2018年10月21日

更新日: 2026年10月13日

「透析低血圧でシャント閉塞・狭窄が起きる理由と症状・今すぐできる対策」」では、透析患者の低血圧には3つある、ということをお伝えしました。
「1.透析低血圧」「2.常時低血圧」「3.起立性低血圧」があり、それら透析患者にみられる低血圧をまとめて「透析関連低血圧」と呼んでいます。
・「1.透析低血圧」「2.常時低血圧」「3.起立性低血圧」をまとめて、透析関連低血圧という
・「起立性低血圧」は健康な人でも起こりうるが、透析患者はシャントの閉塞・狭窄に注意すること
・症状は、めまい・ふらつき・立ちくらみ・目が真っ白・気が遠くなる・どっとした疲労感や脱力感
私は20年超透析を行っていますが、どれも経験してますが、「1.透析低血圧」は20,30代の頃が多かったように思います。自分のなかで明らかに除水量の幅を超えると絶対に具合悪くなっていくものだ、というのを体の内から訴えかけられるようなものです。それだけ、特に週明けの除水量には気を付けていました(個人差はあると思いますが、年々除水できるであろう量も減ってきてます。)
「3.起立性低血圧」。起立性低血圧によってシャント閉塞寸前という冷や汗もの。リアルな体験も2度ほど経験しました。今回は「3.起立性低血圧」について取り上げていきます。

透析患者の「起立性低血圧」も透析関連低血圧のひとつに数えられます。
その原因は大きく分けると、自律神経による血管の調整が不十分で起こるものと、血液量の減少や筋の萎縮などによって静脈内に血液が貯留してしまって起こるものとに分けることができます。
「起立性低血圧」という言葉は耳にしたことがあっても、医学的にどのような状態を指すのか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
医学的な定義としては、「臥位(横になった状態)や座位から立位へ体位を変換した際に、収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、拡張期血圧が10mmHg以上低下した場合」を起立性低血圧と呼びます。(日本透析医学会資料・MSDマニュアルより)
糖尿病患者や自律神経障害がある方で特に起きやすいとされており、透析患者の中でも注意が必要な方がいます。
さらに言うと、血圧の数値が基準を下回っていなくても、めまいやふらつきが出ている場合はそれ自体がリスクのサインです。
「数字が問題なければ大丈夫」とは思わず、体の感覚を大事にすること。それが透析患者にとって何より重要な姿勢です。
個人差はあるものの、透析中はベッドで横になっています。運動しているわけでもないのに、終了時に横の状態から起立することで血圧低下が起こり、脳の血流低下を招いてしまいます。
「1.透析低血圧」や「2.常時低血圧」は、たいがい透析治療中や透析前に起こることが多いので、近くにいる医師や看護師さんのもとで処置を受けられます。
しかし「起立性低血圧」の場合は、必ずしも処置を受けられるとも限りません。健康な人でさえ起こりうるので、体験したことがある方も多いでしょう。
たとえば、小・中学校での長丁場な朝会で「立つ」⇔「座る」を繰り返し、立ちくらみやめまいをしたことはありませんか?実際に倒れてしまった経験を持つ人もいるでしょう(私は多かった!)。健康な人ならば「頭を低く、転倒に気をつけて!」「どうぞお大事に」で話は終わります。
しかし透析患者の場合はそうはいきません。シャントの狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)を起こしてしまう危険性を併せ持っており、最悪の場合は透析ができなくなってしまう恐れが出てくるのです。だからこそ、いっそうの注意が必要なのです。
シャントを閉塞させた場合は、シャント再構築のための手術と入院が必要になります。閉塞した状態では透析ができないため(言わば”水が流れなくなった河川”のようなもので…)、手術・入院・透析という三重の負担が一気にのしかかります。

