2025年8月13日

更新日: 2026年9月13日

透析治療を受けている方なら、「痛み」という言葉に敏感に反応するのではないでしょうか。20年超透析を行っている私自身も、あの針を刺す瞬間の緊張感や、治療中の不快感は今でも忘れられません。
透析は命を支える大切な治療ですが、痛みや不安を感じることは珍しくありません。あなたが今、透析の痛みに悩んでいるなら、一人ではないことをまず知ってください。この記事では、長年の経験から編み出した痛みを軽減するコツや心の持ち方をお伝えします。読み終えたとき、「自分にもできることがある」と感じてもらえたら嬉しいです。
透析治療で感じる痛みにはいくつかのパターンがあります。まず理解しておきたいのは、痛みの種類によって対処法が変わってくるということ。私も最初は「痛いのは仕方ない」と諦めていましたが、原因を知ることで随分と楽になりました。

これが最も一般的で、多くの患者さんが経験する痛みです。透析のために太い針を血管(シャント)に刺す瞬間の痛みですね。私の場合、透析を始めた当初は冷や汗が出るほど怖かったのを覚えています。
穿刺の痛みが強く出る主な原因はこちらです。
| 原因 | 補足 |
|---|---|
| 針のサイズや種類が合っていない | 血管の太さや状態によって最適な針は異なる |
| 穿刺する場所が毎回同じで皮膚・血管が硬くなっている | 同一部位への繰り返し穿刺による皮膚硬化 |
| 穿刺技術に個人差がある | 担当スタッフによって痛みの感じ方が変わることがある |
| 緊張や恐怖心で痛みを強く感じている | 精神的な緊張は血管収縮を引き起こし痛みを増幅させる |
ある時、担当の看護師さんが変わったときに「あれ、今日はあまり痛くない」と感じたことがきっかけで、穿刺技術に差があることに気づきました。これは意外と重要なポイントです。つまり、穿刺が上手な人・う〜ん、できれば避けてほしいという人がいるわけです。
透析治療が始まってからも、様々な痛みを感じることがあります。

| 症状 | 主な原因 |
|---|---|
| 筋肉の痙攣(こむら返り) | 急速な除水による血液量の減少・血流不足 |
| 血圧低下に伴う頭痛・胸痛 | 体液量の急変による循環変動 |
| シャント部位の違和感・痛み | シャントの状態悪化、針の位置のズレなど |
| 不均衡症候群による頭痛・吐き気 | 血液と脳の浸透圧差が急激に変化することで起こる。透析導入初期や条件変更時に起きやすい |
私の場合、特に冬場は体が冷えて筋肉の痙攣(こむら返り)が起きやすく、ふくらはぎがつるような痛みに悩まされていました。これは除水(体内の余分な水分を抜くこと)のスピードが関係していることが多いんです。誰にも言い尽くせないような痛みで、近くにスタッフさんがいれば良いのですが……というタイミングも正直あります。
治療が終わった後にも、こんな痛みや不調が残ることがあります。
透析後に「なんとなくだるい」という方も多いですよね。これは単なる気分の問題ではなく、体内環境が急激に変化したことによる生理的な反応です。正常な体の反応なのですが、それでも辛いことに変わりはありません。
長年の透析生活で試行錯誤した結果、痛みを軽減するためのいくつかの方法を見つけました。これから紹介する方法は、私自身が実践して効果を感じたものばかりです。
穿刺の痛みを和らげるには、事前の準備が重要です。
まず試してほしいのが、穿刺部位を温めること。私は会社や自宅を出る前に、シャントのある腕を温かいタオルで10分ほど温めてから病院に向かいます。血管が拡張して穿刺しやすくなるので、痛みが軽減されることが多いんです。
また、シャント音(血管内の血流の音)をよく確認することも大切です。シャント音が最も明確に聞こえる部分は血流が良く、穿刺時の痛みが比較的少ないことが多いです。看護師さんに「ここが音がよく聞こえるので、できればこの辺りで」と伝えると、対応してくれることが多いですよ。
病院によっては、穿刺前に局所麻酔薬を使用できることがあります。代表的なものをまとめました。
| 種類 | 使い方の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| エムラクリーム (リドカイン・プロピトカイン配合) | 穿刺1〜2時間前に塗布しラップで覆う(120分以上の塗布は避ける) | 痛みの軽減効果が高い。関節近くや凹凸のある場所にも塗りやすい |
| リドカインテープ (ペンレステープ等) | 穿刺予定部位に正確に貼付する | 使いやすく、貼る場所の精度が効果を左右する。剥がれにくい場所に向く |
私も透析を始めた当初はエムラクリームを使っていました。針を刺す瞬間の痛みがかなり軽減されます。ただし、効果には個人差があり、完全に痛みがなくなるわけではありません。また、使用できるかどうかは施設の方針にもよりますので、まず主治医や担当スタッフに相談してみてください。
なお、リドカインテープの場合は貼る場所の精度が非常に重要です。シャント血管の穿刺予定部位に正確に貼れていないと、せっかく貼っても効果が得られません。位置合わせは担当スタッフに確認しながら行うのが確実です。

