透析を始めたばかりの頃は、誰でも不安で押しつぶされそうになりますよね。「透析って一生続けるの?」「これからどうやって生活していけばいいんだろう…」そんな風に、私も眠れない夜を何度も過ごしました。
でも、大丈夫!透析と上手く付き合いながら、充実した毎日を送ることは絶対に可能です。今回のテーマは「透析と鬱(うつ)」です。私はとにかく「透析鬱(うつ)だけには絶対にならない!」と仕事上でもプライベート上でも、強く意識してきました。いまでも、そうです。
当サイト「腎者エール!」のキャッチフレーズに挙げている通り、透析生活のQOL(生活・人生の質)向上のために、何かしらしているのです。続けているのです。QOLを向上させるための秘訣を、余すところなくお伝えします。この記事を読めば、きっと前向きな気持ちになれるはずです。
透析患者が鬱(うつ)になりやすい理由とは?
透析患者の多くが、心の不調を感じやすいと言われています。それは決して、あなたの心が弱いからではありません。きちんとした理由があるんです。ここでは、透析患者が鬱(うつ)になりやすい、主な原因を3つご紹介します。
患者アンケート調査では、腎臓病や透析をきっかけにうつ病・抑うつ状態を経験した方は全体の70.5%にのぼりました。また最も多い症状は「気分の落ち込み・憂鬱・絶望的な気持ち(58.9%)」で、次いで「不眠症・意欲の低下(43.1%)」でした。一方、専門医を受診してうつ病の診断を受けた方は19.0%で、多くの方が受診できていないことも浮かび上がっています(出典:じんラボリサーチ第9回患者アンケート(2017年))。
経験した透析患者
憂鬱・絶望感
意欲の低下
うつ病と診断
身体的な負担と脳内物質のバランスの乱れ
透析治療は、時間も体力も使う、身体への負担が大きいものです。さらに、腎臓の機能が低下することで、脳内の神経伝達物質のバランスも乱れやすくなります。特に、気分の安定に関わるセロトニンという脳内の神経伝達物質の分泌が減ってしまうと、鬱(うつ)の症状が出やすくなってしまうんです。
ああ、そうそう。セロトニンって、別名「幸せホルモン」なんて呼ばれてますよね(正確には神経伝達物質ですが、わかりやすくそう呼ばれることが多いです)。脳内でセロトニンがしっかり分泌されると、心が落ち着いて、幸福感を感じやすくなるんですよ。逆に、セロトニンが不足すると、イライラしたり、不安になったり…ホントなんだか、天気みたいですよね(笑)。
生活の変化と将来への不安
透析導入によって、食事制限や運動制限など、今まで通りの生活を送ることが難しくなることも、鬱(うつ)の原因となります。「好きなものが食べられない」「旅行に行けない」といったストレスは、想像以上に心に負担をかけるものです。
それに、医療費や将来への不安も、大きなストレスになりますよね。「これから一体どうなるんだろう…」と、先の見えない不安に押しつぶされそうになる気持ち、痛いほどよく分かります。
社会的孤立
透析治療のために、仕事や趣味の時間を削らざるを得なくなったり、体調の変化から外出を控えるようになったりすることで、社会との繋がりが薄れてしまうことも、鬱(うつ)を悪化させる原因となります。
特に、会社勤めをしている方は、仕事と治療の両立に悩むことが多いのではないでしょうか。私は、この透析導入前後の期間の時点でもう”ヤバイ”かもと思いました。
というのも、前職は現場の力仕事をしながら療養期間のなかで、雇用保険の給付を受けながら畑違いの事務職に就くための転職活動と資格取得を並行して行っていたのです。自分のなかでは「社員になりたい」一色。「パート・バイトは論外」という意識で、仕事探しをしていましたから!