| 原因カテゴリ | 具体的な要因 |
|---|---|
| 自律神経の乱れ | 腎不全や糖尿病による自律神経障害。立った瞬間の血管収縮がうまくいかなくなる |
| 循環血液量の減少 | 透析による除水・水分制限・夏場の発汗による脱水状態 |
| 筋力・血管緊張の低下 | 長時間の臥位(横になった状態)後、静脈に血液が貯留しやすくなる |
| 季節変化・環境要因 | 気温・湿度の急変で血圧が不安定になる(梅雨・夏への移行期など) |
| 便秘・薬の影響 | 便秘状態での長時間のトイレ、リン吸着薬など一部薬剤の副作用 |
こうして原因を並べてみると、透析患者の体はいくつもの「血圧が下がりやすい要因」を最初から抱えていることが分かります。
血圧管理=シャントの管理。この意識を持つことが、日々の透析生活の基本になります。
起立性低血圧で怖いのは、一つひとつの原因ではなく、それらが「重なったとき」です。
季節の変わり目で血圧がもともと下がり気味のところに、水分制限が厳しくなり、便秘まで続いている……。こうした状況が重なると、体の中では血液がドロドロになりながら循環量も落ち、立ち上がった瞬間に脳への血流が一気に不足します。
これが透析患者の「起立性低血圧」が怖い理由であり、健康な人の「立ちくらみ」とは根本的に意味が違うのです。
特に「春から夏への移行期」は、血圧が不安定になりやすい季節として、多くの透析患者が経験しているものです。ドライウエイト(DW:基礎体重)の見直し時期とも重なることが多く、体がまだ暑さに慣れていないうちに除水量が変わるため、体への負担が思った以上に大きくなりやすいのです。
「なんとなく調子が悪い」という感覚が続く時期こそ、担当の医師や看護師さんに早めに相談するサインだと覚えておいてください。
透析時や透析終了の際も注意が必要です。通常、透析中は緩やかに血圧が下がっていくものですが、急激な血圧低下が起こることもあります。
やっと透析が終わった!と思っていても、ベッドで横になった状態から立ち上がったときに「起立性低血圧」が起きることがあります。
透析が終わって「やっと血圧が正常になった」と思いきいや、病院をあとにしての冬場や雨の日に身体を冷やしてしまい…。ヒンヤリした外の空気で暖かな車や電車・バスに乗車し、血圧が下がってしまう…。あるある!な場面ばかりではないでしょうか。
だからこそ、帰宅途中や自宅に帰ってきてからも、油断は禁物なのです。
「血圧が低い状態」というのは何となく自覚できるものです。車を運転しているときでも、帰宅したときも、トイレに入っているときでも……「何となく具合が悪い」「意識が朦朧(もうろう)とした感じ」を覚えます。
起立性低血圧の主な症状は、座ったり寝たりした姿勢から急に立ち上がることで起こります。以下の表に整理しました。

| 起立性低血圧の主な症状 | 特徴・注意点 |
|---|---|
| めまい・ふらつき | 立ち上がった瞬間にぐらっとくる。最もよくある初期症状 |
| 立ちくらみ・目が真っ白になる | 脳への血流が一時的に不足するために起こる |
| 気が遠くなる・耳鳴り | 重症化のサイン。そのまま失神(意識消失)につながることもある |
| どっとした疲労感・脱力感 | 症状が落ち着いたあとにも残ることがある。要注意 |
| シャントの音が弱くなる | 血流が落ちているサイン。閉塞の危険を示す。すぐに病院へ。 |
私はふだん低血圧ぎみです。透析患者として日々血圧管理していても、また繰り返したくない「起立性低血圧」の体験をしました。このときばかりは「自己判断ミス」を犯し、「嫌でも会社出勤」し「あまりにも辛すぎる透析」を行いました。参考にしていただければと思います。

私は透析を始めた身として、起立性低血圧によりシャント閉塞の寸前まで起こしたことがありました。ふだんから低血圧ぎみで、血圧管理には一応気をつけていたつもりでした。でも、悪条件が重なったとき、人はミスを犯してしまうものです。

