2025年9月22日

更新日: 2026年7月17日

透析治療が始まると、生活が一変します。治療そのものへの不安はもちろん、「これからどうなるんだろう」「お金のことは?」「仕事は続けられる?」——次から次へと疑問が湧いてきて、夜も眠れないなんてことも。
私も透析導入当初は、まさにそんな感じでした。特に透析と障害者手帳の関係って、なんだかよく分からないし、ちょっと抵抗を感じる人もいるかもしれません。
私は20年超透析を行っている現役会社員です。今回は、そんな皆さんの不安や疑問に、長年の患者経験から正直にお答えしていきたいと思います。「障害者手帳って、ぶっちゃけどうなの?」「申請は面倒?」「どんなメリットがあるの?」
この記事を読めば、透析患者にとっての障害者手帳のリアルな位置づけや、あなたが損しないための情報がきっと見つかるはずです。私自身の体験談も交えながら、できるだけ分かりやすくお伝えします。
・透析患者は「腎臓機能障害」として身体障害者手帳の申請対象になる
・手帳は自動交付されない——必ず「申請」が必要
・メリットは医療費助成・税控除・各種割引・就職支援など多岐にわたる
・障害者手帳と障害年金は全くの別制度——どちらも別途申請が必要
・腎臓機能障害の身体障害者手帳は原則として有効期限なし(再認定が必要なケースはまれ)
透析を始めたばかりの方や、これから導入を考えている方にとって、「なんで透析で障害者手帳?」って思うかもしれませんね。私も最初はピンときませんでした。でも、これ、透析患者にとってはすごく大事なことなんです。
ざっくり言うと、透析治療が必要な状態=「腎臓機能障害」が、身体障害者福祉法で定められた障害等級に該当する場合が多いからです。腎臓は体の中の老廃物をろ過してくれる重要な臓器。その機能が著しく低下して、人工的にその機能を補う透析が必要になる——これは、日常生活や社会生活に大きな制約を受ける状態だと国が認めているということです。
等級は、腎臓機能の状態(eGFRの値や血清クレアチニン濃度など)をもとに医師が判定します。多くの場合、透析導入によって1級または3級に認定されることが多いとされています(腎臓機能障害には2級がなく、1級・3級・4級の3区分です)。私は導入後すぐに申請して1級に認定されました。当時は等級がどうこうというより、「それだけ自分の腎臓が頑張れなくなっちゃったんだな」と受け止めるしかなかったですけど。
重要なのは、透析を始めたからといって自動的に手帳が交付されるわけではない、という点です。自分から「申請」しなければ何も始まりません。これが最初のポイントです。
手帳を持つことのメリット、まずはざっと整理しましょう。
| メリットの種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 医療費の助成 | 自立支援医療(更生医療)・障害者医療費助成制度により、透析にかかる自己負担が大幅に軽減 |
| 税金の控除・減免 | 所得税・住民税の障害者控除(特別障害者は控除額が大)、自動車税の減免など |
| 公共料金などの割引 | 交通機関の運賃割引、携帯電話料金の割引、公共施設の入場料割引、NHK受信料の減免など |
| 就職・転職での配慮 | 障害者雇用枠での応募が可能に。通院への配慮も得やすくなる |
デメリットはと聞かれると、正直、制度上のデメリットは私自身あまり感じていません。ただ、人によっては「障害者」という言葉に心理的な抵抗を感じることがあるかもしれません。
私も最初に手帳を受け取ったとき、複雑な気持ちがなかったとは言えません。「ああ、自分は『障害者』になったんだな」と。でも、透析を続けていく上で、手帳があることで受けられるサポートはやっぱり無視できないほど大きい。だから今では「これは治療を続けて、自分らしく生きていくための”お守り”みたいなもの」と考えています。
手帳を持つかどうかは個人の判断ですが、もし迷っているなら、どんなメリットがあるか具体的に調べてみて、自分にとって必要かどうか考えてみる価値は十分あると思います。
実際に申請しようと思ったら、どうすればいいのか。手続きって聞くと、なんだか面倒くさそうですよね。はい、正直ちょっと面倒です(笑)。でも、一つ一つやっていけば大丈夫。私が申請したときの流れを基に説明します。
| Step 1 | 住んでいる市区町村の福祉担当窓口へ相談 「身体障害者手帳の申請をしたいのですが」と伝えれば、必要な書類一式をもらえます。担当者さんが丁寧に教えてくれますよ。 |
| Step 2 | 「指定医」に診断書・意見書を書いてもらう 腎臓機能障害の場合、指定医は「都道府県知事の定めた医師」です。透析病院の主治医が指定医であることがほとんどなので、早めに相談しましょう。 ※診断書の作成には文書料(数千円程度)がかかるのが一般的です。 |
