2019年3月20日

更新日: 2026年9月13日

週3回、1回あたり4〜5時間。透析患者にとってこの時間をどう過ごすかは、長い透析生活の質を大きく左右します。QOLの向上=生活・人生の質を高めたいという話しにも続いていきます。かつての透析患者は、週刊雑誌や新聞、小説集といったアナログ、カセットテープ、携帯ラジオやCDやDVDプレイーヤーを持ち込むのが定番でした(左記を【旧式の過ごし方】と定義します)。
時代が経ちました。ノートパソコン持ち運べるようになり、より小さく性能も良いスマートフォンやタブレットが出てきて、動画配信や電子書籍を楽しめる、AIに触れる機会が多くなってきました(これを【新式の過ごし方】と定義します)。
このようなITとデジタル化の波は、透析患者の「時間の使い方」を根本から塗り替えています。この記事では、その変化を整理しながら、今使えるツールと過ごし方の選択肢をお伝えします。
なお【旧式の過ごし方】—週刊雑誌や新聞、小説集、携帯ラジオ、CDやDVDなど—は今でも十分に有意義です。新旧どちらかに優劣があるわけではありません。自分に合った組み合わせを見つけることが大切です。
私が透析を始めた頃(2010年前後)、透析室の風景といえば、天井に固定されたテレビを眺めるか、持参した新聞紙や週刊雑誌をめくるか、眠るかのいずれかがほとんどでした。携帯ラジオやCD・DVDプレーヤーを持ち込んでいる方もいましたが、それが精一杯の「工夫」でした。
私自身の購入履歴を振り返ると、携帯ラジオ、ラジオ付き携帯テレビ、DVDプレーヤー、ボイスレコーダー、携帯電話(ガラケー)、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット……と続きます。新品だけでなく、ハードオフやフリマアプリで中古品を探していました。常に「透析時間を有意義に、有効に使えないか」を考えながら、家電量販店にも実際に通って実物に触れて、納得してから購入する、時間に投資するスタイルを取っていたのです。