| 当時の状況 | 詳細 |
|---|---|
| 季節の変わり目 | 春から夏への移行期で、血圧が低下しつつあった |
| 透析疲れ・翌日の倦怠感 | 疲労が取れないことが度々あり、仕事中に立ちくらみやめまいが起きていた |
| リン吸着薬による便秘 | 処方されていたリン吸着薬の性質上、かなりの便秘に悩まされていた(データは良くなっていても体との相性が悪かった) |
| 水分制限による血液のドロドロ化 | 夏に向かって水分の摂取制限が厳しくなっていた時期だった |
当時、透析中にしだいに血圧が低下していくのは見られたものの、透析が終わる頃に血圧が著しく下がって帰宅できない等ということは、ありませんでした。
起立性低血圧が起きたのは、透析が終わったあとの家の中で、でした。
透析が終わって自宅にはいつもの時間に帰宅し、いつもの遅めの夜食をとりました。これまで特に調子が悪かったり、食欲不振に陥ったりということはありませんでした。
しかし、周期というものなのでしょう。身体で覚えて分かったのは、私にとって「春から夏への季節の移り変わり」の時期は、何となく調子が悪くなっていくのが常で、ドライウエイト(=基礎体重)を見直す時期に入っていくのだ!ということ。はっきり言えば、梅雨入るかはいないかという、最近ではよく判断しづらい”梅雨に入ったとみられる…”です。)「翌日にも疲労が残る」「だるさがある」という、この自分の感覚は、大事にしなければならないと思いますね(現状でも、そうです。)
また、水分の摂取制限が厳しくなったのと同時に、当時飲んでいたリン吸着薬の副作用によって長いこと「便秘」に悩み、苦しんでいました(今考えても、薬との相性問題)。何となくお腹の張っている感じがずっと続いていて、何だか、2重に3重にと調子が悪くなっていく予感がする。仕事やらプライベートではお腹に苦しさが残り、気持ちが悪いのです(←これ、分かりますよね?)。
そしてトイレへ。長時間同じ姿勢でいて、ただただ時間だけが過ぎました。
「水分の摂取制限(=水分不足)→便秘→血液はドロドロ→脳貧血からはじまる」。
この間に「起立性低血圧」に陥ってしまい…。
トイレが終わって何となく排泄も不十分なまま。2Fにある自分の部屋に戻るまでにも低血圧の症状(めまい・立ちくらみ・耳鳴り・意識朦朧)が続いていました。透析を導入してからこのような症状はあまり感じたことがなかったのですが、何ともこんなにも階段を登るのが大変なことか(足腰は弱っていないのに!ってちょっと頭の片隅には残っている)。部屋灯を付けるスイッチを探しあて、そして目当てのベッドに横になる。かなり時間を要したのを記憶しています。
頭に血液が昇るようにするために、足を上にあげました。当初は「もう落ち着いたかなあ」と思いながら立ち上がるも、やはりフラフラ感・視野が真っ白になる感じ・ぼーっとする。
低血圧の症状がふたたび呼び起こされてしまうのです。
「心臓音も弱いようだし、何だかシャントの音も弱い。」
「何か危険(イヤ)な気がしてきた。本当に血圧が戻ってきたのか?」
「夜間透析後、もう病院も終わっているし…」
「明日の朝まで様子見…」
「明日も仕事もあるし、調子悪かったら病院に行こう…」
そんなことを自問自答しながら「起きて」⇔「寝て」を幾度か繰り返しているうちに、仕事や透析による疲労感もあったでしょう。眠気に誘われてそのまま寝てしまいました。
寝ているといっても、何となく耳鳴り音があったり、シャントの音が弱い。シャント周辺が痛いのが微かに感じられて、すっきり寝ていたわけではありません。
そして、朝を迎えてしまったのです。
もう、お分かりですね。
「朝まで様子見」とか「会社出勤。翌日の透析前に診療受けよう!」といった自己判断・対処法は間違いです!
このような症状になっての自己判断・自己対応はダメです。
「起立性低血圧」になってシャント閉塞に近い状態になったかもしれない(シャントの音が弱ってしまった)と疑って、すぐに病院へ連絡し、夜間診療でも受けるべきです。(ただ、病院によっては翌日午前の診療ですぐに受けてくれ!と回答が来る場合もあるかもしれません。医師確保の問題もありますから…)
眠気で寝てしまったり、翌日まで様子見にしたり、仕事を最優先にしてしまったことが、何よりお粗末でした。後悔してもしきれない「自己判断ミス」でした。もしかしたら、あなたも経験されるかもしれませんね。だから、ここに書き記しているのです。
結果的には、シャント閉塞寸前で済みました。ただ、それだけで終わったわけではありません。
以前からシャント周辺で狭窄部分があり、PTA(経皮的血管拡張術)を行う予定がありました。PTAとは、先端に風船(バルーン)のついたカテーテルをシャント内の狭くなった部分(狭窄部)に進め、そこでバルーンを膨らませることで狭窄部を拡張する治療法です。
手術時間は30分〜1時間程度、局所麻酔で行われます。
| 治療名 | 内容・特徴 |
|---|---|
| PTA(経皮的血管拡張術) | シャントの狭窄部にバルーンカテーテルを入れ、内側から広げる治療。局所麻酔で行い、手術時間は30分〜1時間程度。透析効率の回復を目的とする |
| 内頸静脈カテーテル透析 | シャントが使えない期間に、首の内頸静脈に留置カテーテルを入れて行う透析。PTA前後の一時的な対処として行われる |
| シャント再建手術 | PTAで対応できない閉塞・狭窄が重篤な場合は、新たなシャントを作り直す手術が必要になる |
ふつう腕に穿刺して行う透析も、医師の出張やほかの透析患者のPTAの予定も入っており、すぐに手術とはなりませんでした。
そのため、首から行う透析(内頸静脈という首の血管へ留置カテーテルを使用)を1週間ほど行いました。私にとっては初めての経験であり、首の血管から行う透析があることに、大変驚きました。
時期的には夏に入る頃だったので、汗や匂いが気になります。透析翌日の入浴やシャワーがなかなかうまくできませんでした。洗髪にはドライシャンプー(水のいらないシャンプー)を使ってみました。