私は氷河期世代ですから、健常者以上に就職に就くことが難しく…。こうして、1年弱もの年月(時間・期間)が経ってしまいましたね。何とか会社も見つけたものの、今考えてみるとブラック会社。今でさえも存在しています。透析始めた当初、会社側が言うには障害者採用が初めてだったそう。当然ながらなかなか周囲に理解してもらえず、辛い思いをしましたね。(この話しは、「透析患者の仕事と雇用保険」のなかでもしていきます。)
▼ 透析患者が鬱(うつ)になりやすい3つの主な原因まとめ
| 原因 | 具体的な内容 | よく見られる症状 |
|---|---|---|
| 身体的負担・ 脳内物質の乱れ | 腎機能低下によるセロトニン(脳内神経伝達物質)不足。透析自体の疲労・体力消耗 | 気分の落ち込み、イライラ、不安感 |
| 生活の変化・ 将来への不安 | 食事・水分・運動の制限。仕事・旅行など今まで通りの生活が困難に | ストレス、無力感、睡眠障害 |
| 社会的孤立 | 透析通院で仕事・趣味の時間が削られる。外出機会の減少 | 孤独感、意欲低下、人間関係の疎遠 |
透析患者が鬱(うつ)を克服するための7つの方法
では、具体的にどうすれば、鬱(うつ)を克服し、前向きな気持ちで毎日を送ることができるのでしょうか?ここでは、私が20年超透析を行っている透析生活で実践してきた、効果的な7つの方法をご紹介します。
まずは、誰かに悩みを打ち明けることが大切です。家族や友人、医療スタッフなど、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。
「こんなこと話しても迷惑かな…」なんて思わずに、勇気を出して、話してみてください。案外、話してみると、「なんだ、そんなことか」と、気持ちが軽くなることもありますよ。
透析施設によっては「患者・家族サポート相談員」や「ソーシャルワーカー(社会福祉士)」が在籍しているところも増えています。精神科への相談に抵抗がある場合は、まずはかかりつけ透析クリニックのスタッフに「最近気持ちが落ちているんですが…」と話してみるだけでも大丈夫です。
適度な運動は、セロトニンの分泌を促し、気分を高める効果があります。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で、体を動かしてみましょう。
透析患者向けの筋トレ動画も、最近はたくさんあります。私も、自宅で軽い筋トレをするようにしてから、体力がついて、気分も明るくなった気がします。
透析患者は、食事制限が多いですが、栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。特に、トリプトファンというアミノ酸は、セロトニンの材料となるため、積極的に摂取するようにしましょう。
トリプトファンは、牛乳・豆腐・ナッツ類などに多く含まれています。
牛乳にはリンが多く(約96mg/100ml)、豆腐・ナッツはカリウムも含まれます。食事制限がある中でも、量と組み合わせに注意しながら工夫することが大切。「牛乳は低リン乳(いかるが牛乳等)で代替する」「豆腐は少量を水さらしして食べる」などの工夫を管理栄養士と一緒に考えてみてください。
最近は、透析患者向けの宅配弁当も充実していますよね。私も、たまに利用していますが、栄養バランスが考えられているので、安心して食べられます。
睡眠不足は、鬱(うつ)の症状を悪化させる原因となります。毎日、同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけ、質の高い睡眠を確保しましょう。
寝る前に、スマホやパソコンを見るのは避けた方が良いです。ブルーライトは、睡眠の質を低下させる原因となります。私は、寝る前に、アロマを焚いたり、リラックスできる音楽を聴いたりするようにしています。おかげでぐっすり眠れるようになりました。
透析患者に多い「むずむず脚症候群(下肢静止不能症候群)」は、横になると足がむずむずして眠れない症状で、不眠・うつの悪化に直結します。「最近足が不快で眠れない」と感じたら、透析スタッフに相談してみてください。薬での対処が可能な場合があります。
趣味や好きなことに没頭する時間は、ストレス解消になり、気分転換になります。絵を描いたり、音楽を聴いたり、ゲームをしたり…どんなことでも良いので、自分が楽しめることを見つけてみましょう。
透析患者向けの旅行ツアーもあります。私はツアーよりかは透析旅行のほうが多いのですが、また機会があれば参加してみたいと思っています。国内だけじゃなく、海外もあるようですから、気になります。
私は透析をはじめる若い頃、2000年前後だと思うのですがPCで音楽を作ってみたり、動画編集してみたりしていたんですね(WindowsXPとか2000あたりの時代。)これがまた面白いんですよ!当時はDTM環境ソフトで遊ぶ、旅行先で撮った8mmのビデオをPCへ取り込んで…といった感じ。無我夢中になって、嫌なことも忘れられるんですね。今は「好きなこと」の幅がずいぶん広がっています。
太陽の光を浴びることは、セロトニンの分泌を促し、気分を高める効果があります。天気の良い日は、積極的に外に出て、日光浴をしましょう。
特に、午前中に太陽の光を浴びるのがおすすめです。午前中に太陽の光を浴びると、体内時計がリセットされ、夜、ぐっすり眠れるようになります。