意外と効果的なのが「穿刺時の呼吸法」です。え〜っと思いますが、深呼吸をすることで体の緊張がほぐれ、痛みの感じ方が変わってきます。
私がよく行うのは、穿刺の3秒前から深く息を吸い、針が入る瞬間にゆっくりと息を吐き出す方法です。頭の中で「リラックス」と唱えると、さらに効果的です。
また、穿刺中に好きな音楽を聴いたり、スマホで動画を見たりして気を紛らわせるのも一つの方法。私はいつも好きなポッドキャストを聴きながら穿刺を受けています。このように気を紛らわせることで、痛みへの意識が薄れるんですね。
少し言いづらいことかもしれませんが、はっきり言って穿刺技術には個人差があります。痛みが少ない穿刺をしてくれるスタッフさんを見つけることも大切です。
私の場合、ある看護師さんの穿刺はほとんど痛みを感じないのに、別の方だと少し痛いということがありました。遠慮せずに「○○さんの穿刺は痛みが少ないので、できれば担当してほしいです」と伝えてみましょう。多くの透析施設では、患者の希望に応じて対応してくれます。
ただし、あまりにも強く主張するとスタッフ間の関係が難しくなることもあるので、穏やかに伝えることがポイントです。「お願いできれば…」という言葉を添えると印象が違います。

透析中に起こる筋肉の痙攣は本当に辛いものです。特に足がつると、その痛みで透析中ずっと不快な思いをすることになります。
特に除水速度は重要で、あまりに早く水分を抜くと筋肉痙攣が起きやすくなります。「今日は水分が多めなので、少し時間をかけて除水してもらえませんか」と相談してみるのも一つの方法です。
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| 透析前に軽いストレッチを行う | 特にふくらはぎ・太もものストレッチが効果的 |
| 透析中も可能な範囲で足首を動かす | 血流を滞らせないための小さな動き |
| 足が冷えないよう靴下・レッグウォーマーを着用する | 冬場は特に有効。保温が筋肉痙攣の予防につながる |
| 除水速度を医師・スタッフと相談して調整する | 急速な除水は痙攣の最大要因。体重増加量が多い日は特に要相談 |
| フットマッサージャーを持ち込む | 施設によっては使用可能。血行促進に効果的という声もある |
私の周りの患者さんのなかには小型のフットマッサージャーを使っている方もいて、血行が良くなって痙攣予防になっている気がするとのこと。施設に持ち込み可能かどうか、一度スタッフさんに確認してみる価値はあると思います。

