽減されます。ただし、効果には個人差があり、完全に痛みがなくなるわけではありません。
最近では、エムラクリームの代わりにリドカインテープという選択肢もあります。クリームよりも使いやすいという声も聞きますので、主治医に相談してみるのもいいと思います。
3. 呼吸法とリラクゼーション
意外と効果的なのが、「穿刺時の呼吸法」です。え~っと思いますが、深呼吸をすることで体の緊張がほぐれ、痛みの感じ方が変わってきます。
私がよく行うのは、穿刺の3秒前から深く息を吸い、針が入る瞬間にゆっくりと息を吐き出す方法です。この時、頭の中で「リラックス」と唱えると、さらに効果的です。
また、穿刺中に好きな音楽を聴いたり、スマホで動画を見たりして気を紛らわせるのも一つの方法。私はいつも好きなポッドキャストを聴きながら穿刺を受けていますよ!このように気を紛らわせる、気が散らせることで、痛みへの意識が薄れるんですね。
4. 適切な穿刺者を見つける
これは先述したことで、少し言いづらいことかもしれません。はっきり言って、穿刺技術には個人差があります。痛みが少ない穿刺をしてくれるスタッフさんを見つけることも大切です。
私の場合、ある看護士さんの穿刺はほとんど痛みを感じないのに、別の方だと少し痛いということがありました。遠慮せずに「○○さんの穿刺は痛みが少ないので、できれば担当してほしい」と伝えてみましょう。多くの透析施設では、患者の希望に応じて対応してくれるかと思います。
ただし、あまりにも強く主張すると、スタッフ間の関係が難しくなることもあるので、穏やかに伝えることがポイントです。「お願いできれば・・・」という言葉を添えると印象が違います。
5. 透析中の痙攣や筋肉痛への対策
透析中に起こる筋肉の痙攣は本当に辛いものです。特に足がつると、その痛みで透析中ずっと不快な思いをすることになります。
私が効果を感じた対策としては、次のようなものがあります。
- 透析前に軽いストレッチを行う
- 透析中も可能な範囲で足首を動かす
- 足が冷えないように靴下を履く
- 除水速度を調整してもらう
特に除水速度は重要で、あまりに早く水分を抜くと筋肉痙攣が起きやすくなります。「今日は水分が多めなので、少し時間をかけて除水してもらえませんか」と相談してみるのも一つの方法です。
また、最近ではフットマッサージャーを持ち込んで使用できる施設も増えています。私の周りの患者さんのなかには小型のものを使っている方もいるようで、血行が良くなって痙攣予防になっている気がします。
6. シャントケアの徹底
シャントの状態が良好だと、穿刺時の痛みも軽減されることが多いです。日頃からのシャントケアが重要になります。
実践すべきシャントケアは以下の通りです。
- 毎日シャント音を確認する
- シャント部を清潔に保つ
- シャント部に強い圧力をかけない
- 適度な運動でシャントの血流を促進する
特に効果的だと感じているのは、シャントボールを使った軽い握力トレーニングです。血管が発達して穿刺しやすくなるだけでなく、透析効率も上がるため一石二鳥です。ただし、やりすぎは禁物。1日10分程度を目安にしています。
7. 医療スタッフとのコミュニケーション
最後に、そして最も重要なのが、医療スタッフとの良好なコミュニケーションですね。痛みや不安を我慢せずに伝えることが、解決の第一歩になります。
「ここが痛い」「こうすると楽」など、自分の状態を具体的に伝えることで、個人に合った対応をしてもらえることが多いです。いちいち患者も多いからという理由で私も最初は遠慮していたのですが、今では気になることはすぐに相談するようにしています。
また、定期的なカンファレンス(=患者と医療スタッフの面談)の機会があれば、積極的に参加して自分の状態や希望を伝えましょう。透析は長く付き合う治療なので、良好な関係づくりが何より大切です。
透析の痛みに関する誤解と真実
透析の痛みについては、様々な誤解や不安があります。ここでは、よくある誤解と実際の真実についてお話しします。
誤解1:「透析は必ず痛いもの」
確かに穿刺時の痛みはありますが、技術の進歩や適切なケアによって、痛みは最小限に抑えることができます。私自身、最初の頃は毎回恐怖を感じていましたが、今では「ちょっとチクッとする程度」と感じるようになりました。
