透析スタッフの役割を知ってコミュニケーションを深めよう!信頼が治療を変える

2018年11月8日

透析スタッフの役割を知ってコミュニケーションを深めよう!信頼が治療を変える
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更新日: 2026年9月10日

血液透析とスタッフの役割

 

透析療法には、主に血液透析(HD)と腹膜透析(PD)※の2種類があります。

透析患者の97%は「血液透析(HD)」を選んでおり、自宅や会社から病院へ通って治療を受けるのがふつうのスタイルです。※血液透析(Hemodialysis:略称HD)、腹膜透析(Peritoneal Dialysis:略称PD)

 

病院には日ごろからお世話になる透析スタッフさんがいます。

透析スタッフさんはどのような仕事をしていて、どのような役割を担っているか、気にしたことはありますか?

 

透析という医療の世界は、通院しているとさほど変化が少ないように感じるかもしれません。ですが、医療の進歩は確実に進んでいます。医師・看護師などスタッフさんはふだんから勉強しながら、透析の現場にあたっているわけです。

では、私たち透析患者はどうでしょうか。

透析という治療を受ける以上は、最低限の血液透析(HD)の基礎知識を身につけておくべきだと、私は20年超透析を行っている経験から強くそう思います。

 

治療を受けていれば、分からないことや疑問に思うことが本来は次々と出てくるはずです。ならばスタッフさんへ透析や食事、薬などについて質問し、相談し、適切なアドバイスをもらえばよいのです。

・基礎知識があって治療を受けていたら……
・生活のなかで活かすことができたら……
・生命予後が良くなるとしたら……。

透析の基礎知識を学び実践していくことは、結局のところ透析患者のQOL(=生活・人生の質)の向上につながりますし、今後の自分の生き方にも直結していくのです。

 

・透析の診察や検査などについては医師へ。療養上の世話や診療の補助は看護師へ。
 将来、在宅血液透析を考えているなら臨床工学技士の存在も大きい。
・透析食やふだんの食事など食事療法は栄養士へ、薬の飲み合わせなど薬物療法は薬剤師へ。
・透析患者は、透析に関する基礎的知識を身につけておこう。

 

血液透析(HD)でお世話になる透析スタッフさんとその役割

透析は週3回・隔日に通うもの。そのたびにスタッフさんとは顔を合わせることになります。診察・看護・透析装置の設定など、あらゆる場面でお世話になっています。

病院で行う血液透析の最大のメリットは、「専門の透析スタッフさんに透析をしてもらえるため、安心・安全に治療が受けられる」ことです。それを支えている医療スタッフさんがいます。

 

血液透析(HD)に関わる医療スタッフさんとその役割は、次の通りです。

職種主な役割
医師透析患者の診察・検査、透析条件・方法の決定、薬の処方、心身状態の把握
看護師療養上の世話や診療の補助、透析装置の状態確認、円滑な透析のための観察・監視
臨床工学技士看護師とともに透析装置・患者状態の監視。在宅血液透析を目指す人には装置操作の指導も担う
管理栄養士透析食の献立作成、食事療法がうまくいかない患者への個別栄養指導・相談対応
薬剤師処方箋に基づく調剤・供給、効用・副作用の説明、服薬指導、飲み合わせ確認
ケースワーカー(医療ソーシャルワーカー)透析患者・家族の心理的・経済的・社会的問題への相談・指導。障害手帳・障害年金等の手続き支援
臨床検査技師血液・尿・便などの検査を担当する医療技術者
診療放射線技師レントゲン(X線)撮影などを担当
医療事務員透析にかかる医療費の受付・会計、入院・手術費用の問い合わせ対応

 

それぞれの役割を簡単にまとめましたが、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

・医師
透析患者の診察や検査を行い、透析の条件・方法を決め、薬を処方し、心身の状態を把握します。透析中の回診では、日常生活の変化や血液データをもとに、今後の治療方針について説明してくれます。気になることはこの回診のタイミングで積極的に相談しましょう。

 

・看護師
透析患者の療養上の世話や診療の補助を行います。穿刺(せんし)の準備や実施、透析中の血圧測定・体調確認など、患者に最も近い場所で働いてくれるスタッフさんです。透析中に何か気になることがあれば、まず看護師さんに声をかけましょう。

 

・臨床工学技士
看護師とともに透析患者や透析装置の状態を確認し、透析が円滑に行われるよう観察・監視を行います。透析装置のメンテナンスや設定変更なども担当する、いわば「医療機器のプロ」です。将来、在宅血液透析を考えているなら、臨床工学技士さんから装置の操作方法などを指導してもらうことになります。

 

・管理栄養士
食事を提供している病院では透析食の献立作成を担当します。体重の増えすぎ・減塩できない・カリウムが高め……など食事療法がうまくいかない透析患者に対して、個別に正しい食事方法を指導・相談対応してくれます。食事のことで困ったら、遠慮なく相談してみましょう。

 