シャントの状態が良好だと、穿刺時の痛みも軽減されることが多いです。日頃からのシャントケアが重要になります。
特に効果的だと感じているのが、シャントボールを使った軽い握力トレーニングです。血管が発達して穿刺しやすくなるだけでなく、透析効率も上がるため一石二鳥です。ただし、やりすぎは禁物。1日10分程度を目安にしています。
また、シャントの狭窄や血栓が生じると穿刺時の痛みが増したり透析効率が落ちたりすることがあります。シャント音が弱くなった、腫れや熱感がある、という場合は早めに医療スタッフに相談してください。早期発見・早期治療が大切です。
最後に、そして最も重要なのが、医療スタッフとの良好なコミュニケーションです。痛みや不安を我慢せずに伝えることが、解決の第一歩になります。
「ここが痛い」「こうすると楽」など、自分の状態を具体的に伝えることで、個人に合った対応をしてもらえることが多いです。患者も多いからという理由で私も最初は遠慮していたのですが、今では気になることはすぐに相談するようにしています。
また、定期的なカンファレンス(患者と医療スタッフの面談)があれば、積極的に参加して自分の状態や希望を伝えましょう。透析は長く付き合う治療なので、良好な関係づくりが何より大切です。
透析の痛みについては、様々な誤解や不安があります。ここでは、よくある誤解と実際のところについてお話しします。
| よくある誤解 | 実際のところ |
|---|---|
| 「透析は必ず痛いもの」 | 技術の進歩や適切なケアによって、痛みは最小限に抑えることができる。私自身も「ちょっとチクッとする程度」と感じるようになった |
| 「痛みを訴えると迷惑がられる」 | 医療スタッフは痛みの情報を必要としている。正直に伝えることで対応してもらえ、透析の質が向上する |
| 「痛みは慣れれば気にならなくなる」 | 心理的な恐怖感は慣れで軽減されることもあるが、身体的な痛みは「慣れる」ものではない。原因を理解し適切に対処することが大切 |
特に「痛みを訴えると迷惑がられる」という思い込みは、多くの患者さんが抱えているものです。私も最初は「みんな我慢しているんだから」と思っていましたが、正直に伝えることで対応してもらえるようになり、透析の質が向上しました。痛みを伝えることは、より良い治療につながるのです。
透析の痛みは身体的なものだけでなく、精神的な側面も大きいです。長期間続く治療だからこそ、心の持ち方も重要になります。
透析は生きるために必要な治療です。「面倒だな」「痛いな」と感じることもあります。が、「この治療のおかげで生活できている」という視点を持つことで、心理的な負担が軽くなることがあります。
私の場合、透析の日を「体をメンテナンスする日」と捉えるようにしています。ふだん車通勤している私にとっての車の定期点検と同じで、「健康を維持するための大切な時間なんだ」と考えれば、少し気持ちが楽になりませんか?
同じ透析患者同士で情報交換することも、心の支えになります。透析患者会に参加して、様々なコツや工夫を教えてもらうのも良いでしょう。自分より透析歴の長い先輩もいますし…「自分だけじゃない」という安心感は何物にも代えがたいものです。
最近ではSNSやオンラインコミュニティでも、透析患者同士のつながりが生まれていますね。気軽に参加してみるのも良いでしょう。
透析において、「今日は穿刺の痛みが少なかった」「筋肉痙攣が起きなかった」など、小さな成功体験を意識的に記録しておくと、前向きな気持ちを維持しやすくなります。
「透析日記」をつけて、調子が良かった日の条件(食事内容・水分摂取量・睡眠時間など)を記録している方もいますね。これは自己管理の大きな助けになっています。血圧手帳と合わせて活用すると、担当スタッフへの相談もしやすくなりますよ。
透析の痛みは、日常生活の習慣とも密接に関連しています。治療日以外の過ごし方も、痛みの軽減に影響するのです。
透析間の体重増加が多いと、除水量が増えて筋肉痙攣などの痛みが生じやすくなります。適切な水分管理は、透析中の痛みを軽減する基本です。
私の場合、透析間の体重増加を1.5kg以内に抑えるよう心がけています。喉が渇いたときは、一気に飲むのではなく少量ずつ口に含むようにしています。(「氷をなめること」も一例にあるのですが、いつでも氷ってあるものでしょうか!?会社勤めならあり得ないわけでして…。)こうして水分摂取量を抑えています。
塩分の摂取量も重要ですね。塩分を控えると喉の渇きが減り、結果的に水分摂取も抑えられます。私は醤油や味噌などの調味料を減塩タイプに切り替えていますから、慣れっこです。無理なく塩分制限ができていますよ。