ここで、【旧式】と【新式】の違いを整理してみましょう。
| 区分 | 主なツール・手段 | 特徴 |
|---|---|---|
| 旧式の過ごし方 | 紙の本・雑誌・新聞、カセット・CD・DVDプレイヤー、携帯ラジオ、ガラケー | ネット接続不要。電池や電波に左右されない。コンテンツは事前に用意が必要 |
| 新式の過ごし方 | ノートパソコン、スマートフォン、タブレット、動画配信、電子書籍、AI、副業ツール | ネット接続で無限のコンテンツにアクセス可能。作業・学習・副業まで幅が広い |
今の私は【新式】と【旧式】を状況に応じてミックスして使っています。体調が優れない日は眠るだけのこともありますし、それはそれで正解です。大切なのは「今日はこう過ごしたい」という自分なりの意図を持てるかどうかだと思っています。
「IT化」「デジタル化」という言葉は、何も一般社会だけの話ではありません。アナログ放送のデジタル化、ワープロからパソコンへ、ガラケーからスマートフォンへ——その変遷の波は、透析患者の療養時間にも確実に届いています。
2013年に初めてスマートフォンを手にしたとき、透析室での使い方はまだ「ネットでちょっと調べる」「LINEを返す」程度でした。モバイルルーターを持ち出してWi-Fi環境を整えるようになった2016年頃でも、接続は不安定で、動画をまともに観られる状況ではなかったです。
それが今では、スマートフォン1台で映画を観て、タブレットで電子書籍を読み、ノートパソコンで仕事や副業まで完結できるようになりました。回線速度・コスト・コンテンツの充実度、すべてが当時とは別次元です。
透析室でネットを使う場合、通信手段の選択が重要です。施設によってはWi-Fi環境が整っているところもありますが、患者向けに開放していないケースも多いので、事前に確認しましょう。
自前で通信環境を用意する場合の主な選択肢は以下のとおりです。
| 通信手段 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| スマホのテザリング | 機器が1台で済む。設定が簡単 | スマホのバッテリー消費が大きい。契約プランによって速度制限あり |
| モバイルWi-Fiルーター | スマホとは独立して使える。複数端末に接続できる | 機器を別に持ち歩く必要がある。月額費用が発生する |
| 格安SIM(MVNO) | 大手キャリアより月額が安い。プランの柔軟性が高い | 混雑時間帯は速度が落ちやすい。サポートが限られる場合がある |
| 施設Wi-Fi | 追加費用なし | 開放していない施設が多い。速度・セキュリティにばらつきがある |
動画を透析中に楽しみたい場合は、自宅など料金のかからないWi-Fi環境であらかじめコンテンツをダウンロードしておくのが最も賢いやり方です。モバイル回線でのストリーミング再生は通信量が大きく、月の上限を超えると速度制限がかかります。ダウンロード済みであれば通信量ゼロで再生できます。
透析中の「暇つぶし」として真っ先に浮かぶのが、動画や音楽・読書でしょう。これらはITとデジタル化の恩恵を最も受けやすいジャンルです。
私が主に使っているのはAmazon Prime VideoとU-NEXTです。どちらも月額制で、映画・ドラマ・アニメ・ドキュメンタリーが見放題。透析中に「次のエピソードを観る楽しみ」を作ることで、透析日そのものが待ち遠しくなる感覚さえあります。
音楽はYouTubeとAmazon Prime Musicを併用しています。イヤホンさえあれば、透析中でも自分だけの音楽空間を作ることができます。
透析患者の方には、Amazon Prime会員への加入がコスパの面で特におすすめです。Prime Videoだけでなく、Prime Music・Prime Reading(電子書籍)・無料配送まで含まれており、月額・年額ともに単体サービスと比べてお得感が高いです。
紙の本や雑誌を持ち込む【旧式】には、「忘れたら何もできない」という弱点がありました。電子書籍はその問題を完全に解消します。タブレットや電子書籍リーダー1台の中に、数百冊のコンテンツを入れておけます。
私は小説・自己啓発書・専門書まで電子書籍で管理しています。読みかけの本をその場でどこでも再開できる快適さは、紙ではなかなか得られないものです。施設内でページをめくる音を気にする必要もありません。
電子書籍リーダーやタブレットを使った透析中の読書・動画鑑賞については、別記事「透析中にノートパソコン・タブレットで映画・読書を楽しむ方法」でさらに詳しく紹介しています。
動画や読書で「楽しむ」だけが透析時間の使い方ではありません。ここ数年で急速に広がったのが、透析中に「稼ぐ・学ぶ・作る」という使い方です。ノートパソコンやタブレットがあれば、透析室は立派なワークスペースになります。

①体調が最優先です。透析中は血圧変動が起きやすく、集中作業で体調変化に気づきにくくなる場合があります。気分が悪い・めまいがするといったサインを絶対に見逃さないでください。
②施設のルールを事前に確認してください。透析室でのパソコン使用・電話通話・作業を禁止または制限している施設もあります。始める前にスタッフに確認するのが大前提です。
③本業がある方は就業規則の確認が必須です。会社員・公務員として働きながら透析を続けている方は、勤務先の就業規則で副業が禁止または届出制になっているケースがあります。規則に違反した副業は、発覚した場合に就業上のリスクを招く可能性があります。副業を始める前に、必ず自分の勤務先の規則を確認してください。
透析患者の中には、体力的・時間的な制約から、フルタイム勤務が難しい方も少なくありません。そこで注目したいのが、ネットを使った副業や在宅ワークです。
たとえば、Webライティング・データ入力・ブログ運営・ネットショップ・翻訳・デザインなど、パソコン1台とネット接続があれば始められる仕事は年々増えています。透析の4〜5時間を「作業時間」に充てることができれば、月に数万円の収入を得ている透析患者も実際にいます。
ノートパソコンはDVD視聴や映画鑑賞だけでなく、こうした副業・在宅ワークの入口にもなります。「どうせ動けない時間なら、何かを生み出す時間にしてしまおう」という発想の転換が、長い透析生活を前向きに変えるきっかけになります。副業や在宅ワークに使えるノートパソコンの選び方については、別記事でより詳しく掘り下げています。