・薬剤師
医師が作成した処方箋に基づいて薬を調剤・供給します。薬の効用・副作用についての説明や服薬指導を行うほか、複数の薬の飲み合わせ確認も行ってくれます。「この薬、飲み忘れたらどうする?」「副作用が気になる」といった相談も積極的にしてみましょう。

 

・ケースワーカー(医療ソーシャルワーカー)
透析患者やその家族が抱える心理的・肉体的・経済的・社会的な問題について、相談にのったり指導を行ったりします。透析を導入した後の医療費のこと、障害者手帳・障害年金などの申請手続き・制度利用について、ケースワーカーさんにまず相談してみることをおすすめします。私自身もソーシャルワーカーさんに相談したおかげで、障害者手帳や障害年金の手続きをスムーズに進めることができました。

 

在宅血液透析であっても透析スタッフさんとのコミュニケーションは大事

在宅血液透析でお世話になるかもしれない

血液透析は病院へ通って……というのが一般的ですが、自宅やアパートなどで行う「在宅血液透析※※」という選択肢もあります。ただし、在宅血液透析はすぐにできるものではなく、まず病院で「血液透析を行っていること」が前提となります。

※※在宅血液透析……QOL(=生活の質)を高めるという点では、血液透析の中で最も良い方法とされています。

 

透析患者が増加傾向にあり、患者の高齢化も相まって、病院の受け入れが厳しくなってきているという背景もあります。現状では在宅血液透析を実施している方はわずか0.1〜0.3%程度にとどまっていますが、在宅血液透析を推奨・対応できる病院は少しずつ増えてきています。

 

在宅血液透析を例に

在宅血液透析の最大のメリットは「時間の融通が利き、かつ長時間透析ができる」ことです。週3回・1回4〜5時間という制約がなく、週6回・1回2〜3時間などの頻回透析も選択でき、体への負担を分散できます。

ただし、在宅血液透析を始めるには、かかりつけ病院の透析スタッフさんから十分な研修を受ける必要があります。生半可な準備ではできません。

具体的には、在宅血液透析は透析患者本人、またはその補助者(配偶者や家族など)が穿刺(せんし)を行います。衛生管理から透析用の器材・薬剤の在庫管理・発注まで、透析の始まりから終わりまでをすべて自分で行うことになります。

 

研修をきちんと受けて合格し、GOサインをもらわなければならない。「生半可なことはできない」と言ったのはこういう理由からです。

看護師さんが行ってくれていた穿刺も、在宅では「自分で」しなければならないのです。穿刺は大変危険な行為であり、下手をすれば命に関わります。透析スタッフさんとの密なコミュニケーションと信頼関係があってこそ、安全な在宅血液透析が成り立つのです。

 

在宅血液透析についてもう少し触れておきますと、自宅や賃貸マンション・アパートでは、ベッドのほか器材を設置するための「場所の確保」が必要です。また導入初期には、室内に水道や電気を引き込むための改装費用がかかります。

さらに、光熱費や水道費などは通常の倍以上かかるという側面もあります。病院で透析していると無意識になりがちな部分なので、事前にしっかり確認しておきましょう。

在宅血液透析では病院へ通うことはほぼなくなりますが、定期的な検査(X線・心電図など)は必要ですし、シャントの異変や発熱・インフルエンザなどのトラブルが起きた際には病院を受診して処置を受けることになります。

病院での血液透析でも、在宅血液透析でも、透析スタッフさんとの接点とコミュニケーションがいかに大事かがおわかりいただけると思います。

 

血液透析(HD)の基礎知識

「透析は病院や医療スタッフにすべてをお任せする」と考えている透析患者も少なくないでしょう。しかし、いざというときに透析に関する基礎的知識が薄いと、「体調が悪い」「薬を飲み忘れた状態が続いている」「合併症が早めに出てしまった」といったことが起きやすくなります。

医師・看護師さんとの診察や看護上の報告・相談をスムーズに行ううえで、透析の基礎的知識を身につけておくことはとても大事なことです。

 

血液透析の基礎的知識を知っておこう

血液透析(HD)は、血液を一度体外に出して(=脱血)、人工腎臓(=ダイアライザーと呼ばれる透析器)に通すことで血液中の老廃物や余分な水分を除去し、きれいにしてから体の中に戻す(=返血)治療です。

治療は週3回行い、1回につき4〜5時間かけて行います。

参照:透析時間の決め方。4時間透析「最低ライン」に過ぎません!