血管の状態が良いと、穿刺時の痛みも軽減されます。血管の健康を保つための食生活も大切です。透析患者が意識したい栄養素をまとめました。
| 栄養素・食品 | 期待できる効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| オメガ3脂肪酸(青魚に多く含まれる) | 血管の柔軟性維持・炎症抑制 | 魚の種類や調理法によってリン・カリウム量が異なる |
| 抗酸化物質を含む野菜・果物 | 血管の老化防止 | 透析患者はカリウム・リンの種類と量に注意が必要 |
| 良質なタンパク質(肉・魚・豆腐など) | 筋肉・血管の維持 | リンが多い食品は摂取量の調整が必要 |
もちろん、リン・カリウム・塩分などの制限もありますので、栄養士さんと相談しながら自分に合った食事内容を見つけていくことが大切です。食事内容を記録して栄養士さんにチェックしてもらうと良いです——そのためにいるのですから!
適度な運動は血行を促進し、シャントの発達にも良い影響を与えます。特にシャントがある腕の軽い運動は、穿刺時の痛みを軽減するのに役立ちます。
| 運動の種類 | 目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| ウォーキング | 30分程度・週3回 | 透析日当日は無理をしない |
| シャントボールを使った軽い握力トレーニング | 1日10分程度 | やりすぎはシャントへの負担になる |
| ストレッチ | 特に透析前後 | 無理なく行える範囲で |
ただし、シャントに負担をかけすぎないよう注意することも大切です。重い荷物を持つときは反対の腕を使うなど、日常生活での配慮も忘れないようにしましょう。
最後に、透析患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
穿刺の痛みが強い場合は、まず医師や看護師に相談しましょう。麻酔クリーム(エムラクリーム)やリドカインテープの使用、針のサイズ・種類の変更が可能な場合があります。また、穿刺部位を変えることで痛みが軽減することもあります。
私の経験では、穿刺前に腕を温めておくことと、リラックスした状態で臨むことが効果的でした。緊張すると血管が収縮して痛みを感じやすくなるので、深呼吸などでリラックスすることを心がけてみてください。
足のつり(筋肉痙攣)は、透析中によく起こる症状です。予防方法としては、透析前の水分摂取を適切に管理する、透析中も可能な範囲で足首を動かす、足が冷えないように靴下を履く、医師と相談して透析条件(除水速度など)を調整するといったことが有効です。
私の場合、特に寒い季節は足が冷えて痙攣が起きやすかったので、保温用のレッグウォーマーを使用しています。また、透析前にカルシウムを含む食品(小魚など)を摂ることで症状が軽減されることもありました。
透析後の疲労感や痛みには以下のような対策が効果的です。透析後にすぐ横にならず少し休憩してから帰宅する、帰宅後は無理をせず適度に休息をとる、水分補給を少量ずつ行う、軽いストレッチで血行を促進するといったことを意識しています。
私は透析後に15分ほど施設内で休憩してから帰宅するようにしています。また、透析日は無理な予定を入れず、体を休める時間を確保するよう心がけています。
シャントの状態が悪化すると、穿刺時の痛みが増したり透析効率が落ちたりすることがあります。シャントの狭窄や血栓ができると、針を刺す際に抵抗を感じて痛みが強くなることがあります。
日頃からシャント音を確認し、音が弱くなったり、シャント部が腫れたり熱を持ったりする場合は、すぐに医療スタッフに相談しましょう。早期発見・早期治療が重要です。
透析の痛みに対する不安は、実際の痛み以上に辛いものです。心理的な不安を軽減するためには、呼吸法やマインドフルネスなどのリラクゼーション技術を取り入れる、透析中に好きな音楽や動画で気を紛らわせる、同じ経験をしている患者さんと交流する、必要に応じて心理カウンセラーに相談するといった方法が効果的です。
私の場合、透析中はお気に入りの音楽を聴くことで、痛みや不安から気を紛らわせています。また、透析患者会での交流も大きな支えになっています。
透析の痛みは避けられない部分もありますが、様々な工夫や対策によって必ず軽減することができます。この記事でご紹介した7つの方法を参考に、あなた自身に合った対処法を見つけていただければ幸いです。
| 大切なポイント |
|---|
| 痛みや不安を一人で抱え込まず、医療スタッフに相談する |
| 日常生活での自己管理(水分・食事・運動)を大切にする |
| 透析は生きるための大切な治療だという前向きな気持ちを持つ |
| 同じ経験をしている仲間との交流を大切にする |
| 小さな工夫の積み重ねが、生活の質を大きく向上させる |
透析は長く付き合っていく治療です。痛みや不安と上手に付き合いながら、充実した日々を送れるよう、一緒に頑張っていきましょう。20年超透析を行っている私も、多くの壁にぶつかりながら一つ一つ乗り越えることで今があります。あなたも必ず自分に合った方法を見つけられるはずです。
痛みがあっても、制限があっても、透析があるからこそ今を生きられているのだという感謝の気持ちを忘れずに過ごしていきたいものですね。