もし、どうしても辛い場合は、我慢せずに、医療機関を受診しましょう。精神科や心療内科では、鬱(うつ)の専門的な治療を受けることができます。
「精神科に行くのは抵抗がある…」という方もいるかもしれませんが、決して恥ずかしいことではありません。鬱(うつ)は、誰でもかかる可能性がある病気です。早めに治療を受けることで、早く回復することができます。
臨床透析誌(2023年)では「大うつ病性障害は透析患者に高頻度に起こりうる合併症」と明記され、透析医療従事者による支持的精神療法(日本うつ病学会のガイドラインで推奨)の積極的介入が望まれると報告されています。透析スタッフへの報告も「受診」の入口として有効です。
QOL(生活の質)を向上させるためのアイテム紹介
ここでは、透析患者のQOL(生活・人生の質)を向上させるために役立つ、おすすめのアイテムをいくつかご紹介します。
低カリウム・低リン食品
透析患者は、食事制限が多いですが、最近は、低カリウム・低リンの食品も充実しています。これらの食品を活用することで、食事のバリエーションを増やし、ストレスを軽減することができます。
低カリウムの野菜ジュースや低リンのおやつなどは、一般のスーパーやドラッグストアには置いていないことが多いです。主に透析患者向けの専門通販サイト(腎臓食品のオンラインショップ、介護食品販売店など)、または病院・透析施設の管理栄養士を通じて入手するのが確実です。
宅配弁当
透析患者向けの宅配弁当は、栄養バランスが考えられているので、安心して食べることができます。自分で料理をするのが大変な時や、時間がない時に便利です。最近は、様々な種類の宅配弁当があります。カロリー制限食や、塩分制限食など、自分の状態に合わせて、選ぶことができます。
おすすめマットレス・枕
良質な睡眠を確保するためには、自分に合ったマットレスや枕を選ぶことが大切です。体に負担がかからない、快適な寝具を選びましょう。例えば、低反発マットレスや、高反発マットレスなどがあります。実際に寝てみて、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
「透析うつ」のサインを見逃さないで!早期気づきのチェックリスト
「透析うつ」に特別な呼び名があるわけではありませんが、透析患者に起きやすいうつ症状には、一般的なうつと少し違う「透析特有のサイン」があります。以下のチェックリストで自分の状態を確認してみてください。
▼ 透析患者に起きやすい「うつ」のサインチェックリスト
| カテゴリ | よくあるサイン | 透析特有の注意点 |
|---|---|---|
| 気持ち・感情 | 「透析が嫌だ」「もう透析をやめたい」という気持ちが続く | 透析への拒否感が強まる時は要注意 |
| 意欲・行動 | 食事・水分管理への意識が急に下がる。薬を飲み忘れが増える | 管理意識の低下は体調悪化のシグナル |
| 身体症状 | 透析後の疲労が極端に強く、翌日まで続く。食欲がない | 透析の影響と区別がつきにくいため長引く場合は相談を |
| 対人関係 | 透析室でスタッフや他の患者と話すのが面倒になった | 孤立傾向の初期サインであることが多い |
| 睡眠 | 夜眠れない、または昼間でも眠い | むずむず脚症候群との複合が多い |
2つ以上に当てはまる場合は、透析スタッフに相談することをお勧めします。「うつかもしれない」と感じた時点で相談することが、早期回復への最短ルートです。
最後に〜透析しながら前向きに生きるために〜
透析患者の鬱(うつ)は、決して珍しいことではありません。大切なのは、一人で悩まずに、誰かに相談すること、そして、自分を大切にすることです。
今回ご紹介した7つの方法を参考に、少しずつ、できることから始めてみてください。きっと、前向きな気持ちで、毎日を送れるようになるはずです。
私も、20年超透析を行っていますが、まだまだやりたいことがたくさんあります。皆さんと一緒に、充実した透析生活を送りたいと思っています!
そして、もうひとつ大事なこと。「うつになったこと」は弱さではなく、それだけ透析生活に真剣に向き合っている証拠でもあるのです。逃げずに向き合っているあなたは、十分に頑張っています。前向きに生きる、そのためにまず自分を認めてあげてください。
まとめ:透析と鬱(うつ)を乗り越えて、前向きに生きる!
- 透析患者の70.5%がうつ・抑うつを経験。あなたが弱いわけではない
- 原因は「身体的負担・脳内物質の乱れ」「生活の変化・将来への不安」「社会的孤立」の3つ
- 7つの方法:①誰かに相談 ②体を動かす ③バランスある食事 ④良質な睡眠 ⑤趣味を持つ ⑥太陽を浴びる ⑦医療機関を受診
- トリプトファン食品(牛乳・豆腐・ナッツ)はリン・カリウムに注意。管理栄養士と相談を
- 透析患者に多い「むずむず脚症候群」は不眠・うつを悪化させる。スタッフに相談しよう
- 「うつかも」と感じたらチェックリストで確認。2つ以上に当てはまれば早めに相談
- うつになることは弱さではない。前向きに生きるためにまず自分を認めることが第一歩
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状・治療方針は異なります。心の不調を感じたら必ずかかりつけ医・精神科・心療内科にご相談ください。