痛みの感じ方には個人差があり、また同じ人でも日によって違います。「透析=痛い」と決めつけず、自分に合った方法を見つけていくことが大切です。
誤解2:「痛みを訴えると迷惑がられる」
多くの患者さんが、「我慢しなければ」と思い込んでいますが、実はそれが適切な治療の妨げになることもあります。医療スタッフは患者の状態を正確に把握するために、痛みの情報を必要としています。
私も最初は「みんな我慢しているんだから」と思っていましたが、正直に伝えることで対応してもらえるようになり、透析の質が向上しました。痛みを伝えることは、より良い治療につながるのです。
誤解3:「痛みは慣れれば気にならなくなる」
確かに心理的な恐怖感は慣れによって軽減されることがありますが、身体的な痛みが完全になくなるわけではありません。むしろ、長期間の透析で血管の状態が変化し、新たな痛みが生じることもあります。
大切なのは「慣れる」ことではなく、痛みの原因を理解し、適切に対処していくことです。私も20年以上経った今でも、常に自分の体と向き合い、変化に対応しています。
透析の痛みと上手に付き合うための心構え
透析の痛みは身体的なものだけでなく、精神的な側面も大きいです。長期間続く治療だからこそ、心の持ち方も重要になります。
前向きな気持ちの維持
透析は生きるために必要な治療です。「面倒だな」「痛いな」と感じることもあります。が、「この治療のおかげで生活できている」という視点を持つことで、心理的な負担が軽くなることがあります。
私の場合、透析の日を「体をメンテナンスする日」と捉えるようにしています。ふだん会社通勤している車のこと、車の定期点検と同じで、「健康を維持するための大切な時間なんだ」と考えれば、少し気持ちが楽になりませんか?
仲間との交流
同じ透析患者同士で情報交換することも、心の支えになります。透析患者会に参加して、様々なコツや工夫を教えてもらうのも良いでしょう。自分より透析歴の長い先輩もいますし…。「自分だけじゃない」という安心感は何物にも代えがたいものです。
最近ではSNSやオンラインコミュニティでも、透析患者同士のつながりが生まれていますね。気軽に参加してみるのも良いでしょう。
小さな成功体験を大切に
透析において、「今日は穿刺の痛みが少なかった」「筋肉痙攣が起きなかった」など、”小さな成功体験”を意識的に記録しておくと、前向きな気持ちを維持しやすくなります。
血圧帳の管理も大事なのですが、「透析日記」なるものをつけていて、調子が良かった日の条件(食事内容、水分摂取量、睡眠時間など)を記録している方もいますね。このことは自己管理の助けになっているんです。
透析の痛みを軽減するための生活習慣
透析の痛みは、日常生活の習慣とも密接に関連しています。治療日以外の過ごし方も、痛みの軽減に影響するのです。
適切な水分管理
透析間の体重増加が多いと、除水量が増えて筋肉痙攣などの痛みが生じやすくなります。適切な水分管理は、透析中の痛みを軽減する基本です。
私の場合、透析間の体重増加を1.5kg以内に抑えるよう心がけています。喉が渇いたときは、一気に飲むのではなく少量ずつ口に含むようにしたりしています。(ちなみに「氷をなめたりすること」も一例にあるのですが、いつでも氷ってあるものでしょうか!?会社勤めなら有り得ないわけでして…。)こうして、水分摂取量を抑えています。
塩分の摂取量も重要ですね。塩分を控えると喉の渇きが減り、結果的に水分摂取も抑えられます。私は醤油や味噌などの調味料を減塩タイプに切り替えていますから、慣れっこです。無理なく塩分制限はできていますよ。
血管を健康に保つ食生活
血管の状態が良いと、穿刺時の痛みも軽減されます。血管の健康を保つための食生活も大切です。
- オメガ3脂肪酸(青魚に多く含まれる)
- 抗酸化物質を含む野菜や果物(透析患者は種類と量に注意)
- 良質なタンパク質(肉や魚、豆腐など)
もちろん、リン・カリウム・塩分などの制限もありますので、栄養士さんと相談しながら、自分に合った食事内容を見つけていくことが大切です。食事内容を記録して、栄養士さんにチェックしてもらうと良いです、そのためにいるのですから!