 

人工腎臓(ダイアライザー)は人工の半透膜でできた細い管が束ねられており、この半透膜が腎臓の糸球体※(しきゅうたい)に似た機能を果たしています。

※糸球体……血液を濾過(ろか)して不要な水分や電解質を取り除く機能を持つ腎臓の「フィルター的存在」です。

細い管の内側には血液が、外側には透析液が流れていて、その膜を介して老廃物や余分な水分が除去されます。4〜5時間のあいだ、ダイアライザー内でこれが繰り返されます。

 

“きれいにしている”とはいえ、生体の腎臓のように万全ではなく、あくまで「代替」しているだけに過ぎません。

たとえば、1回あたりの透析(最低限4時間の場合)では、血液中の老廃物である尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cr)の除去率は約60〜70%ほどです。本物の腎臓と比べて、まだまだ限界があるのが現実です。

 

生体の腎臓にはほかにも重要な役割があります。透析患者は「造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌」ができないため腎性貧血になり、貧血改善薬(ESA製剤)で補います。また「ビタミンDの活性化」もできないため、骨を丈夫にする働きが低下し、骨粗しょう症や副甲状腺機能亢進症の原因となります。こちらは活性型ビタミンD製剤で補っていきます。

 

このように、透析で代替できることとできないことを整理しておきましょう。

腎臓の主な働き血液透析で代替できるか対処法
老廃物・余分な水分の除去できる(除去率60〜70%程度)透析で対応
造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌できないESA製剤(貧血改善薬)で補う
ビタミンDの活性化できない活性型ビタミンD製剤で補う
血圧調整ホルモンの分泌できない降圧薬・水分・塩分管理で対応

 

腎臓は毎日休むことなく働き続けています。しかし血液透析は4〜5時間/回、週3回(計9〜15時間/週)でしかなく、腎臓の働きには遠く及びません。

「透析の効率」も求められます。4〜5時間という限られた時間のなかで行うためです。透析を効率よく行うには、1分間に約200mLという大量の血液を人工腎臓(ダイアライザー)へ循環させなければなりません。これは身体的に大きな負担を伴うものです。

そのために、血流量の多い「動脈」と「静脈」をつないで新たな血流回路を作ります。これがシャント(内シャント)です。一般的に、生活に支障が少ないよう利き腕ではない前腕部に作ります。これから血液透析を始める方は、透析導入前に手術でシャントを作っておく必要があります。

 

参照:「血液透析の効率をあげるためにはどうすればいい?
参照:「透析治療では何をするの?腎臓は本当にすごい司令塔だった!

 

透析スタッフさんと「コミュニケーション」をとることの大切さ

ここまで各スタッフさんの役割を確認してきましたが、大切なのは役割を「知っているだけ」で終わらせないことです。

スタッフさんとのコミュニケーションは、治療の質に直結します。私自身の経験から言えば、透析スタッフさんと話すきっかけは何でもよいのです。

「どのような学校に通って資格を取ったの?」「透析装置の設定って難しいの?」「臨床工学技士は透析だけじゃなくて、ほかにも働く現場があるんですよ……」。こんな他愛もない話から入っていいのです。

 

日常会話のなかで関係性が育まれ、透析上での疑問点や相談したいことが出てきたときに「あの先生(あの看護師さん)なら聞きやすい」と思えるようになります。

透析患者がスタッフさんのことをよく知り、スタッフさんも患者のことをよく知る。この相互理解こそが、より良い治療環境を作る基盤になります。

 

下記のような場面で、どのスタッフさんに相談するかを意識しておくと動きやすくなります。

こんなときは……相談先のスタッフさん
体調が悪い・薬を変えたい医師・看護師
食事のカリウムや塩分が心配管理栄養士
薬の副作用・飲み合わせが気になる薬剤師
医療費・障害手帳・年金などの手続きケースワーカー(医療ソーシャルワーカー)
透析装置の動作・在宅透析を検討したい臨床工学技士
会計・入院費用の問い合わせ医療事務員

 

まとめにかえて

はじめて血液透析(HD)を受けるとき、右も左も分からず、身動きもできず、不安だらけになってしまいますよね。分かります、私もそうでした。

透析は続けていかなければならないものです。末永くお付き合いしていかなければならないのです。

そう考えると、透析をしながらでもできる限りベストな状態で仕事や生活を続けたいと思いませんか?

そのためにも——透析患者がまずすべきことは、

医師・看護師さんをはじめとした透析スタッフさんの仕事・役割を知ることから始まり、日々のコミュニケーションを通じて信頼を構築していくことではないでしょうか。

 

もし病院・スタッフさんとの信頼関係が崩れてしまえば、通院することはもとより透析すること自体が嫌になってしまいます。場合によっては転院という選択肢も視野に入れざるを得なくなります。透析は続けていくもの。だからこそ、最初から良い関係を築いていくことが大切です。

 

私も透析を導入したころ、「臨床工学技士」という職業について全くもって知りませんでした。聞いたことすらありませんでした。それが今では「透析現場に欠かせないプロ」だと、はっきり分かります。それは院内をぐるぐる巡回している臨床工学技士さんといろいろ話をしたから、です。

また、かつての仕事柄「ソーシャルワーカー」という職業については知っていたので、担当者の方には透析に関する情報や知識を提供してもらいました。おかげで障害者手帳や障害年金の相談をスムーズに行え、その後の手続きも円滑に進めることができました。

 

今回は「透析スタッフの役割とは┃コミュニケーションはとても大事!」というテーマで、各スタッフさんの役割と、関係性を築く大切さをまとめました。

日常会話でもOKです!透析上での疑問点や相談したいことがあれば、医師や看護師さん、管理栄養士さんなどにどんどん聞いてみましょう。きっと親身になって受けてくれるはずです。