| Step 3 | 必要書類をそろえて窓口に提出 診断書・意見書のほか、申請書、写真(縦4cm×横3cm)、マイナンバーが確認できる書類、印鑑などが必要です。 |
| Step 4 | 審査(障害等級の決定) 提出書類をもとに「腎臓機能障害認定基準」に基づいて等級が審査されます。 |
| Step 5 | 手帳の交付 審査が通れば、通常1〜2か月で交付されます。最近は他種別障害の増加などで、やや時間がかかる傾向もあります。 |
診断書を書いてもらうときのコツは、「何の診断書か(身体障害者手帳の申請用です)」を明確に伝え、早めに相談すること。先生も忙しいので、余裕を持ってお願いしましょう。主治医に話しにくい場合は、病院のソーシャルワーカーさんに相談するのも手です。
申請手続きの詳細は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
参照:「透析前後でも身体障害者手帳は申請できます。窓口で確認を!」
これ、よく誤解されているポイントなので正確にお伝えします。
身体障害者手帳は、原則として有効期限がありません。一度取得すれば、基本的にそのまま使い続けられます。
ただし、障害の状態が将来改善される可能性がある場合には「再認定」が必要になることがあり、その場合は手帳に再認定年月が記載されます。腎臓機能障害(特に透析を受けている場合)は、状態が回復する可能性が極めて少ないため、再認定の対象になるケースはまれです。腎移植後に抗免疫療法を継続している場合も、手帳の返還は必要ありません。
念のため、交付された手帳に再認定年月が記載されているかどうかは確認しておきましょう。
手帳を取得したら、次に大事なのは「どんなサポートが受けられるか」を把握すること。申請しないと使えないものばかりなので、情報収集が命です。
一番インパクトが大きいのが医療費の助成です。透析治療は、一般的な血液透析で月約40万円かかると言われています。保険適用や高額療養費制度があっても、自己負担はそれなりの金額になります。
ここで手帳(腎臓機能障害1級など)を持っていると、以下の2つの制度が活用できるようになります。
| 制度 | 内容 | 利用の優先順位 |
|---|---|---|
| 特定疾病療養受療証 | 透析の自己負担上限が月1万円(一定以上所得の方は2万円)に | ①まずこれ |
| 自立支援医療(更生医療) | 原則、医療費の1割負担に抑えられる | ②次にこれ |
| 障害者医療費助成制度 | 自治体が残りの自己負担分を助成。自治体によっては実質ゼロに | ③最後にこれ |
私が住んでいる自治体は、この制度が手厚くて、透析に関する医療費の窓口負担はほとんどありません。本当に、本当にありがたいです。
重要:手帳を取得しただけで自動的に医療費助成が始まるわけではありません。手帳が交付されたら、すぐに役所の窓口で「透析に関する医療費助成について教えてください」と確認して、別途申請することが必須です。
医療費助成制度の詳細はこちら:
参照:「透析の医療費は高い!しくみは知っておいたほうが良い理由。」
税金面でもメリットが積み重なります。
| 所得税・住民税の障害者控除 | 等級によって控除額が変わります。特別障害者(1級・2級相当)は控除額が大きい。会社員は年末調整、自営業は確定申告で申告。 |
| 自動車税(種別割)の減免 | 一定の要件を満たせば年間の自動車税が減免される。通院で車が必須な方には特に大きい。 |
| 相続税・贈与税の控除・非課税 | 万が一の時に備えて知っておきたい制度。詳細は税理士に相談を。 |
日々の生活の中でちょっと得できる割引サービスも多くあります。
| 公共交通機関 | JR・私鉄・バス・タクシーなどで運賃割引。旅行透析で新幹線を使う方にはとくに助かります(私もよく活用しています)。 |
| 携帯電話料金 | 各キャリアが障害者手帳向けの割引プランを用意。基本料金が安くなることが多い。 |
| 公共施設・文化施設 | 美術館・博物館・動物園・映画館などで本人や介護者が割引に。 |
| NHK受信料 | 世帯構成などの要件を満たせば全額または半額免除。 |
| 水道料金など | 自治体によっては減免あり(要確認)。 |
このほかにも、福祉タクシー券の交付、住宅改造費の助成など、自治体独自のサービスがある場合も。「どんなサービスが使えますか?」と市区町村の障害福祉課に聞いてみるのが一番確実です。
手帳を持つと「障害者雇用枠」での就職・転職が可能になります。通院への配慮が得やすい、採用ハードルが下がる可能性があるなどのメリットがある一方、求人数が限られる、給与水準が異なるケースもあるのが現実です。
