2026年7月26日

更新日: 2026年7月26日

「透析患者なのに、ヨーグルトは食べちゃダメって言われた」。そんな経験はありませんか?
実は食べ方を変えれば、ヨーグルトを楽しみながら腎不全管理ができるのです。20年超透析を行っている私が行き着いたのが「自家製豆乳ヨーグルト」。市販のヨーグルトとは比べものにならないほど腎臓への負担が少なく、作り方もそれほど難しくありません。
この記事では、腎不全管理に役立つ自家製豆乳ヨーグルトの作り方を、透析患者やその家族の方、また「腎臓が少し悪いかも?」と心配な方にも読みやすいようにお伝えします。
本記事は栄養に関する情報提供が目的です。実際の食事内容は、必ず担当の腎臓内科医・管理栄養士に確認してから取り入れてください。
健康な腎臓は、食事から取り込んだ余分なリン(P)やカリウム(K)を尿として捨ててくれます。ところが腎機能が落ちると、この「捨てる力」が低下します。
血液中のリンが高くなると(高リン血症)、血管の壁にカルシウムと一緒に「石灰」のようなものが沈着し始め、心筋梗塞や動脈硬化のリスクが跳ね上がります。さらに骨がもろくなる「腎性骨症」も引き起こします。
カリウムが上がりすぎると(高カリウム血症)、心臓の不整脈が起こり、最悪の場合は心停止にも至ります。透析患者にとっては命取りになる合併症です。
※個人の病態・透析歴・検査値によって異なります。必ず主治医に確認を。
腎臓病の食事管理で知っておきたいのが、リンには「植物性」「動物性」「無機(添加物)」の3種類があり、体への吸収率が全然違うという点です。
| リンの種類 | 主な食品・使われ方 | 腸での吸収率 | 腎臓への影響 |
|---|---|---|---|
| 植物性有機リン | 大豆・穀物など | 約30% | 比較的低い |
| 動物性有機リン | 肉・魚・乳製品 | 40〜80% | やや高い |
| 無機リン(食品添加物) | 加工食品・調整豆乳など | 90〜100% | 最も危険 |
大豆に含まれる植物性リンの大部分は「フィチン酸」という物質と結びついており、人間の腸ではほとんど分解できません。だから体に取り込まれる量が少ないのです。
一方で市販の加工食品や調整豆乳に使われる食品添加物(無機リン)は、ほぼ100%吸収されてしまいます。コンビニ食や加工品をよく食べる方は、この無機リンに注意が必要です。
単純に含まれるリンの量が半分以下。さらに「吸収される割合」を考えると、体に実際に入ってくるリンの量は75〜80%程度少なくなると考えられています。(ただし個人差があり、あくまで計算上の目安です)
| 食品(100gあたり) | リン(mg) | カリウム(mg) | 吸収率 | 腎臓への評価 |
|---|---|---|---|---|
| 牛乳由来プレーンヨーグルト | 100〜170 | 100〜204 | 40〜80% | 動物性リンが多く腎負荷が大きい |
| 無調整豆乳(自家製の原料) | 49 | 190 | 約30% | 低リンだがカリウムはやや多め |
| 調整豆乳(市販) | 44 | 170 | 最大100% | 添加物の無機リンが含まれるリスクあり |
| 自家製豆乳ヨーグルト | 〜42 | 〜80 | 約30% | 添加物なし・低リンで最良 |
「調整豆乳」は無機リンの添加物が使われている場合があるので、腎不全管理のためには「無調整豆乳」を自分で作るのが一番安全です。これが「自家製」にこだわる最大の理由です。
腎不全管理のためには、大豆からの豆乳作りにひと手間かけることが重要です。私(20年超透析を行っている筆者)が毎回実践している方法を順を追って説明します。
大豆にはカリウムがたっぷり含まれています。でも、カリウムは水に溶けやすい性質があるので、水に十分浸けることで大豆の外へ出ていきます。この「水に浸けて捨てる」作業をするだけで、豆乳に含まれるカリウムとリンを減らせます。
乾燥大豆の4〜5倍以上の浄水(ろ過水または精製水)に大豆を入れます。常温なら最低12時間、夏や冷蔵庫なら24時間浸けましょう。このとき水道水でも構いませんが、塩素が気になる方は浄水器の水を使うと安心です。
この戻し汁にカリウムやリンが溶け出しているので、絶対に豆乳メーカーに使わないこと。全量を捨てるのがルールです。大豆は流水で軽くすすぎます。
洗った大豆と新しい浄水を豆乳メーカーの容器に入れ、通常の豆乳製造プログラムで運転します。「浸漬水を捨てる→新しい水で抽出」という流れが低ミネラル豆乳を作るカギです。
出来上がった豆乳を、目の細かい濾し布やコーヒーフィルターで丁寧に濾します。おから(繊維質の残り)を除くことで口あたりが滑らかになり、不溶性の成分も取り除けます。
筆者は豆乳だけでなく、アーモンドを少量加えたアーモンド入り自家製豆乳も腎不全管理の食事に取り入れています。アーモンドにはリンが多めなので量に注意が必要ですが、風味が増してコクが出ます。主治医と相談しながら試してみてください。
腎不全が進むと体の免疫機能が低下していることがあります。雑菌が混ざった食品を食べると、健康な人よりも重篤な感染症になりやすいです。だから容器の殺菌は絶対に省略しないでください。