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仕事のときは業務への影響は感じませんでしたが、首に包帯をしているだけあって違和感はありましたね。
また買い物などに外出すれば、首先の白包帯だけが目立って、世間の目は興味本位な人の目が、とても気になりました。ふだんあまり意識していなかったですが、何もかも”ストレス”というものを感じました。
PTA(経皮的血管拡張術)をすることで血管が広がって、また透析効率がよくなるわけですが、その効果が永遠に続くものではありません。
治療を重ねたり、年齢を重ねたり、合併症があったりすることで、また血管が狭くなっていきます(=シャントの狭窄)。
次第に透析効率が落ちてゆき、またPTAを行うことになります。いざ使えなくなれば、また新しい場所でシャントを作り直さなければなりません。いかにシャントを大事に、長く使えるようにしなければならないか、ということが分かると思います。
| シャントに起きること | 対処・リスク |
|---|---|
| 狭窄(血管が細くなる) | 透析効率が低下。PTAで広げることが多い。早期発見が重要 |
| 閉塞(血流が完全に止まる) | 直ちに透析不可能に。血栓除去術・血栓溶解療法・シャント再建手術が必要 |
| シャント音の変化 | 音が弱くなる・途切れる・高音になるなどは狭窄・閉塞のサイン |
| シャントの寿命 | PTAを繰り返しながら使い続けるが、永久ではない。次第に再建が必要になる |
「起立性低血圧」でまた同じようなことを繰り返し、シャント閉塞になってまた一から作り直すのも面倒ですし、「ゾッ〜」としてきます。
だからこそ、今ここで正しく予防しておくことが、これからの透析生活を守ることに直結するのです。
私は今まで経験したことがなく、透析患者として「起立性低血圧」を体験しました。もっと血液透析に対する知識を持っていれば、「病院に相談する」「駆け込む」といった初期対応ができたのだと、つくづく反省させられました。
幸いにして、シャント閉塞寸前ながら狭窄があってPTA(経皮的血管拡張術)で済みました。経験しなければ分からないこともあります。でも今となっては恥ずかしいことですし、苦い思い出ですね。
今はまだ高血圧に悩まされることはないですが、今の私はどうも体質上低血圧の傾向にあるので「起立性低血圧」にはいっそうのこと注意していかなければなりません。最悪の状況はシャントの閉塞ですから、本当に怖いです。
| 場面 | 注意ポイント・対策 |
|---|---|
| 透析終了直後 | ベッドからいきなり起き上がらない。数分間ゆっくり体を起こしてから立ち上がる |
| 帰宅途中 | 冬場・雨の日など気温が低い環境で急激に血圧が落ちることがある。運転中や電車内でも油断しない |
| トイレ・入浴 | 長時間の同一姿勢のあとに立ち上がるときに特に注意。起立はゆっくりと |
| 季節の変わり目(春→夏) | 血圧が不安定になりやすい。ドライウエイトの見直し時期と重なることが多い |
| シャントの音の確認 | 毎日シャントのスリル(音・振動)を確認する習慣をつける。音が弱いと感じたらすぐに病院へ |
| 便秘が続くとき | 長時間のトイレは血圧に影響する。便秘が続くようなら早めに担当医に相談する |
| 「変だな」と感じたとき | 自己判断で様子見しない。夜間でも透析施設・救急に連絡する |
ドライウエイト(DW)の見直し・シャントの自己管理。これが、透析患者が日々できる最大の予防策です。
私の二の舞にならないように。血圧管理そしてシャントの自己管理を行っていきましょう!