適度な運動習慣
適度な運動は血行を促進し、シャントの発達にも良い影響を与えます。特にシャントがある腕の軽い運動は、穿刺時の痛みを軽減するのに役立ちます。
私が日常的に行っているのは、以下のような運動です。
- ウォーキング(30分程度、週3回)
- シャントボールを使った軽い握力トレーニング
- ストレッチ(特に透析前後)
ただし、シャントに負担をかけすぎないよう注意することも大切です。重い荷物を持つときは反対の腕を使うなど、日常生活での配慮も忘れないようにしましょう。
透析の痛みに関するQ&A
最後に、透析患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1:穿刺の痛みが特に強いのですが、どうすればいいですか?
穿刺の痛みが強い場合は、まず医師や看護士に相談しましょう。麻酔クリームの使用や、針のサイズ・種類の変更が可能な場合があります。また、穿刺部位を変えることで痛みが軽減することもあります。
私の経験では、穿刺前に腕を温めておくことと、リラックスした状態で臨むことが効果的でした。緊張すると血管が収縮して痛みを感じやすくなるので、深呼吸などでリラックスすることを心がけてみてください。
Q2:透析中の足のつりを防ぐ方法はありますか?
足のつり(筋肉痙攣)は、透析中によく起こる症状です。予防方法としては、以下のようなものがあります。
- 透析前の水分摂取を適切に管理する
- 透析中も可能な範囲で足首を動かす
- 足が冷えないように靴下を履く
- 医師と相談して、透析条件(除水速度など)を調整する
私の場合、特に寒い季節は足が冷えて痙攣が起きやすかったので、保温用のレッグウォーマーを使用しています。また、透析前にカルシウムを含む食品(小魚など)を摂ることで、症状が軽減されることもありました。
Q3:透析後の疲労感や痛みを軽減する方法はありますか?
透析後の疲労感や痛みには、以下のような対策が効果的です。
- 透析後にすぐ横にならず、少し休憩してから帰宅する
- 帰宅後は無理をせず、適度に休息をとる
- 水分補給を適切に行う(一度に大量ではなく、少量ずつ)
- 軽いストレッチで血行を促進する
私は透析後に15分ほど施設内で休憩してから帰宅するようにしています。また、透析日は無理な予定を入れず、体を休める時間を確保するよう心がけています。
Q4:シャントの状態が悪くなると痛みも増しますか?
シャントの状態が悪化すると、穿刺時の痛みが増したり、透析効率が落ちたりすることがあります。シャントの狭窄や血栓ができると、針を刺す際に抵抗を感じて痛みが強くなることがあります。
日頃からシャント音を確認し、音が弱くなったり、シャント部が腫れたり熱を持ったりする場合は、すぐに医療スタッフに相談しましょう。早期発見・早期治療が重要です。
Q5:痛みに対する心理的な不安を軽減する方法はありますか?
透析の痛みに対する不安は、実際の痛み以上に辛いものです。心理的な不安を軽減するためには、以下のような方法が効果的です。
- 呼吸法やマインドフルネスなどのリラクゼーション技術を学ぶ
- 透析中に好きな音楽や動画で気を紛らわせる
- 同じ経験をしている患者さんと交流する
- 必要に応じて、心理カウンセラーに相談する
私の場合、透析中はお気に入りの音楽を聴くことで、痛みや不安から気を紛らわせています。また、透析患者会での交流も大きな支えになっています。
まとめ:透析の痛みと上手に付き合うために
透析の痛みは避けられない部分もありますが、様々な工夫や対策によって軽減することができます。この記事でご紹介した方法を参考に、あなたご自身に合った対処法を見つけていただければ幸いです。
最後に、透析生活で大切なポイントをまとめておきます。
- 痛みや不安を一人で抱え込まず、医療スタッフに相談する
- 日常生活での自己管理(水分・食事・運動)を大切にする
- 透析は生きるための大切な治療だという前向きな気持ちを持つ
- 同じ経験をしている仲間との交流を大切にする
- 小さな工夫の積み重ねが、生活の質を大きく向上させる
透析は長く付き合っていく治療です。痛みや不安と上手に付き合いながら、充実した日々を送れるよう、一緒に頑張っていきましょう。私自身、20年以上の透析生活の中で多くの壁にぶつかりましたが、一つ一つ乗り越えることで今があります。あなたも必ず自分に合った方法を見つけられるはずです。
最後に、透析は確かに大変な治療ですが、それによって私たちは生きることができています。痛みがあっても、制限があっても、透析があるからこそ今を生きられているのだという感謝の気持ちを忘れずに過ごしていきたいものですね。