ヨーグルトメーカーの容器に少量の水を入れ、スプーンを立てて蓋を軽くのせ、電子レンジ500〜600Wで約1分30秒加熱します。発生する高温の蒸気で内部全体を殺菌します。加熱後は内部を布で拭かず、水滴を軽く振り切るだけにしてください(拭くと空気中の菌が付く)。
冷ました自家製豆乳(20〜25℃くらい)を容器に注ぎます。種菌として市販のプレーン豆乳ヨーグルト100g(豆乳700〜800mLに対して)か、市販の粉末スターター1包を加えます。殺菌済みのスプーンで底からしっかり混ぜて均一にしましょう。混ぜ方が甘いと固まりムラが出ます。
蓋をしてヨーグルトメーカーにセット。使う種菌の種類で温度と時間を変えます。
・一般的な豆乳ヨーグルトスターター:40〜42℃で7〜9時間
・カスピ海ヨーグルトなど中温菌:25℃で24時間
発酵が終わったら豆腐状に固まっているか確認し、すぐ冷蔵庫へ移して数時間以上冷やします。急冷で発酵を止め、食感が締まって滑らかになります。
発酵後にヨーグルトの表面に浮いてくる透明な液体(ホエイ状)には、水溶性のカリウムや遊離したリンが高濃度で溶け込んでいます。
より徹底的にミネラルを減らしたい場合は、この上澄みをスプーンで取り除くか、コーヒードリッパー等で水切りして「ギリシャ風豆乳ヨーグルト」に仕上げると、さらに腎不全管理の食事として安心です。
「もったいない」と感じてヨーグルトに混ぜ込んだり飲んだりする方がいますが、それはNG。ミネラル低減の効果が消えてしまいます。
自家製豆乳ヨーグルトは無添加でプレーンなので、大豆の青臭みや酸味が気になることがあります。ここで活躍するのが缶詰の果物です。
生の果物はカリウムが豊富で、腎不全管理の観点からは大量摂取が難しいものがほとんどです。ところが缶詰の製造過程で加熱されるとき、カリウムなどのミネラルがシロップ(缶の液体)側に溶け出し、果肉そのものに含まれるカリウムが約50%程度減少します。
カリウム低減の恩恵を得るには、缶詰のシロップを完全に切って、果肉だけ使うことが絶対条件です。シロップにはカリウム・リン・大量の糖分が溶け込んでいます。シロップを少しでも混ぜると、ミネラル低減効果がほぼゼロになります。
以下は日本食品標準成分表2020年版(八訂)に基づいたデータです。
| 果物 | 形態 | カリウム(mg/100g) | リン(mg/100g) | 腎臓への評価 |
|---|---|---|---|---|
| 温州みかん | 生 | 150〜191 | 20 | 生は避ける |
| 温州みかん | 缶詰・果肉のみ | 75〜142 | 13〜20 | シロップを切れば可 |
| 桃(もも) | 生 | 180〜383 | 18〜38 | 生は推奨しない |
| 白桃缶 | 缶詰・果肉のみ | 80 | 9 | ◎ 最もおすすめ |
| 洋なし | 生 | 140 | 11〜13 | 生はカリウムに注意 |
| 洋なし | 缶詰・果肉のみ | 55 | 5 | ◎ 缶詰化効果が顕著 |
| パインアップル | 生 | 150〜309 | 9〜18 | 生は要管理 |
| パイン缶 | 缶詰・果肉のみ | 67〜83 | 9〜39 | 製法差に注意・少量から |
※カリウム・リン値は日本食品標準成分表2020年版(八訂)および果物ナビ(kudamononavi.com)参照。品種・メーカーにより差があります。
白桃缶(白肉種)と洋なし缶は特に優秀。果肉のカリウムが缶詰化によって大幅に減り、リンも非常に少ない。腎不全管理を行いながら甘い果物を楽しみたい方に最もおすすめです。
パイン缶はブランドや製法によってリン値にかなりばらつきがあるので、少量から試して血液検査の数値を確認しながら使うのが安全です。
どんなに腎臓に優しい食品でも、食べすぎれば腎臓への負担になります。
腎臓病患者における豆乳ヨーグルト(代替食品含む)の1日の目安量は、おおむね90g前後です。この量を守ることで、大豆のタンパク質や腸内環境を整える大豆オリゴ糖を安全に補いながら、1日の総リン・総カリウムの許容上限を超えるリスクを抑えられます。
腎不全の進み具合(保存期CKDステージ3〜5、あるいは透析期)によって、タンパク質・塩分・カリウム・リンの制限量は一人ひとり個別に設定されます。
自家製豆乳ヨーグルトを日常に取り入れる前に、必ず担当の腎臓内科医や管理栄養士に直近の血液検査データを見せて、摂取量や頻度について個別の指導を受けてください。この「個別確認」が、安全に腎不全管理を続けるための一番大切な習慣です。
私が20年超透析を行ってきた経験から言えば、腎臓病の食事管理は「我慢だけ」では長続きしません。おいしく・楽しく・安全に食べ続けられる選択肢を見つけることが、腎不全管理と長いお付き合いをするうえで本当に大切です。
自家製豆乳ヨーグルト+缶詰フルーツ(シロップ抜き)の組み合わせは、その意味で私の食卓の「定番」です。市販のヨーグルトを毎日食べるよりも、リンの実効的な摂取量を大幅に減らしながら、発酵食品の恩恵も受けられる。試してみる価値は十分あると思っています。
腎不全管理のための自家製豆乳ヨーグルトの作り方は、一度覚えてしまえばルーティンになります。豆乳メーカーもヨーグルトメーカーも、今は1万円以内で揃えられるものが多いです。まずは一度、試してみてください。