私自身は氷河期世代にあたり、透析導入と転職活動が重なって本当に大変でした。でも時代は流れ、今は障害者雇用枠で採用され、透析をしながら働き続けている方もたくさんいます。どちらの枠を選ぶかは、自分の状況や価値観によります。
ハローワークの専門援助部門や障害者専門の転職エージェントに相談してみるのも有効な方法です。
今、一般枠で働いている方が透析導入になった場合、「会社に伝えるかどうか」「いつ伝えるか」は悩むところですよね。
伝えるメリットとしては「必要な配慮(通院時間の確保・業務調整)を得やすくなる」「隠し続けるストレスから解放される」があります。不安としては「偏見を持たれないか」「評価に影響しないか」というのがあるのも事実。
私が思うのは、透析治療を続けながら働くには何らかの配慮が必要になる場面がほぼ必ずあるということです。全く伝えないでいると、かえって無理が生じてしまいます。
伝える際は病状そのものよりも「週○回の通院が必要」「体調によってこういう配慮が必要になるかもしれない」という、仕事への影響と必要な配慮を具体的に話すのが効果的です。長期にわたる治療ですから、コソコソしている時間こそ、精神的によくないですよね。
名前が似ているため混同されがちですが、この2つは全くの別制度です。
| 身体障害者手帳 | 障害年金 | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 身体障害者福祉法 | 国民年金法・厚生年金保険法 |
| 目的 | 福祉サービスを受けるための証明書 | 生活を支えるためのお金(年金) |
| 申請先 | 市区町村の福祉担当窓口 | 年金事務所または市区町村の国民年金窓口 |
| 等級 | 1〜6級(腎臓は1・3・4級) | 障害基礎年金1・2級、障害厚生年金1〜3級 |
手帳の等級と障害年金の等級は、必ずしも一致しません。審査機関も基準も違います。手帳が1級だから年金も1級、とは限りません。
障害者手帳を持っていても、障害年金は自動的にはもらえません。別途、自分で申請が必要です。
透析患者は障害年金2級の受給要件を満たす可能性が高いと言われています。受給できれば生活の大きな支えになります。もし申請が難しいと感じたら、社会保険労務士(社労士)さんに相談するのも一つの手です。
障害年金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
参照:「透析で障害年金が収入を補填。受給には3要件が欠かせない!」
これは本当によく聞くあるある話です。「障害者」という言葉の響きや、なんとなく社会から区別されるような感じ……。その気持ち、よく分かります。
でも、20年超透析と付き合ってきて思うのは、障害者手帳は「レッテル」なんかじゃないということ。私たちが治療を続けて、少しでも自分らしい生活を送るために社会が用意してくれた「サポートを受けるための権利証」みたいなものです。
手帳を持っているからといって、常にそれを周りに知らせる必要はありません。役所での手続きや割引サービスを使うときに提示すればいいだけ。普段の生活でわざわざ「私、障害者手帳持ってます」と言う必要はないですよ。
もし抵抗があるなら、無理にとは言いません。でも、どんなサポートが受けられるのか、一度しっかり調べてみてから判断しても遅くないと思います。意外と「あ、これなら申請してみようかな」って思えるかもしれませんから。
先ほどもお伝えしましたが、身体障害者手帳は原則として有効期限がありません。腎臓機能障害(透析)の場合、状態が改善される可能性は極めて少ないため、再認定の対象になるケースはほとんどないと言えます。
ただ、交付された手帳に「再認定年月」の記載がある場合は要注意。その場合は、指定の時期に再度診断書を提出する必要があります。手帳の内容を一度しっかり確認しておきましょう。
透析と障害者手帳について、私の20年超の経験をもとにお話ししてきました。
医療費の助成、税金の控除、様々な割引サービス——これらを活用することで、経済的な不安を少しでも和らげることができます。それは、治療に専念したり、仕事や趣味を続けたりするための、大きな力になるはずです。
手帳は申請しなければもらえません。申請後に各サービスや助成も、さらに別途申請が必要なものがほとんど。「知らなかったから使えなかった」では、本当にもったいない。まず情報収集から始めてみてください。
透析していても、できることはたくさんあります。仕事だって、旅行だって、工夫次第で楽しめます。障害者手帳は、その「工夫」を後押ししてくれる制度の一つ。私も、まだまだ会社員として働きながら透析ライフを続けていきます。一緒に前向きに、頑張りましょう!