近年、ChatGPTに代表されるAI(人工知能)ツールが急速に普及しています。これは透析患者にとっても無縁の話ではありません。
たとえば、次のような使い方が今すぐ可能です。
AIは「調べる」「書く」「整理する」の速度と質を大幅に上げてくれます。スマートフォン1台でも使えるため、透析中という限られた状況でも十分に活用できます。AIは一部の専門家だけのツールではなく、透析患者の日常にも実用的に使える時代になっています。
私自身は会社員として働きながら透析を続けています。仕事そのものを持ち込むことはしていませんが、透析中は業務に役立つ資格取得のためのオンライン講座を視聴することで、その時間を「投資」に変えています。
UdemyやYouTubeには、プログラミング・マーケティング・デザイン・語学など無数の学習コンテンツがあります。Wi-Fi接続があれば透析中でもアクセスでき、スキルを積み上げながら収入の選択肢を広げることができます。「しんどい透析時間」を「自分の未来を作る時間」に変えていく——それが今の時代に透析患者が手にできる最大の恩恵の一つだと感じています。
「ITとかデジタルとか、私には難しい」と感じている方もいるかもしれません。でも実際には、スマートフォンを使ってLINEやYouTubeを見ているなら、すでにその入口に立っています。
格安SIMの普及で通信コストは大幅に下がり、スマートフォンの操作性も年々シンプルになっています。タブレットや電子書籍リーダーは文字を大きく表示できるため、視力に不安のある方にも使いやすくなっています。
| 端末 | 透析中の主な用途 | こんな方に向いている |
|---|---|---|
| スマートフォン | 動画・音楽・SNS・AI・ネット検索 | まずは1台で手軽に始めたい方 |
| タブレット | 電子書籍・動画・学習・軽作業 | 画面の大きさを重視したい方、読書メインの方 |
| ノートパソコン | 副業・資格学習・動画編集・ブログ・DVD視聴 | 仕事・副業まで視野に入れたい方 |
| 電子書籍リーダー | 読書専用(目に優しい・軽量) | 読書をとことん楽しみたい方 |
「いきなり全部そろえる必要はない」というのが私の実感です。まずは今持っているスマートフォンで動画配信サービスを試してみる、電子書籍を1冊読んでみる——そこから始めれば十分です。
ここまでITとデジタル化の可能性をお伝えしてきましたが、「自分には必要ない」という選択も、もちろん正解です。

図書館から借りた本をゆっくりと読み進める。CDで好きな音楽を聴く。透析が終わるまでぐっすり眠る。それぞれが、その人にとっての最善の過ごし方です。
透析患者同士の会話が自然に生まれる日もあれば、ひとりで集中したい日もある。スタッフさんと雑談するのも良いですが、みなさん忙しいのも事実です。「ひとりTV・ひとり映画・ひとり読書・ひとり勉強」——邪魔されない自分の時間として使い切るのも、立派な過ごし方です。
透析時間の「暇つぶし」は、もはや単なる時間つぶしでなくなっています。動画・音楽・読書という「楽しむ」選択肢に加えて、副業・資格取得・AI活用という「生み出す」選択肢まで、今の透析患者には広がっています。
20年超透析を行っている私が実感しているのは、「IT化によって透析時間が変わった」というより、「透析時間が自分の可能性を広げる時間に変わった」ということです。週3回の療養時間を、前向きに使い切っていきましょう。
※本記事は一般的な情報および個人の体験に基づくものです。通信環境・施設ルール・体調は個人によって異なります。透析中の端末使用については、通っている施設のルールを必ずご確認ください。副業・在宅ワークについては、本業がある方は勤務先の就業規則を事前に確認したうえで、体調を最優先に取り組んでください。